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ラブラブハッピー番外編
じれじれあまあまゴズメル×リリィ①☆
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「ただいまー」
「「「おかえりなさい、ゴズメルママ!!!」」」
夜八時。ゴズメルが帰宅すると、ジュエル、ローズ、ピーチブロッサムの三人が玄関に勢ぞろいしていた。三人ともお風呂を済ませたばかりらしく髪と肌はぴかぴか、心なしか瞳も輝いて見える。
「おつとめお疲れさまです!」
「あたし、カバンを持ってあげるわ!」
「こっち、こっち!」
「わあ、なんだなんだ……」
ゴズメルは困惑した。いつもマイペースに過ごしている子供たちが、こんなに団結しているなんて珍しい。
(誰かの誕生日だっけ? 学校で何かやらかしたとか……もしかして買ってほしいものでもあるのかな?)
手を洗えばタオルを差し出してくれ、遅い夕食の席に着けば椅子をひいてくれる。とうとう晩酌のボトルとグラスにツマミまで出てきて、「わかったわかった!」とゴズメルは言った。
「それで、あんた達はいったい何が欲しいんだい。言ってごらん」
「……!?」
ゴズメルの言葉に、三人は驚いたように動きを止めた。リリィが台所から出てきて苦笑した。
「みんな。ゴズメルママは仕事が忙しくて、前に話したことをよく憶えてないのよ」
「えっ」
今度はゴズメルが驚く番だった。リリィはゴズメルの横に座って言った。
「学校で、天文台に泊まるイベントがあるって話したの憶えてる?」
「ああ、そういえば……」
少し前にそんな話を聞いたような気もする。子供たちの視線を気にして、ゴズメルはリリィの耳元に口を寄せた。
「三人とも行かないってことでまとまったんじゃなかった?」
大人も子供もいる学校だ。当然、行事も自由参加である。
長男のジュエルはともかく、長女のローズと次男のピーチブロッサムは学校でよくトラブルを起こしている。細かい作業が苦手でいつも怒り出すローズと、泣き虫ですぐ熱を出してしまうピーチブロッサム。話を聞いた時、ゴズメルは『あの二人に泊りがけの行事はちょっと早いんじゃないか』と言った。
ジュエルが『そんなことだったら僕も行かない!』と元気に言ったのも憶えている。ゴズメルは(弟妹想いでえらいなあ!)と感心したのだ。正直親としてはそのほうが助かる。兄一人が参加することになったら、ローズとピーチブロッサムが羨ましがって大変だからだ。
リリィは小さく首を振って囁き返した。
「ゴズメル、あの時ジュエルは怒っていたのよ」
「ええっ?」
「それに、『じゃ、ローズとピーチブロッサムが学校でトラブルを起こさなくなったら行っていいんだね?』って確認したわ。あなたは『うん』って言ってた」
「いやっ……うん……そりゃあ、だって……」
もっと先のことだと思っていた。ゴズメルは三人の子供たちをチラッと見た。みんな口をへの字にして、ジッとゴズメルに視線を注いでいる。
「……え? ってことは、あんたたち、あれからトラブルを起こしてないの?」
ジュエルはそばかす顔をつんと上向かせて言った。
「そうだよ、ゴズメルママ。僕はがんばったんだ」
「ローズが学校で癇癪を起こしてないって? ノートを放り出したり、机を叩いたり……」
「あたし、カッとなりそうになったら、お兄ちゃんかピーチブロッサムのところに行ってハグしてもらったの」
「えぇーっ! ピーチブロッサムは泣いただろう。鉛筆の芯が折れただけで半べそかいて勝手に帰ってきちゃったんだから」
「ぼく、泣きそうになるたんびにお兄ちゃんかお姉ちゃんのところに行って励ましてもらったんだ」
「……!」
三人で協力して乗り越えたらしい。ゴズメルは思わずリリィの顔をうかがった。美しい妻はコクッとうなずいた。
「三人の言っていることは本当よ、ゴズメル。私、あれから一度も学校に呼び出されてないの」
