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★4.がつがつ

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 彰永の余裕のない顔。それが近づき、襲うように口づけられる。
 俺は座っていられなかった。

「ふ……う、うっ」

 夢とは全然違う。ずっと良い。
 求められることに応えるのが精いっぱいで、なにも考えられなくなってしまう。

 ただでさえ息ができないのに、口に隙間が開くたびに、彰永が俺の名前を呼ぶ。
 卯月、卯月、卯月。うん、うん、うん。

 がんばって答えようとするのだが、彰永は返事する間も与えずに求めてきた。腕だって押さえつけてくるし、そんなことしなくても別にどっか逃げたりしないのに。

「卯月。卯月っ」

 ずっとお預けしていたから、溜まっていたのかもしれない。それとも、シたことのない場所だから、興奮してる?
 そんなに俺が欲しいんだろうか。

 すぐにチンポを勃起させて、キスしながら片手でがちゃがちゃとベルトを外そうとする。ただでさえ不器用なくせに、何考えてんだ。

 もう今すぐにでもブチ込みたくて仕方ないみたいな有様を見せつけられ、俺はすっかり恥ずかしくなってしまった。顔を背けると、耳にかじりつかれる。

「ああ、あ、あっ」
「逃げないで、逃げないで。卯月」

 もがくようにうつぶせた体に、彰永は後ろから被さった。ジーンズはまだ脱げてもないのに、チンポを俺の尻にこすりつけてくる。

「逃げるなよ。俺、おまえが好きなんだよ」

 俺は彰永が喜ぶならなんでもしてあげたい。たとえば優しくベルトをはずして、爆発寸前のチンポを口でたっぷり慰めて射精まで導くのなんてわけもないことだ。

 それで興奮してくれるなら顔にぶっかけてくれるまで口開けて待つし、喉の奥までごりごり使って飲み干したっていい。

 やり方は知ってる。俺は恥知らずのド変態で、それくらいしか取り柄がないらしいから、きっと、得意なんだと思う。

「……好き。卯月が好き」

 でも、彰永は、別に俺が何もしなくたっていいみたい。泣きそうな声で襲ってくる。

「卯月、好き、好き、なあ。なあ、わかって。好きなんだ、おまえのことが」
「ひぁああ、やん、やぁん」

 へこへこと動物みたいに腰を使いながら、耳を口の中で丸めるように吸い立てる。

「嫌? なんでだよ、そんなこと言うなよ、卯月、俺、すっごくガマンしたのに、卯月が」

 股をぐりっと捻じ込もうとしてくる。入るわけないのに、ビクビクと腰が痙攣した。
 昨日から穿きっぱなしの下着が先走りでぐちゃぐちゃに濡れたのがわかる。

「忙しいとか言ってあんなにそっけなかった卯月が、知らない男に襲われそうになってて、俺がなに考えてたと思う」

 居酒屋で仕込まれた一件のことを言っているらしい。本当に職場連中の悪ノリはひどい。

「なんで早く孕ませなかったんだろうって。卯月の赤ちゃんの部屋を俺の精子でいっぱいにして、犬みたいに繋いででもそばにいればよかったって非道いことばっかり考えてた」

 俺の可愛い彰永をこんなにくしゃくしゃにしやがって。俺の背中で彰永は、まるで寒いみたいに震えていた。

「……怒ってくれよ、卯月」

 甘えるみたいに、鼻先ですりよってくる。

「もっと俺をいやがって。もう一生、触るなって言ってくれよ。そうしたら俺、ちゃんとそうする。俺は卯月が大事なんだよ、本当はお嫁さんのことを守りたい。守りたいのに」

 彰永が身を起こそうとする。俺は寝返りを打って、彰永に向かい合った。

「こら」
「ごめんなさい……」

 握り拳を作って一声かけると彰永は、すぐしょげてしまった。ごめんなさいとはまた、随分とまともな謝罪だが、ゴメンネだなんだに慣れてしまった俺には、物足りない。

 俺はいじめっこのように、くそダサいチェーンベルトの先を引っ張ってやった。
 簡単に外れるから拍子抜けする。

「なに勝手にやめてんだよ。ばか」
「だって、卯月が」

 死んじゃうと口走りかけた声に俺は被せた。

「もっと、たくさんして」

 命令するみたいに言い聞かせる。

「もっとだよ、彰永。……もっと」

 彰永は目をしばたかせて聞き返してきた。

「もっと……?」
「もっと。もっと」
「もっと……。もっともっと?」
「もっと、もっと、もっと、もーっと」

 彰永が、ポケットの中のビスケットを大量生産する間、俺は右手でチェックシャツのボタンを、左手ではジーンズのボタンとジッパーを開いた。ラッピングをほどくみたいに。

「もっと俺を、めちゃくちゃに抱いて」

 そう囁いた時には、彰永の体の真ん中の線は暴かれている。自分でも自分の手際が怖い。
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