78 / 152
3章 王立学院編ー後編―
16<大失態>※ジェラルド視点
しおりを挟む
部屋に入った途端、俺はその場にしゃがみ込んだ。
「ああもう~!! 俺のバカ!! 何してんだ!! これじゃ計画が台無しだ!」
テーブルに駆け寄り、出しっぱなしの『サバイバル・ラブ』を手に取る。最初こそバカにしていたのだが、今やこの本は俺の道しるべになっている。
もはや暗記する勢いで読んでいるページを開く。
「くそっ! 引いて引いて引きまくり作戦の途中だったのに……! どうしたらいいんだ」
『サバイバル・ラブ』による”引いて引いて引きまくり作戦”とはその名の通り、積極的に行動して気持ちを伝えてから片想い相手と出来る限り距離を置いて接触を避ける作戦のことである。
休暇中は物理的な距離も手伝ってなんとか我慢できていたのだが、寮に戻ってきた瞬間からもうダメだった。ユージンが手の届く距離にいるだけでソワソワして落ち着かなくなってしまった。
ユージンの部屋をたずねるウォルターの気配を察知して、たまらず密かに監視に行った挙げ句、あんなバカな騒ぎを起こしユージンに屈辱的な誤解をされてしまったのだ。
(まあ、誤解は解けたからよかったが……その後がいけなかった)
頭を抱えていても何の解決にもならない。
引いて引いて引きまくり作戦のせいで、ほとんど会えていなかったことも手伝って、久しぶりに間近でしっかりと見たユージンの破壊力にやられてしまった。
(可愛すぎるのも立派な凶器だな)
そのせいで、我慢できなくなってしまったのだ。まだ唇にはユージンの感触が残っている。もっとずっと一緒にいたかった。離れたくなかった。
「やっぱり好きだ……って今はそれどころじゃない!」
魔伝書鳩を呼び出すとオリヴィアに向けて伝言を送ると、恐ろしいほどの速さで返事が来た。あの女、締切がどうだといつも騒いでいる割に返信は異常に早い。
「本当は暇なんじゃないのか」
毒づきながら寮の外へ出ると、すでにオリヴィアは腕組みして待っていた。
「遅いっ! レディを待たせるなんて王子の風上にもおけないわね」
「すまない。だがちょうど待ち合わせぴったりの時間じゃないか……」
遠慮がちに言い返すとオリヴィアが嫌味っぽく息を吐いた。
「バカねアンタ。顔はいいけど昔っから本当にバカ。何もわかってない。男はね、待ち合わせの時間ぴったり来ちゃだめなのよ。好きな子を待たせるなんてとんでもない。遅くとも10分前着。わかった?」
「わ、わかった。こ、これからは気をつける」
なぜおまえ相手にそこまで頑張る必要があるんだと言ってやりたいが、今はこいつしか頼れる人間がいない。
引き攣りそうになる頬を叱咤してなんとか笑顔を作る。オリヴィアは俺の顔をじろじろと無遠慮に眺めたかと思うと、フンと鼻を鳴らして歩き出す。
「おい待て。どこに行くんだ」
「部室に決まってるじゃない。聞かれたらアンタが困るでしょ」
俺は速足で歩くオリヴィアの後を慌て追いかけ隣に並んだ。
「ああもう~!! 俺のバカ!! 何してんだ!! これじゃ計画が台無しだ!」
テーブルに駆け寄り、出しっぱなしの『サバイバル・ラブ』を手に取る。最初こそバカにしていたのだが、今やこの本は俺の道しるべになっている。
もはや暗記する勢いで読んでいるページを開く。
「くそっ! 引いて引いて引きまくり作戦の途中だったのに……! どうしたらいいんだ」
『サバイバル・ラブ』による”引いて引いて引きまくり作戦”とはその名の通り、積極的に行動して気持ちを伝えてから片想い相手と出来る限り距離を置いて接触を避ける作戦のことである。
休暇中は物理的な距離も手伝ってなんとか我慢できていたのだが、寮に戻ってきた瞬間からもうダメだった。ユージンが手の届く距離にいるだけでソワソワして落ち着かなくなってしまった。
ユージンの部屋をたずねるウォルターの気配を察知して、たまらず密かに監視に行った挙げ句、あんなバカな騒ぎを起こしユージンに屈辱的な誤解をされてしまったのだ。
(まあ、誤解は解けたからよかったが……その後がいけなかった)
頭を抱えていても何の解決にもならない。
引いて引いて引きまくり作戦のせいで、ほとんど会えていなかったことも手伝って、久しぶりに間近でしっかりと見たユージンの破壊力にやられてしまった。
(可愛すぎるのも立派な凶器だな)
そのせいで、我慢できなくなってしまったのだ。まだ唇にはユージンの感触が残っている。もっとずっと一緒にいたかった。離れたくなかった。
「やっぱり好きだ……って今はそれどころじゃない!」
魔伝書鳩を呼び出すとオリヴィアに向けて伝言を送ると、恐ろしいほどの速さで返事が来た。あの女、締切がどうだといつも騒いでいる割に返信は異常に早い。
「本当は暇なんじゃないのか」
毒づきながら寮の外へ出ると、すでにオリヴィアは腕組みして待っていた。
「遅いっ! レディを待たせるなんて王子の風上にもおけないわね」
「すまない。だがちょうど待ち合わせぴったりの時間じゃないか……」
遠慮がちに言い返すとオリヴィアが嫌味っぽく息を吐いた。
「バカねアンタ。顔はいいけど昔っから本当にバカ。何もわかってない。男はね、待ち合わせの時間ぴったり来ちゃだめなのよ。好きな子を待たせるなんてとんでもない。遅くとも10分前着。わかった?」
「わ、わかった。こ、これからは気をつける」
なぜおまえ相手にそこまで頑張る必要があるんだと言ってやりたいが、今はこいつしか頼れる人間がいない。
引き攣りそうになる頬を叱咤してなんとか笑顔を作る。オリヴィアは俺の顔をじろじろと無遠慮に眺めたかと思うと、フンと鼻を鳴らして歩き出す。
「おい待て。どこに行くんだ」
「部室に決まってるじゃない。聞かれたらアンタが困るでしょ」
俺は速足で歩くオリヴィアの後を慌て追いかけ隣に並んだ。
350
お気に入りに追加
5,074
あなたにおすすめの小説
【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜
N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間)
ハーレム要素あります。
苦手な方はご注意ください。
※タイトルの ◎ は視点が変わります
※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます
※ご都合主義です、あしからず
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
ひとりぼっち獣人が最強貴族に拾われる話
かし子
BL
貴族が絶対的な力を持つ世界で、平民以下の「獣人」として生きていた子。友達は路地裏で拾った虎のぬいぐるみだけ。人に見つかればすぐに殺されてしまうから日々隠れながら生きる獣人はある夜、貴族に拾われる。
「やっと見つけた。」
サクッと読める王道物語です。
(今のところBL未満)
よければぜひ!
【12/9まで毎日更新】→12/10まで延長
【完結】虐げられオメガ聖女なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる