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ラブラブハッピー番外編
ゴズメルとリリィとマリアの仁義なき3P ⑤★
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三人の交わりは、風船バレーのようだった。ひとつの紙風船をゴズメルが弾き、山なりに落ちてきたところをリリィがマリアにトスする。マリアはあまり上手くはなかった。タイミングがずれて紙風船を落としそうになったり、逆に高く打ち上げすぎたりする。一番早く息が上がるのもマリアだった。自然なことだろう。現実にはゴズメルとリリィに前後から挟まれているのだから。
「あぁっ、あぁっ」
リリィが背後からマリアの右耳を食むのに、ゴズメルも倣った。マリアの左耳は陶器のように薄かった。耳ひとつとっても違うことに驚かされる。リリィの耳は貝殻に似ていて、非常に立体的なのだ。
「はぁあんっ」
マリアの吐息がひときわ高くなる。ゴズメルは股に当てた手をゆっくりと動かした。本人はもう知っているだろうことを、端的に教えてやる。
「びちょびちょ」
「……い、いやっやめてっ」
「胸もすごいわ……ツンと張りつめて」
リリィの指が胸の輪郭を確かめていた。重たげな胸の頂点で、丸々とした乳首が力強く勃起している。リリィは両手を杯のかたちにして、乳房をたぷたぷと持ち上げた。
「重い胸が乳首に引っ張られて痛いでしょう? かわいそうに」
「い、痛くなんて、ふんあっ、あぁっ!」
言い切るより先にリリィがフッと手を下げた。重みに耐えて健気に勃起する乳首を間近に見て、ゴズメルは思わず視線を落とす。そのままリリィが差し出したマリアの乳首を舐めた。
「んぁああ、やらぁっ、やらっ」
逃げようとしても、前後から挟まれて逃げ場がない。ゴズメルは大きな口でリリィの手ごと乳房をしゃぶりたてた。「ひぃ、ひぃーっ」と漏らす声は悲痛なのに、スリットがどんどん濡れて開いてくる。
「んーっ。ひゅげ、でかいチクビがチンポみてえにパンパンに腫れてら」
「違うっ、私の胸はそんなのじゃない!」
ゴズメルは鼻で笑った。口を前後させるだけで、ぬぽぬぽと音が立つ乳首を、舌の上に載せて見せた。
「見へみ。おら」
「いやぁっ、あぁんっ」
唾液で濡れた乳輪に鼻息がかかる。マリアが顎をひいてのけぞった。その背中では、小柄なリリィが「むぎゅ」といった。
「バカ、もっとこっち来な」
「ひぁぁあっ」
抱き寄せると、股が深く指を食う。
「すっげ、まんこが指をチュパチュパ吸ってるじゃないか。指が抜けないよ。ほら」
「うるさい、うるさいっ」
粘膜が吸盤のように吸いついてくるのだ。ゴズメルはよりかかってきたマリアの耳に、ふーっと息を吹きかけた。愛液とも我慢汁ともつかないぬめりを利用して、ゴズメルは粘膜を刺激した。
「ナカが溶けてきてる……チンポしまっとく割れ目を交尾に使うってことは、あんたもともとクリチンポも二本生えてんだ?」
「黙りなさいよ! ひとをバカにして!」
「バカにしてんのはそっちだろ……こっちは妻子がいるのに誘惑してきやがって……!」
ゴズメルはキスした。
角の長いマリアとキスするのは、少々コツが要った。斜め下から頬を擦りつけるように唇を合わせるのだ。的を外すとケガをするので、目蓋は最後に閉じる。小柄なリリィであればすんなりと入れる懐も、ゴズメルの場合は大きすぎる胸が邪魔する。乳首と乳首で押し相撲すると、マリアは押し返してきた。仕方なくゴズメルはぬるっとかわす。互いの谷間に乳房を挟むようにしてようやく人心地ついた。
「舌、もっと出せよ……っ、エロいキスさせろ……っ」
「ふぁんっ、あうっ」
マリアの唇は、開ききったチューリップのようにだらしなかった。そよ風にさえ繊細な花芯をさらけだしてしまう。口ではごちゃごちゃ言うが女性器も素直そのもの、上下ともにゴズメルの舌と指とを咥えこんでいる。
「ゴズメル、私も……」
「ん……」
貪婪な交わりだった。マリアの息継ぎの間を縫って、リリィが顔を近づけてくる。マリアがチューリップなら、リリィは小さなバラだ。小ぶりなのに舌がまといつくように動き、ひどく甘い。かわるがわるキスをして、されて、ゴズメルは自分が貪っているのか貪られているのかわからなくなる。マリアとリリィのキスに割り込み、もう一度マリアとした。自分の動悸と息遣いが耳の奥で騒がしい。
「はぁ、はぁ……んっ、あぁっ」
マリアの垂らす唾は酒のように甘かった。鼻で吸う空気がより濃密になり、互いの口からとろっと唾液の糸が引く。口を離しただけの距離で、ゴズメルは「ちんぽいれたい」と求めた。さらに唇を舐めて催促すると、マリアは声を絞り出した。
「あなたの好きに、すれば……」
ゴズメルはこの態度に腹が立った。股から指を引き抜いて脅しつける。
「なんだその言い方。人任せにしてないでハッキリ言えよ」
「ゴズメル、そんな……」
「リリィ、この女は冒険者協会の副会長サマだよ」
ゴズメルは言いつつ、リリィの見えないところで男根をスリットに擦り付けていた。
「言質はとらないとダメだろ。後で問題になったら困る」
「マリアはそんなことしないわ」
「どうだか。この女は案外したたかだよ。けっこう相手をとっかえひっかえしてるらしいし」
「……ふふ。適当なことを言うのはやめてもらえるかしら。名誉棄損で訴えるわよ」
「へえ、じゃあリーはあたしに嘘をついたのかな」
マリアの顔色が変わる。「何を聞いたの」という声は低かった。
「なんにも。別に、あんたが裏で何をしてたって気にしないよ。仕事のうちなんだろ」
貞節を喰う獣のスキルをフルに活用するなら、ハニートラップを仕掛けるのは朝飯前だろう。
「あんたは雑種が嫌いだし、エロいことするのに慣れているようにも見えない。おおかた踏むとか足を舐めさせるとか、そのあたりで弱みを握ってたんじゃないのか」
自分の顔を尻に敷こうとしたことを思い出しつつ言うと、案の定、マリアは「ふん」と鼻で笑った。
