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ラブラブハッピー番外編
ゴズメルとリリィとマリアの仁義なき3P ④★
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深い水底から上がるように、ゴズメルはリリィの腰に乗り上げていた。妻の四つん這いになった尻を太腿でぎっちりと固定し、母なる穴を犯す。最後の一滴まで絞り出すように射精しながら、股へと回した手指で陰核を撫でまわすことも怠らなかった。
リリィの濡れた穴は快感を得るほどに、ゴズメルを深く受け入れる。彼女の秘密の宝石は、包皮を剥かれて震えていた。怯えているのではない。悦んでいるのだ。ゴズメルの固い指の腹にこすられ、つぶされながらも健気に勃起している。もっといじめてくださいと言わんばかりに。
その期待に応え、ゴズメルは射精が止まっても性器を抜かず、リリィのクリトリスを愛撫しつづけていた。小さく指を動かすだけで締め付けが強くなる。快い刺激に、性器はゆるく勃起していた。少々イラついているせいもある。
ゴズメルは息を荒くして、マリアとリリィのオーラルセックスを視姦していた。
「あん、そうよ、そう……リリィ、もっと、先っぽにっ、舌をいやらしくこすりつけなさい……っ」
「んっ、んっ……」
「あぁっ、イイ、イイわ、すごい……上手よ……おぉっ、おぉうっ……」
態度こそ居丈高だが、マリアはリリィの虜だった。腰を前後に揺すり、昂奮に小鼻を膨らませている。目はリリィに釘付けで、ゴズメルのほうを見もしない。いつもとは打って変わって余裕のない姿に、ゴズメルは胸の奥がくすぶった。
(……なんだよ、あいつ)
リリィに口で慰めてもらったことは何度もある。男性器をほおばるリリィは本当に蠱惑的な表情を浮かべるのだ。催淫スキルもあるし、童貞であれば夢中になってしまうのは当然だろう。
だがゴズメルは、普段のマリアがどんなにプライドの高い完璧主義者であるかを知っていた。
(あたしのことは、いっつもバカにしたような目で見るくせに、リリィには、あんなだらしない顔で悦がりやがって……!)
召使いをしていた時だって『上手』なんて言われたことはない。喜んでほしくて必死にがんばってもツンとすまし顔をしていた。リリィもリリィだ。どうしてゴズメルのことを放ったらかしにして、マリアなんかを悦ばせているのだろう。
本当は『やめろやめろ!』と割り込みたいのに、美しい二人がセックスしているのを見ると、自分のほうこそ場違いな気がしてきて、何も言えなくなってしまう。
その時、マリアと目が合った。とろけきっていた眦が急に吊り上がり、顔を真っ赤にしてゴズメルを睨み返してくる。
この態度の変わりように、ゴズメルは胸がぎゅっと痛くなった。鏡が割れたみたいに心が砕け、冷たい波のような悲哀が押し寄せてくる。反射的に、ゴズメルは怒りで防波堤を築いた。腕を伸ばし、リリィを強引に抱き寄せる。
「いつまで調子乗ってんだ! この子は、あたしのお嫁さんだぞ!」
「きゃっ」
「やめなさい! 何するの!」
「黙れっ、こっちのセリフだっ」
リリィの体は、ひなたに置かれたバターのように熱く溶けていた。二人がかりで責められ、無言のまま連続で絶頂していたのだ。
「浮気フェラがそんなに悦かったのか」
ゴズメルは頬に唇を添わせて「あんたみたいな悪い子にはお仕置きが必要だね」とリリィを責め立てた。
「バレてないと思ってんのかい? まんこを恥知らずにピュクピュクさせて、イき狂いやがって」
「ふゃぁん、あぁん……」
「なんだ、その雌顔はっ。まだ犯され足りないのかっ」
