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#41
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朝起きた瞬間に、自覚した。
「あー、これはヒートきたわ」
今回は元から申請していた休暇にぴったり重なった。これなら事務所への連絡も不要だろう。
昼過ぎには身体が番を受け入れる準備を始め出した。今のうちに金成へ連絡しよう。
俺は素早く飛鳥にメッセージを送り電源を落とした。その後は軽くシャワーを浴びて、ベッドに戻る。
数時間後にはベッドに身体を横たえて、荒い息を吐くしかできなくなっていた。
もどかしくなり、右手の中指をすでにしっとり濡れた後孔に押し当てたその時。
優しく手が掴まれた。
「ダメだよ。何してんの」
振り向くと、ベッドサイドにあの男が脚を組んで座っていた。
「きた……」
「待っててくれたの? 嬉しいなあ。最近つれない態度ばっかり取られてたから…泣いちゃいそうだったよ」
優しく言いながら、掴んだおれの指をずぷりと沈め、ゆっくりと円を描くように孔の内側を撫でる。
「はぁ……ん」
「気持ちいい?」
俺は頷くと男の膝に頭を乗せる。
「もっとしてほしい?」
「……ん」
「久しぶりに甘えられて今、昇天しそうに嬉しいんだけど」
もう片方の手が、俺の髪を梳くように撫でる。
不機嫌にさせて酷い目に遭うのはこりごりだ。男には愛想良くして、番らしく振る舞って、意識を保っていられるうちに探らなければ。
それも、少しずつだ。バカみたいに勘のいいこいつに気がつかれないように。焦らず、少しずつ進めよう。
気を良くしたのか男は以前のように優しく俺の身体にに触れていく。
気持ちよくなってしまうのは癪だが、ヒートだから仕方ない。身体中を撫でるように触れられるだけで気持ちの良すぎて理性が飛びそうになる。
ゆっくり服を脱ぎ捨てた男が、静かにベットを軋ませて覆いかぶさってくる。
「んっ…ふぅ…はぁっ、」
繰り返される深いキス。最初は優しく、次第に熱と激しさを増していく。
その合間に、片手が胸の飾りへ触れる。
「あっ、まってっ」
俺は優しく男の手を握る。
「どうしたの?」
男は汗で張りついた前髪を除けると、額にキスを落とす。
「後ろから、ハグしたい、おれがっ」
男は少し驚いたような顔をした後、ゆっくりと俺に背中を見せて横向きになった。
「飛鳥、これでいいの?」
「うんっ」
俺は自分よりずっと逞しく広い背中に腕を回した。
「ふふっ。初めてだね。こんな風にするの。いつもは早く挿れてって泣きながらおねだりするのに」
きもいこと言うなよと思ったけれど、今はそれどころじゃない。俺は黙って男の真っ白な背中に頬をつける。
もしこの男の正体が、俺の考えているとおりなら。俺は男の白い肌に片手を這わせ、あちこちにキスをする。
前からは艶のあるため息が聞こえる。
大丈夫、バレてない。
顔を耳元に持っていくと、小さな声で囁く。
「たまには俺にも攻めさせて」
「あすかっ、どしたの…んっ…ああ、気持ちいい…」
前に回した手を滑らせ、男の胸の飾りに優しく
触れる。もう片方の手で背中を撫でながらキスを落としていく。
下から上へ、少しずつ背中を上る。肩甲骨、肩、頸、そして。
やっぱりあった。
耳の後ろから頸にかけて入った青い文字のタトゥー。
You’ll be grateful when you’re dead
(死ねばわかる)
ふいに男が俺の手を掴み、身体を反転させる。
「飛鳥に攻めてもらうのいいけど…そろそろ交代しよう?」
言いながら、俺の手にキスをする。
今回は正体がわかっただけでいい。それ以上探ったら、勘付かれてしまうかもしれない。
