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2章
<10話>
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「貴族は政略結婚が当たり前だし、俺たちは物心つく頃には結婚が決まってただろ。だからおまえのことを知る必要もないと思ってたんだ。好意があろうがなかろうが、結婚することは決まっているんだから。でもそのせいで大事なことも見逃してたのかもしれないな」
レイは独り言のように言うと、アシュリーのすみれ色の瞳としっかり視線を合わせる。
少年の中に、ほんの少し男らしがが見え隠れるする精悍なレイの横顔と、線が細く可憐なのにどこか凛とした雰囲気の漂うアシュリーの横顔は、ても似合いの美しさだ。
「今まで悪かったな。あらためてよろしく」
アシュリーは優しく微笑みながらゆるく首を左右に振る。
「レイ様が謝るようなことは何も。態度が悪かったのは事実です。僕こそ、今まで失礼ばかりで申し訳ございませんでした」
頭を下げたアシュリーの両肩にレイが手をかけて制した。
「頭なんか下げるなよ。それに……そのレイ様って呼ぶの、やめないか? 敬語も。国王の血筋だとしても同じ公爵位なんだし、同い年だし。お互い呼び捨てでも問題ないだろ。だから今日から俺のことはレイって呼んでほしい。いいよな?」
悪戯っぽく笑うレイはヒーロー感が半端ない。
こんな顔で微笑まれたら誰もが心を奪われるに違いない。
「わ、わかりま……わかっ、たよ……レイ」
つっかえながら頑張って敬語を封印する様子がたまらなく可愛い。
レイもきっとそう思ったのだろう、嬉しそうに笑って俺にしたようにアシュリーの髪をわしゃわしゃと撫でまわした。
「ちょ、何するんですか!?」
「ほら、また敬語出てる」
「それは……っ! 急にこんなことするから……!」
真っ赤になって抵抗するアシュリーをレイは楽しそうに眺めている。
「てか俺たちが婚約しているってことは、チビだってもう俺の弟みたいなもんだろ。よく考えたら俺が膝に乗せても問題ないんじゃないか?」
「だ……ダメですっ! まだ結婚しているわけではないので」
「ふーん。じゃ結婚したらいいんだな?」
「レイ様っ!!」
「冗談だって……今は。それにしてもおまえのことからかうの、面白いな。ちょっとハマりそう」
レイはその日、帰る間際までアシュリーにちょっかいを出し、その度にアシュリーは赤くなったり青くなったりして反応していた。
(推しが他人の前でこんなに感情を見せるのって、珍しいな。これはレイに心を許してるってことだよな。なんだよ! いい雰囲気じゃねーか……)
二人を見つめながら、感慨深い気持ちに浸る。
あっという間に打ち解けた二人の関係は、もしかしたらどんどん進んでいくかもしれない。クソ婚約者とは円満に婚約破棄するべきだと思っていたけれど、話してみたら思ったよりも悪い奴じゃなさそうだし、推しの気持ち次第ではこのまま二人が結ばれる未来もありなのかもしれない。
だがその場合はこれから現れる主人公たちとジェラルドの関係が進展するのを阻止する必要がある。
(もしそうなったら計画を練り直さないといけないな……)
今よりも成長した二人の結婚式を心に描いてみる。二人とも最強ビジュアルの持ち主だし、美形夫夫として国中の話題になることは間違いないだろう。
推しの幸せを心から望んでいるはずなのにほんの一瞬、なぜか胸がチクリと痛んだような気がした。
レイは独り言のように言うと、アシュリーのすみれ色の瞳としっかり視線を合わせる。
少年の中に、ほんの少し男らしがが見え隠れるする精悍なレイの横顔と、線が細く可憐なのにどこか凛とした雰囲気の漂うアシュリーの横顔は、ても似合いの美しさだ。
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こんな顔で微笑まれたら誰もが心を奪われるに違いない。
「わ、わかりま……わかっ、たよ……レイ」
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「ちょ、何するんですか!?」
「ほら、また敬語出てる」
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「レイ様っ!!」
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レイはその日、帰る間際までアシュリーにちょっかいを出し、その度にアシュリーは赤くなったり青くなったりして反応していた。
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だがその場合はこれから現れる主人公たちとジェラルドの関係が進展するのを阻止する必要がある。
(もしそうなったら計画を練り直さないといけないな……)
今よりも成長した二人の結婚式を心に描いてみる。二人とも最強ビジュアルの持ち主だし、美形夫夫として国中の話題になることは間違いないだろう。
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