「ひぎゅううんっ」
ぴん、ぴん、と爪で陰核を弾いてやる。リリィはもうセックスのことしか頭にないようだった。ハメ潮を吹きながら胸を広げ、膝をぱっくりと開いてみせる。熟れすぎた果物のような女性器は、ゴズメルの太い男性器を深々とくわえこみ、しとどな蜜を垂らしている。
「ごえんらひゃっ、あんっ、あんっ、ごじゅえうのちんぽ、ちんぽ怒ってりゅっ、ごえんらひゃっ、イライラさしぇれ、ごえんらひゃいっ」
謝る唇は口づけを乞うようにすぼまっていた。射精の機会を逃したマリアは、物凄い目でこちらを睨んでいる。
妻の痴態と、元同居相手の視線に、ゴズメルの男性器はぐんと固くなる。頭がどうかしてしまったのだろうか? マリアに見せつけてやっていると思うと、なんだか尻尾がぞわぞわして、胸がスーッとするのだ。
勢いに任せてキスすると、リリィは腰を振って悦んだ。
「んぉっ、おっ、ベロちゅよいっ、精子吸いとられりゅっ」
そのとおり、舌で掘り、強く吸い上げる口の中は苦い味がした。マリアの精液の味だ。リリィとマリア、どちらの気を惹こうとしているのか、ゴズメルは自分でもわからない。
ただ、ひたすら気持ちよかった。マリアを口実にリリィとセックスしている。あるいはリリィを通してマリアとセックスしている。欲望のままにリリィを従属させて、そのさまをマリアに見せつけて、何もかも間違っているのに、気持ちよくてたまらない。
そう感じているのはゴズメルだけではないようだった。
「……見ろよ、リリィ。マリアのやつ、あたしたちをネタにオナッてやがる」
あげつらわれても、マリアは口をひん曲げるだけだ。行為をやめようとしない。むしろ見せつけるように腰を突き出した。右手で男根をしごき、左手でスリットを擦っている。偉そうな態度はナルシストの彼女らしいが、顔を真っ赤にして小さな性器をいじくる様子は無様というほかなかった。
「はぅ……んぁん、くっ、んきゅ、ひう……」
いつもの偉そうな態度とは打って変わって、吐息交じりの嬌声は甘ったるく弱弱しかった。扱いなれない性器でつらいのだろう。高い段差を乗り越えられないかのように、イこうとしては押し戻されている。やけくその下手くそオナニーを見せつけられて、ゴズメルは混乱した。マリアは一人だけのけものにされたと思って、必死にセックスアピールをしているのだ。
「ちょっとぉ……」
ゴズメルは気まずくなった。なんだか大人げない真似をしたような気がする。だからと言ってリリィを譲る気など毛頭ないが、いくらなんでもマリアが惨めすぎる。ゴズメルがもじもじと腰を退くと、リリィは「んっ、」とあえかな声を漏らした。注がれた精液が栓が抜けたかのように漏れ、床を汚す。
「……マリア、いらっしゃいな」
リリィはそっと手を伸ばした。
「ごめんなさいね……私の鱗粉のせいで巻き込んでしまったのに……」
「……っさわらないでちょうだいっ、だめ! 牙に毒があるのよっ」
四つん這いで顔を近づけるリリィを、マリアは突き放そうとした。だが、「毒?」とリリィは微笑む。
「ね、もっと気を許してほしいわ。あなたは私を傷つけられないのよ……」
リリィはマリアの濡れた手をとり、指を絡めた。
その様子は、ゴズメルの目には暗示をかけているように見えた。顔を近づけ、手を握り、目を逸らさせない。
「あなたが私を受け入れてくれるなら、あなたはもっと自由になれる」
「何を……」
「一度だけでもかまわないの。あなたはとても強いのだもの、一度だけ、無力化を試してみるのはどう?」
「……!?」
マリアは驚いているが、できても不思議はなかった。ゴズメルは鱗粉の力でステータス異常を回避したことがある。リーが注射薬に仕込んでいたのはしびれ薬だったが、応用すればマリアが自分の毒を抑えることも可能だろう。