「そうね、私が誰と関係を持とうが、確かにあなたに関係ないわ。あなたは私に抱けと命令されたのだから、さっさと実行すればいい」
「……抱くってなんだい? こう?」
ゴズメルはマリアを強く抱きしめた。マリアの喉が跳ねるのを感じて、ひどく興奮した。あの傲慢なマリアを、ゴズメルは今、性器を勃起させながら抱いているのだ。まるで愛し合う恋人同士みたいに。
「これで合ってんの?」
ゴズメルはマリアの髪の匂いを吸い込んだ。
「ねえ、あたしはこれで、あんたの望みを叶えられてるの?」
「……違う、もっと」
「もっと?」
「もっと……」
続く言葉はなかった。なんて面倒くさい女だろう。ゴズメルはイライラしながら「ねえもっと強く抱いていい?」と要求した。
「赤の他人のあんたを、もっと恋人みたいに扱っていい? 種族も違う、生えてるあんたを、チンポでめちゃくちゃに犯して、ただのメスにしていい?」
「ひうっ、し、しなさいよぉ……早く……んっ、リリィ、だめ、そこはぁ……っ」
ゴズメルの思惑を理解したのだろう。リリィはマリアの二本ある男根を両手で撫でていた。
「だめじゃないわよね、マリア。自分の気持ちに素直になってちょうだい」
「おっ……二人がかりでっ、どっちもなんて、そんな、ズルいっ、卑怯者っ、やめなひゃい!」
男と女の部分を同時に責められて、マリアは息も絶え絶えだった。
「ほら、返事」
ゴズメルは意地悪く亀頭でスリットをなぞりあげる。
「それともあたしのチンポが怖いか? マリア」
「んぁあっ、またバカにしてっ! 完璧なこの私がっ、あなたなんか怖がるものですかっ」
リリィの手コキを受けて、マリアはすでに壊れたかのようになっていた。いつもの威厳はどこへやら、声も調子っぱずれになっている。
「いいわっ。その下品なイチモツを私のスリットにぶちこんで、思う存分犯しなさいよっ。みっともなく腰を振って射精する間抜け面を見届けてあげるっ」
「オイ本気で交尾しろっつったな、メス穴犯してやるからなっ! 吐いた唾飲むなよ!」
「言った、言ったわよ、冒険者協会本部副会長マリアが命じますっ、俗悪下等なミノタウロスチンポで、私のおまんこをっめちゃくちゃにっンオッ」
マリアの胸の激しい揺れ方は、ゴズメルの切っ先の鋭さを反映していた。
「アンッアンッ」
弾むような上下動に、膨れた乳首が遅れてついてくる。股を裂かれながら、獣のような声は途絶えることがなかった。それは嬌声というより悲鳴だった。リリィは、そっとマリアの頬にキスした。
「ゴズメルのは大きいから、苦しいわね、マリア……」
「ひぃ……ひう……ううっ」
「かわいそうに……さあ、舌を出して」
「お、おぅっ、んぁっ、あんっ」
リリィがマリアの口に鱗粉を含ませる。とたんにマリアの声は媚びるような響きを帯びた。リリィに性器をマッサージされるマリアは、口のはしから涎を垂らしてさえいた。
「『気持ちいい』って言ってごらんなさいな。感覚に自分で名前をつけるの」
「あぁ、あっ『きもちいい』、『きもちい』っ」
「いい子ね、マリア……ゴズメルにも言ってみたら? 気持ちよくしてもらっているんだもの、感謝しないとね」
「んぁあん、いやぁっ、悔しいっ」
悔しいとはなんだ。ゴズメルはマリアの両手首を握り、ひときわ強く腰を使った。口で言わなかったのは、うめき声が漏れてしまいそうで恥ずかしいからだ。だがマリアよりはマシだろう。リリィの支配下に置かれた彼女は、上位者の命令に逆らうことができない。
「んぉおっ、ゴズメル、ごずめるさまのチンポ、チンポきもちいい、ひもちいれふっ、マリアの雑種まんこを犯してくださり、ありがとうございまひゅっ」
「だれがゴズメルさまだ……っ!」
だが、今の正気を失っているマリアを問い詰めるのはあまりにも酷だった。ゴズメルは改めてリリィの鱗粉の強力さを思い知った。あのプライドの高いマリアでさえ、鱗粉を浴びるとセックスのことしか考えられなくなってしまうのだ。冒険者協会が妖精族を危険視するのもうなずけることではある。
「チンポ、あぁんっ、おっき、カタいのズンズンひゅるっ、堕ちるっ、極太牛チンポでバカなメスになっひゃうっ」
副会長の仕事はストレスが多いに違いなかった。マリアは自己を解放するかのように腰をゆすり、笑っていた。
「マリア……」
「あ、あっ、あっ!」
ゴズメルはマリアの膝をぐいっと折り曲げさせた。密着度が高くなり、より深く犯すことができる。
「すげーな……バカになんの、そんなに気持ちいいかい?」
「あぁんっ、ちがうっ、ちがうのっ、こんにゃの言わされてるだけっ、おぉん、ひもちいよぉっちんぽっまんこっちんぽっまんこっ」
本当か、という目でリリィを見ると、いいえ、という目をしたリリィが首を振った。リリィはここまで下品ではない。まあ急に二本生えたら、こうならない確証はないが。
「ひゃっ、くうぅっ、やにゃのっ、頭ちんぽになりゅっ」
おかしくなってしまったマリアは、両目から滂沱の涙を流しながら自我を保とうとしていた。乳房を揺すってよがる姿に、ゴズメルは不覚にもぞくぞくしてしまう。
「なんだよ……泣くなっつってんのに、もう……。こっちまでガマンできなくなるだろ、マリアぁ……!」
「ふぁっ? あ、あんっ」
「あぁっ……」
一段と締まりが良くなる。ゴズメルは胸を反らして喘いだ。絶頂が近かった。マリアの鼻がすんすんと何かを嗅ぎ取る動きをして、「ごずめる……」と呼んだ。
「イくの、ねえ、わたしのナカでイくの」
「うん……うん……っ」
「こっちを見て、わたしを見て、ごずめる。もっと、わたしを」
マリアは掴まれた手首を返して、ゴズメルを引き寄せようとしていた。二人の間には角があり、近くまでいくことはできない。それでもゴズメルは、角がつくほど近くまで顔を近寄せた。
「わたしを……」
その言葉を、マリアは最後まで言うことができなかった。リリィの手に射精して、連動するようにゴズメルに射精されて、咽び泣くことしかできなくなったからだ。
