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第七章 真実の愛

<22>ヒートの始まり

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「ヒート? なんで……?」
言いながら頭がぼうっとしてくる。今はとにかくレヴィの匂いを肺いっぱいに吸い込みたくてたまらない。
「エリス様が真実の愛に出会われた……ということなのだと思います」
「しんじつの、あい?」
(そっか。狼神がそんなこと言ってた気がするな)
初めて好きという感情を抱いた人がレヴィで、それが真実の愛の相手だなんて。
こんなに幸せなことはない。
ぼんやりする頭でそんなことを思っていると、レヴィの息がよりいっそう荒くなった。
「エリス、様……ッ! 匂いが、急にすごく強くなりました……ああ、だめです。もう我慢できそうにない……」
苦しそうに言葉を吐きながら、どんどん顔が近づいてくる。
鼻先がくっつきそうな距離まで近づいたとき、レヴィが掠れた声で呟いた。
「エリス様、あなたにキスをしてもいいでしょうか」
俺は無言でレヴィの首に腕を回して引き寄せた。
触れるだけのキスなのに信じられないほど気持ちいい。
「エリス様、エリス様……」
キスの合間にレヴィが熱のこもった声で何度も俺の名前を呼ぶ。耳元で囁かれると背筋がゾクゾクするほどの快感が全身に走った。
顔中にキスの雨が降り、その気持ちよさにうっとりしているとそっと顔が離された。
「やだ……離れるな」
離れたのが寂しくて、目じりに涙が滲む。こんなこと、いつのも俺なら絶対にありえないのに。
「エ、エリス様!?」
レヴィは真っ赤な顔であたふたしている。
「お願いだ、もっとキスしてほし……んっ」
言い終わらないうちにレヴィの舌が口の中に差しこまれた。
「ん、ん……んぅ」
熱い舌が少し強引に口内を舐め回す。そうかと思うと、強弱をつけて舌をしゃぶったり擦りあわせるようにしたり、甘噛みする。
反射的に胸を押そうと動いた両腕は、顔の横に磔にされてしまった。
口の端から零れる唾液を唇こと舐め取られると、全身が震えだす。
何もかも奪うような濃厚で激しいキスの連続に、頭の中がぼうっと霞んでいく。
やっと解放されると、レヴィが熱で浮かされたような瞳で俺を見下ろしていた。
「もう少し、触れてもよいでしょうか」
こんなときまで礼儀正しいのかと呆れる気持ちと、そんな生真面目なところを愛おしいという気持ちが混ざって笑ってしまう。
「うん、俺ももっと触れてほしい」
レヴィはごくりと喉を上下させ、ナイトガウンを結ぶ紐に手をかけた。
「あ」
しゅるりと小さな音を立てて紐が解かれると、上半身が露わになる。
レヴィは緊張した面持ちで、俺の胸元に手を伸ばした。
「はあ……っ」
ヒートのせいだろうか。軽く触れられているだけでも身体が反応してしまう。
レヴィはしばらく両手で優しく上半身を撫で回していたが、やがて両胸を下から上へ持ち上げるようにして揉みしだく。
「あ、ん……っ、レヴィ……っ」
レヴィの指先が乳首を捕らえる。親指と中指でつまんだ先端を人差し指の爪先でカリカリと引っ搔くように刺激された。
「ああっ!! ん、あ……っ、す、すご……っ」
快感で背中が反る。そのせいで自ら胸を突き出すような体勢になってしまう。
レヴィは左手はそのままに、右の先端を口に含んだ。
「ふぅんっ、あっあっ、あっ!」
右の乳首を舌先で転がすように舐められる。気持ちよすぎて足の指に力が入っていく。
「ああ……あんっ……っ、きもち、いぃ……」
レヴィは右胸から口を離すと静かに笑った。
「エリス様が気持ちよさそうで嬉しいです。もっともっと、気持ちよくして差し上げますね」
今でも身に受けるのが精一杯だというのに、これ以上の快感を受けたら俺はどうなってしまうのだろうか。
怖い。でも同時に知りたくてたまらない。
レヴィは今度は左胸を同じように口に含む
「くぅう……っ、ああ、あっあっあーーっ!!」
心なしか右よりも強く吸われて、軽く歯を立てられる。それがとてつもなく気持ちよくて、悲鳴のような嬌声が喉から漏れた。
同時に、触れてもいない雄芯から白い欲が吐き出される。
「え……う、うそ」
「ヒートは通常より快感に弱くなるのです。だからこれは自然なことです」
レヴィは小さなタオルで俺の腹部に飛び散ったそれらを拭きとってくれた。
「あ、ありがと……」
レヴィは手を止めて俺の目を見る。
「これから僕はあなたを抱きます。ですが……もし少しでも嫌なことがあればすぐに仰ってください。ヒートはきっと、これから定期的に起こります。今日じゃなくても――」
「い、いい。今日にしよう」
俺はゆっくりと上体を起こしてレヴィの手に触れた。
「エリス様?」
「次のヒートなんて、待ちたくない。俺は早くおまえと番になりたい。俺のことなんて気にしなくていいから、好きにしてほしい」
「……せっかく僕が自制しようとしているのに、そんなことをおっしゃらないでください。番になる行為はオメガであるエリス様に負担が――んむぅ!?」
小言を言いはじめたレヴィの頬を両手で挟むと、勢いよく唇を押し付けた。
「俺がいいって言ってんだよ、バカ」
次の瞬間、飛びかかるように覆いかぶさってきたレヴィによってシーツに沈められる。
乱れた銀糸の前髪の隙間から、ギラギラとした欲望に燃えたアクアマリンの瞳が俺を捉える。
「こんなに煽って……もう、止まれないですよ」
「ああ、俺のせいにしていい。望むところだ」
それが合図かのようにレヴィが再び顔を寄せてきて、俺は目を閉じた。

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