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第二章 氷狼騎士団長の秘密
<3>レヴィとの再会1
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「……さま、エリスさま!!」
「んぁ……なんだようるせえな」
両肩をものすごい勢いで揺すられて目を覚ました。時計を見るとすでに深夜になっている。
「あ、わり……けっこう寝ちまったな。おまえもう部屋戻っていいぞ」
「それどころじゃないです!」
「声でかいって。夜なんだから気をつけろよ」
「なにが」
「い、今から……レヴィ様とお会いすることなってしまいましたっ!!」
「はぁ!?」
驚きで負けじと大声を張り上げてしまう。
「なんでだよ、明後日だったろ?」
「それが……緊急事態で戻られたそうです。すぐにでもエリス様にお会いしたいとか。すでにお休みになったとお伝えしたのですが、起こせとのことで」
「旦那サマは戦場帰りだろ? それで至急会いたいってことは、あれか、俺の力が必要になったってことじゃないのか」
「ということは、レヴィ様は大けがをされたのかもしれませんね」
「ああ。その可能性が高いな」
(大丈夫かよ……アイツ、むかしから負けず嫌いで無鉄砲なとこあるからな)
その昔、自分よりも魔力も強くて体格のいい兄弟子に傷だらけになっても、何度も全力でぶつかっていく姿を思い出す。アイツのいいところでもあったが、戦場では命取りになると何度も諭したものだった。
過去に思いを馳せていると、控えめなノック音で現実に戻る。
「エリス様、お休みになられていたところ申し訳ありません。ご準備のほどはよろしいでしょうか」
返事のかわりにリアムが扉を開ける。本当に突然だったのだろう、マークの髪の毛は乱れ、服も正装ではなく普段着になっている。
「エリス様にはこれからレヴィ様のお部屋へ行っていただきます。この屋敷の中で、レヴィ様のお部屋の場所を正確に知っている者はごく限られております。申し訳ありませんがエリス様には転移魔法でお部屋に入っていただきます」
レヴィの部屋には前世でも赴いたことはなかったので、知る由もない。ヴァンダービルト家は騎士団長を努めている家系だし、何か事情があるのかもしれない。
「わかりました。転移魔法ですね」
発動しようとすると、マークに止められる。
「レヴィ様のお部屋には複雑な結界が張られておりまして……転移魔法ではなく、専用の魔法陣による転移を行っていただきます」
そう言うとマークは緑色に光る石のついた小さな杖で魔法陣を描き始めた。
石からは金色に輝く粉のようなものが出て、魔法陣を作っていく。出来あがった魔法陣は絨毯に定着して模様のようになった。
「さあこちらに。今後、レヴィ様との面会はこちらの魔法陣を使用して行っていただきます。この上にエリス様が立てば、自動的にレヴィ様のお部屋に転移されますので」
黒い皮手袋を嵌めたマークの手にエスコートされ、円陣の中央に立つ。すぐに魔法陣から強い光が放たれる。さらに強い風のようなものも下から吹き上がってきて、反射的に目を閉じた。
「んぁ……なんだようるせえな」
両肩をものすごい勢いで揺すられて目を覚ました。時計を見るとすでに深夜になっている。
「あ、わり……けっこう寝ちまったな。おまえもう部屋戻っていいぞ」
「それどころじゃないです!」
「声でかいって。夜なんだから気をつけろよ」
「なにが」
「い、今から……レヴィ様とお会いすることなってしまいましたっ!!」
「はぁ!?」
驚きで負けじと大声を張り上げてしまう。
「なんでだよ、明後日だったろ?」
「それが……緊急事態で戻られたそうです。すぐにでもエリス様にお会いしたいとか。すでにお休みになったとお伝えしたのですが、起こせとのことで」
「旦那サマは戦場帰りだろ? それで至急会いたいってことは、あれか、俺の力が必要になったってことじゃないのか」
「ということは、レヴィ様は大けがをされたのかもしれませんね」
「ああ。その可能性が高いな」
(大丈夫かよ……アイツ、むかしから負けず嫌いで無鉄砲なとこあるからな)
その昔、自分よりも魔力も強くて体格のいい兄弟子に傷だらけになっても、何度も全力でぶつかっていく姿を思い出す。アイツのいいところでもあったが、戦場では命取りになると何度も諭したものだった。
過去に思いを馳せていると、控えめなノック音で現実に戻る。
「エリス様、お休みになられていたところ申し訳ありません。ご準備のほどはよろしいでしょうか」
返事のかわりにリアムが扉を開ける。本当に突然だったのだろう、マークの髪の毛は乱れ、服も正装ではなく普段着になっている。
「エリス様にはこれからレヴィ様のお部屋へ行っていただきます。この屋敷の中で、レヴィ様のお部屋の場所を正確に知っている者はごく限られております。申し訳ありませんがエリス様には転移魔法でお部屋に入っていただきます」
レヴィの部屋には前世でも赴いたことはなかったので、知る由もない。ヴァンダービルト家は騎士団長を努めている家系だし、何か事情があるのかもしれない。
「わかりました。転移魔法ですね」
発動しようとすると、マークに止められる。
「レヴィ様のお部屋には複雑な結界が張られておりまして……転移魔法ではなく、専用の魔法陣による転移を行っていただきます」
そう言うとマークは緑色に光る石のついた小さな杖で魔法陣を描き始めた。
石からは金色に輝く粉のようなものが出て、魔法陣を作っていく。出来あがった魔法陣は絨毯に定着して模様のようになった。
「さあこちらに。今後、レヴィ様との面会はこちらの魔法陣を使用して行っていただきます。この上にエリス様が立てば、自動的にレヴィ様のお部屋に転移されますので」
黒い皮手袋を嵌めたマークの手にエスコートされ、円陣の中央に立つ。すぐに魔法陣から強い光が放たれる。さらに強い風のようなものも下から吹き上がってきて、反射的に目を閉じた。
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