「んは、あ、イきゅっ、しゅごいのくりゅっ、イくっ、イぐうううっ」
マリアの精液は左右の男根から交互にぶりゅぶりゅとひり出された。鱗粉の効果だろうか、先ほどまで出していたのは上澄みだったかと思うほどの濃さだ。量も多い。上から見下ろすと、スリットに受け止めたゴズメルの精子をそのまま排出したようにも見えた。
ゴズメルは、ずっと尻尾を震わせていた。二度目の童貞を捧げたような感覚だった。あくまでリリィの能力を借りてだが、一人の女性を自力で絶頂に導いたのだ。腰を引くだけで、ぞくぞくと膝が震えてしまう。
「うっ……」
「ゴズメル……」
気絶してしまったマリアを寝かせ、リリィは四つん這いで来た。
「たくさん射精したのね……?」
「ん……ご、ごめん……」
「なぜ謝るの? 私たちは三人でセックスしたのに」
三人でセックスすれば浮気にならないのだろうか。ゴズメルはリリィの倫理観を少し危ぶんだ。
「見せて……私が綺麗にしてあげる……」
「い、いいけど……」
許可するより先に、リリィはゴズメルの男根に口づけた。萎えたものを舌で包まれる。射精したばかりで敏感な局部を優しく舐められて、ゴズメルは思わず声が漏れた。
「女の子のところも濡れているわ……ねえ、舐めていい?」
「はぁっ、ああっ、リリィ……!」
マリアは面倒くさすぎるが、リリィは素直すぎる。ゴズメルは抗うすべもなく、妻の髪を撫でた。
「まったく、あんたには敵わないね……どうすんだよ、また勃起しちまったじゃないか……」
◇◇◇
石室のほこらが音を立てて割れた時、ゴズメルはリリィとマリアに二人がかりでフェラチオされていた。ベッドに足を広げて座ったゴズメルに、床に跪いた二人がしゃぶりつくのだ。
眺めの物凄さにゴズメルは言葉もなかったが、役得かどうかはわからない。マリアの角は腹に突き刺さりそうだし、一本の竿を分け合う二人がディープキスしあうのを見なければならない。そのうちマリアがリリィの股をいじりはじめた時ときたら、なかった。妻が他人の手でよがるさまを見ながら、ゴズメルは射精したのだ。それも、睾丸が焦げるのではないかと思うほどのたぎりようで。
(クソッ、また変なシュミに目覚めちまう……!)
ほこらにヒビが入った時もそんな調子だったので反応が一瞬遅れた。しかし怪力のミノタウロス族のこと、両手を伸ばして二人をベッドに引っ張り上げた。裸の二人に破片が飛んできたらことである。
「ど、どういうことなの?」
リリィはゴズメルに抱き着いて言った。
「ゴズメル、ほこらが壊れてしまったわ!」
「うん、お供えを受け取りすぎたのさ」
「えぇ?」
膝を抱えたマリアが説明する。
「悪徳ホコラホステルは滞在時間と比例して対価を上げていく仕組みだけれど、過剰な対価を受け取ると、論理が成り立たなくなってほこらのほうが壊れてしまうの」
「えっと、つまり……」
言葉に詰まるリリィの後を、ゴズメルは一言でまとめた。
「つまりもう外に出られるってこった!」
酔っていたところに、いきなり水をかけられたようだった。ゴズメルはどこか気まずい思いで体を清め、支度を整えた。二人も同じ気持ちなのだろう。リリィは恥じらうようにうつむき、マリアときたら見事なへの字口で黙りこくっている。
先にジャージを着たゴズメルは、咳払いして言った。
「……今さらこんなこと聞くのおかしいけど、あんた、元気にしてたのかい。マリア」
「本当におかしいわね。あなたがそれを知る必要ってある?」
「必要って……。だってあんたは、あたしがいないと朝は起きられないし、夜は足を揉まないと眠れないとかなんとか言って……」
「ふふっ! それで? 私の体調が悪かったら、あなたがまた私の世話を焼いてくれるってわけ?」
ゴズメルは何も言えなかった。眉を下げて見つめ返すと、マリアは舌打ちした。
「愚鈍なミノタウロスね、冗談も通じないなんて……言っておきますけどね、あなたみたいに不細工なデブと同居するなんて、もう二度とごめんだわ!」
鱗粉の効果がなくなった途端に、この手のひら返しだ。傷つくよりも驚いているゴズメルを、リリィはそっと庇った。
「マリア、私のお嫁さんに的外れなことを言うのはやめて」
翅をしまったリリィに、マリアは「あら、ごめんなさい? あなたのシュミをとやかく言うつもりはなかったの」と嫌味な謝り方をした。
「でもリリィ、あなたもこれに懲りたら、もっと慎重に人付き合いしたほうがいいわ。どういうつもりで私を巻き込んだか知らないけれど、あなたのお嫁さんは、ふふっ……浮気に抵抗がないみたいよ」
「……そう? 心配してくださってありがとう、マリア」
リリィは落ち着いたものだった。
「あなたは旅行中なのよね。落ち着いたらアルティカにも遊びに来てほしいわ」
「……ふん」
マリアは腕組みして、ぷいと横を向いてしまう。
「悪いけど、これ以上の茶番に付き合ってられないわ。外にリーを待たせているの」
「えっ!?」
ゴズメルは飛び上がった。旅行のことは冒険者協会で聞いていたが、同行者のことまでは知らなかった。
「あんた、あんなヤツと旅してんのかい! 絶対にやめたほうがいいよ!」
「どうしてあなたに指図されなきゃいけないの」
「どうしてじゃないよ! またヘンテコな実験されてないだろうねっ。ひょっとしてあんたこのままアルティカに来たほうがいいんじゃないか!?」
「……やめて。気安く触らないでちょうだい」
ゴズメルが掴んだ腕を、マリアは振り払った。
「私たちには私たちの世界との向き合い方があるの。自覚がないみたいだけど、あなたたちの願いのおかげで、私の存在意義は無に帰されたわ」
この言葉に、ゴズメルは虚を突かれた。自分たちの選択を、マリアがそんなふうに受け止めていたなんて思いもしなかったのだ。
「世界は今も歪みを抱えている。……いいえ、アルティカにひっこんだあなたたちにはもう関係のないことよ」
マリアは首を振った。
「こんなところでバッタリ出くわすほうがおかしいのよ。せいぜい悪い夢でも見たと思うことね」
