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2章 王立学院編ー前編―
20<ユージン、絶体絶命!?>
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「もう逃げられないぞ」
眩しいほどの笑顔が逆に怖い。
俺は今、絶賛詰められ中である。背中は壁にぴったりとくっつき顔の両側にはジェラルドが手をついている。
いわゆる壁ドンというやつ。まさか自分が体験することになるとは思わなかった。
あの日以来、ジェラルドの顔を見ると恥ずかしくなってしまうようになり、ここ数日は顔を合わせないように逃げ回っていたのだ。
だがしつこく追ってくるジェラルドに、とうとう捕まってしまった。しかもここは俺の部屋の中だから、逃げようがない。
「な、なんのことでしょう?」
笑顔が引き攣らないよう努力して、しらを切ってみる。だがジェラルドはぐっと顔を寄せると耳元で囁いた。
「とぼけるな。俺のことを避けていただろう。どういうつもりだ」
「あ、いや、そんな」
俺の胸中を見抜くような鋭い視線に耐えられず俯いてしまう。たがすぐに顎を掬い上げられ、顔を上向かせられてぎゅっと目を閉じた。
「目を開けろ」
低い声で命令される。しまった、怒らせてしまったのかと慌てて目を開けると鼻先が触れそうなほど近くに美貌が迫っていた。
詰問するようなアイスブルーの双眸に、言葉を失う。
「どうして、避けていたんだ」
どうしよう。なんて答えるのが正解なんだ。正ヒロインがアルファになってしまったことで、もう俺はこの人生の答えがわからなくなってしまっている。
とにかく平和に生きていくためには、この目の前の男を怒らせるようなことはあってはならないのだ。だがきっとジェラルドはこの前のアレを夢だと思っているだろう。
アレが現実だったなんて知ったら、逆ギレされたり俺が誘ったとかなんとか濡れ衣を着せられて殺されたり島流しにされてしまう可能性だってある。
今ここでジェラルドが納得するような言葉は何だろうか。
「実は俺、ジェラルド様にサプライズ、を準備しておりまして……」
苦し紛れに言葉を吐き出す。もともと彼の夕食のために試作していたものでもあるから完全なハッタリというわけではないはずだ。
「さぷらいず」
ジェラルドは目も口も丸くして、ぽかんとしている。その表情がなんとも間抜けで、俺は笑いそうになるのを必死で堪えてはい、と返事をした。
途端に、顔が離れ、壁についていた両手も身体の横にだらりと垂れ下がる。祖の隙に壁際から部屋の真ん中へ逃げるように移動するとジェラルドもフラフラと後からついてくる。
「ちょっと待っててくださいね」
ジェラルドは無言で頷くと、俺の指示に大人しく従いソファに座った。急いでキッチンに駆け込み、仕込んであったブツを取り出す。
キッチンには木製の冷蔵庫のようなものが置いてある。魔力で常に2~5℃に設定しているので前世の冷蔵庫と同じものとして使えるのだ。
冷蔵庫から取り出したものをそっと型から外し、真っ白な皿に載せる。予想以上に綺麗に仕上がっていて、状況も忘れて口元が緩んでしまう。
カットしてから出そうかと思ったが、丸いままを誰かに見てほしくてあえてそのまま出してみることにした。
「お待たせしました、ジェラルド様」
ローテーブルに乗ったものを見て、ジェラルドは再び目を見開いた。
眩しいほどの笑顔が逆に怖い。
俺は今、絶賛詰められ中である。背中は壁にぴったりとくっつき顔の両側にはジェラルドが手をついている。
いわゆる壁ドンというやつ。まさか自分が体験することになるとは思わなかった。
あの日以来、ジェラルドの顔を見ると恥ずかしくなってしまうようになり、ここ数日は顔を合わせないように逃げ回っていたのだ。
だがしつこく追ってくるジェラルドに、とうとう捕まってしまった。しかもここは俺の部屋の中だから、逃げようがない。
「な、なんのことでしょう?」
笑顔が引き攣らないよう努力して、しらを切ってみる。だがジェラルドはぐっと顔を寄せると耳元で囁いた。
「とぼけるな。俺のことを避けていただろう。どういうつもりだ」
「あ、いや、そんな」
俺の胸中を見抜くような鋭い視線に耐えられず俯いてしまう。たがすぐに顎を掬い上げられ、顔を上向かせられてぎゅっと目を閉じた。
「目を開けろ」
低い声で命令される。しまった、怒らせてしまったのかと慌てて目を開けると鼻先が触れそうなほど近くに美貌が迫っていた。
詰問するようなアイスブルーの双眸に、言葉を失う。
「どうして、避けていたんだ」
どうしよう。なんて答えるのが正解なんだ。正ヒロインがアルファになってしまったことで、もう俺はこの人生の答えがわからなくなってしまっている。
とにかく平和に生きていくためには、この目の前の男を怒らせるようなことはあってはならないのだ。だがきっとジェラルドはこの前のアレを夢だと思っているだろう。
アレが現実だったなんて知ったら、逆ギレされたり俺が誘ったとかなんとか濡れ衣を着せられて殺されたり島流しにされてしまう可能性だってある。
今ここでジェラルドが納得するような言葉は何だろうか。
「実は俺、ジェラルド様にサプライズ、を準備しておりまして……」
苦し紛れに言葉を吐き出す。もともと彼の夕食のために試作していたものでもあるから完全なハッタリというわけではないはずだ。
「さぷらいず」
ジェラルドは目も口も丸くして、ぽかんとしている。その表情がなんとも間抜けで、俺は笑いそうになるのを必死で堪えてはい、と返事をした。
途端に、顔が離れ、壁についていた両手も身体の横にだらりと垂れ下がる。祖の隙に壁際から部屋の真ん中へ逃げるように移動するとジェラルドもフラフラと後からついてくる。
「ちょっと待っててくださいね」
ジェラルドは無言で頷くと、俺の指示に大人しく従いソファに座った。急いでキッチンに駆け込み、仕込んであったブツを取り出す。
キッチンには木製の冷蔵庫のようなものが置いてある。魔力で常に2~5℃に設定しているので前世の冷蔵庫と同じものとして使えるのだ。
冷蔵庫から取り出したものをそっと型から外し、真っ白な皿に載せる。予想以上に綺麗に仕上がっていて、状況も忘れて口元が緩んでしまう。
カットしてから出そうかと思ったが、丸いままを誰かに見てほしくてあえてそのまま出してみることにした。
「お待たせしました、ジェラルド様」
ローテーブルに乗ったものを見て、ジェラルドは再び目を見開いた。
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