病弱な悪役令息兄様のバッドエンドは僕が全力で回避します!

松原硝子

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1章

5話

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「アシュリーの食事を作りたい……だって?」
父上は間が抜けた声で俺の言葉を繰り返す。
母上もジェシーもぽかんとした表情でこっちを見ている。驚くのも無理はない。
貴族たちは一生に一度も料理なんてしないのが普通だ。だがそんなことは気にしない。
俺は元気よく、はい! と返事をした。
「でもルイスはお料理なんてしたことないでしょう」
母上は困ったような顔で俺を見ている。
「大丈夫です! 魔法もありますし、料理長の言う事はしっかり守ります。
ローラにも手伝ってもらいますし、危ないことは絶対にしません」
そうなのだ。実はこの世界には魔法が存在する。
といっても、魔力を保有しているのは王侯貴族のみ。
魔力には火・金・土・風・水・木の6つの属性があるが、どの属性の魔力を持って生まれてくるかは家系には関係ない。また稀にいくつかの属性を併せ持って生まれることもある。
ちなみに俺は風・水・木という3つの属性の強力な魔力を持っていた。
どうやら亡くなった実の父がやはり複数の属性持ちだったらしい。
魔力が発言するのは1~2歳。
その後、貴族の子どもたちはだいたい3歳頃から魔力の扱い方を学び始める。
そのため、魔力を使って料理すればケガなどの危険はだいぶ少ないはずだ。
「そうねえ。でも……あなたはまだ小さいし」
母上は父上のほうを見る。父上も同意するように頷いていた。
この第一関門を突破できなければ何も始まらない。
俺はさも名案を思いついたとばかりに弾んだ声を出した。
「そうだ、ジェシー兄さまにもずっと見ていてもらいます。それならいいでしょう?」
「えッ!? 俺か!?」
突然巻き込まれたジェシーは自分を指差して慌てている。
「いや……俺も料理なんてしたことはないんだが」
俺はジェシーの側まで駆け寄ると、上目遣いで見上げた。
「ジェシー兄さま、いいでしょう? お願い。僕、兄さまと一緒にお料理してみたいです」
言いながら、ジェシーのシャツの裾をきゅっと握る。
頭上からうっと小さなうめき声が漏れたかと思うと、ダイニングに大声が響き渡る。
「もちろんだ! このジェシー兄さまに任せなさい!!」
「わあ、やったあ! ありがとう!! 兄さま大好き!!」
大げさにぴょんぴょん飛び跳ねると、ジェシーに片手で素早く抱っこされてしまう。
「わはははは! そうか大好きか!! だが俺のほうがもっと好きだぞ!!」
ジェシーはそう言って、力強く頬ずりしてくる。
(チョロい兄貴でよかったよ……)
俺は心の中でホッと息をついた。
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