「……悪い夢だった?」
ゴズメルの問いかけに、マリアは一拍おいて「ええ」と、微笑った。
「私はこういう夢を前にも見たことがあるわ。目が覚めた瞬間に悪夢に変わるの。そしていつまでも日々にまとわりつくのよ……もう、二度とは戻ってこないのだと」
◇◇◇
帰り道は、二人とも無言だった。ランタンを手に、ダンジョンがバントリーに変わるまで歩き、ようやく我が家まで戻ってくる。
「……ごらん、階段があるよ。ここはもうあたしたちの家だ!」
ただの階段を見て、こんなに喜ぶ日が来るなんて思わなかった。だが、リリィを振り向いてため息をつく。
ゴズメルはここに入ったときと同じように、脚立へランタンを置いた。ホコラホステルでは時間が止まっていたが、体感としてはもう丸一日経ってしまったような気がする。
「リリィ、マリアの言ったことなんて気にするなよ」
「……いいえ」
リリィは落ち込んだように首を振った。
「私たちはずっと気にし続けるべきだと思うわ、ゴズメル。アジリニに願ったのは私たちなんですもの」
「そうさ。でも、誰かが死んだり、心を操ったりすることを願ったわけじゃない。マリアは遅かれ早かれ自分のことを考えなきゃならなかったんだ」
「そうかもしれないけど……」
「じゃ、あのままでいたほうが良かったと思う? ミノタウロスは言葉を取られて、シャインどもは好き放題、あたしとも結婚できなくて、ジュエルも生まれてこなかった」
リリィは「ううん」と言って首を振った。そのまま、ゴズメルの胸にふらふらと向かってくる。
ぽすっと受け止めてやると、リリィはくぐもった声で言った。「私はあなたの可能性を奪ってしまったような気がする」。
「へ?」
「ねえゴズメル、あなたはマリアと一緒にいたほうが幸せになれたのではない? 私みたいなおぞましい力を扱う妖精などといるよりも」
「ちょっと。本気で言ってんの?」
「……ごめんなさい。あなたのことをつなぎとめているのは私なのに、今になってこんなこと言われたって、困るわよね。失った時間は帰ってこないのに」
「おいおいおいおい!」
ゴズメルは笑ってリリィの尻をペシペシと叩いた。
「いったん確認させてくれ。あたしに童貞喪失精子を採取させてくれたのは誰?」
「……私よ」
「そうさ。レベルが上がったから、昇格試験を受ける羽目になったんだ。マリアにはそこで目をつけられた。あんたと恋に落ちるまで、あたしには可能性なんてひとっかけらもなかったんだよ!」
きょとんとするリリィがあまりにも可愛いものだから、ゴズメルは思わず鼻先にキスしてしまった。腕の中に抱き込み、甘く囁く。
「あんたが最高の可能性をくれたから、あたしは今ここでヘラヘラ笑ってんだよ。かわいい坊やだって産んでくれてさ。これ以上、幸せなことってなんにもないんだよ、リリィ」
リリィの緑の瞳は湖水のようにゴズメルの笑みを映した。二人は見つめあい、口づけを交わす。
「……ごめんなさい、ゴズメル。私は一人で暗いことばかり考えていたのね」
「いいよ。最近のあたし達は目が回るほど忙しかったからね。……こういうことする暇もなかった」
「あ……」
腰を丸く撫でられて、リリィは恥じらった。
「あのね……気づいてなかったわけじゃないの、あなたが自慰をしてること……でも、したいって言わないってことは、私はもう、そういう対象じゃないのかと思って……」
ゴズメルはギョッとした。忙しくて相手するのを面倒がられているのかと思ったら、どうも違ったらしい。
「……無視していたつもりはなかったわ。ただ、子供のいる両親が、どれくらい触れ合うものなのかわからなかったのよ。私にはお祖母さましかいなかったから」
「な、なんだい、それは……それならそうと言っておくれよ……」
「だって、もう二人目が欲しいのかって嫌がられたら、悲しい」
リリィの口から『悲しい』という言葉が出ること自体がゴズメルには耐え難かった。大慌てでキスしてせき止める。しかし『悲しい』気持ちはすでにゴズメルにも伝染していた。二人して冗談みたいにすれ違っていたらしいのである。
「大変なことだよ、リリィ!」
ゴズメルはすっかり慌ててしまった。
「あたし達、時間がないぶん、思ったことはなんでも率直に喋ったほうがいいみたいだ。じゃないとすごく損することになっちまう!」
「ええ……」
「好きだよ、リリィ! 好きだ好きだ好きだ!」
「まあ、ゴズメル! うふふっ、うふふふっ」
ゴズメルはリリィをトロフィーのように抱きあげて、顎と唇にキスをしまくった。そのままクルクルと回りだすので、リリィはあやされた子供みたいに笑った。
「私もゴズメルが好きよ!」
「ほんとっ?」
「本当よ! もっとちゃんと家で寝てほしいわ! 朝ちょっとの間しか一緒にいられないなんて寂しい!」
「相談してみる!」
「たまに蛇口を締め忘れるのをどうにかして!」
「気をつける!」
ゴズメルも負けじと声を張り上げた。
「リリィは無理して毎日ゴハン作る必要ないよ! 芋と虫だけでも生きてけるんだから!」
「うん……うん……!」
ほかにも、同居で気になっていたことはたくさんあるはずなのだが、ゴズメルはうまく言葉にできなかった。自分が彼女を愛していて、彼女も自分を愛している。それだけでとても楽天的な気分になってしまい「愛してるよ!」としか言えない。
「ねえ、不安があったら、どんなに忙しいときでも言っておくれ。あたしはあんた以外のお嫁さんなんて、とっても考えられないし、あんたに頼られるとすごくやる気になるんだからね」
「……わかったわ。あなたもよ、ゴズメル」
「ウン! もちろんだ」
二人は見つめあい、どちらからともなく口づけあった。
バントリーの階段を上がる足取りは軽かった。
「まず着替えるでしょう。坊やを迎えに行ったら、ナナとミミにお礼をしなくちゃいけないわね」
「いい時間だし、みんなでゴハンでも行こうか。あんたも今日は疲れただろ、リリィ」
「ああ、なんて優しいひとなの、ゴズメル! ありがとう!」
