病弱な悪役令息兄様のバッドエンドは僕が全力で回避します!

松原硝子

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1章

14話 ※アシュリー視点

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本邸では離れ以上にたくさんの使用人たちがルイスを捜索していた。
「ルイス様! いらっしゃいますか!?」
「ルイス坊ちゃま! どうかお返事してください!」
ランプを手にしたメイドやたちが泣きそうな顔であちこち探し回っている。
玄関ホールの正面に伸びている階段の大きな踊り場では兄上が皆に指示をしていた。
僕は急いで兄上に駆け寄る。
「何か手掛かりは見つかったのですか?」
俺に気付いた兄上は目を見開いて叫んだ。
「ア、アシュリー! なぜここにいるんだ! 早く戻れ、体調が悪くなったらどうする!」
「もうこのぐらいは大丈夫ですから落ち着いてください。それよりルイスは?」
「う……それが何も。あの子はまだ小さいし、そう遠くへは行っていないはずなんだが」
「ルイスの部屋の鍵はお持ちですか?」
「ああ。ここにある」
兄上はポケットから金色の大きな鍵を取り出した。
「貸していただいてもよろしいですか? 自分の目でルイスの部屋を確かめたいのです」
「わかった。だが俺も一緒に行くぞ」
「一人で大丈夫です」
だが兄上は厳しい顔で首を左右に振る。
「ダメだ。お前にまで何かあったらどうする。ルイスだけじゃない、おまえだって俺の大切な弟なんだ」
今度は僕が目を見開く番だった。
最近はルイスのおかげでだいぶ話をするようになったが、肉体派の兄上と本を読んだり土いじりをするのが好きな僕は共通点がほとんどない。
それもあって、あまり好かれていないと思っていた。
面と向かって「大切だ」なんて言われると、照れくさいしどんな顔をしていいかわからなくなってしまう。
「……わかりました。一緒に行きましょう」
なるべく平静を装って、赤くなった顔を見られないように早歩きでルイスの部屋に向かった。

すでに捜索しつくしたからなのだろう、ルイスの部屋の周囲は人気がなく静まり返っている。。
薄暗い部屋の中、兄上と2人、それぞれ炎を出して部屋の中を照らす。
炎といってもそのまま出すと飛び火してしまうことがあるので、ごく小さな空気の球体を作り、その中に炎を閉じ込めるのだ。
それらがいくつも空中を浮遊する様子はまるで蛍が飛んでいるように見える。
明かりを頼りに各自、部屋の隅々まで調べていく。
ふいに別途のヘッドボードの隙間に押し込まれているものが気になった、取り出してみると、それは一冊の本だった。
「魔法薬草百科事典……?」
たしかこれは図書室の蔵書で、基本的には持ち出しは禁止だったはず。なぜこんなところにあるのだろうか。
小さな子ども向けの内容でもないし、こんなものを読んでも楽しいとは思えない。
そう思いながらしおりが挟まっているページを開くと、かぜにそよぐシャーベットリリーの絵が目に飛び込んできた。
その瞬間、どっと冷や汗が噴き出す。
(まさか、ルイスはあの話を知っていたのか!?)
「なにか手がかりは見つかったか」 
兄上が近寄ってくる。
「……たしか今夜は満月でしたよね」
「ん? ああ。雨が降り出すまでは綺麗な月が見えていたな」
「ルイスが姿を消したのがわかったのは、雨が降り出す前ですか?」
どうか僕の予想が外れていてほしい。そう思うのに嫌な予感はどんどん大きくなっていく。
声が震えないよう、腹に力を込めて声を出した。
「ルイスの居場所がわかったかもしれません」

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