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ラブラブハッピー番外編

淫語禁止のゴズメル×リリィ③★

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 湯気が濛々もうもうと立ち上っている。ゴズメルは熱い風呂が好きなので、火の魔石を二つ使う。リリィは一つか、疲れている時は半分に割ってもいいと思うくらいなのだが。このあたりは種族の違いなのだろう。

 洗い場で髪を洗うリリィを、ゴズメルは湯舟に頬杖をついて眺めていた。髪は泡でまとまり、腕を上げているので、白い胸がさらけだされている。ゴズメルは妻を目で犯すことをはばからなかった。あからさまな視線にリリィの息は上がり、胸は震える。

「ハァハァ言って、やけに苦しそうだね」

 ゴズメルは、わざとらしく心配してみせた。

「暑いのかい。魔石を一つ減らそうかな」

「……あなたが、そんな目で見るから……っ」

「そんな目って?」

 とって食うような目つきだ。今も言葉だけでリリィを弄んでいる。指一本も動かさずに、リリィの全身を愛撫している。これから起こることへの期待に、リリィの股はすでに濡れ始めていた。見られ続けた乳房はつんととがり、汲み置きの桶を取る手は震えている。

 ぬるま湯を頭からバシャッとかぶると、一瞬だけ体の輪郭が浮きぼりになり、外気に触れてボワボワと火照った。膝を閉じようとしても、腿と腿を擦り合わせるようになってしまう。

「……おいで」

 大きな手に促され、リリィは湯舟に入った。足し水のおかげで上澄みはぬるいが、底は熱い。そう広い風呂ではない。リリィはゴズメルの膝にまたがることになる。二人は裸で抱き合い、口づけあった。

「あぁ……」

 思いのほか反響した吐息に、リリィは肩を強張らせた。なんという淫らな声だろう。もしジュエルに聞かれたらと思うと怖くなる。『下品なことを言ってはいけません』なんて指導できなくなってしまう。ゴズメルが薄く笑った。

「可愛い声だ。もっと聞かせておくれよ」

「やめて……あなた、ゆるして……」

「いいや、ゆるさない」

 グイッと腰を抱き寄せられてしまうと、リリィは口づけに酔うことしかできなかった。ゴズメルの分厚い舌と熱い息に責め立てられ、頭がくらくらする。

「あぁ、だめ……だめよ……こんな声をジュエルに聞かれてしまったら、わたし……」

 リリィはゴズメルの胸を、そっと押した。

「あなたも、疲れているでしょう? 今夜は私にご奉仕させて……」

「抱かせろって言っただろう。あんたのよがるところを見るのが、あたしのご褒美なんだよ。リリィ」

「そんな……」

 体格差が違いすぎる。大きな体と強い力に、リリィは押し負けた。胸も女性器もつぶされ、こすりつけられて、ますますこもった喘ぎが漏れてしまう。リリィは必死に口づけで息を殺した。ぴちゃぴちゃと唾液が絡まりあう音が鼓膜に響き、肌を震わせる。

「あぁ、ゆるして、あなた……他のことならなんでもしますから……」

 おねがい、おねがい、と熱に浮かされたように懇願する。妻のあられもない姿に、ゴズメルは唸った。ギュッと判を付くように唇を押し当てて、言った。

「ジュエルも、弟か妹が欲しいって言ってたよ」

「えっ……本当に?」

 実際のところジュエルは『リリィママがぼくを好きすぎて、たまにコワイ』と言ったのだが、ゴズメルは「ウン」と重々しくうなずいてみせた。ジュエルはリリィが思っているよりも自立心が強い。過度な愛情が束縛になるのなら、与えさきを分散すれば解決するのである。

「お金には余裕があるけど、忙しくて祈願のための時間がとれないからね。今のうちにタップリ好感度を上げておくべきなんだ。ジュエルのためにも!」

「……あなたは、それでかまわないの? ゴズメル」

「へ?」

「だって、あなたは兄弟を作るのに前向きじゃなかったでしょう……」

 ゴズメルは目をパチクリさせた。だが、その瞳はすぐに優しい光を湛える。ジュエルが生まれるよりずっと前にゴズメルが言ったことを、リリィはずっと気にしていたのだ。

「……あたしはミノタウロス族の、荒っぽい子育てしか知らなかったんだ。何か悪さしたら深い穴に落として、勝負で負けたら小便をかける。そういうやり方を普通だと思ってたんだよ」

 親の目は行き届かない。兄弟がいたら末っ子が割を食う。子供の時のゴズメルは、一人っ子が世界で一番幸せだと思っていた。母が妹を授かった時も『あたしが守ってあげなきゃ!』と使命感に燃えていたのだ。

「でも、あんたとジュエルを見ていて、そうじゃないってわかった」

 ゴズメルはリリィの頬を両手で包んだ。

「あんたのやり方は優しくて、賢くて……しようと思えばそうできるのに、あんたはジュエルがどんなにわからず屋でも、手を上げたりしなかった」

「ゴズメル、そんなの、普通のことだわ……」

「それが普通じゃなかったのさ。あたしにとってはね」

 リリィは思い出した。ジュエルがまだ赤ん坊だった頃ゴズメルは抱くこともままならなかったのだ。「まるでトーフみたいだ! 崩れそうで怖い!」そう泣き言を言っていたのと同じ口で、ゴズメルはリリィに口づけた。

「あたし、あんたとなら二人目もほしいな。どう思う? リリィ……」

「嬉しい……」

「ほしいって意味?」

「欲しいわ……」

 上目遣いに求めると、ゴズメルの喉が鳴った。性欲には、匂いがある。ゴズメルのそれはまるでマツの葉を燻したように濃い香りだ。浴室に浮かぶ泡と混ざり合い、噎せ返るほど甘く感じる。

「それでも、声を出すのは嫌かい?」

「だって……」

「しょうがないなあ」

 ゴズメルは悪いことを思いついた顔をしていた。リリィの肩にお湯をかけ、二の腕へと手をすべらせる。

「じゃ、いやらしく聞こえないように『気持ちいい』って伝えておくれ」

「……?」

 困惑するリリィをよそに、ゴズメルの手はもう湯の中にあった。リリィの内腿を、すっと指でたどる。

「ここ、なんて言うんだ。リリィ」

「足……?」

「足の間には何があるの」

 リリィは意図を理解して赤くなった。ジュエルがふざけて使った言葉だ。そっと言い換える。

「お股……」

「そう。あんたのお股に触ってもいいかい? リリィ」

 持って回った聞き方に、リリィはぞくぞくと感じた。

「はい、私のお股に触ってください……あぁっ……」

 縦すじを指でなぞられて、リリィの口からは思わず甘い喘ぎが漏れた。ゴズメルが片眉を上げて手をひっこめる。その冷たい眼差しに、リリィは被虐心を掻き立てられた。ジュエルに聞かれて困るようなことは、言ってはいけないのだった。

「ごめんなさい、ゴズメル、もう言わないから、お股に触って……」

「ふーん? そんなに気持ちいいのかい?」

『はい』。そう一言で済ませてよい問いかけだった。うなずくだけでも返事になる。リリィの舌が甘くしびれた。ゴズメルのまえで、もっと惨めな姿を晒したい。

「はい、私は、ゴズメルにお股を触られると、気持ちいいです……」

「ふふ」

 ゴズメルは満足げだった。リリィの股へ、一回、二回、指を往復させる。唇を噛みしめて耐えるリリィは、こぷっ、と股が振動するのを感じた。お湯に愛液が漏れだしていた。

「なんだい、この汁っぽいのは」

「……はぁ、た、体液、です……私は、気持ちよくてぇ……っ」

 ゴズメルの爪が、陰核をかすめた。指先が包皮をめくりあげる。リリィはがくがくと腰を震わせた。愛液はどんどん漏れ出していた。

「おやおや、つらそうじゃないか。やめるかい?」

「や、やめないで……っ、お願いします、やめないでくらひゃっ、っ、っ……!」

 リリィはゴズメルの首にすがりつき、夢中でキスした。唇で淫らな言葉を封印するリリィにゴズメルは従った。口づけながら、指ですばやく表面をなぞりつづける。とうとうリリィは追い詰められた。

「あぁ、あぁーっ」

 腰が痙攣し、胸がのけぞる。ゴズメルは顔の前に来た乳首に唇を付けた。

「すごい声だね、リリィママ」

「あぁっ、ごめんなさい、ごめんなさい、ゴズメル」

「謝っていないで、説明したらどうだい。うん? なんだい、急に叫んだと思ったら、ずいぶんお湯を汚してるじゃないか」

 臍の下を撫でさすられる。リリィは息も絶え絶えだった。ゴズメルの舌先の熱が火のように胸に灯り、肺をめらめらと燃やす。

「わたしは、お股を触られて、気持ちがよくて……っ、お股から体液をたくさん出してしまいました……っ」

 もはや何がいやらしい言葉で、何が普通の言葉なのか、リリィにはわからなかった。何もわからない。ゴズメルが微笑んでいることしかわからない。

「気持ちがいいのは結構だが、お湯を汚すのは困るね……」

 指が膣口に触れる。リリィは指欲しさに勢い込んで身を起こした。だが、「悪い子だ」と内腿をキツくつねられてしまう。

「人の指で、勝手に何をしようとしているんだ」

「お……お股に指を挿れてくださいっお願いします……!」

 リリィはお湯を跳ね散らかしながら必死にセックスアピールした。膝立ちになり、女性器を左右に開き、限界まで腰を反る。

「ここっ、ここに指を挿れてっ。わたしのお股をもっと気持ちよくしてくださいっ」

「お股で気持ちよくなりたいのか」

「はいぃ……」

 乳首に息を吹きかけられると、声がしぼんでしまう。リリィは死ぬも生きるも、ゴズメルの気分にかかっているような気がした。二十秒も三十秒も淫らなポーズを取り続け、ひたすら指を挿れてもらえるのを待つ。熱気と快感に意識が朦朧とするリリィは、荒い呼吸が嬌声に変わってしまっていることに気づかなかった。

「んはぁん……あぁん……」

 たっぷり間を持たせて、ゴズメルは動き出した。股に指をあてがいながら、もう片方の手で火の魔石が入った袋をよけてしまう。そのまま、湯船の栓も抜いてしまった。

「あたしが指を動かす間、何をされてどう感じているか、ちゃんと恥ずかしくない言葉で説明するんだよ」

「あぁ……ありがとうございます、ご主人さま……」

「フフ。そんな呼び方して、ジュエルが真似したらどうする」

「はふ……」

 意地悪な指摘にリリィは震えた。母親として妻としてあるべき姿を想像するだけでゾクゾクしてしまう。もっとゴズメルの命令を聞き、いたぶられ、気持ちよくなりたい。そんな淫らな欲望を果たすことしか考えられない。

「あなた……来て……!」

 湯のなくなった浴槽で、リリィはすべてをさらけだしていた。股を開き、尻の後ろに手をついて腰を前後に揺すっている。ゴズメルはゆっくりと手を伸ばしてきた。待ちわびた触れ合いに声が弾んでしまう。

「あ、ゆび、が、お股に入ってきます……っあぁ、太ぉい……」

「あたしの指が好きかい?」

「好き、好きですうっ、お股の奥、届く……好きっ」

「仕方ない子だね、指で塞いでも汁があふれてくるよ……」

「あ、あ、ごめんなさい、気持ちよくてタイエキが止まらないです、出る、また出ひゃう、ごめんなさい、あなたっ」

 愛液を潤滑油に、ゴズメルはたっぷりと膣内を責め立てた。中指を増やし、ぐるりと奥を掻き回す。

「くぅうっ……」

 一度は唇を噛みしめたリリィも、ヂュブヂュブと股を犯されはじめると、もう声を出さずにはいられなかった。

「あぁあっ、指でお股を擦られて気持ちいいです、気持ちいいです、お股きもちいい、いい、いいぃん」

 涙が出てくる。リリィは叫びたかった。『もっといじめて』『私のおまんこをめちゃくちゃにして』『噛んでください』『叩いてください』『淫らな妻を躾けてください』……しかし、それらすべての言葉は今、禁じられている。興奮するために汚い言葉を使いたいだなんて、母としてジュエルに顔向けできない。

 ゴズメルは涙ぐむリリィをうっとりと見つめた。

「泣くほど気持ちいいの」

「ひもちぃれひゅっ、ごずめる、ひもちぃいよぉっ」

「フ……。いいよ、リリィ、バカになっちまえ」

 耳元に囁かれた新しい言葉に「はい、はいっ」リリィはいとも簡単に飛びついた。

「リリィはお股に指をいれられてバカになります、お股がきもちよくてバカになります、リリィはバカです、リリィはバカです、バカれひゅっひうんっひんっあぁあんっ」

 空っぽの湯舟で、リリィは絶頂した。感じすぎて本当にバカになってしまったに違いない。肘をついて仰向けに倒れ、虫のように手足をわななかせている。

「あぁ、あぁー」

 開きっぱなしの膝をガクガク震わせているリリィに、ゴズメルは覆いかぶさった。

「まだイき足りないだろう」

「ふぁあ、あぁ、あっ」

「バカ」

 耳元に囁かれた鋭い罵倒が、脳を貫いた。体が言うことを聞かない。絶頂し続けてしまう。気持ち良すぎて怖いほどだ。快楽の涙を流すリリィを、ゴズメルは容赦なくいたぶった。乳房をひっぱり、痛みを与えながら、耳から甘い毒を流し込み続ける。