「私のことをもっと好きになって。マリア」
「嫌よ……! 離して。触らないで」
「マリア、あなたは美しいひとだわ。だけど素直に求めなければ欲しいものは手に入らないのよ」
その時、マリアは、リリィの肩越しにゴズメルを見たのだった。彼女の瞳は風を受けた水面のように揺れていた。どきっとするほど切ない眼差しを向けられて、ゴズメルは戸惑う。
『無理強いするな』とか、言うべきなのだろうか。『もう精霊の要求を満たしたはずだから外に出よう』とか。マリアには裏切られてばかりだ。助けてやる義理などないが、そんな顔をされると落ち着かない気分になる。
ゴズメルが手を差し伸べるより先に、マリアは観念したように目を閉じた。
そして、リリィとマリアが口づけをした。
◇◇◇
ベッドのわきに服が散らばっている。
ゴズメルはマリアの身に着けているものをひとつひとつ剥ぎ取り、床へ落としていた。最後には自分もジャージを脱ぎ捨て、裸になる。リリィの服がきちんと畳んでソファに置かれているのに比べて、二人の服はぐちゃぐちゃだった。ベッドに横になるマリアが、腕で顔を隠しながらこぼした。
「服が皺になるわ……」
ゴズメルは答えなかった。マリアの白くて大きな胸が、鱗に飾られたへそが、視界に迫ってくる。
正面では、リリィがマリアに膝枕していた。角を撫でられてマリアも満更ではないらしい。馴れた獣のように自由にさせている。
ぼうっと眺めていると、不意にマリアが「何よ」と言った。ゴズメルは反応が一瞬遅れた。マリアは腕で顔を隠していたし、二人の姿が絵のように美しかった。まさか自分に話しかけているとは思わなかった。マリアは鼻で笑った。
「ふふっ、ミノタウロス族って見掛け倒しなのかしら? 裸にひん剥いた相手に何もしないなんて、臆病者もいいところね」
「……あ? なにが言いたい」
「マリア」
リリィが、マリアの唇に人差し指を当てた。
トントンと叩くと、マリアが魔法をかけられたかのように下唇を噛む。
「……私を抱く気になれないなら、そう言えばいいでしょう。かまわないわ、お互いキモチワルイものも生えていることだし、私だってあなたのことなんて別に」
「マリア。違うわよね」
マリアは再び口をつぐんだ。葛藤があるのだろう。今度の間は、もう少し長く空いた。
腕で隠した目元に、光るものが見えた。ゴズメルはぎくりとする。マリアは泣いていた。
「早く抱きなさいよ……」
心臓を鷲掴まれた気がした。
「……ん。うん」
思ってもみない言動に、ゴズメルの動きはぎくしゃくとする。抱いてほしかったのか。抱いていいのか。抱くって何をすればいいんだ??? 考えてみれば、リリィ以外と行為に及んだことなどないのだ。
ただ(顔を見たい)、と、漠然と思った。
腕に指をかける。マリアは小刻みに震えていた。抵抗はなかった。封を開けるように腕を引くと、マリアはそこで涙ぐんでいた。ゴズメルと目が合うと、臆病なネズミみたいに逃げ出そうとする。ゴズメルはとっさに頬を押さえた。もっと顔を見ていたい。
「あ……あっ……」
「……キス、返せよ」
「な、なに……」
「とぼけんな。さっき、リリィにしたぶんと……前に、あたしに無理やりしただろう」
「んぁっ……!」
マリアの唇は、本人の頑なさとは真逆に素直で、柔らかかった。びくびくと震えて、舌の気配を感じるとすぐ逃げ出そうとする。
「あぁっ、んはぁっ、ふっ……」
不似合いな言動がいちいち胸にひっかっかり、やりづらくて仕方なかった。リリィから見下ろされている。
(あぁ、あたし、ホントに気が狂っちまったのかも……)