ゴズメルは驚嘆した。一週間に一回は学校にローズとピーチブロッサムを迎えに行かなければならない状況が続いていたのである。
「おやおや、まあまあ! なんてがんばりやな子たちだろう!」
ゴズメルが腕を広げると、三人が胸に飛びついてくる。ゴズメルは小さな三つの額にたくさんのキスの雨を降らせた。
「こうなったらあたしも許可を出さないわけにいかないね。三人で掴んだ勝利だ。ぞんぶんに楽しんでくるといい」
子どもたちが大喜びしたことは言うまでもない。それから消灯時間が来るまで、二階の子供部屋からはおしゃべりしたりベッドで飛び跳ねたりする音が響いていた。寝静まると、それも急に静かになる。就寝までのひととき、ゴズメルはリリィとベッドでくつろいでいた。
「……そうかい。まさか、そんなに天文台に行きたかったなんて」
ゴズメルだったら泊りがけでお勉強なんて絶対にお断りである。寝る時は天文台のガラス張りのホールに寝袋を敷いてみんなで雑魚寝するらしい。それがいちおう行事のウリというかロマンチックなところなわけだが、野宿に慣れている冒険者としては、なんでわざわざそんなことをするのかと思う。
「もう、ゴズメルったら」
ゴズメルの主張に、リリィはくすくす笑った。
「学校のみんなと特別な思い出を作りたいのよ。……私も、学校には通っていたけれど、お祖母さまの意向でそういう行事には参加できなかったから。気持ちはよくわかるわ」
「リリィ……」
遠い目をする妻を、ゴズメルはそっと撫でた。
「気がつかなくてごめんよ」
「いいのよ、ゴズメル。昔のことだわ」
ゴズメルの手に、リリィは幸福そうに頬ずりした。
「お仕事も今、大変なのよね。イーユンが退職を考えてるって……」
「あのひともトシだからねえ。まあ今までも半分隠居していたようなものだが」
天体観測の件も、引継ぎの忙しさにかまけて適当に返してしまったところがある。そのうえすっかり忘れてしまっていたのだからいい親とはいえない。じゃあそのぶん仕事はちゃんとしているのかというと・・・。ゴズメルは嘆息した。
「あたし、やっぱり自信ないよ。会長なんてさあ……」
「ゴズメル、イーユンじきじきのご指名なのよ」
司書から支部会長へと驚きの転身を遂げたイーユンだ。就任当初こそゴズメルもその怠惰っぷりに呆れ果てたが、最低限の働きできっちり成果をあげるスタイルは意外と会長に合っていたようだ。数か月前に体調を崩したのをきっかけに『そろそろ辞めるわ』と言った時はみんなが驚いた。そのうえ彼女が次期会長に推したのは、なんとゴズメルだった。
「いよいよ耄碌しちゃったんだ、あのばあさん」
「まあ、なんてこと言うの」
「だって、あたしはイーユンみたいに上手く立ち回れないしさ。シラヌイみたいに厳しくやる自信も全然ない……」
「ゴズメル。あなたはあなたらしくやればいいのよ」
リリィはゴズメルの手をギュッと握った。
「時代によって求められる会長の資質は違うわ。シラヌイ会長のように厳しい決まりで冒険者たちを団結させる時代とも、イーユンのように一人ひとりに賢いやり方を考えさせる時代とも、これからは違う。だってあなたが新しく会長になるんだもの」
「…………」
ゴズメルは家庭を持っているが、家や子供のことはほとんどリリィに任せている。夜に帰ってきて子供たちに温かく出迎えてもらえるのも、リリィがいてくれるからだ。代わりにリリィは仕事を辞めざるを得なかった。本人は『やっとお祖母さまの望みを叶えられたわ』と笑顔だったが、結果的にゴズメルはアルティカ支部イチのしごでき受付嬢を辞めさせたことになる。
(……それに見合う働きがあるとしたら、確かに、良い会長になることしかないのかもしれない)
ゴズメルはリリィに抱き着いた。「どうしたの?」と、リリィが子供に話しかけるような調子で言った。
「リリィ。いつもありがとう」
額にキスする。リリィははにかみながらゴズメルの首に腕を回した。
「ね……唇にもしてくださる? あなた……」
「うん……」