「リリィのバカ。バーカ。ほら、バカ面丸出しで、もっとバカみたいに気持ちよくなるんだよ。バカ女」

 知性を奪われたリリィは、泣きながらイき狂った。口のはしから垂らしたよだれを、ゴズメルは満足げに舐めとる。そのまま唇を貪られ、リリィは(コトバは、ただコトバなのだわ)と思った。何か真理を掴みかけたような気がしたのだが――その前に意識を失ってしまった。


◇◇◇


「おや、起こしちまったか」

 ごめんよ、と頬を撫でられて、リリィは瞬きする。そこは柔らかなベッドの中だった。混乱した次の瞬間、茹で上がったように頭が熱くなる。ふとんの中に隠れるリリィを、ゴズメルは笑った。

「そんなに恥ずかしがることないだろ。さっきのあんた、すごく可愛かったよ」

「慰めはよして……! 今すぐ寝れば夢にできるかもしれないわ」

「……夢にしたい?」

 優しく尋ねられて、リリィはおずおずと布団から顔を覗かせた。同じベッドの中にゴズメルがいた。枕に頬杖をつき、じっとリリィを見つめている。

「……いいえ」

 リリィは首を振った。ゴズメルがジュエルと共に帰ってきて、ひたすらに愛してくれた。穴があったら入りたいほど恥ずかしいけれど、これ以上の幸せはない。

「ならよかった」

 ゴズメルは肩をすくめ、ごろんとリリィの横に寝た。クスッと笑ってリリィのネグリジェの肩紐をひっぱってくる。

「可愛いね、これ。それに懐かしい」

「……あなたが着せてくださったの?」

「他に誰がいるんだい」

 リリィは瞬いた。髪も体も拭いてもらって、着替えまで――何もかもやらせてしまったのだ。

「大変だったでしょう」

「全然。お人形さんのお世話してるみたいで良かったよ。またやらせておくれ」

 こちょこちょと顎の裏をくすぐられ、リリィは脱力した。

「知らなかった。あなたって、私よりずっと母親に向いているんだわ」

「あたしが? どうして」

「だってジュエルのことだって解決してくれて、私の世話まで……ごめんなさいね、ゴズメル、私も稼ぎの良い冒険者だったら、あなたが子供を産む選択肢もあったでしょうに」

 この機会に転職しようかしら、とまで言うリリィに、ゴズメルは吹き出した。

「なに言ってんだい。あんたが丁寧に育てたから、ジュエルはあたしの言うことをちゃんと聞くんだよ。仮に逆だったらちゃんと学校行くような子に育ってないよ」

「そうかしら……」

「そうだよ、リリィ。あたし達はナイスコンビで、ジュエルも合わせれば最強チームなんだ」

 ナイスコンビ。最強チーム。それはとても素敵な響きだった。ここにさらにもう一人加わったら、と思うと甘いため息が漏れてしまう。リリィは「ありがとう」と言ってゴズメルの頬に唇を付けた。

「……さ、もう寝よう。夜が明けたらまた忙しくなるんだから」

「坊やのお世話ね?」

「そうさ。『お腹すいたー』って起きてきて、やれ学校だ、あれがないこれがない、夕べお風呂に入りそびれたって大騒ぎするんだから」

「きれい好きなのよ」

「それに物を大事にする。大事にしすぎて、どこにしまったか忘れる」

 二人は声を立てて笑った。ゴズメルはリリィの手を握り、指を絡めた。

「たまに思うんだ。ジュエルが大人になって、いつかそのへんにいるようなオッサンになってもさ、きっと、あたしにとってはずっと可愛い坊やなんだろうなあって」

「……そうよ。それに、あなたもよ。ゴズメル」

「えぇ? あたしも?」

「おばあちゃんになっても、あなたは私の素敵なお嫁さんだわ」

「おや、まあ」

 ゴズメルは虚を突かれたような顔をした。子供の成長は待ち望むくせに、自分が年をとるなんて思いつきもしなかったらしい。

「そっか。自分の親が早々といなくなったから、あんまり考えてなかった。順番なんだよな。あたしたちも、いつかは年をとって――」

 リリィはゴズメルの唇を唇でふさぎ、不吉な悪い言葉を言わせなかった。

「そんなに先のことは、今はいいの」

 妖精の甘い囁きに、ゴズメルは「うん」とうなずいた。二人は口を閉じ、寄り添い合う。

(私たち、同じ夢を見ているのかもしれないわ)

 リリィは深く息をついた。泣き疲れていたのだろう。もう一度吸い直した時には、もう深い眠りに落ちていた。

 翌朝、腹をすかせたジュエルは様子を見に来て「やれやれ、ママたちったら」と呆れた。

 だが、穏やかな寝息を立てる二人を見ているうちに、大きなあくびをした。むにゃむにゃと同じベッドに横になる三人の寝顔は、どことなく似通っている。
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