リリィの監督下でマリアとキスしているのかと思うと、妙に昂ぶるのだ。舌がびりびりと痺れるのは、毒が完全に無力化できていないからかもしれない。息継ぎのために少し口を離すと、マリアが「あ、」と声を漏らした。
「やめないでぇ……」
これも鱗粉の効果なのだろうか? それとも、これが本来のマリアの姿なのだろうか。今までされてきたあれこれがすべて愛情の裏返しだったのかと思うと、ゴズメルは角がぐにゃぐにゃになってしまいそうだった。
「……言っとくけど、別にあんたのこと許したわけじゃないから」
「っ……」
「あたしもあんたも、変な状況で鱗粉を浴びて、そういう気分になってるだけだ。今は別に、どうこうなりたいとか思ってない」
昔は違った。
あの頃のゴズメルは実際のところリリィの面影を求めていたようでいて、マリア自身に惹かれていたのだ。それも、マリアがいきなりキスしてきた時に終わった。ゴズメルがマリアから離れたのは、リリィが現れたからではない。マリアが自分でその可能性を潰したのだ。
泣くマリアを見て胸がしめつけられるのは、今は遠い思い出を懐かしんでいるだけに過ぎない。ゴズメルには愛する妻子がいる。マリアとの関係は、もうずっと前に終わったことなのだ。
「……だから、今だけは、特別だから」
ゴズメルはマリアを誘った。
「あの夜の続きをしよう、マリア」
マリアの頬を伝う涙は、流星のように眩かった。
「……泣くな。酷くしたくなる」
ゴズメルはマリアの目元を手のひらで覆った。力の抜けた唇が艶やかに震えている。長い銀髪は、晴れた日に降る雨のように綺麗だった。深い森の中に迷い込んだ気がする。マリアの背中を抱き、頬に口づけるリリィの髪が緑色だからだろうか。
マリアがぽつりと言った。
「酷くしなさいよ……」
「…………」
「リリィがかわいそうだわ。あなたたちは、私がいないほうがうまくいくんだもの」
ゴズメルはそれ以上の言葉を吐かせなかった。マリアの唇を唇でふさぎ、胸を愛撫する。
「やめて。優しくしないで」
マリアはか細い声で訴えたが、ゴズメルもリリィも聞く耳を持たなかった。
リリィの濡れた穴は快感を得るほどに、ゴズメルを深く受け入れる。彼女の秘密の宝石は、包皮を剥かれて震えていた。怯えているのではない。悦んでいるのだ。ゴズメルの固い指の腹にこすられ、つぶされながらも健気に勃起している。もっといじめてくださいと言わんばかりに。
その期待に応え、ゴズメルは射精が止まっても性器を抜かず、リリィのクリトリスを愛撫しつづけていた。小さく指を動かすだけで締め付けが強くなる。快い刺激に、性器はゆるく勃起していた。少々イラついているせいもある。
ゴズメルは息を荒くして、マリアとリリィのオーラルセックスを視姦していた。
「あん、そうよ、そう……リリィ、もっと、先っぽにっ、舌をいやらしくこすりつけなさい……っ」
「んっ、んっ……」
「あぁっ、イイ、イイわ、すごい……上手よ……おぉっ、おぉうっ……」
態度こそ居丈高だが、マリアはリリィの虜だった。腰を前後に揺すり、昂奮に小鼻を膨らませている。目はリリィに釘付けで、ゴズメルのほうを見もしない。いつもとは打って変わって余裕のない姿に、ゴズメルは胸の奥がくすぶった。
(……なんだよ、あいつ)
リリィに口で慰めてもらったことは何度もある。男性器をほおばるリリィは本当に蠱惑的な表情を浮かべるのだ。催淫スキルもあるし、童貞であれば夢中になってしまうのは当然だろう。
だがゴズメルは、普段のマリアがどんなにプライドの高い完璧主義者であるかを知っていた。
(あたしのことは、いっつもバカにしたような目で見るくせに、リリィには、あんなだらしない顔で悦がりやがって……!)