俺はゆっくりと目を閉じて、唇を薄く開け、近づいてくる男の舌を迎え入れた。
「あー、これはヒートきたわ」
今回は元から申請していた休暇にぴったり重なった。これなら事務所への連絡も不要だろう。
昼過ぎには身体が番を受け入れる準備を始め出した。今のうちに金成へ連絡しよう。
俺は素早く飛鳥にメッセージを送り電源を落とした。その後は軽くシャワーを浴びて、ベッドに戻る。
数時間後にはベッドに身体を横たえて、荒い息を吐くしかできなくなっていた。
もどかしくなり、右手の中指をすでにしっとり濡れた後孔に押し当てたその時。
優しく手が掴まれた。
「ダメだよ。何してんの」
振り向くと、ベッドサイドにあの男が脚を組んで座っていた。
「きた……」
「待っててくれたの? 嬉しいなあ。最近つれない態度ばっかり取られてたから…泣いちゃいそうだったよ」
優しく言いながら、掴んだおれの指をずぷりと沈め、ゆっくりと円を描くように孔の内側を撫でる。
「はぁ……ん」
「気持ちいい?」
俺は頷くと男の膝に頭を乗せる。
「もっとしてほしい?」
「……ん」
「久しぶりに甘えられて今、昇天しそうに嬉しいんだけど」
もう片方の手が、俺の髪を梳くように撫でる。
不機嫌にさせて酷い目に遭うのはこりごりだ。男には愛想良くして、番らしく振る舞って、意識を保っていられるうちに探らなければ。
それも、少しずつだ。バカみたいに勘のいいこいつに気がつかれないように。焦らず、少しずつ進めよう。
気を良くしたのか男は以前のように優しく俺の身体にに触れていく。
気持ちよくなってしまうのは癪だが、ヒートだから仕方ない。身体中を撫でるように触れられるだけで気持ちの良すぎて理性が飛びそうになる。
ゆっくり服を脱ぎ捨てた男が、静かにベットを軋ませて覆いかぶさってくる。
「んっ…ふぅ…はぁっ、」
繰り返される深いキス。最初は優しく、次第に熱と激しさを増していく。
その合間に、片手が胸の飾りへ触れる。
「あっ、まってっ」
俺は優しく男の手を握る。
「どうしたの?」
男は汗で張りついた前髪を除けると、額にキスを落とす。
「後ろから、ハグしたい、おれがっ」
男は少し驚いたような顔をした後、ゆっくりと俺に背中を見せて横向きになった。
「飛鳥、これでいいの?」
「うんっ」
俺は自分よりずっと逞しく広い背中に腕を回した。
「ふふっ。初めてだね。こんな風にするの。いつもは早く挿れてって泣きながらおねだりするのに」
きもいこと言うなよと思ったけれど、今はそれどころじゃない。俺は黙って男の真っ白な背中に頬をつける。
もしこの男の正体が、俺の考えているとおりなら。俺は男の白い肌に片手を這わせ、あちこちにキスをする。
前からは艶のあるため息が聞こえる。
大丈夫、バレてない。
顔を耳元に持っていくと、小さな声で囁く。
「たまには俺にも攻めさせて」
「あすかっ、どしたの…んっ…ああ、気持ちいい…」
前に回した手を滑らせ、男の胸の飾りに優しく
触れる。もう片方の手で背中を撫でながらキスを落としていく。
下から上へ、少しずつ背中を上る。肩甲骨、肩、頸、そして。
やっぱりあった。
耳の後ろから頸にかけて入った青い文字のタトゥー。
You’ll be grateful when you’re dead
(死ねばわかる)
ふいに男が俺の手を掴み、身体を反転させる。
「飛鳥に攻めてもらうのいいけど…そろそろ交代しよう?」
言いながら、俺の手にキスをする。
今回は正体がわかっただけでいい。それ以上探ったら、勘付かれてしまうかもしれない。
俺はゆっくりと目を閉じて、唇を薄く開け、近づいてくる男の舌を迎え入れた。
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