【ふたなり百合】月イチ生える牛型巨女が魅了バフ持ち受付ヒーラーと協力してレベルアップ素材(童貞喪失精子)ゲットする【ゲーム系異世界】

春Q

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ラブラブハッピー番外編

ゴズメル×リリィで催眠もの②(まだ導入)

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(もーやだ、あんな神経質なお嬢様となんて付き合えない! 別れてやる!)

 頭に血が上っている時はそう思った。が、昂ぶりが収まるにつれ、だんだんと(なんであんな言い方しちゃったんだろう?)と自責の念が襲ってきた。

 リリィは汚いと思いながら掃除してくれたのだ。ゴズメルがキレるなんて思わなかったのだろう。それに、最後まで話し合おうとしてくれていた。今頃は向こうだって不潔なうえに頑固な女と付き合えないと思っているかもしれない。

 ゴズメルは、すっかり怖くなってしまい、それから何日か支部の受付に行けなかった。リリィと顔を合わせたら最後、『私たち、もう終わりにしましょう』なんて言われてしまう気がする。それは嫌だった。しかし自分から謝るのはもっと嫌だった。

 客観的に見てリリィが正しいことはわかっているが、じゃあ自分が間違っているのかというと違う。家でのトイレの仕方くらい勝手にさせてほしい。

(向こうが先に謝ってくれればいいのにな。そしたら、あたしだって……)

 今にして思えば、その正直な気持ちを伝えればいいだけの話なのだが、当時のゴズメルは意固地になっていた。催眠術でも使ってリリィの行動を操れればいいのにと妄想してしまうくらいだ。が、もちろんそれはただの妄想である。奇妙な任務が舞い込んできたのは、ちょうどその頃だった。

「キリの谷に行けって?」

 会長のシラヌイじきじきの呼び出し、それも場所は喫茶室だ。アルティカにたった一軒しかない、商談や会食に使われる高級な店で、ゴズメルはシラヌイと向かいあっていた。なんでも好きなものを頼めと言う。相当の厄介ごとに違いなかった。

 ゴズメルは塔のごときパンケーキをナイフでギコギコやりながら尋ねた。

「キリの谷ってキノコと山菜が採れるとこだろ。今時期はクマが出るんじゃないかね」

 貴重な素材や魔物バグが出るわけでもなし、冒険者にとっては特に旨味のない土地である。ゴズメルの言葉に、シラヌイはうなずいた。

「俺もそう思う。だが、依頼人にとっては違うらしい」

「うん? 山菜マニアのひと?」

「大陸からの客だ。大金持ちでな、『呪い石』を探しまわっているらしい」

「何ソレ」

「平たく言えば、人間を操る力を持つ石だ」

 タイムリーすぎる話題に、ゴズメルは思い切りせた。

「……どうした」

「いやっ別に。そんな石コロがあれば、あたしだって欲しいと思っただけさ」

「フン。ろくでもない石だぞ」

 シラヌイは苛立たしそうに説明を続けた。

「依頼人いわく、石には人間の思いを吸い取る力があるらしい。呪い石というのは文字通り呪いを吸い取った石だな。強い呪いの力で人間を思うがままに操ることができるそうだ」

「なんだよ、怖い話じゃないか!」

 キリの谷は、先の大戦で甚大な被害を被った土地だ。非戦闘員の村人が逃げ込んだとされる横穴も、遺構として残っている。恨みのこもった石のひとつやふたつはあるだろうが、罰当たりな話だ。

「だいたい……そんな変てこな石を使ったら犯罪なんじゃないの」

「発見されていない石を裁くことはできない。見つかったところで、霊的な力となると、立件は難しいだろうな」

「いや、だとしても気分的に嫌だなあ! 人の犠牲を自分のために利用しているみたいじゃないか」

「ところが依頼人は、この呪い石探索に並々ならない情熱を傾けている」

 シラヌイが言うには、今回の依頼もあくまでガイドを頼みたいだけらしい。自分以外の人間が石を見つけると、操られる危険性があるからだ。トンチのような話に、ゴズメルは呆れてしまった。

