96 / 152
3章 王立学院編ー後編―
34<狂気の企み>
しおりを挟む
焦りや動揺を気取られてはクレメントの思うツボだ。俺はできるだけ感情が顔にでないよう、無表情を取り繕う。
「お前さ、今から自分が何されるのか全然わかってないだろ?」
「……ああ」
ヒステリックな興奮状態の人間を刺激するのは良くない。俺は相手の動向を観察しながら慎重に答えた。
クレメントは薄笑いを浮かべながら一歩、後ろに下がる。入れ替わりに3人の男が前出てくる。制服を着ているところから見ても、学院の生徒であることは間違いない。
(賊は絡んでなさそうだな。コイツの単独犯か……)
3人とも明らかに強い力のあるアルファだとわかる容姿をしている。クレメントはこれでも公爵家の子息だし、こいつらもそれ相応の貴族なんだろう。
「ここでやるのもなんだから、ベッドに運ぶぞ」
一人が俺の身体を持ち上げて姫抱きにしてベッドへと運ぶ。
「……すごい埃だな」
もう一人の男がベッドを見て顔を顰め、呪文を唱えると埃だらけのベッドはあっという間に清潔な新品へと変わった。俺の身体は静かにベッドに横たえられた。
(いったい何が始まるんだ……今度こそ集団リンチか?)
緊張で身体に力が入る。男たちを掻き分けてクレメントが不気味な笑顔で近づいてくる。
何をする気だと身を硬くしていると、クレメントはニヤニヤしながら俺の上に馬乗りになった。
そうして俺の上着と中に着ているシャツのボタンをあっという間に外していく。
露わになった俺の上半身を無表情に眺めながら、クレメントは右手をポケットに突っ込んだ。
この状態でナイフを突き刺されでもしたら、確実に死ぬ。
(転生したのに早死にすぎるだろ……)
だがクレメントのポケットから出てきたのはナイフではなく薄紅色の透明なボトルだった。
クレメンスは俺の顔にそのボトルを近づけると、左右に軽く振ってみせる。
中には粘性のある液体が入っているように見えた。
「ねえユージンくん。これ、なんだと思う?」
クレメントは楽しそうに俺に問いかけた。興奮しているのか、瞳孔が完全に開ききっている。
俺が答えるのを待たずに、彼は瓶をさかさまにひっくり返してボトルの栓を抜いた。中のどろどろとした液体が俺の顔や上半身に中の液体が振りかかってくる。
「おい! 何すんだよ!」
思わず上半身を起こして叫ぶと、アルファの男たちに肩のあたりを強く押され、再びシーツの波に沈んでしまう。
クレメンスはもう1本、ポケットから今度は水色のボトルを取り出して同じように俺に振りかけた。
「やめろ! なんのつもりだよ!」
だがクレメントは何も言わずにベッドから降りた。そうして何も言わずに俺のことをじろじろ無遠慮に眺めてる。今すぐ殴りたいニヤけ面に腹の中から怒りが湧いてきた。
だが次第に上半身が異常な熱を持ち始める。同時にゾクゾクとした寒気も感じる。まるで風邪で高熱が出る前のように気分が悪い。
「くっ、そ……」
身体に力も入らず、頭もぼうっとしてくる。
(この状態、あのマンドレイクの時に似てねえか…!?)
まさか。身体は熱いが心臓に冷水をかけられたようにぞっとする。もしかしてクレメントが俺に振りかけたのは、媚薬の類なのではないだろうか。
「お、い……っ! おまえっ……な、に……」
だが事態は俺の想像を超えた、もっと恐ろしいものだった。
「もしかして媚薬か何かだと思ってる? ざーんねん! もっとヤバいやつ!僕らみたいな未発達のオメガにも効いちゃう、強制ヒート誘発剤でしたぁ!」
クレメントは狂ったように笑っている。その目には絶望の色を浮かべた俺の顔がはっきりと映っていた。
「お前さ、今から自分が何されるのか全然わかってないだろ?」
「……ああ」
ヒステリックな興奮状態の人間を刺激するのは良くない。俺は相手の動向を観察しながら慎重に答えた。
クレメントは薄笑いを浮かべながら一歩、後ろに下がる。入れ替わりに3人の男が前出てくる。制服を着ているところから見ても、学院の生徒であることは間違いない。
(賊は絡んでなさそうだな。コイツの単独犯か……)
3人とも明らかに強い力のあるアルファだとわかる容姿をしている。クレメントはこれでも公爵家の子息だし、こいつらもそれ相応の貴族なんだろう。
「ここでやるのもなんだから、ベッドに運ぶぞ」
一人が俺の身体を持ち上げて姫抱きにしてベッドへと運ぶ。
「……すごい埃だな」
もう一人の男がベッドを見て顔を顰め、呪文を唱えると埃だらけのベッドはあっという間に清潔な新品へと変わった。俺の身体は静かにベッドに横たえられた。
(いったい何が始まるんだ……今度こそ集団リンチか?)