ふりむいたリリィの美しい顔に、ゴズメルはどきっとする。
(……リリィ、あんたがあたしをつなぎとめてるんじゃないんだよ)
胸を衝くような予感に、ゴズメルは息を呑んだ。
(あたしがあんたを選んだんだ)
こんなにもまだ恋をしている。毎日、毎秒、瞬きのたびに恋に落ちるのだと思った。
「あぁっ、あぁっ」
リリィが背後からマリアの右耳を食むのに、ゴズメルも倣った。マリアの左耳は陶器のように薄かった。耳ひとつとっても違うことに驚かされる。リリィの耳は貝殻に似ていて、非常に立体的なのだ。
「はぁあんっ」
マリアの吐息がひときわ高くなる。ゴズメルは股に当てた手をゆっくりと動かした。本人はもう知っているだろうことを、端的に教えてやる。
「びちょびちょ」
「……い、いやっやめてっ」
「胸もすごいわ……ツンと張りつめて」
リリィの指が胸の輪郭を確かめていた。重たげな胸の頂点で、丸々とした乳首が力強く勃起している。リリィは両手を杯のかたちにして、乳房をたぷたぷと持ち上げた。
「重い胸が乳首に引っ張られて痛いでしょう? かわいそうに」
「い、痛くなんて、ふんあっ、あぁっ!」
言い切るより先にリリィがフッと手を下げた。重みに耐えて健気に勃起する乳首を間近に見て、ゴズメルは思わず視線を落とす。そのままリリィが差し出したマリアの乳首を舐めた。
「んぁああ、やらぁっ、やらっ」
逃げようとしても、前後から挟まれて逃げ場がない。ゴズメルは大きな口でリリィの手ごと乳房をしゃぶりたてた。「ひぃ、ひぃーっ」と漏らす声は悲痛なのに、スリットがどんどん濡れて開いてくる。
「んーっ。ひゅげ、でかいチクビがチンポみてえにパンパンに腫れてら」
「違うっ、私の胸はそんなのじゃない!」
ゴズメルは鼻で笑った。口を前後させるだけで、ぬぽぬぽと音が立つ乳首を、舌の上に載せて見せた。
「見へみ。おら」
「いやぁっ、あぁんっ」
唾液で濡れた乳輪に鼻息がかかる。マリアが顎をひいてのけぞった。その背中では、小柄なリリィが「むぎゅ」といった。
「バカ、もっとこっち来な」
「ひぁぁあっ」
抱き寄せると、股が深く指を食う。
「すっげ、まんこが指をチュパチュパ吸ってるじゃないか。指が抜けないよ。ほら」
「うるさい、うるさいっ」
粘膜が吸盤のように吸いついてくるのだ。ゴズメルはよりかかってきたマリアの耳に、ふーっと息を吹きかけた。愛液とも我慢汁ともつかないぬめりを利用して、ゴズメルは粘膜を刺激した。
「ナカが溶けてきてる……チンポしまっとく割れ目を交尾に使うってことは、あんたもともとクリチンポも二本生えてんだ?」
「黙りなさいよ! ひとをバカにして!」
「バカにしてんのはそっちだろ……こっちは妻子がいるのに誘惑してきやがって……!」
ゴズメルはキスした。
角の長いマリアとキスするのは、少々コツが要った。斜め下から頬を擦りつけるように唇を合わせるのだ。的を外すとケガをするので、目蓋は最後に閉じる。小柄なリリィであればすんなりと入れる懐も、ゴズメルの場合は大きすぎる胸が邪魔する。乳首と乳首で押し相撲すると、マリアは押し返してきた。仕方なくゴズメルはぬるっとかわす。互いの谷間に乳房を挟むようにしてようやく人心地ついた。
「舌、もっと出せよ……っ、エロいキスさせろ……っ」
「ふぁんっ、あうっ」
マリアの唇は、開ききったチューリップのようにだらしなかった。そよ風にさえ繊細な花芯をさらけだしてしまう。口ではごちゃごちゃ言うが女性器も素直そのもの、上下ともにゴズメルの舌と指とを咥えこんでいる。
「ゴズメル、私も……」
「ん……」
貪婪な交わりだった。マリアの息継ぎの間を縫って、リリィが顔を近づけてくる。マリアがチューリップなら、リリィは小さなバラだ。小ぶりなのに舌がまといつくように動き、ひどく甘い。かわるがわるキスをして、されて、ゴズメルは自分が貪っているのか貪られているのかわからなくなる。マリアとリリィのキスに割り込み、もう一度マリアとした。自分の動悸と息遣いが耳の奥で騒がしい。
「はぁ、はぁ……んっ、あぁっ」
マリアの垂らす唾は酒のように甘かった。鼻で吸う空気がより濃密になり、互いの口からとろっと唾液の糸が引く。口を離しただけの距離で、ゴズメルは「ちんぽいれたい」と求めた。さらに唇を舐めて催促すると、マリアは声を絞り出した。
「あなたの好きに、すれば……」
ゴズメルはこの態度に腹が立った。股から指を引き抜いて脅しつける。
「なんだその言い方。人任せにしてないでハッキリ言えよ」
「ゴズメル、そんな……」
「リリィ、この女は冒険者協会の副会長サマだよ」
ゴズメルは言いつつ、リリィの見えないところで男根をスリットに擦り付けていた。
「言質はとらないとダメだろ。後で問題になったら困る」
「マリアはそんなことしないわ」
「どうだか。この女は案外したたかだよ。けっこう相手をとっかえひっかえしてるらしいし」
「……ふふ。適当なことを言うのはやめてもらえるかしら。名誉棄損で訴えるわよ」
「へえ、じゃあリーはあたしに嘘をついたのかな」
マリアの顔色が変わる。「何を聞いたの」という声は低かった。
「なんにも。別に、あんたが裏で何をしてたって気にしないよ。仕事のうちなんだろ」
貞節を喰う獣のスキルをフルに活用するなら、ハニートラップを仕掛けるのは朝飯前だろう。
「あんたは雑種が嫌いだし、エロいことするのに慣れているようにも見えない。おおかた踏むとか足を舐めさせるとか、そのあたりで弱みを握ってたんじゃないのか」
自分の顔を尻に敷こうとしたことを思い出しつつ言うと、案の定、マリアは「ふん」と鼻で笑った。
「そうね、私が誰と関係を持とうが、確かにあなたに関係ないわ。あなたは私に抱けと命令されたのだから、さっさと実行すればいい」
「……抱くってなんだい? こう?」
ゴズメルはマリアを強く抱きしめた。マリアの喉が跳ねるのを感じて、ひどく興奮した。あの傲慢なマリアを、ゴズメルは今、性器を勃起させながら抱いているのだ。まるで愛し合う恋人同士みたいに。