「嫌な金持ち! でも、そんな石を欲しがるってことは、やっぱり人の心ってお金じゃ買えないんだね」

「買えてたまるか。この依頼人はほかの支部でも似たようなことをしていてな、墓荒らしみたいな真似をするんでどこも迷惑している。そこでだ」

 シラヌイはフンッと鼻を鳴らして、ゴズメルを指さした。

「ゴズメル、おまえはガイドするフリをして依頼人の問題行動を記録しておけ」

「へっ? どういうこと?」

「出禁にしてやるにも相応の理由が必要だからな」

「ンッ……」

 ゴズメルは今食べたパンケーキが急に胃にもたれてきたのを感じた。

「記録ってなんだい。あたし、難しいことはよくわかんないよ」

「問題だと思ったことをメモなり写真なりで残しておくんだ。後々、それを証拠品としてやつを吊るし上げてやる」

 シラヌイは腕組みして気焔を吐いた。

「ほかの支部の連中は大金を出されてうまいこと丸め込まれたようだが、俺はそうはいかん。金持ちの道楽かなんか知らんが、こんなくだらない仕事、二度と発注できんようにしてやる」

「うえぇ……」

 なんなら事故を装って谷底に突き落として来い、などと言われた時はゴズメルも(さすがに言い過ぎなんじゃないの)と思ったが、当日、実際に依頼人を前にしてその考えを改めた。

「ほほう。女のガイドとは気が利くなあ……」

 その男・オーガストは黒服の部下をぞろぞろと引き連れて現れた。中年太りした小男で、どろんと濁った眼をしている。彼はあろうことか、ゴズメルを見ると、「道中よろしく頼むよ」と言って、胸にタッチしてきた。

 公然と行われたセクハラに、ゴズメルはびっくりしすぎて咄嗟に怒れなかった。

(クソッ……! こ、こいつ……!)

 揉まれていたらゴズメルも『はいアウトだアウト!』と、すぐさまシラヌイに言いつけに行っていただろう。ところがオーガストは小賢しくも一瞬タッチしただけだった。

 これでは『ちょっとアイサツしただけじゃないか、だから女は面倒なんだ』などと言い逃れされる可能性がある。ゴズメルは大きな胸に熱い闘志を燃やしながら、任務を続行するしかなかった。

 キリの谷は静かなところだ。山と山の懐に抱かれ、いつも藍色の霧がかかっている。周辺には小さな村がいくつかあるが、田舎びた村人たちは一行の物々しい様子に驚いていた。

「あの……こんな辺ぴな村に、どういったご用件ですか」

「驚かせてごめんよ。このひとたちは遺構の見学がしたいんだってさ」

「えぇ! でも、もう熊が出はじめてますよ……」

 村長と話しているところに、オーガストが「失礼」と言って割り込んできた。ゴズメルは、彼が村長に握手するそぶりで金を握らせるのを見た。今までも、こうやってあちこちに潜り込んできたのだろう。

「いい村ですねえ、ご老人。自然も豊かで」

「は、はい……それは……」

「それに……くんくん、何やらいい匂いがする」

 オーガストが赤黒い豚鼻をうごめかすさまは、グロテスクというほかなかった。

「健康な若い女の子もいるのかな? グフフ、ぜひお近づきになりたいものだ……」

「え、あの……」

 村長は困っている。ゴズメルは、すかさずカメラでパシャッと写真を撮った。シャッター音を聞いたオーガストが物凄い形相でこちらを睨んでくる。

「なんだ、失礼な。撮影の許可を出したおぼえはないぞ」

「せっかく握手してることだし、記念に一枚撮っただけさ」

 ゴズメルはしらばっくれたが、オーガストは「不愉快だ」と怒った。

「カメラをこっちによこせっ」

「おや、そんなに怒らなくても。じゃ、この一枚は村長さんにあげようっと」

「あ、ああ、これはどうも……」

 ポロロイドカメラで撮影したものだ。目くばせすると、村長は受け取ってくれた。この場でオーガストに処分されるよりは、第三者に渡しておいたほうがまだいい。

 苦虫を噛み潰したような顔をしているオーガストに、ゴズメルはわざと能天気な声で言った。

「さ、もう行こうよ。熊はおっかないけど、お連れのお兄さんたちはさぞ強いんだろうからね。道案内はあたしに任せておくれ」

「……フン」

 オーガストは引き下がったが、村に数名の部下を残していくことは忘れなかった。拠点を準備するためらしいが、女遊びの準備の間違いだろうとゴズメルは思った。オーガストは、金さえ積めばなんでも自分の思い通りにできると考えているのだ。

