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3章 王立学院編ー後編―
31<嫌味なモブ、登場>
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ジェラルドと話すことができないまま、それからまた数週間が経過した。
この時俺は自分の気持ちと向き合うことで精一杯で、生徒会だけでなく周囲の生徒たちまでもが、ジェラルドと俺の関係性の変化に気づいているなんて思いもよらなかった。
そして俺たちの存在が、学校中の注目と関心の的になっていることにも。
放課後、生徒会のミーティングへ向かうために支度をしている俺にクラスメイトが声をかけてきた。
同学年で生徒会に入っているのは俺だけなことや、王子の婚約者という立場からか、クラスメイトからは少し距離を置かれている気はしている。
中身はアラサーなので、子どもの集団でぼっちになろうがまったく気にならないのだが。
「ねえユージンくん。ちょっといいかな?」
「え? 俺?」
声をかけてきたのはジェニングス家とほぼすべてが同じレベルの公爵家の息子だ。空色の髪に紫の目という派手な見た目通りの男で、いつも数人の取り巻きを引き連れて歩いている。
今日も彼の後ろには数人のクラスメイトが家来のように付き従っていた。
「そう。ちょっとだけ時間もらえる?」
「この後、生徒会あるから少しなら」
「ありがとう。じゃあちょっと移動しようか」
ついて来いとでも言うかのように歩き出す彼らの後を追い、人気のない中庭までやってくる。
「ここでいいか」
公爵令息くんは立ち止まると独り言のように呟いた。それから俺に視線をやると、貴族らしい軽薄な微笑を浮かべる。
(なんだコイツ。まさか集団リンチでも始める気か?)
1対5では分が悪い。もし本当にボコる気なら瞬間移動して即、逃げようと心に決めた。
だが彼も取り巻きたちも殴りかかってくる気配はない。いったい何をする気なのだろうと警戒していると、彼が口を開いた。
「ユージンくんはジェラルド様の婚約者だよね? 前はいつも一緒にいたし仲も良さそうだったけど最近はあまり一緒にいないよね。何かあったの?」
「……だとしてもきみに話す必要があるかな」
まさかそんなところまで注目されているとは思わなかった。俺はなんとか笑顔を作って言い返す。
彼は急に心配そうな表情を作って、違うというように片手を振ってみせた。
「ごめんね。興味本位で探っているわけじゃないんだ。僕たちはクラスメイトで友人だろ? だからきみには言っておかないといけないと思っていてさ」
彼はそこで言葉をきると、勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「最近よくジェラルド様がオリヴィア・アバディーンと二人でいるところを見かけるんだけど、ユージンくんは知ってるのかな」
「え? ああ、知ってるけど」
思ってもみない発言に間抜けな声が出でしまう。
「そうなんだ。じゃあユージンくん公認なんだあ。それならいいけど。すごいね。僕なら他のオメガがあんなに婚約者と仲良くしてたら不安でたまらないけど」
煽るような言い方と俺の反応を探るような目つき。良くも悪くも貴族らしくてあきれてしまう。
「心配してくれてありがとうな。きみの優しさに感謝するよ。ところで名前……なんだっけ」
「はァ!?」
彼は真っ赤な顔で肩を震わせている。取り巻きたちは何も言わずにおろおろしているだけだ。王子の婚約者な上に自分たちよりも高位の貴族である俺に、悪態をつくわけにもいかないのだろう。
「クレメント・アトリー。アトリー公爵家の三男で、きみと最後までジェラルド様の婚約者の座を競ったオメガだ!!」
「そうだったんだ。ごめん、知らなくて」
「な……っ!!」
クレメントは今にも倒れそうなほど目を剥いている。とはいえ本当に名前がわからなかったのだ。決して彼の煽りに対抗したわけではない。
「調子に乗っていられるのも今のうちだからな……覚えとけよ」