「これで合ってんの?」
ゴズメルはマリアの髪の匂いを吸い込んだ。
「ねえ、あたしはこれで、あんたの望みを叶えられてるの?」
「……違う、もっと」
「もっと?」
「もっと……」
続く言葉はなかった。なんて面倒くさい女だろう。ゴズメルはイライラしながら「ねえもっと強く抱いていい?」と要求した。
「赤の他人のあんたを、もっと恋人みたいに扱っていい? 種族も違う、生えてるあんたを、チンポでめちゃくちゃに犯して、ただのメスにしていい?」
「ひうっ、し、しなさいよぉ……早く……んっ、リリィ、だめ、そこはぁ……っ」
ゴズメルの思惑を理解したのだろう。リリィはマリアの二本ある男根を両手で撫でていた。
「だめじゃないわよね、マリア。自分の気持ちに素直になってちょうだい」
「おっ……二人がかりでっ、どっちもなんて、そんな、ズルいっ、卑怯者っ、やめなひゃい!」
男と女の部分を同時に責められて、マリアは息も絶え絶えだった。
「ほら、返事」
ゴズメルは意地悪く亀頭でスリットをなぞりあげる。
「それともあたしのチンポが怖いか? マリア」
「んぁあっ、またバカにしてっ! 完璧なこの私がっ、あなたなんか怖がるものですかっ」
リリィの手コキを受けて、マリアはすでに壊れたかのようになっていた。いつもの威厳はどこへやら、声も調子っぱずれになっている。
「いいわっ。その下品なイチモツを私のスリットにぶちこんで、思う存分犯しなさいよっ。みっともなく腰を振って射精する間抜け面を見届けてあげるっ」
「オイ本気で交尾しろっつったな、メス穴犯してやるからなっ! 吐いた唾飲むなよ!」
「言った、言ったわよ、冒険者協会本部副会長マリアが命じますっ、俗悪下等なミノタウロスチンポで、私のおまんこをっめちゃくちゃにっンオッ」
マリアの胸の激しい揺れ方は、ゴズメルの切っ先の鋭さを反映していた。
「アンッアンッ」
弾むような上下動に、膨れた乳首が遅れてついてくる。股を裂かれながら、獣のような声は途絶えることがなかった。それは嬌声というより悲鳴だった。リリィは、そっとマリアの頬にキスした。
「ゴズメルのは大きいから、苦しいわね、マリア……」
「ひぃ……ひう……ううっ」
「かわいそうに……さあ、舌を出して」
「お、おぅっ、んぁっ、あんっ」
リリィがマリアの口に鱗粉を含ませる。とたんにマリアの声は媚びるような響きを帯びた。リリィに性器をマッサージされるマリアは、口のはしから涎を垂らしてさえいた。
「『気持ちいい』って言ってごらんなさいな。感覚に自分で名前をつけるの」
「あぁ、あっ『きもちいい』、『きもちい』っ」
「いい子ね、マリア……ゴズメルにも言ってみたら? 気持ちよくしてもらっているんだもの、感謝しないとね」
「んぁあん、いやぁっ、悔しいっ」
悔しいとはなんだ。ゴズメルはマリアの両手首を握り、ひときわ強く腰を使った。口で言わなかったのは、うめき声が漏れてしまいそうで恥ずかしいからだ。だがマリアよりはマシだろう。リリィの支配下に置かれた彼女は、上位者の命令に逆らうことができない。
「んぉおっ、ゴズメル、ごずめるさまのチンポ、チンポきもちいい、ひもちいれふっ、マリアの雑種まんこを犯してくださり、ありがとうございまひゅっ」
「だれがゴズメルさまだ……っ!」
だが、今の正気を失っているマリアを問い詰めるのはあまりにも酷だった。ゴズメルは改めてリリィの鱗粉の強力さを思い知った。あのプライドの高いマリアでさえ、鱗粉を浴びるとセックスのことしか考えられなくなってしまうのだ。冒険者協会が妖精族を危険視するのもうなずけることではある。
「チンポ、あぁんっ、おっき、カタいのズンズンひゅるっ、堕ちるっ、極太牛チンポでバカなメスになっひゃうっ」
副会長の仕事はストレスが多いに違いなかった。マリアは自己を解放するかのように腰をゆすり、笑っていた。
「マリア……」
「あ、あっ、あっ!」
ゴズメルはマリアの膝をぐいっと折り曲げさせた。密着度が高くなり、より深く犯すことができる。
「すげーな……バカになんの、そんなに気持ちいいかい?」
「あぁんっ、ちがうっ、ちがうのっ、こんにゃの言わされてるだけっ、おぉん、ひもちいよぉっちんぽっまんこっちんぽっまんこっ」
本当か、という目でリリィを見ると、いいえ、という目をしたリリィが首を振った。リリィはここまで下品ではない。まあ急に二本生えたら、こうならない確証はないが。
「ひゃっ、くうぅっ、やにゃのっ、頭ちんぽになりゅっ」
おかしくなってしまったマリアは、両目から滂沱の涙を流しながら自我を保とうとしていた。乳房を揺すってよがる姿に、ゴズメルは不覚にもぞくぞくしてしまう。
「なんだよ……泣くなっつってんのに、もう……。こっちまでガマンできなくなるだろ、マリアぁ……!」
「ふぁっ? あ、あんっ」
「あぁっ……」
一段と締まりが良くなる。ゴズメルは胸を反らして喘いだ。絶頂が近かった。マリアの鼻がすんすんと何かを嗅ぎ取る動きをして、「ごずめる……」と呼んだ。
「イくの、ねえ、わたしのナカでイくの」
「うん……うん……っ」
「こっちを見て、わたしを見て、ごずめる。もっと、わたしを」
マリアは掴まれた手首を返して、ゴズメルを引き寄せようとしていた。二人の間には角があり、近くまでいくことはできない。それでもゴズメルは、角がつくほど近くまで顔を近寄せた。
「わたしを……」
その言葉を、マリアは最後まで言うことができなかった。リリィの手に射精して、連動するようにゴズメルに射精されて、咽び泣くことしかできなくなったからだ。
「んは、あ、イきゅっ、しゅごいのくりゅっ、イくっ、イぐうううっ」
マリアの精液は左右の男根から交互にぶりゅぶりゅとひり出された。鱗粉の効果だろうか、先ほどまで出していたのは上澄みだったかと思うほどの濃さだ。量も多い。上から見下ろすと、スリットに受け止めたゴズメルの精子をそのまま排出したようにも見えた。
ゴズメルは、ずっと尻尾を震わせていた。二度目の童貞を捧げたような感覚だった。あくまでリリィの能力を借りてだが、一人の女性を自力で絶頂に導いたのだ。腰を引くだけで、ぞくぞくと膝が震えてしまう。
「うっ……」
「ゴズメル……」
気絶してしまったマリアを寝かせ、リリィは四つん這いで来た。
「たくさん射精したのね……?」
「ん……ご、ごめん……」
「なぜ謝るの? 私たちは三人でセックスしたのに」
三人でセックスすれば浮気にならないのだろうか。ゴズメルはリリィの倫理観を少し危ぶんだ。
「見せて……私が綺麗にしてあげる……」
「い、いいけど……」
許可するより先に、リリィはゴズメルの男根に口づけた。萎えたものを舌で包まれる。射精したばかりで敏感な局部を優しく舐められて、ゴズメルは思わず声が漏れた。
「女の子のところも濡れているわ……ねえ、舐めていい?」
「はぁっ、ああっ、リリィ……!」
マリアは面倒くさすぎるが、リリィは素直すぎる。ゴズメルは抗うすべもなく、妻の髪を撫でた。
「まったく、あんたには敵わないね……どうすんだよ、また勃起しちまったじゃないか……」
◇◇◇
石室のほこらが音を立てて割れた時、ゴズメルはリリィとマリアに二人がかりでフェラチオされていた。ベッドに足を広げて座ったゴズメルに、床に跪いた二人がしゃぶりつくのだ。
眺めの物凄さにゴズメルは言葉もなかったが、役得かどうかはわからない。マリアの角は腹に突き刺さりそうだし、一本の竿を分け合う二人がディープキスしあうのを見なければならない。そのうちマリアがリリィの股をいじりはじめた時ときたら、なかった。妻が他人の手でよがるさまを見ながら、ゴズメルは射精したのだ。それも、睾丸が焦げるのではないかと思うほどのたぎりようで。
(クソッ、また変なシュミに目覚めちまう……!)
ほこらにヒビが入った時もそんな調子だったので反応が一瞬遅れた。しかし怪力のミノタウロス族のこと、両手を伸ばして二人をベッドに引っ張り上げた。裸の二人に破片が飛んできたらことである。
「ど、どういうことなの?」
リリィはゴズメルに抱き着いて言った。
「ゴズメル、ほこらが壊れてしまったわ!」
「うん、お供えを受け取りすぎたのさ」
「えぇ?」
膝を抱えたマリアが説明する。
「悪徳ホコラホステルは滞在時間と比例して対価を上げていく仕組みだけれど、過剰な対価を受け取ると、論理が成り立たなくなってほこらのほうが壊れてしまうの」
「えっと、つまり……」
言葉に詰まるリリィの後を、ゴズメルは一言でまとめた。
「つまりもう外に出られるってこった!」
酔っていたところに、いきなり水をかけられたようだった。ゴズメルはどこか気まずい思いで体を清め、支度を整えた。二人も同じ気持ちなのだろう。リリィは恥じらうようにうつむき、マリアときたら見事なへの字口で黙りこくっている。
先にジャージを着たゴズメルは、咳払いして言った。
「……今さらこんなこと聞くのおかしいけど、あんた、元気にしてたのかい。マリア」
「本当におかしいわね。あなたがそれを知る必要ってある?」
「必要って……。だってあんたは、あたしがいないと朝は起きられないし、夜は足を揉まないと眠れないとかなんとか言って……」
「ふふっ! それで? 私の体調が悪かったら、あなたがまた私の世話を焼いてくれるってわけ?」
ゴズメルは何も言えなかった。眉を下げて見つめ返すと、マリアは舌打ちした。
「愚鈍なミノタウロスね、冗談も通じないなんて……言っておきますけどね、あなたみたいに不細工なデブと同居するなんて、もう二度とごめんだわ!」
鱗粉の効果がなくなった途端に、この手のひら返しだ。傷つくよりも驚いているゴズメルを、リリィはそっと庇った。
「マリア、私のお嫁さんに的外れなことを言うのはやめて」
翅をしまったリリィに、マリアは「あら、ごめんなさい? あなたのシュミをとやかく言うつもりはなかったの」と嫌味な謝り方をした。
「でもリリィ、あなたもこれに懲りたら、もっと慎重に人付き合いしたほうがいいわ。どういうつもりで私を巻き込んだか知らないけれど、あなたのお嫁さんは、ふふっ……浮気に抵抗がないみたいよ」
「……そう? 心配してくださってありがとう、マリア」
リリィは落ち着いたものだった。
「あなたは旅行中なのよね。落ち着いたらアルティカにも遊びに来てほしいわ」
「……ふん」
マリアは腕組みして、ぷいと横を向いてしまう。
「悪いけど、これ以上の茶番に付き合ってられないわ。外にリーを待たせているの」
「えっ!?」
ゴズメルは飛び上がった。旅行のことは冒険者協会で聞いていたが、同行者のことまでは知らなかった。
「あんた、あんなヤツと旅してんのかい! 絶対にやめたほうがいいよ!」
「どうしてあなたに指図されなきゃいけないの」
「どうしてじゃないよ! またヘンテコな実験されてないだろうねっ。ひょっとしてあんたこのままアルティカに来たほうがいいんじゃないか!?」
「……やめて。気安く触らないでちょうだい」
ゴズメルが掴んだ腕を、マリアは振り払った。
「私たちには私たちの世界との向き合い方があるの。自覚がないみたいだけど、あなたたちの願いのおかげで、私の存在意義は無に帰されたわ」
この言葉に、ゴズメルは虚を突かれた。自分たちの選択を、マリアがそんなふうに受け止めていたなんて思いもしなかったのだ。
「世界は今も歪みを抱えている。……いいえ、アルティカにひっこんだあなたたちにはもう関係のないことよ」
マリアは首を振った。
「こんなところでバッタリ出くわすほうがおかしいのよ。せいぜい悪い夢でも見たと思うことね」
「……悪い夢だった?」
ゴズメルの問いかけに、マリアは一拍おいて「ええ」と、微笑った。
「私はこういう夢を前にも見たことがあるわ。目が覚めた瞬間に悪夢に変わるの。そしていつまでも日々にまとわりつくのよ……もう、二度とは戻ってこないのだと」
◇◇◇
帰り道は、二人とも無言だった。ランタンを手に、ダンジョンがバントリーに変わるまで歩き、ようやく我が家まで戻ってくる。
「……ごらん、階段があるよ。ここはもうあたしたちの家だ!」
ただの階段を見て、こんなに喜ぶ日が来るなんて思わなかった。だが、リリィを振り向いてため息をつく。
ゴズメルはここに入ったときと同じように、脚立へランタンを置いた。ホコラホステルでは時間が止まっていたが、体感としてはもう丸一日経ってしまったような気がする。
「リリィ、マリアの言ったことなんて気にするなよ」
「……いいえ」
リリィは落ち込んだように首を振った。
「私たちはずっと気にし続けるべきだと思うわ、ゴズメル。アジリニに願ったのは私たちなんですもの」
「そうさ。でも、誰かが死んだり、心を操ったりすることを願ったわけじゃない。マリアは遅かれ早かれ自分のことを考えなきゃならなかったんだ」
「そうかもしれないけど……」
「じゃ、あのままでいたほうが良かったと思う? ミノタウロスは言葉を取られて、シャインどもは好き放題、あたしとも結婚できなくて、ジュエルも生まれてこなかった」
リリィは「ううん」と言って首を振った。そのまま、ゴズメルの胸にふらふらと向かってくる。
ぽすっと受け止めてやると、リリィはくぐもった声で言った。「私はあなたの可能性を奪ってしまったような気がする」。
「へ?」
「ねえゴズメル、あなたはマリアと一緒にいたほうが幸せになれたのではない? 私みたいなおぞましい力を扱う妖精などといるよりも」
「ちょっと。本気で言ってんの?」
「……ごめんなさい。あなたのことをつなぎとめているのは私なのに、今になってこんなこと言われたって、困るわよね。失った時間は帰ってこないのに」
「おいおいおいおい!」
ゴズメルは笑ってリリィの尻をペシペシと叩いた。
「いったん確認させてくれ。あたしに童貞喪失精子を採取させてくれたのは誰?」
「……私よ」
「そうさ。レベルが上がったから、昇格試験を受ける羽目になったんだ。マリアにはそこで目をつけられた。あんたと恋に落ちるまで、あたしには可能性なんてひとっかけらもなかったんだよ!」
きょとんとするリリィがあまりにも可愛いものだから、ゴズメルは思わず鼻先にキスしてしまった。腕の中に抱き込み、甘く囁く。
「あんたが最高の可能性をくれたから、あたしは今ここでヘラヘラ笑ってんだよ。かわいい坊やだって産んでくれてさ。これ以上、幸せなことってなんにもないんだよ、リリィ」
リリィの緑の瞳は湖水のようにゴズメルの笑みを映した。二人は見つめあい、口づけを交わす。
「……ごめんなさい、ゴズメル。私は一人で暗いことばかり考えていたのね」
「いいよ。最近のあたし達は目が回るほど忙しかったからね。……こういうことする暇もなかった」
「あ……」
腰を丸く撫でられて、リリィは恥じらった。
「あのね……気づいてなかったわけじゃないの、あなたが自慰をしてること……でも、したいって言わないってことは、私はもう、そういう対象じゃないのかと思って……」
ゴズメルはギョッとした。忙しくて相手するのを面倒がられているのかと思ったら、どうも違ったらしい。
「……無視していたつもりはなかったわ。ただ、子供のいる両親が、どれくらい触れ合うものなのかわからなかったのよ。私にはお祖母さましかいなかったから」
「な、なんだい、それは……それならそうと言っておくれよ……」
「だって、もう二人目が欲しいのかって嫌がられたら、悲しい」
リリィの口から『悲しい』という言葉が出ること自体がゴズメルには耐え難かった。大慌てでキスしてせき止める。しかし『悲しい』気持ちはすでにゴズメルにも伝染していた。二人して冗談みたいにすれ違っていたらしいのである。
「大変なことだよ、リリィ!」
ゴズメルはすっかり慌ててしまった。
「あたし達、時間がないぶん、思ったことはなんでも率直に喋ったほうがいいみたいだ。じゃないとすごく損することになっちまう!」
「ええ……」
「好きだよ、リリィ! 好きだ好きだ好きだ!」
「まあ、ゴズメル! うふふっ、うふふふっ」
ゴズメルはリリィをトロフィーのように抱きあげて、顎と唇にキスをしまくった。そのままクルクルと回りだすので、リリィはあやされた子供みたいに笑った。
「私もゴズメルが好きよ!」
「ほんとっ?」
「本当よ! もっとちゃんと家で寝てほしいわ! 朝ちょっとの間しか一緒にいられないなんて寂しい!」
「相談してみる!」
「たまに蛇口を締め忘れるのをどうにかして!」
「気をつける!」
ゴズメルも負けじと声を張り上げた。
「リリィは無理して毎日ゴハン作る必要ないよ! 芋と虫だけでも生きてけるんだから!」
「うん……うん……!」
ほかにも、同居で気になっていたことはたくさんあるはずなのだが、ゴズメルはうまく言葉にできなかった。自分が彼女を愛していて、彼女も自分を愛している。それだけでとても楽天的な気分になってしまい「愛してるよ!」としか言えない。
「ねえ、不安があったら、どんなに忙しいときでも言っておくれ。あたしはあんた以外のお嫁さんなんて、とっても考えられないし、あんたに頼られるとすごくやる気になるんだからね」
「……わかったわ。あなたもよ、ゴズメル」
「ウン! もちろんだ」
二人は見つめあい、どちらからともなく口づけあった。
バントリーの階段を上がる足取りは軽かった。
「まず着替えるでしょう。坊やを迎えに行ったら、ナナとミミにお礼をしなくちゃいけないわね」
「いい時間だし、みんなでゴハンでも行こうか。あんたも今日は疲れただろ、リリィ」
「ああ、なんて優しいひとなの、ゴズメル! ありがとう!」
ふりむいたリリィの美しい顔に、ゴズメルはどきっとする。
(……リリィ、あんたがあたしをつなぎとめてるんじゃないんだよ)
胸を衝くような予感に、ゴズメルは息を呑んだ。
(あたしがあんたを選んだんだ)
こんなにもまだ恋をしている。毎日、毎秒、瞬きのたびに恋に落ちるのだと思った。
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