軽く触れただけで、互いの息の荒さを感じた。強く押し付けて離す。見下ろすとリリィは興奮を押し殺すように目を細めていた。うっすらと覗くエメラルドの瞳が妖艶に潤んでいる。
「……私、お礼を言われるほど良いお母さんじゃないわ」
「うん……?」
「あの子たち、天文台では満月を観察するのですって」
「そ、それって……」
ゴズメルはゴクッと喉を鳴らした。リリィの唇がひどく艶っぽく見える。
「満月の晩をあなたと二人きりで過ごしたいなんて、いけない母親でしょう?」
「……ふ、ふふふ……」
ゴズメルはぞくぞくした。
「そんな言い方して、叱ってほしいんだな?」
「あん……」
明日も早いというのに興奮していた。掛けぶとんをひっかぶったゴズメルは「こいつめ、こいつめっ」とリリィに襲いかかった。二人を飲み込んだふとんが大きく波打つ。
「あぁあ……あぁんん……」
「見てろよ、今度の満月の夜にはここを、こうして……」
「ふゃあん、だめぇ、あなたぁ……っ」
服を着たまま膝を割り開き、股をぱんっぱんっと打ち付ける真似をする。小声で、子供から隠れて行う疑似性交に二人は感じていた。ぎゅっと覆いかぶされば敏感な胸と股とが服を巻き込んで擦れあい、全身に電流が走ったようになる。
「あっ……!」
ベッドのスプリングがギッ……と深く軋み、その状態が五秒ほど続いた。ゴズメルは汗びっしょりでふとんをよけた。リリィはあられもない恰好だった。髪はほつれ、皺の寄ったパジャマは湿り気を帯びている。つんととがった胸の頂点をゴズメルは優しくつねった。
「はうぅん……!」
「ああ、こんなんでヨダレ垂らして悦んで、あんたは最高の嫁だよ、美人で、気立てが良くて……マゾすぎる……っ」
「ひゃう、はふんっ」
「よしわかった。満月の夜までオナニー禁止ね」
「え……っ」
ゴズメルはパッとリリィの胸から手を離した。そのまますぼめた口から長い息をつくと、さっさとベッドに横になってしまう。
「そうと決まったら、今夜はもう寝よう」
「そんな、ゴズメル……」
「好きだろ? こういうの」
寝たままニヤニヤと笑うゴズメルに、リリィは赤面した。
「……好き、だけど……っ!」
「「「おかえりなさい、ゴズメルママ!!!」」」
夜八時。ゴズメルが帰宅すると、ジュエル、ローズ、ピーチブロッサムの三人が玄関に勢ぞろいしていた。三人ともお風呂を済ませたばかりらしく髪と肌はぴかぴか、心なしか瞳も輝いて見える。
「おつとめお疲れさまです!」
「あたし、カバンを持ってあげるわ!」
「こっち、こっち!」
「わあ、なんだなんだ……」
ゴズメルは困惑した。いつもマイペースに過ごしている子供たちが、こんなに団結しているなんて珍しい。
(誰かの誕生日だっけ? 学校で何かやらかしたとか……もしかして買ってほしいものでもあるのかな?)
手を洗えばタオルを差し出してくれ、遅い夕食の席に着けば椅子をひいてくれる。とうとう晩酌のボトルとグラスにツマミまで出てきて、「わかったわかった!」とゴズメルは言った。
「それで、あんた達はいったい何が欲しいんだい。言ってごらん」
「……!?」
ゴズメルの言葉に、三人は驚いたように動きを止めた。リリィが台所から出てきて苦笑した。
「みんな。ゴズメルママは仕事が忙しくて、前に話したことをよく憶えてないのよ」
「えっ」
今度はゴズメルが驚く番だった。リリィはゴズメルの横に座って言った。
「学校で、天文台に泊まるイベントがあるって話したの憶えてる?」
「ああ、そういえば……」
少し前にそんな話を聞いたような気もする。子供たちの視線を気にして、ゴズメルはリリィの耳元に口を寄せた。
「三人とも行かないってことでまとまったんじゃなかった?」
大人も子供もいる学校だ。当然、行事も自由参加である。
長男のジュエルはともかく、長女のローズと次男のピーチブロッサムは学校でよくトラブルを起こしている。細かい作業が苦手でいつも怒り出すローズと、泣き虫ですぐ熱を出してしまうピーチブロッサム。話を聞いた時、ゴズメルは『あの二人に泊りがけの行事はちょっと早いんじゃないか』と言った。