緊張で身体に力が入る。男たちを掻き分けてクレメントが不気味な笑顔で近づいてくる。
何をする気だと身を硬くしていると、クレメントはニヤニヤしながら俺の上に馬乗りになった。
そうして俺の上着と中に着ているシャツのボタンをあっという間に外していく。
露わになった俺の上半身を無表情に眺めながら、クレメントは右手をポケットに突っ込んだ。
この状態でナイフを突き刺されでもしたら、確実に死ぬ。
(転生したのに早死にすぎるだろ……)
だがクレメントのポケットから出てきたのはナイフではなく薄紅色の透明なボトルだった。
クレメンスは俺の顔にそのボトルを近づけると、左右に軽く振ってみせる。
中には粘性のある液体が入っているように見えた。
「ねえユージンくん。これ、なんだと思う?」
クレメントは楽しそうに俺に問いかけた。興奮しているのか、瞳孔が完全に開ききっている。
俺が答えるのを待たずに、彼は瓶をさかさまにひっくり返してボトルの栓を抜いた。中のどろどろとした液体が俺の顔や上半身に中の液体が振りかかってくる。
「おい! 何すんだよ!」
思わず上半身を起こして叫ぶと、アルファの男たちに肩のあたりを強く押され、再びシーツの波に沈んでしまう。
クレメンスはもう1本、ポケットから今度は水色のボトルを取り出して同じように俺に振りかけた。
「やめろ! なんのつもりだよ!」
だがクレメントは何も言わずにベッドから降りた。そうして何も言わずに俺のことをじろじろ無遠慮に眺めてる。今すぐ殴りたいニヤけ面に腹の中から怒りが湧いてきた。
だが次第に上半身が異常な熱を持ち始める。同時にゾクゾクとした寒気も感じる。まるで風邪で高熱が出る前のように気分が悪い。
「くっ、そ……」
身体に力も入らず、頭もぼうっとしてくる。
(この状態、あのマンドレイクの時に似てねえか…!?)
まさか。身体は熱いが心臓に冷水をかけられたようにぞっとする。もしかしてクレメントが俺に振りかけたのは、媚薬の類なのではないだろうか。
「お、い……っ! おまえっ……な、に……」
だが事態は俺の想像を超えた、もっと恐ろしいものだった。
「もしかして媚薬か何かだと思ってる? ざーんねん! もっとヤバいやつ!僕らみたいな未発達のオメガにも効いちゃう、強制ヒート誘発剤でしたぁ!」
クレメントは狂ったように笑っている。その目には絶望の色を浮かべた俺の顔がはっきりと映っていた。
376
お気に入りに追加
5,074
あなたにおすすめの小説
【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜
N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間)
ハーレム要素あります。
苦手な方はご注意ください。
※タイトルの ◎ は視点が変わります
※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます
※ご都合主義です、あしからず
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
ひとりぼっち獣人が最強貴族に拾われる話
かし子
BL
貴族が絶対的な力を持つ世界で、平民以下の「獣人」として生きていた子。友達は路地裏で拾った虎のぬいぐるみだけ。人に見つかればすぐに殺されてしまうから日々隠れながら生きる獣人はある夜、貴族に拾われる。
「やっと見つけた。」
サクッと読める王道物語です。
(今のところBL未満)
よければぜひ!
【12/9まで毎日更新】→12/10まで延長
【完結】虐げられオメガ聖女なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる