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3章 王立学院編ー後編―
57<過ぎていく季節>
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二人と一緒に食事をしたおかげで気持ちはだいぶ軽くなった。
ウォルターとはぎくしゃくすることもなく今までどおりの関係を保っている。だがジェラルドとの間に流れる空気は更に悪くなった。
今までは俺が彼を避けているだけだったが、ジェラルドの方も俺に構うことをやめたのだ。
意識的に会う時間を作らなければ、生徒会以外で顔を合わせる機会はめったにない。
その生徒会でも、俺たちは互いに相手を避けるようになってしまった。事情を知るエディとウォルターはともかく、ルーイ先輩とジュリアンも俺たちの異様な雰囲気を察してか触れることはない。
最初は胸が痛むことも多かったが、人間というのはどんな状況にも順応していける。そのうちこの状態が当たり前の光景になっていった。
そうして季節はあっという間に過ぎていく。気がつけば、もう3年生の卒業まであと2ヶ月という時期になっていた。
前世の日本ほどはっきりとした四季のある世界ではないが、1月はさすがに少し寒い。
菜園の野菜やハーブたち、花壇の草花もこの時期は土を休ませることにしている。
春から秋までが嘘のように、土だけの風景を眺めていると寂しくなってしまう。だが、土には肥料を与えている。今この時期に休ませて春から夏にかけて植物たちに与えてしまった養分をたっぷりと補給する。
土の中ではもう、次の季節に向けての準備が始まっているのだ。
「こういう時期があるからこそ、春に芽が出るんだよな」
独り言が口を突いて出る。なんだか土と自分を重ねてしまった。きっとあと2ヶ月後のプロムの前には、このままでは婚約破棄を言い渡されてしまうだろう。そしてジェラルドはあの女生徒と婚約を結び直すのかもしれない。
婚約破棄は、自分が望んでいたことなのに。それなのに、考えると胸が痛くなる。いつその時がやってくるのかと待つことしかできな今はつらくて苦しいが、きっとその時が過ぎればきっと俺は回復できる。
エディやウォルターのような弟たちもいるし、愛してくれる家族もいる。家庭は経済的にも恵まれているし、卒業して実家に戻れば今よりも本格的に事業に取り組むこともできる。
「いいことだらけじゃん、俺の人生」
それなのに、どうして心は鉛のように重いのだろう。小さくため息を吐くと、近くに人の影が現れた。
「どうしたのさ。ため息なんか吐いて。俺の国ではため息を吐くと幸せが逃げるって言われてる」
振り向くと、ジュリアンがピアスを揺らして立っていた。
ウォルターとはぎくしゃくすることもなく今までどおりの関係を保っている。だがジェラルドとの間に流れる空気は更に悪くなった。
今までは俺が彼を避けているだけだったが、ジェラルドの方も俺に構うことをやめたのだ。
意識的に会う時間を作らなければ、生徒会以外で顔を合わせる機会はめったにない。
その生徒会でも、俺たちは互いに相手を避けるようになってしまった。事情を知るエディとウォルターはともかく、ルーイ先輩とジュリアンも俺たちの異様な雰囲気を察してか触れることはない。
最初は胸が痛むことも多かったが、人間というのはどんな状況にも順応していける。そのうちこの状態が当たり前の光景になっていった。
そうして季節はあっという間に過ぎていく。気がつけば、もう3年生の卒業まであと2ヶ月という時期になっていた。
前世の日本ほどはっきりとした四季のある世界ではないが、1月はさすがに少し寒い。
菜園の野菜やハーブたち、花壇の草花もこの時期は土を休ませることにしている。
春から秋までが嘘のように、土だけの風景を眺めていると寂しくなってしまう。だが、土には肥料を与えている。今この時期に休ませて春から夏にかけて植物たちに与えてしまった養分をたっぷりと補給する。
土の中ではもう、次の季節に向けての準備が始まっているのだ。
「こういう時期があるからこそ、春に芽が出るんだよな」
独り言が口を突いて出る。なんだか土と自分を重ねてしまった。きっとあと2ヶ月後のプロムの前には、このままでは婚約破棄を言い渡されてしまうだろう。そしてジェラルドはあの女生徒と婚約を結び直すのかもしれない。
婚約破棄は、自分が望んでいたことなのに。それなのに、考えると胸が痛くなる。いつその時がやってくるのかと待つことしかできな今はつらくて苦しいが、きっとその時が過ぎればきっと俺は回復できる。
エディやウォルターのような弟たちもいるし、愛してくれる家族もいる。家庭は経済的にも恵まれているし、卒業して実家に戻れば今よりも本格的に事業に取り組むこともできる。
「いいことだらけじゃん、俺の人生」
それなのに、どうして心は鉛のように重いのだろう。小さくため息を吐くと、近くに人の影が現れた。
「どうしたのさ。ため息なんか吐いて。俺の国ではため息を吐くと幸せが逃げるって言われてる」
振り向くと、ジュリアンがピアスを揺らして立っていた。
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