ジュエルが『そんなことだったら僕も行かない!』と元気に言ったのも憶えている。ゴズメルは(弟妹想いでえらいなあ!)と感心したのだ。正直親としてはそのほうが助かる。兄一人が参加することになったら、ローズとピーチブロッサムが羨ましがって大変だからだ。
リリィは小さく首を振って囁き返した。
「ゴズメル、あの時ジュエルは怒っていたのよ」
「ええっ?」
「それに、『じゃ、ローズとピーチブロッサムが学校でトラブルを起こさなくなったら行っていいんだね?』って確認したわ。あなたは『うん』って言ってた」
「いやっ……うん……そりゃあ、だって……」
もっと先のことだと思っていた。ゴズメルは三人の子供たちをチラッと見た。みんな口をへの字にして、ジッとゴズメルに視線を注いでいる。
「……え? ってことは、あんたたち、あれからトラブルを起こしてないの?」
ジュエルはそばかす顔をつんと上向かせて言った。
「そうだよ、ゴズメルママ。僕はがんばったんだ」
「ローズが学校で癇癪を起こしてないって? ノートを放り出したり、机を叩いたり……」
「あたし、カッとなりそうになったら、お兄ちゃんかピーチブロッサムのところに行ってハグしてもらったの」
「えぇーっ! ピーチブロッサムは泣いただろう。鉛筆の芯が折れただけで半べそかいて勝手に帰ってきちゃったんだから」
「ぼく、泣きそうになるたんびにお兄ちゃんかお姉ちゃんのところに行って励ましてもらったんだ」
「……!」
三人で協力して乗り越えたらしい。ゴズメルは思わずリリィの顔をうかがった。美しい妻はコクッとうなずいた。
「三人の言っていることは本当よ、ゴズメル。私、あれから一度も学校に呼び出されてないの」
ゴズメルは驚嘆した。一週間に一回は学校にローズとピーチブロッサムを迎えに行かなければならない状況が続いていたのである。
「おやおや、まあまあ! なんてがんばりやな子たちだろう!」
ゴズメルが腕を広げると、三人が胸に飛びついてくる。ゴズメルは小さな三つの額にたくさんのキスの雨を降らせた。
「こうなったらあたしも許可を出さないわけにいかないね。三人で掴んだ勝利だ。ぞんぶんに楽しんでくるといい」
子どもたちが大喜びしたことは言うまでもない。それから消灯時間が来るまで、二階の子供部屋からはおしゃべりしたりベッドで飛び跳ねたりする音が響いていた。寝静まると、それも急に静かになる。就寝までのひととき、ゴズメルはリリィとベッドでくつろいでいた。
「……そうかい。まさか、そんなに天文台に行きたかったなんて」
ゴズメルだったら泊りがけでお勉強なんて絶対にお断りである。寝る時は天文台のガラス張りのホールに寝袋を敷いてみんなで雑魚寝するらしい。それがいちおう行事のウリというかロマンチックなところなわけだが、野宿に慣れている冒険者としては、なんでわざわざそんなことをするのかと思う。
「もう、ゴズメルったら」
ゴズメルの主張に、リリィはくすくす笑った。
「学校のみんなと特別な思い出を作りたいのよ。……私も、学校には通っていたけれど、お祖母さまの意向でそういう行事には参加できなかったから。気持ちはよくわかるわ」
「リリィ……」
遠い目をする妻を、ゴズメルはそっと撫でた。
「気がつかなくてごめんよ」
「いいのよ、ゴズメル。昔のことだわ」
ゴズメルの手に、リリィは幸福そうに頬ずりした。
「お仕事も今、大変なのよね。イーユンが退職を考えてるって……」
「あのひともトシだからねえ。まあ今までも半分隠居していたようなものだが」
天体観測の件も、引継ぎの忙しさにかまけて適当に返してしまったところがある。そのうえすっかり忘れてしまっていたのだからいい親とはいえない。じゃあそのぶん仕事はちゃんとしているのかというと・・・。ゴズメルは嘆息した。
「あたし、やっぱり自信ないよ。会長なんてさあ……」
「ゴズメル、イーユンじきじきのご指名なのよ」
