15 / 92
1章
14話 ※アシュリー視点
しおりを挟む
本邸では離れ以上にたくさんの使用人たちがルイスを捜索していた。
「ルイス様! いらっしゃいますか!?」
「ルイス坊ちゃま! どうかお返事してください!」
ランプを手にしたメイドやたちが泣きそうな顔であちこち探し回っている。
玄関ホールの正面に伸びている階段の大きな踊り場では兄上が皆に指示をしていた。
僕は急いで兄上に駆け寄る。
「何か手掛かりは見つかったのですか?」
俺に気付いた兄上は目を見開いて叫んだ。
「ア、アシュリー! なぜここにいるんだ! 早く戻れ、体調が悪くなったらどうする!」
「もうこのぐらいは大丈夫ですから落ち着いてください。それよりルイスは?」
「う……それが何も。あの子はまだ小さいし、そう遠くへは行っていないはずなんだが」
「ルイスの部屋の鍵はお持ちですか?」
「ああ。ここにある」
兄上はポケットから金色の大きな鍵を取り出した。
「貸していただいてもよろしいですか? 自分の目でルイスの部屋を確かめたいのです」
「わかった。だが俺も一緒に行くぞ」
「一人で大丈夫です」
だが兄上は厳しい顔で首を左右に振る。
「ダメだ。お前にまで何かあったらどうする。ルイスだけじゃない、おまえだって俺の大切な弟なんだ」
今度は僕が目を見開く番だった。
最近はルイスのおかげでだいぶ話をするようになったが、肉体派の兄上と本を読んだり土いじりをするのが好きな僕は共通点がほとんどない。
それもあって、あまり好かれていないと思っていた。
面と向かって「大切だ」なんて言われると、照れくさいしどんな顔をしていいかわからなくなってしまう。
「……わかりました。一緒に行きましょう」
なるべく平静を装って、赤くなった顔を見られないように早歩きでルイスの部屋に向かった。
すでに捜索しつくしたからなのだろう、ルイスの部屋の周囲は人気がなく静まり返っている。。
薄暗い部屋の中、兄上と2人、それぞれ炎を出して部屋の中を照らす。
炎といってもそのまま出すと飛び火してしまうことがあるので、ごく小さな空気の球体を作り、その中に炎を閉じ込めるのだ。
それらがいくつも空中を浮遊する様子はまるで蛍が飛んでいるように見える。
明かりを頼りに各自、部屋の隅々まで調べていく。
ふいに別途のヘッドボードの隙間に押し込まれているものが気になった、取り出してみると、それは一冊の本だった。
「魔法薬草百科事典……?」
たしかこれは図書室の蔵書で、基本的には持ち出しは禁止だったはず。なぜこんなところにあるのだろうか。
小さな子ども向けの内容でもないし、こんなものを読んでも楽しいとは思えない。
そう思いながらしおりが挟まっているページを開くと、かぜにそよぐシャーベットリリーの絵が目に飛び込んできた。
その瞬間、どっと冷や汗が噴き出す。
(まさか、ルイスはあの話を知っていたのか!?)
「なにか手がかりは見つかったか」
兄上が近寄ってくる。
「……たしか今夜は満月でしたよね」
「ん? ああ。雨が降り出すまでは綺麗な月が見えていたな」
「ルイスが姿を消したのがわかったのは、雨が降り出す前ですか?」
どうか僕の予想が外れていてほしい。そう思うのに嫌な予感はどんどん大きくなっていく。
声が震えないよう、腹に力を込めて声を出した。
「ルイスの居場所がわかったかもしれません」
「ルイス様! いらっしゃいますか!?」
「ルイス坊ちゃま! どうかお返事してください!」
ランプを手にしたメイドやたちが泣きそうな顔であちこち探し回っている。
玄関ホールの正面に伸びている階段の大きな踊り場では兄上が皆に指示をしていた。
僕は急いで兄上に駆け寄る。
「何か手掛かりは見つかったのですか?」
俺に気付いた兄上は目を見開いて叫んだ。
「ア、アシュリー! なぜここにいるんだ! 早く戻れ、体調が悪くなったらどうする!」
「もうこのぐらいは大丈夫ですから落ち着いてください。それよりルイスは?」
「う……それが何も。あの子はまだ小さいし、そう遠くへは行っていないはずなんだが」
「ルイスの部屋の鍵はお持ちですか?」
「ああ。ここにある」
兄上はポケットから金色の大きな鍵を取り出した。
「貸していただいてもよろしいですか? 自分の目でルイスの部屋を確かめたいのです」
「わかった。だが俺も一緒に行くぞ」
「一人で大丈夫です」
だが兄上は厳しい顔で首を左右に振る。
「ダメだ。お前にまで何かあったらどうする。ルイスだけじゃない、おまえだって俺の大切な弟なんだ」
今度は僕が目を見開く番だった。
最近はルイスのおかげでだいぶ話をするようになったが、肉体派の兄上と本を読んだり土いじりをするのが好きな僕は共通点がほとんどない。
それもあって、あまり好かれていないと思っていた。
面と向かって「大切だ」なんて言われると、照れくさいしどんな顔をしていいかわからなくなってしまう。
「……わかりました。一緒に行きましょう」
なるべく平静を装って、赤くなった顔を見られないように早歩きでルイスの部屋に向かった。
すでに捜索しつくしたからなのだろう、ルイスの部屋の周囲は人気がなく静まり返っている。。
薄暗い部屋の中、兄上と2人、それぞれ炎を出して部屋の中を照らす。
炎といってもそのまま出すと飛び火してしまうことがあるので、ごく小さな空気の球体を作り、その中に炎を閉じ込めるのだ。
それらがいくつも空中を浮遊する様子はまるで蛍が飛んでいるように見える。
明かりを頼りに各自、部屋の隅々まで調べていく。
ふいに別途のヘッドボードの隙間に押し込まれているものが気になった、取り出してみると、それは一冊の本だった。
「魔法薬草百科事典……?」
たしかこれは図書室の蔵書で、基本的には持ち出しは禁止だったはず。なぜこんなところにあるのだろうか。
小さな子ども向けの内容でもないし、こんなものを読んでも楽しいとは思えない。
そう思いながらしおりが挟まっているページを開くと、かぜにそよぐシャーベットリリーの絵が目に飛び込んできた。
その瞬間、どっと冷や汗が噴き出す。
(まさか、ルイスはあの話を知っていたのか!?)
「なにか手がかりは見つかったか」
兄上が近寄ってくる。
「……たしか今夜は満月でしたよね」
「ん? ああ。雨が降り出すまでは綺麗な月が見えていたな」
「ルイスが姿を消したのがわかったのは、雨が降り出す前ですか?」
どうか僕の予想が外れていてほしい。そう思うのに嫌な予感はどんどん大きくなっていく。
声が震えないよう、腹に力を込めて声を出した。
「ルイスの居場所がわかったかもしれません」
2,964
お気に入りに追加
4,277
あなたにおすすめの小説

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!
ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……
鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。
そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。
これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。
「俺はずっと、ミルのことが好きだった」
そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。
お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ!
※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる