【本編完結】至高のオメガに転生したのに、最強ヤンデレアルファの番に攻められまくっています

松原硝子

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#42

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1週間後、目覚めるといつも通番の姿はなかった。
身体中に残された、ヒートの痕跡を綺麗に消すと、すっきりした頭で情報を整理してみることにする。

フィル・ラッシュフォード。

金成の実の父親で、10年以上前に交通事故死したはずの、アルティメットアルファのハリウッド俳優。それが俺の番の正体なのは、ほぼ確実に間違いないだろう。

死んだはずの彼がなぜ俺の番としてこの世に存在しているのか。これからはそれを調べなければならない。

「あいつ、このこと知らないよな」

金成にはまだ話す気にはなれなかった。どこまで知っているかも分からない。それに俺の番の正体が、死んだはずの実の父親だと知ったら、衝撃を受けるに違いない。

「うーん……とりあえず昔の記録、漁ってみるか」

スケジュールの合間の自分の動き方を考える。明日からはまた撮影が始まる。まとまった時間が取れるのは何日後になるだろうか。考えを纏めよう目を瞑った瞬間、スマホが着信を知らせた。

「もしもし」
「……俺」

「おー」
「終わったってメッセージ見て…」

そう言うなり金成は黙ってしまった。

「どした?」
「……大丈夫、だったかなって思ってかけたんだけど……大丈夫なんて聞かれてもだよな。ごめん」

傷ついたような声に、今すぐ抱きしめたくなる。
「心配すんな。うまくやったから」

「それはそれで、嫌なんだけど」
今度は拗ねたような声になる。可愛くて、つい吹き出してしまった。

「なに笑ってんの」
「いや、可愛いなと思って」

「可愛いなんて言われても、嬉しくねーよ。男なんだから」
「あはは、ごめんごめん。金成はかっこいいよ」

「どんくらい?」
「なにが」

「俺の、かっよさ」
「めちゃくちゃ。死ぬほど。鬼ほど」

「なんか雑だな」
「いやいや本心で思ってるって。俺にとってはおまえが世界で一番なんだから」

「なら、いいけど」
機嫌が直ったのが声で伝わってくる。可愛いと思ったけど、ここでまた言ったら拗ねてしまうんだろうな。

「それより施設はどう? 友達できたか」

「友達はできないけど、それなりに上手くやってる……と、思う。同じくらいの年齢の奴は少ないけど。宿題教えあったりとかしてる」

「よかったじゃん!」
「あとは今まで知らなかったこととか、色々勉強できて楽しい」

「そっか。なんか俺よりすでに賢くなってそうだな。次に帰ってくんの、年末だっけ?」
「たぶん……。俺、胸張って帰れるように頑張るから」

「おー! 期待してるわ」
「そろそろ昼休み終わる。またね飛鳥……大好きだよ」

恥ずかしいのか、最後だけ少し声をひそめた金成は俺の返事を待たずに電話を切ってしまった。

「まじ、なんなのあいつ」
口では文句を言いながらも、緩む頬を制御できない。

「好きだなあ」
自分の声とは思えないほど甘い呟きが漏れ出て、俺は一人で恥ずかしくなる。

たくさんの問題はあるが、声を聞いただけでこんなに元気になる存在がいる。それが自分の心を強くしてくれると実感する。

それにしても。俺は再び思考を巡らす。

10年ほど前に死んだはずの男。止まっていたはずの成長が進み始めたその息子。アルティメットアルファの外見的特徴を持つインフェリア。

そして、外見的特徴に当てはまらないアルティメットアルファ。
一体、何が起きているんだろう。

俺はスマホのメモに、今わかっていることをメモしていく。
きっとどこかに糸口があるはずだ。



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