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第一部 エピローグ
それぞれの思惑
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「ユーリ、ルイスをからかうのはやめろって言ってるだろ」
義弟が起きているときには見せることのない鋭い瞳がユーリを射抜く。
「自分では無意識だったが、またやってしまっていたか。すまないな、次から気をつける」
面白がるような物言いに、美しい銀の眉が跳ね上がった。
「ったく、わざとらしすぎんだよ。なんでルイスはおかしな奴ばっか引き付けるんだか」
ルークがげんなりした顔で呟く。
回復したルークも交えて遊ぶうちに、4人はすっかり友達のように仲良くなった――とルイスは思っている。
実際、打ち解けはしたが仲がいいかは甚だ疑問なのだが。
何せ、もうこの4人はすでに自分たちがライバルであることを認識しているのである。
「ルーク、それは自分のことを言っているんだろうな」
ユーリの言葉にルークは顔を顰める。
「おまえだろ、バーカ」
「しょうもない悪口だな。語彙力を鍛えろ。おすすめの小説を貸してやろうか」
「うるせーな」
人当たりのいいルークだが、ユーリには当たりがきつい。それだけユーリが他人を煽ったりイラつかせるのが上手いのかもしれない。
睨みつけるルークと不遜なユーリの視線が火花を散らす。
ため息を吐いたレイは、見かねて二人に声をかけた。
「おまえたち、ここであまりヒートアップするなよ。ルイスが起きる」
彼らは庭園に敷いたギンガムチェックの敷物の上で思い思いに寛いでいる。
今日は庭で遊び、そのままランチタイムにしたのだ。
だが遊び疲れたルイスは少し食べただけであっという間に寝入ってしまった。
アシュリーは自分の膝の上、気持ちよさそうに寝息を立てるルイスの目にかかった前髪を優しく払うと、言い争う二人へ厳しい目を向けた。
「レイの言う通りだ。今バレたりしたら、僕たち全員嫌われてしまうかもしれないよ」
その一言で、二人は静かになり、アシュリーは言葉を続けた。
「この前、皆でルールを決めたね。ユーリも納得しただろう?」
「ああ、わかっている。それにしてもレイとの関係がそんなふうに成立しているとは思わなかったぞ。おまえたちはつくづく面白い奴らだ」
「ていうか、油断も隙もねーって感じ?」
ルークが同調するように口を尖らせる。
「誰が有利でも不利でもないはずだ。それにルイスが僕たちのせいで悩んだり傷ついたりすることなく成長してほしいっていうのは、僕ら共通の一番の願いだったよね」
呆れたようなアシュリーの言葉に、レイが頷く。
「そうだ。俺たちはあの結果が出るまでは、全員が平等だ。勝負は来年――俺たちが魔法学校に入学してからだろ」
「ああ、わかっている」
「わかってるっつーの」
ユーリとレイは口々に返事をする。4人が改めて誓いを確認するように目を合わせて頷いた瞬間、ルイスの金色のまつげが細かく震えた。少しして、ゆっくりと水色の眼球が現れる。
「……ん? あぇ、ぼく、ねちゃったのですか……ごめんなさい」
寝起きの掠れ声でルイスが目を擦る。
「おはよう、ルイス。もう少し寝ていてもいいんだよ」
アシュリーのすみれ色の瞳は、いつもの柔らかさに戻っている。
「そうだぞ、俺たちはまだ少ししゃべりたいからな」
言葉だけみると偉そうだが、レイの声はどこまでも優しい。
「起きたらさっきの続きしような!」
「クソチビはまだねんねの時間だ。無理せず寝ろ」
ルークとユーリも言葉を続ける。
「う…ん、じゃあ、もう、ちょっとだ、け……」
言い終わるが早いか、再び夢の世界へと戻っていく。
少年たちはルイスのあどけない寝顔を、それぞれの想いのこもった目で見つめていた。
義弟が起きているときには見せることのない鋭い瞳がユーリを射抜く。
「自分では無意識だったが、またやってしまっていたか。すまないな、次から気をつける」
面白がるような物言いに、美しい銀の眉が跳ね上がった。
「ったく、わざとらしすぎんだよ。なんでルイスはおかしな奴ばっか引き付けるんだか」
ルークがげんなりした顔で呟く。
回復したルークも交えて遊ぶうちに、4人はすっかり友達のように仲良くなった――とルイスは思っている。
実際、打ち解けはしたが仲がいいかは甚だ疑問なのだが。
何せ、もうこの4人はすでに自分たちがライバルであることを認識しているのである。
「ルーク、それは自分のことを言っているんだろうな」
ユーリの言葉にルークは顔を顰める。
「おまえだろ、バーカ」
「しょうもない悪口だな。語彙力を鍛えろ。おすすめの小説を貸してやろうか」
「うるせーな」
人当たりのいいルークだが、ユーリには当たりがきつい。それだけユーリが他人を煽ったりイラつかせるのが上手いのかもしれない。
睨みつけるルークと不遜なユーリの視線が火花を散らす。
ため息を吐いたレイは、見かねて二人に声をかけた。
「おまえたち、ここであまりヒートアップするなよ。ルイスが起きる」
彼らは庭園に敷いたギンガムチェックの敷物の上で思い思いに寛いでいる。
今日は庭で遊び、そのままランチタイムにしたのだ。
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アシュリーは自分の膝の上、気持ちよさそうに寝息を立てるルイスの目にかかった前髪を優しく払うと、言い争う二人へ厳しい目を向けた。
「レイの言う通りだ。今バレたりしたら、僕たち全員嫌われてしまうかもしれないよ」
その一言で、二人は静かになり、アシュリーは言葉を続けた。
「この前、皆でルールを決めたね。ユーリも納得しただろう?」
「ああ、わかっている。それにしてもレイとの関係がそんなふうに成立しているとは思わなかったぞ。おまえたちはつくづく面白い奴らだ」
「ていうか、油断も隙もねーって感じ?」
ルークが同調するように口を尖らせる。
「誰が有利でも不利でもないはずだ。それにルイスが僕たちのせいで悩んだり傷ついたりすることなく成長してほしいっていうのは、僕ら共通の一番の願いだったよね」
呆れたようなアシュリーの言葉に、レイが頷く。
「そうだ。俺たちはあの結果が出るまでは、全員が平等だ。勝負は来年――俺たちが魔法学校に入学してからだろ」
「ああ、わかっている」
「わかってるっつーの」
ユーリとレイは口々に返事をする。4人が改めて誓いを確認するように目を合わせて頷いた瞬間、ルイスの金色のまつげが細かく震えた。少しして、ゆっくりと水色の眼球が現れる。
「……ん? あぇ、ぼく、ねちゃったのですか……ごめんなさい」
寝起きの掠れ声でルイスが目を擦る。
「おはよう、ルイス。もう少し寝ていてもいいんだよ」
アシュリーのすみれ色の瞳は、いつもの柔らかさに戻っている。
「そうだぞ、俺たちはまだ少ししゃべりたいからな」
言葉だけみると偉そうだが、レイの声はどこまでも優しい。
「起きたらさっきの続きしような!」
「クソチビはまだねんねの時間だ。無理せず寝ろ」
ルークとユーリも言葉を続ける。
「う…ん、じゃあ、もう、ちょっとだ、け……」
言い終わるが早いか、再び夢の世界へと戻っていく。
少年たちはルイスのあどけない寝顔を、それぞれの想いのこもった目で見つめていた。
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