召使いをしていた時だって『上手』なんて言われたことはない。喜んでほしくて必死にがんばってもツンとすまし顔をしていた。リリィもリリィだ。どうしてゴズメルのことを放ったらかしにして、マリアなんかを悦ばせているのだろう。
本当は『やめろやめろ!』と割り込みたいのに、美しい二人がセックスしているのを見ると、自分のほうこそ場違いな気がしてきて、何も言えなくなってしまう。
その時、マリアと目が合った。とろけきっていた眦が急に吊り上がり、顔を真っ赤にしてゴズメルを睨み返してくる。
この態度の変わりように、ゴズメルは胸がぎゅっと痛くなった。鏡が割れたみたいに心が砕け、冷たい波のような悲哀が押し寄せてくる。反射的に、ゴズメルは怒りで防波堤を築いた。腕を伸ばし、リリィを強引に抱き寄せる。
「いつまで調子乗ってんだ! この子は、あたしのお嫁さんだぞ!」
「きゃっ」
「やめなさい! 何するの!」
「黙れっ、こっちのセリフだっ」
リリィの体は、ひなたに置かれたバターのように熱く溶けていた。二人がかりで責められ、無言のまま連続で絶頂していたのだ。
「浮気フェラがそんなに悦かったのか」
ゴズメルは頬に唇を添わせて「あんたみたいな悪い子にはお仕置きが必要だね」とリリィを責め立てた。
「バレてないと思ってんのかい? まんこを恥知らずにピュクピュクさせて、イき狂いやがって」
「ふゃぁん、あぁん……」
「なんだ、その雌顔はっ。まだ犯され足りないのかっ」
「ひぎゅううんっ」
ぴん、ぴん、と爪で陰核を弾いてやる。リリィはもうセックスのことしか頭にないようだった。ハメ潮を吹きながら胸を広げ、膝をぱっくりと開いてみせる。熟れすぎた果物のような女性器は、ゴズメルの太い男性器を深々とくわえこみ、しとどな蜜を垂らしている。
「ごえんらひゃっ、あんっ、あんっ、ごじゅえうのちんぽ、ちんぽ怒ってりゅっ、ごえんらひゃっ、イライラさしぇれ、ごえんらひゃいっ」
謝る唇は口づけを乞うようにすぼまっていた。射精の機会を逃したマリアは、物凄い目でこちらを睨んでいる。
妻の痴態と、元同居相手の視線に、ゴズメルの男性器はぐんと固くなる。頭がどうかしてしまったのだろうか? マリアに見せつけてやっていると思うと、なんだか尻尾がぞわぞわして、胸がスーッとするのだ。
勢いに任せてキスすると、リリィは腰を振って悦んだ。
「んぉっ、おっ、ベロちゅよいっ、精子吸いとられりゅっ」
そのとおり、舌で掘り、強く吸い上げる口の中は苦い味がした。マリアの精液の味だ。リリィとマリア、どちらの気を惹こうとしているのか、ゴズメルは自分でもわからない。
ただ、ひたすら気持ちよかった。マリアを口実にリリィとセックスしている。あるいはリリィを通してマリアとセックスしている。欲望のままにリリィを従属させて、そのさまをマリアに見せつけて、何もかも間違っているのに、気持ちよくてたまらない。
そう感じているのはゴズメルだけではないようだった。
「……見ろよ、リリィ。マリアのやつ、あたしたちをネタにオナッてやがる」
あげつらわれても、マリアは口をひん曲げるだけだ。行為をやめようとしない。むしろ見せつけるように腰を突き出した。右手で男根をしごき、左手でスリットを擦っている。偉そうな態度はナルシストの彼女らしいが、顔を真っ赤にして小さな性器をいじくる様子は無様というほかなかった。
「はぅ……んぁん、くっ、んきゅ、ひう……」
いつもの偉そうな態度とは打って変わって、吐息交じりの嬌声は甘ったるく弱弱しかった。扱いなれない性器でつらいのだろう。高い段差を乗り越えられないかのように、イこうとしては押し戻されている。やけくその下手くそオナニーを見せつけられて、ゴズメルは混乱した。マリアは一人だけのけものにされたと思って、必死にセックスアピールをしているのだ。