司書から支部会長へと驚きの転身を遂げたイーユンだ。就任当初こそゴズメルもその怠惰っぷりに呆れ果てたが、最低限の働きできっちり成果をあげるスタイルは意外と会長に合っていたようだ。数か月前に体調を崩したのをきっかけに『そろそろ辞めるわ』と言った時はみんなが驚いた。そのうえ彼女が次期会長に推したのは、なんとゴズメルだった。
「いよいよ耄碌しちゃったんだ、あのばあさん」
「まあ、なんてこと言うの」
「だって、あたしはイーユンみたいに上手く立ち回れないしさ。シラヌイみたいに厳しくやる自信も全然ない……」
「ゴズメル。あなたはあなたらしくやればいいのよ」
リリィはゴズメルの手をギュッと握った。
「時代によって求められる会長の資質は違うわ。シラヌイ会長のように厳しい決まりで冒険者たちを団結させる時代とも、イーユンのように一人ひとりに賢いやり方を考えさせる時代とも、これからは違う。だってあなたが新しく会長になるんだもの」
「…………」
ゴズメルは家庭を持っているが、家や子供のことはほとんどリリィに任せている。夜に帰ってきて子供たちに温かく出迎えてもらえるのも、リリィがいてくれるからだ。代わりにリリィは仕事を辞めざるを得なかった。本人は『やっとお祖母さまの望みを叶えられたわ』と笑顔だったが、結果的にゴズメルはアルティカ支部イチのしごでき受付嬢を辞めさせたことになる。
(……それに見合う働きがあるとしたら、確かに、良い会長になることしかないのかもしれない)
ゴズメルはリリィに抱き着いた。「どうしたの?」と、リリィが子供に話しかけるような調子で言った。
「リリィ。いつもありがとう」
額にキスする。リリィははにかみながらゴズメルの首に腕を回した。
「ね……唇にもしてくださる? あなた……」
「うん……」
軽く触れただけで、互いの息の荒さを感じた。強く押し付けて離す。見下ろすとリリィは興奮を押し殺すように目を細めていた。うっすらと覗くエメラルドの瞳が妖艶に潤んでいる。
「……私、お礼を言われるほど良いお母さんじゃないわ」
「うん……?」
「あの子たち、天文台では満月を観察するのですって」
「そ、それって……」
ゴズメルはゴクッと喉を鳴らした。リリィの唇がひどく艶っぽく見える。
「満月の晩をあなたと二人きりで過ごしたいなんて、いけない母親でしょう?」
「……ふ、ふふふ……」
ゴズメルはぞくぞくした。
「そんな言い方して、叱ってほしいんだな?」
「あん……」
明日も早いというのに興奮していた。掛けぶとんをひっかぶったゴズメルは「こいつめ、こいつめっ」とリリィに襲いかかった。二人を飲み込んだふとんが大きく波打つ。
「あぁあ……あぁんん……」
「見てろよ、今度の満月の夜にはここを、こうして……」
「ふゃあん、だめぇ、あなたぁ……っ」
服を着たまま膝を割り開き、股をぱんっぱんっと打ち付ける真似をする。小声で、子供から隠れて行う疑似性交に二人は感じていた。ぎゅっと覆いかぶされば敏感な胸と股とが服を巻き込んで擦れあい、全身に電流が走ったようになる。
「あっ……!」
ベッドのスプリングがギッ……と深く軋み、その状態が五秒ほど続いた。ゴズメルは汗びっしょりでふとんをよけた。リリィはあられもない恰好だった。髪はほつれ、皺の寄ったパジャマは湿り気を帯びている。つんととがった胸の頂点をゴズメルは優しくつねった。
「はうぅん……!」
「ああ、こんなんでヨダレ垂らして悦んで、あんたは最高の嫁だよ、美人で、気立てが良くて……マゾすぎる……っ」
「ひゃう、はふんっ」
「よしわかった。満月の夜までオナニー禁止ね」
「え……っ」
ゴズメルはパッとリリィの胸から手を離した。そのまますぼめた口から長い息をつくと、さっさとベッドに横になってしまう。
「そうと決まったら、今夜はもう寝よう」
「そんな、ゴズメル……」
「好きだろ? こういうの」
寝たままニヤニヤと笑うゴズメルに、リリィは赤面した。
「……好き、だけど……っ!」
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