【本編完結】至高のオメガに転生したのに、最強ヤンデレアルファの番に攻められまくっています

松原硝子

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一体何がどうなったのか、正直よくわからない。金成に聞きたいところだが、2人とも激しく体力を消耗している。やっとの思いでベッドにたどり着くと、ドサリと倒れ込む。

「飛鳥」
「ん?」
「いろいろ聞きたいところだとは思うけど、一旦休んでからでもいいかな? さすがに俺も限界…」
「当たり前だろ。おまえはとにかく身体休めなきゃダメだ」
「ありがと…けど、ちょっと待って」

金成はよろよろと起き上がると、ベッドから這い降りた。いつから持っていたのか、海苔の缶を手にしている。ウォークインクローゼットの中に入っていく。一瞬、赤い閃光が走る。

「何やってんだ!?」
こんなに疲弊しているのに、力を使うなんて。
「だい、じょぶっ」
クローゼットの中から、くぐもった返事が聞こえた。どう見ても大丈夫とは思えない。ただ俺もシーツの上で身体を起こすのが精一杯だ。

けれど、そのあとすぐに金成は這うようにしてもどってきた。上掛けを開いて誘導すると、ボスンと音を立てて俺の胸に飛び込んでくる。

「疲れた……」
「ありがとな金成」

前髪をかき分け、愛しい恋人の真っ白な額にキスを落とす。そして俺も目を閉じた。次に目を開いた時、俺の腕の中にはまだ金色の髪が収まっていた。

嬉しくて、思わず髪に手を伸ばす。少し触っていると、睫毛が震え、赤い瞳が姿を現す。金成はしばらく焦点が合わないようで、ぼんやりしている。

しだいに目にしっかりした光が宿り、頭を撫でていた俺の手を捕らえた。

「おはよう、飛鳥」
「うん、おはよ」
「どこか痛いとこない? 平気?」
「俺よりお前だろ? 大丈夫か?」
「うん。まだ少し怠いけど、それぐらい」
「寝る前、何してたんだ?」
「あれは、封印…」
「封印? どういうこと?」

金成は俺の腕の中から這い出すと、今度は俺のことを自分の胸に閉じ込める。

「話すと長くなるよ。飲み物でも持ってこようか」
「うーん。そんな喉、渇いてない。それにもうちょい、くっついてたい」

俺が言うと、金成は幸せそうに微笑んだ。

「じゃあ、もうちょっとこうしてようか」
「おう」

俺の髪を金成が梳くように触れている。それが心地よくて、瞼がまた閉じていく。再び目を開けると、俺を見つめる優しい赤と目があう。

「俺、どんくらい寝てた?」

「2時間くらいかな…てか飛鳥、仕事大丈夫なの?」
「うん……おまえ連れてアメリカ行くつもりだったから…1ヶ月無理やり休み取った…」
「え?」

驚く金成に、俺は自分の計画していたことを話す。

「そっか……それで迎えにきてくれたんだね」
「おー。せっかくだから、全部片づいたらどっか行かね? 2人で」
「……うん!」

俺に提案に、金成は満面の笑みを浮かべる。金成の髪を梳く手が気持ちよくて、俺は無言でぼんやりしていた。しばらくすると、耳元で金成がく。

「そろそろ話しようか?」
「うん」

答えると、金成は俺を抱き直して再び髪の毛を梳き始めた。

「俺、生まれた時はアルティメットだったんだ。能力は、封じ込める力。それもかなり強いって言われてた」
「うん。俺、思い出したよ…俺たち、ガキの頃会ってたんだな」

そう。あれはマカオで行われた世界的な芸術祭だった。俺たちはそれぞれ、家族で参加していた。他にも小さな子どもたちはたくさんいたが、日本語が話せるのはハーフの金成しかいなかった。

退屈なパーティも友達ができれば楽しいものに変わる。金成はゲームもたくさん持ってきていて、友達と部屋で遊んでいる時間は子どもながらに仕事ばかりの俺にとって、宝物のような時間だった。

あの日までは。

あと2日でそれぞれが帰国という日。俺はフィルに襲われた。
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