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3章 王立学院編ー後編―
<59>神出鬼没
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「びっ……くりした」
衝撃の告白の後、ジュリアンは呆然とする俺に「考えといてよね」とだけ告げて去って行った。考えてもみなかった方向からの好意に、しばらくその場で呆然としてしまう。
「ダメだ、頭が追いつかねえ。散歩でもしてから帰ろ」
菜園を出て、校舎の方を目指す。まだ明るいしこのまま中庭まで歩いてみようか。
(そういえば図書館に入った新刊に、読みたいやつがあったんだよな)
中庭に行く前に図書館へ寄ろう。それから少し中庭で読書をするのをいいかもしれない。
正直、ほんの少しでいいから現実を忘れたい。
図書館には思ったよりも多くの生徒がいた。学院を卒業した後は、試験を受けてさらに高い教育を受ける者や、やはり試験を受けて省庁で働く者、家に帰って後を継ぐものなどさまざまな道へと皆、進んでいく。
真剣な顔で机に向う生徒たちはほとんどが3年だろう。
(俺も受験のとき、友達と図書館で勉強したっけ。しゃべってばっかで出禁になったりしてたなあ)
もう遥か遠い昔のことのように思える前世の記憶。久しぶりに懐かしく思い出していると、右肩に重みを感じた。
「えっ!? なに!?」
振り返ると、血のように赤い瞳が俺を見下ろしている。何を考えているのかわからない微笑は、いつ見ても緊張感が走る。
「ルーイ、先輩……」
「何をしている。入り口でぼんやり突っ立っていたら邪魔だ」
「あ、はい、そうですね。すみません今どきま――」
急いでその場から去ろうとしたのに、前へ進めない。恐る恐る振り返ると、ルーイ先輩ががっしりと俺の右腕を掴んでいる。
「あの、先輩?」
「ちょっと付き合え」
「いや、あの、俺ちょっと――」
「付き合え、と言っている」
ルーイ先輩に逆らえる人は、この世に何人いるんだろうか。ゾッとするような微笑みの圧に、俺にはもうはいかイエスかの選択しか残されていない。
先輩は俺の腕を捕えたまま、その場から一瞬で自室へ飛んだ。
衝撃の告白の後、ジュリアンは呆然とする俺に「考えといてよね」とだけ告げて去って行った。考えてもみなかった方向からの好意に、しばらくその場で呆然としてしまう。
「ダメだ、頭が追いつかねえ。散歩でもしてから帰ろ」
菜園を出て、校舎の方を目指す。まだ明るいしこのまま中庭まで歩いてみようか。
(そういえば図書館に入った新刊に、読みたいやつがあったんだよな)
中庭に行く前に図書館へ寄ろう。それから少し中庭で読書をするのをいいかもしれない。
正直、ほんの少しでいいから現実を忘れたい。
図書館には思ったよりも多くの生徒がいた。学院を卒業した後は、試験を受けてさらに高い教育を受ける者や、やはり試験を受けて省庁で働く者、家に帰って後を継ぐものなどさまざまな道へと皆、進んでいく。
真剣な顔で机に向う生徒たちはほとんどが3年だろう。
(俺も受験のとき、友達と図書館で勉強したっけ。しゃべってばっかで出禁になったりしてたなあ)
もう遥か遠い昔のことのように思える前世の記憶。久しぶりに懐かしく思い出していると、右肩に重みを感じた。
「えっ!? なに!?」
振り返ると、血のように赤い瞳が俺を見下ろしている。何を考えているのかわからない微笑は、いつ見ても緊張感が走る。
「ルーイ、先輩……」
「何をしている。入り口でぼんやり突っ立っていたら邪魔だ」
「あ、はい、そうですね。すみません今どきま――」
急いでその場から去ろうとしたのに、前へ進めない。恐る恐る振り返ると、ルーイ先輩ががっしりと俺の右腕を掴んでいる。
「あの、先輩?」
「ちょっと付き合え」
「いや、あの、俺ちょっと――」
「付き合え、と言っている」
ルーイ先輩に逆らえる人は、この世に何人いるんだろうか。ゾッとするような微笑みの圧に、俺にはもうはいかイエスかの選択しか残されていない。
先輩は俺の腕を捕えたまま、その場から一瞬で自室へ飛んだ。
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