【本編完結】至高のオメガに転生したのに、最強ヤンデレアルファの番に攻められまくっています

松原硝子

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#18

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病院を出る頃には金成はすっかり元気になっていた。
2人で近くのショッピングモールに寄り、服を買い、大型のスーパーで食材を買い込む。

スーパーでは2人ではしゃぎすぎて、到底食べきれないサイズの青やピンク色のクリームでデコレーションしたケーキまで買ってしまった。

夕食を作って食べ終わるとすぐ、金成は風呂にも入らずソファで爆睡してしまった。きっと、たくさん緊張して疲れたんだろう。

少し成長しても変わらない天使のような寝顔に、そっとブランケットを掛けてやる。

起こさないように静かにリビングのドアを閉め、電気をけすと、1人でゆっくり風呂に入った。1人だからいいやと、身体を洗う前に湯船に飛び込んでしまう。

「あー癒されるー」
目を閉じ、リラックス度を高める。

先生は、このまま愛情が注がれ続けていけば身体的にも知能も実年齢を取り戻す可能性が高いと言っていた。

「けど、いきなりアラサーに変身されたりしたら…びびるな」
でも嫌な気はしない。兄弟2人で仲良くやっていけると思う。

「だとしたら尚更、あの男のことどうにかしねーと…」
閉じた瞼の裏側に、白銀のまつ毛に覆われたアクアマリンの瞳が浮かぶ。

万が一、あいつが金成に何かしたら。考えだけでも寒気がする。
「てか今までのヒートんとき、どうしてたんだろ」

飛鳥は弟の存在をまったく気にかけていなかった。だからヒート中、金成がどんな風にして生活していたかは知らない。

万が一、ヒート中の様子を少しでも見られたり聞かれたりしたらと思うと、いたたまれない。
これからも気をつけなければ。飛鳥は大きなため息を吐いた。そういえば次のヒートが近くなっている。

毎月、ストレスやホルモンバランスなどで多少の前後はあるものの、あと5日ほどでヒートの時期だ。
「風呂上がったらマネージャーに連絡しとこ…」

以前の飛鳥はヒートで番に会えることを心待ちにしていた。だが俺は違う。
抑制剤も新たに購入してある。次のヒートでは欲に溺れることなく、あの男と番解除の話し合いをしなければ。

調べたところ、アルティメットとシュプリームの番のための解除薬も開発されているという。ただし、それを服用したシュプリームは二度と番を持つことはできず、ヒートは専用の抑制剤を飲む必要があるそうだ。

俺は前世から恋愛には大した興味のないタイプだったので、それに関しては特に問題はない。

ただ、金成の成長を見守っていくつもりでいた身としては少し複雑だった。
「まさか兄貴だったとはな…」

劣等アルファの結婚率は極めて低い。劣等オメガとベータの場合、遺伝子は圧倒的にベータが優性だ。
よって劣等オメガと結婚しても9割の確率でベータが生まれる。

だが劣等アルファとベータの場合、劣等でもアルファの方が優性のため、生まれる子供のほとんどは劣等アルファになってしまう。

それを考えると、インフェリアと結婚しようと思う者はほとんどいないのが現実なのだ。
「兄貴と男2人で生きていくのもいいかもな」

そんなことを思いながらバスタブを出て、シャワーを浴びる。
「んっ……」

意図しない声が出てしまい、思わず下唇を噛む。
個人差があるらしいが、オメガはヒートの数日前から身体がとても敏感になる。

思ったよりヒートが近いのかもしれない。
たっぷり泡立てたボディーソープのついたスポンジで胸部に滑らせただけなのに、身体は快感を拾ってしまった。

「あ…やべ…」
胸の2つの飾りも普段より主張している。下半身もそれに呼応するように緩く立ち上がっていた。

「あっ……はぁっ……」
泡のついた手で下半身を軽く撫でる。それだけで背筋にゾクゾクと快感が走る。

ダメだ、これは。この場でいったん鎮めた方がいい。
明るいのが恥ずかしくて、風呂場の明かりを最小限に落とす。

ビューバスのため急に夜景が美しく見える。見られたい願望は全くないはずだが、たくさんの目に見られているような錯覚に陥ると、さらに息が上がった。

目を閉じ、右手で下半身を擦る。
左手はすっかり勃ちあがった左胸の突起を中指と薬指の間に挟み、捏ねた。

「あっ…ああっ…はぁ……」

目を閉じた先に見えるのは、あの男だ。
バスルームにいるせいか、以前、突然シャワールームに現れたときの舌や手の感触が思い出された。

「あ、んっ……!」

飛鳥、僕の飛鳥。あの低く甘い声が出て耳元で聞こえた気がして、気づけば果てていた。
はぁはぁと肩で息をしながら、身体の穢れをすべて洗い流す。

これから解消しようとしている番のことを思い出しながら、自慰をしてしまった。
「何してんだよ俺は…」

でも仕方ない。この身体はあの男しか知らないのだから。
達したばかりの倦怠感を引き摺ったまま浴室を出る。

欲を吐き出したばかりなのに、バスタオルで身体を拭いただけで、喘いでしまった。
心なしか、火照りも収まっていない。

「やべ……もしかしてもうヒートがきたのか……?」

自覚した瞬間、鼓動も速度を上げる。
一度、キッチンに立ち寄ると、冷蔵庫のペットボトルを1本取り出す。

リビングを覗いたが、金成はソファでそのまま寝ているようだった。
スースーという規則的な寝息も聞こえている。

俺は急いで自室に篭ると内鍵をかけた。
「抑制剤、飲まなきゃ」

ベッドサイドのチェストに入れている抑制剤を取り出す。ヒートの抑制剤は、ヒートが起きてから30分以内に飲まなければならない。早すぎても遅すぎても効力を失う繊細な薬なのだ。

あいつが来る前に。早く、早く。ヒートの興奮とあの男への恐怖で、手が震える。
タブレットを2錠取り出し、口を開けた時、一瞬にして部屋の空気が変わった。

「……え?」

数秒前まで確かに俺の掌にあった錠剤は砂のように砕け、はらはらと床に零れていく。
手に持っていたはずのペットボトルは、目の前に立ちはだかる男に奪い取られていた。

「……何しようとしてた」

地獄の底から這い出てきたような低い声。瞳孔が開ききったアクアマリンが俺を捉える。

「あ、あ、の…」

恐ろしくて唇が震える。上手か話すことができない。

「言えよ。何しようとした」

反射的に目を逸らすと大きな手で両頬を掴まれ、無理やり目を合わせられた。

「5秒待つ。それまでに言わなかったら……今すぐ犯す」

言わなければ。

「5、4、3」

それなのに、口からはあ、とかう、とか言葉にならない文字しか発することができない。

「2」
「あ、あ……」

「1」
「や、まって……んむぅっ……?!」

最後のカウントと同時に男は飛びかかるように俺にのしかかってきた。

「ふざけるな。おまえは僕の番だ。死ぬまで…いや、死んでも離さない……魂まで僕のものだっ!」

激しい嵐のような口づけに、俺はただシーツを握りしめることしかできなかった。
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