 しかし女心だけは別である。クマよけの鈴をガラガラ鳴らして歩きながら、彼はべらべらと自分語りした。オーガストは跡継ぎを連れて出て行った妻のことを「あのバカ女」と言ってはばからなかった。

「わしがあれほど良くしてやったというのに、その恩を仇で返しおったのだ」

「フーン……」

「ぐふふっ、捕まえたあかつきには二度とわしに逆らえないようにしてやる。いや、あのバカ女だけではない。石の力を使えば世界中のありとあらゆる人間がわしにひれ伏すようになるだろう」

 本当にそんな石が実在したらの話だ。ゴズメルは『バカはあんたのほうだ』と張り倒してやりたくなったが、黙っていた。スパイとはいえ任務中だし、オーガストの気持ちもわからないでもない。

 あれからリリィの接触はなかった。ゴズメルは、自分が謝りに行かなければ、向こうが家に訪ねて来てくれるんじゃないかと期待していたのに。手紙をよこしたり、人づてに連絡したりも一切ナシだ。これは自然消滅してしまったということなんだろうか。

(あーあ、ベッドではあんなに情熱的に愛し合ったっていうのに、一回のケンカで全部おじゃんになっちまうのか……)

 なんだか悔しくて悲しい。記憶の中のリリィの顔は綺麗すぎて、いやに取り澄ましているように感じた。オーガストではないが、力づくで従わせてやりたい。意志も行動もお人形みたいに操れるリリィなら、きっとゴズメルを傷つけることもないのだろうから。

 遺構は鬱蒼とした木々の中にある。足腰を鍛えるには絶好の環境なので、ゴズメルも新人冒険者と共に何度か来たことがあった。肥満体のオーガストは部下にかつがれるようにして後をついてきた。

「このへんが遺構だよ。地面にミゾがあるだろう。昔の村人たちはレールで荷物を引いて、あの横穴に避難したんだ」

「フン。まるで、沈む船から逃げ出すネズミのようだな」

「ネズミが自殺するかい?」

「なに?」

「みんな、ひどい殺され方をする前に自分から死んでいったんだ。少なくともあたしはそう聞いてるし、ほら、これを見な」

 ゴズメルは石碑の土埃を手で払った。犠牲者たちの名前がびっしりと刻まれている。

「このへんぜんぶお墓なんだよ。うろついてる熊は墓守熊とか呼ばれてる」

「ふ、ふん……」

 ゴズメルはおやと思った。急に疲れが出たのだろうか、オーガストがゼエゼエいいはじめたのだ。あちこちで罰当たりなことをしてきたというし、まさか怖くなったわけではあるまい。本当に体調が悪いようだった。

 ゴズメルが「ちょっと休もうか」と言おうとした時、空気が急にひやっとした。気がつくと霧が濃くなっている。ゴズメルは慌ててガイドとして指示を飛ばした。

「はぐれたら大変だ。一か所に集まって!」

 後方から叫び声が聞こえた。熊か。視界が悪い中で獣とやりあうのは分が悪い。こちらは同士討ちになるし、熊は鼻が利くのだ。とっさに依頼人を死なせてはまずいと判断が働き、ゴズメルはオーガストの腕を引っ張った。

「横穴に入ろう! あそこなら霧をしのげるはずだ」

 何人ついて来られるだろうか。あんなに熊よけの鈴を鳴らしていたのに、それでも襲われるなんてどういうことだろう。いっそオーガストなんて放り出してやったほうが世のため人のためなのではないか――。思考が一斉に脳内を駆け巡り、横穴にたどりついたゴズメルははたと気づいた。握っている手がやけに小さいのだ。

「ん!?」

 横にいるのは、小さな女の子だった。ゴズメルは目玉が飛び出るかと思った。
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