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3章 王立学院編ー後編―
50<打ち明けた秘密>
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菜園でジェラルドと彼女を見かけた翌日からも、やっぱり彼を避けてしまう日々は続いていた。というか、前よりも酷くなってしまった。
ジェラルドも何か言いたげな目をしてはいたが、声をかけてくることはない。だが俺たち以上に周りに対して心配や気を使わせているのは確かだ。
そんなある日の放課後、見かねたエディとウォルターがものすごい剣幕で部屋に訊ねてきた。
「ど、どうしたんだよ二人とも。そんな怖い顔して」
「兄さん。ジェラルド様といい加減に仲直りしなよ」
ずい、と顔を近づけてきたエディの圧に無意識に体が動いて仰け反ってしまう。
「べ、別に喧嘩してるわけじゃ……」
「じゃあなんなんだよあの態度は。おまえアイツのこと避けまくりじゃねーか」
ウォルターも真剣な眼差しを俺に向けている。
「まさかアイツに何かされたのか……?」
ウォルターの声が一段低くなったことに気づいて慌てて否定した。
「違うから! そういうんじゃ、ないんだよ……ジェラルド様は関係なくて、俺の問題っていうか」
「兄さんの問題?」
エディが意外そうに首を傾げる。
「どうしても目が見れないんだよ。側に来られると落ち着かなくなってしまうし。だめだってわかってるんだけど、体がどうしても動いちゃうっていうか」
「理由はわかるの?」
エディの言葉に俺は小さく多分、と答えて俯く。
「俺にはジェラルド様の気持ちがわからないんだ」
「はァ!?」
俺の言葉にウォルターが大きな声を上げた。
「何言ってんだよ。どう見てもおまえにベタ惚れだろ。何を今さら」
「そんなことないんだ、本当に」
あの女子とジェラルドのことは、まだ誰にも話したことがない。口に出してしまうことで、何かが大きく変わってしまう気がして怖かった。
(でも、もう楽になりたい……)
二人に、心の中に秘めていたジェラルドとあの子のことを打ち明けることを決意した。
「ジェラルド様には俺のほかに女の子のオメガの恋人がいるんだ」
俺の言葉にエディもウォルターも目と口を見たこともないほど大きくしてフリーズしている。
先に動いたのはウォルターだった。
「は? んなわけねえだろ! アイツの婚約者はおまえだし、昔っから俺たちがどんなに婚約解消に動こうとしても絶対に阻止してきたんだぞ」
「そうだよ! 僕だってジェラルド様をずっと見てきてどれだけ兄さんのことを大事に想っているか分かってるつもりだよ。だからこそ、兄さんを任せられると思ったんだ」
「おまえたちは見てないから言えるんだって。本当に、多分、ジェラルド様はあの子のこと好きだと思う」
「そこまで言うなら、俺たちにも見せてくれよ。その女のとジェラルドがいるところ。なあエディ」
「そうだね。もちろん兄さんを疑うわけじゃないけど、自分の目で確かめたいよ」
「わかった。ただ、俺もいつあの二人が一緒にいるか知ってるわけじゃないから。もし見かけたらおまえたちに知らせるよ」
「わかった。じゃあ、今日は僕たちはもう行くね」
エディの言葉にウォルターも勢いよく立ち上がる。二人には何かヒソヒソと話しながら部屋を出て行く。
俺はなんとも言えない複雑な気持ちで弟たちの後ろ姿を見送った。
ジェラルドも何か言いたげな目をしてはいたが、声をかけてくることはない。だが俺たち以上に周りに対して心配や気を使わせているのは確かだ。
そんなある日の放課後、見かねたエディとウォルターがものすごい剣幕で部屋に訊ねてきた。
「ど、どうしたんだよ二人とも。そんな怖い顔して」
「兄さん。ジェラルド様といい加減に仲直りしなよ」
ずい、と顔を近づけてきたエディの圧に無意識に体が動いて仰け反ってしまう。
「べ、別に喧嘩してるわけじゃ……」
「じゃあなんなんだよあの態度は。おまえアイツのこと避けまくりじゃねーか」
ウォルターも真剣な眼差しを俺に向けている。
「まさかアイツに何かされたのか……?」
ウォルターの声が一段低くなったことに気づいて慌てて否定した。
「違うから! そういうんじゃ、ないんだよ……ジェラルド様は関係なくて、俺の問題っていうか」
「兄さんの問題?」
エディが意外そうに首を傾げる。
「どうしても目が見れないんだよ。側に来られると落ち着かなくなってしまうし。だめだってわかってるんだけど、体がどうしても動いちゃうっていうか」
「理由はわかるの?」
エディの言葉に俺は小さく多分、と答えて俯く。
「俺にはジェラルド様の気持ちがわからないんだ」
「はァ!?」
俺の言葉にウォルターが大きな声を上げた。
「何言ってんだよ。どう見てもおまえにベタ惚れだろ。何を今さら」
「そんなことないんだ、本当に」
あの女子とジェラルドのことは、まだ誰にも話したことがない。口に出してしまうことで、何かが大きく変わってしまう気がして怖かった。
(でも、もう楽になりたい……)
二人に、心の中に秘めていたジェラルドとあの子のことを打ち明けることを決意した。
「ジェラルド様には俺のほかに女の子のオメガの恋人がいるんだ」
俺の言葉にエディもウォルターも目と口を見たこともないほど大きくしてフリーズしている。
先に動いたのはウォルターだった。
「は? んなわけねえだろ! アイツの婚約者はおまえだし、昔っから俺たちがどんなに婚約解消に動こうとしても絶対に阻止してきたんだぞ」
「そうだよ! 僕だってジェラルド様をずっと見てきてどれだけ兄さんのことを大事に想っているか分かってるつもりだよ。だからこそ、兄さんを任せられると思ったんだ」
「おまえたちは見てないから言えるんだって。本当に、多分、ジェラルド様はあの子のこと好きだと思う」
「そこまで言うなら、俺たちにも見せてくれよ。その女のとジェラルドがいるところ。なあエディ」
「そうだね。もちろん兄さんを疑うわけじゃないけど、自分の目で確かめたいよ」
「わかった。ただ、俺もいつあの二人が一緒にいるか知ってるわけじゃないから。もし見かけたらおまえたちに知らせるよ」
「わかった。じゃあ、今日は僕たちはもう行くね」
エディの言葉にウォルターも勢いよく立ち上がる。二人には何かヒソヒソと話しながら部屋を出て行く。
俺はなんとも言えない複雑な気持ちで弟たちの後ろ姿を見送った。
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