クレメントは鬼のような形相で俺を睨みつけると、典型的な悪役のセリフを吐き捨て去って行った。
この時俺は自分の気持ちと向き合うことで精一杯で、生徒会だけでなく周囲の生徒たちまでもが、ジェラルドと俺の関係性の変化に気づいているなんて思いもよらなかった。
そして俺たちの存在が、学校中の注目と関心の的になっていることにも。
放課後、生徒会のミーティングへ向かうために支度をしている俺にクラスメイトが声をかけてきた。
同学年で生徒会に入っているのは俺だけなことや、王子の婚約者という立場からか、クラスメイトからは少し距離を置かれている気はしている。
中身はアラサーなので、子どもの集団でぼっちになろうがまったく気にならないのだが。
「ねえユージンくん。ちょっといいかな?」
「え? 俺?」
声をかけてきたのはジェニングス家とほぼすべてが同じレベルの公爵家の息子だ。空色の髪に紫の目という派手な見た目通りの男で、いつも数人の取り巻きを引き連れて歩いている。
今日も彼の後ろには数人のクラスメイトが家来のように付き従っていた。
「そう。ちょっとだけ時間もらえる?」
「この後、生徒会あるから少しなら」
「ありがとう。じゃあちょっと移動しようか」
ついて来いとでも言うかのように歩き出す彼らの後を追い、人気のない中庭までやってくる。
「ここでいいか」
公爵令息くんは立ち止まると独り言のように呟いた。それから俺に視線をやると、貴族らしい軽薄な微笑を浮かべる。
(なんだコイツ。まさか集団リンチでも始める気か?)
1対5では分が悪い。もし本当にボコる気なら瞬間移動して即、逃げようと心に決めた。
だが彼も取り巻きたちも殴りかかってくる気配はない。いったい何をする気なのだろうと警戒していると、彼が口を開いた。
「ユージンくんはジェラルド様の婚約者だよね? 前はいつも一緒にいたし仲も良さそうだったけど最近はあまり一緒にいないよね。何かあったの?」
「……だとしてもきみに話す必要があるかな」
まさかそんなところまで注目されているとは思わなかった。俺はなんとか笑顔を作って言い返す。
彼は急に心配そうな表情を作って、違うというように片手を振ってみせた。
「ごめんね。興味本位で探っているわけじゃないんだ。僕たちはクラスメイトで友人だろ? だからきみには言っておかないといけないと思っていてさ」
彼はそこで言葉をきると、勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「最近よくジェラルド様がオリヴィア・アバディーンと二人でいるところを見かけるんだけど、ユージンくんは知ってるのかな」
「え? ああ、知ってるけど」
思ってもみない発言に間抜けな声が出でしまう。
「そうなんだ。じゃあユージンくん公認なんだあ。それならいいけど。すごいね。僕なら他のオメガがあんなに婚約者と仲良くしてたら不安でたまらないけど」
煽るような言い方と俺の反応を探るような目つき。良くも悪くも貴族らしくてあきれてしまう。
「心配してくれてありがとうな。きみの優しさに感謝するよ。ところで名前……なんだっけ」
「はァ!?」
彼は真っ赤な顔で肩を震わせている。取り巻きたちは何も言わずにおろおろしているだけだ。王子の婚約者な上に自分たちよりも高位の貴族である俺に、悪態をつくわけにもいかないのだろう。
「クレメント・アトリー。アトリー公爵家の三男で、きみと最後までジェラルド様の婚約者の座を競ったオメガだ!!」
「そうだったんだ。ごめん、知らなくて」
「な……っ!!」
クレメントは今にも倒れそうなほど目を剥いている。とはいえ本当に名前がわからなかったのだ。決して彼の煽りに対抗したわけではない。
「調子に乗っていられるのも今のうちだからな……覚えとけよ」
クレメントは鬼のような形相で俺を睨みつけると、典型的な悪役のセリフを吐き捨て去って行った。
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