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3章 王立学院編ー後編―
49<オリヴィアのアドバイス>※ジェラルド視点
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部屋に戻るとちょうど魔伝書鳩が現れた。送り主はさっきも話題に上ったオリヴィアからだった。相談に乗ってもらう代わりに、彼女の書籍のための簡単な取材も受けているのだが、今日はどうやらその話らしい。
「あいつとどうにかなるなんて、絶対にありえないが……一応、注意しておくか」
今までは気軽に互いの寮や校舎の近くでも待ち合せたりしていたが、今日はできるだけ人目のつかない場所を指定して魔伝書鳩に返事を持たせる。
すぐに返信がきて、すぐに部屋を出た。もちろん手にはストックしてあるアイツの餌――ではなくて貢ぎものの菓子を持つ。
待ち合わせ場所につくと、オリヴィアが腕組みをして待っていた。俺を見るなり遅い、と
噛みついてくる。
「すまない、友人の部屋にいて気がつくのが遅くなった」
「あっそ。それよりここ、菜園? こんなとこあったのね」
「ああ。静かで綺麗でいい場所だろ」
「悪くないわね」
フンと鼻を鳴らす従姉をエスコートして園内に足を踏み入れる。もしかしてユージンがいるんじゃないかと期待をしたが、残念ながら彼の姿はない。
目についたベンチに並んで腰を降ろして、まずは菓子の入った箱を渡す。オリヴィアはひったくるようにして奪い取ると、その場で開けて菓子を貪り始めた。
(すごい姿だな……オリヴィアには悪いが、女というより動物だな)
俺の視線に気づいたのか、こっちを睨みつけてくる。
「なに見てんのよ。締切が近いのに原稿が書けなくてイライラしてんだから、気を付けなさいよ」
「……わかった、すまない」
全然すまないとは思っていないが、下手に反論しても怒り始めるのは目に見えている。
「悪いと思ってんなら、質問に答えなさい」
彼女から繰り出される質問にいくつか答えると、何かが思い浮かんだようだった。食べる手を止めて魔力を使いノートに何やら自動筆記をしている。
「アンタのおかげでいいネタ思いついたわ! 気分がいいから相談にも乗ってあげようじゃないの? その後どうなの」
「避けられている気がする」
「はァ? ちゃんと教えた通りにやってるわけ? なんでそんなことになってんのよ」
かいつまんで説明すると、彼女は考え込むように空中を睨んだまま黙り込んだ。しばらくすると俺の方を見る。
「このままだとこじれにこじれそうね。よし、もう早いとこバシっともう1回、告白しちゃいなさい。今度は逃げ道のないやつ。それにはやっぱり相手の心を掴む決めゼリフがいるわね」
「こ、告白!? それに決めゼリフだと!?」
「そうよ。じゃないと“他に好きな人がいいてもいい”なんて言って待ちの姿勢でいたってロクなことにならないわよ。それに余裕を見せろとは言ったけど、アンタのセリフは最悪だわ」
「おい、どこかダメなんだ! それに告白の決めゼリフって何を言えばいいんだよ」
途方に暮れる俺を前に、オリヴィアは再び菓子を食べることに集中し始め、反応がない。
「おい、聞いてるのか? まったくおまえは……おい、口の周りがカスだらけだぞ。女のくせにみっともない」
同じ親族にこんな獣のような女がいるなんて、嘆かわしい。
「うるさいわね。女のくせになんて今の時代に何くだらないこと言ってんのよ」
差し出したハンカチを俺の手から奪うと、雑に口の周りを拭ってこちらに戻してくる。粗野で粗暴なところは昔から驚くほど変わらない。
「おまえな……」
「なによ」
「いや、いい。それより……次はいつ聞いてくれるんだ。それまでにしっかり決めゼリフを考える」
「うーん。私も暇じゃないのよ。また連絡するわよ」
「本当に忙しいのか? 菓子ばかり食べている気がするんだが」
「うるさいわね。アンタと四六時中一緒にいる訳じゃないんだから。見てないところで多忙なのよ。時間を割いてもらってるだけでもありがたいと思いなさいよ」
(なんでコイツはこんなに偉そうなんだ。クソ、俺だっておまえのために菓子を買い込んだり気を使ってるんだぞ)
心に込み上げる怒りをマイルドな言葉に変えて訴える。
「……おい。俺だって女にここまで尽くしたことがないんだぞ。もっと時間を割いてもらってもいいと思うんだが」
「しつこい男って嫌われるわよ……じゃ私もう行くわね。締切が迫ってんのよ」
もう行きましょうと言わんばかりの態度に、俺も立ち上がる。何が最悪なのかはわからないが、悔しいがコイツのアドバイスを聞いて途中までは確かに上手くいっていた。
早急に告白についても決めゼリフに関してもしっかり考えないといけない。菜園の入り口で別れると、俺は瞬間移動で部屋に戻った。
「あいつとどうにかなるなんて、絶対にありえないが……一応、注意しておくか」
今までは気軽に互いの寮や校舎の近くでも待ち合せたりしていたが、今日はできるだけ人目のつかない場所を指定して魔伝書鳩に返事を持たせる。
すぐに返信がきて、すぐに部屋を出た。もちろん手にはストックしてあるアイツの餌――ではなくて貢ぎものの菓子を持つ。
待ち合わせ場所につくと、オリヴィアが腕組みをして待っていた。俺を見るなり遅い、と
噛みついてくる。
「すまない、友人の部屋にいて気がつくのが遅くなった」
「あっそ。それよりここ、菜園? こんなとこあったのね」
「ああ。静かで綺麗でいい場所だろ」
「悪くないわね」
フンと鼻を鳴らす従姉をエスコートして園内に足を踏み入れる。もしかしてユージンがいるんじゃないかと期待をしたが、残念ながら彼の姿はない。
目についたベンチに並んで腰を降ろして、まずは菓子の入った箱を渡す。オリヴィアはひったくるようにして奪い取ると、その場で開けて菓子を貪り始めた。
(すごい姿だな……オリヴィアには悪いが、女というより動物だな)
俺の視線に気づいたのか、こっちを睨みつけてくる。
「なに見てんのよ。締切が近いのに原稿が書けなくてイライラしてんだから、気を付けなさいよ」
「……わかった、すまない」
全然すまないとは思っていないが、下手に反論しても怒り始めるのは目に見えている。
「悪いと思ってんなら、質問に答えなさい」
彼女から繰り出される質問にいくつか答えると、何かが思い浮かんだようだった。食べる手を止めて魔力を使いノートに何やら自動筆記をしている。
「アンタのおかげでいいネタ思いついたわ! 気分がいいから相談にも乗ってあげようじゃないの? その後どうなの」
「避けられている気がする」
「はァ? ちゃんと教えた通りにやってるわけ? なんでそんなことになってんのよ」
かいつまんで説明すると、彼女は考え込むように空中を睨んだまま黙り込んだ。しばらくすると俺の方を見る。
「このままだとこじれにこじれそうね。よし、もう早いとこバシっともう1回、告白しちゃいなさい。今度は逃げ道のないやつ。それにはやっぱり相手の心を掴む決めゼリフがいるわね」
「こ、告白!? それに決めゼリフだと!?」
「そうよ。じゃないと“他に好きな人がいいてもいい”なんて言って待ちの姿勢でいたってロクなことにならないわよ。それに余裕を見せろとは言ったけど、アンタのセリフは最悪だわ」
「おい、どこかダメなんだ! それに告白の決めゼリフって何を言えばいいんだよ」
途方に暮れる俺を前に、オリヴィアは再び菓子を食べることに集中し始め、反応がない。
「おい、聞いてるのか? まったくおまえは……おい、口の周りがカスだらけだぞ。女のくせにみっともない」
同じ親族にこんな獣のような女がいるなんて、嘆かわしい。
「うるさいわね。女のくせになんて今の時代に何くだらないこと言ってんのよ」
差し出したハンカチを俺の手から奪うと、雑に口の周りを拭ってこちらに戻してくる。粗野で粗暴なところは昔から驚くほど変わらない。
「おまえな……」
「なによ」
「いや、いい。それより……次はいつ聞いてくれるんだ。それまでにしっかり決めゼリフを考える」
「うーん。私も暇じゃないのよ。また連絡するわよ」
「本当に忙しいのか? 菓子ばかり食べている気がするんだが」
「うるさいわね。アンタと四六時中一緒にいる訳じゃないんだから。見てないところで多忙なのよ。時間を割いてもらってるだけでもありがたいと思いなさいよ」
(なんでコイツはこんなに偉そうなんだ。クソ、俺だっておまえのために菓子を買い込んだり気を使ってるんだぞ)
心に込み上げる怒りをマイルドな言葉に変えて訴える。
「……おい。俺だって女にここまで尽くしたことがないんだぞ。もっと時間を割いてもらってもいいと思うんだが」
「しつこい男って嫌われるわよ……じゃ私もう行くわね。締切が迫ってんのよ」
もう行きましょうと言わんばかりの態度に、俺も立ち上がる。何が最悪なのかはわからないが、悔しいがコイツのアドバイスを聞いて途中までは確かに上手くいっていた。
早急に告白についても決めゼリフに関してもしっかり考えないといけない。菜園の入り口で別れると、俺は瞬間移動で部屋に戻った。
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