「ちょっとぉ……」
ゴズメルは気まずくなった。なんだか大人げない真似をしたような気がする。だからと言ってリリィを譲る気など毛頭ないが、いくらなんでもマリアが惨めすぎる。ゴズメルがもじもじと腰を退くと、リリィは「んっ、」とあえかな声を漏らした。注がれた精液が栓が抜けたかのように漏れ、床を汚す。
「……マリア、いらっしゃいな」
リリィはそっと手を伸ばした。
「ごめんなさいね……私の鱗粉のせいで巻き込んでしまったのに……」
「……っさわらないでちょうだいっ、だめ! 牙に毒があるのよっ」
四つん這いで顔を近づけるリリィを、マリアは突き放そうとした。だが、「毒?」とリリィは微笑む。
「ね、もっと気を許してほしいわ。あなたは私を傷つけられないのよ……」
リリィはマリアの濡れた手をとり、指を絡めた。
その様子は、ゴズメルの目には暗示をかけているように見えた。顔を近づけ、手を握り、目を逸らさせない。
「あなたが私を受け入れてくれるなら、あなたはもっと自由になれる」
「何を……」
「一度だけでもかまわないの。あなたはとても強いのだもの、一度だけ、無力化を試してみるのはどう?」
「……!?」
マリアは驚いているが、できても不思議はなかった。ゴズメルは鱗粉の力でステータス異常を回避したことがある。リーが注射薬に仕込んでいたのはしびれ薬だったが、応用すればマリアが自分の毒を抑えることも可能だろう。
「私のことをもっと好きになって。マリア」
「嫌よ……! 離して。触らないで」
「マリア、あなたは美しいひとだわ。だけど素直に求めなければ欲しいものは手に入らないのよ」
その時、マリアは、リリィの肩越しにゴズメルを見たのだった。彼女の瞳は風を受けた水面のように揺れていた。どきっとするほど切ない眼差しを向けられて、ゴズメルは戸惑う。
『無理強いするな』とか、言うべきなのだろうか。『もう精霊の要求を満たしたはずだから外に出よう』とか。マリアには裏切られてばかりだ。助けてやる義理などないが、そんな顔をされると落ち着かない気分になる。
ゴズメルが手を差し伸べるより先に、マリアは観念したように目を閉じた。
そして、リリィとマリアが口づけをした。
◇◇◇
ベッドのわきに服が散らばっている。
ゴズメルはマリアの身に着けているものをひとつひとつ剥ぎ取り、床へ落としていた。最後には自分もジャージを脱ぎ捨て、裸になる。リリィの服がきちんと畳んでソファに置かれているのに比べて、二人の服はぐちゃぐちゃだった。ベッドに横になるマリアが、腕で顔を隠しながらこぼした。
「服が皺になるわ……」
ゴズメルは答えなかった。マリアの白くて大きな胸が、鱗に飾られたへそが、視界に迫ってくる。
正面では、リリィがマリアに膝枕していた。角を撫でられてマリアも満更ではないらしい。馴れた獣のように自由にさせている。
ぼうっと眺めていると、不意にマリアが「何よ」と言った。ゴズメルは反応が一瞬遅れた。マリアは腕で顔を隠していたし、二人の姿が絵のように美しかった。まさか自分に話しかけているとは思わなかった。マリアは鼻で笑った。
「ふふっ、ミノタウロス族って見掛け倒しなのかしら? 裸にひん剥いた相手に何もしないなんて、臆病者もいいところね」
「……あ? なにが言いたい」
「マリア」
リリィが、マリアの唇に人差し指を当てた。
トントンと叩くと、マリアが魔法をかけられたかのように下唇を噛む。
「……私を抱く気になれないなら、そう言えばいいでしょう。かまわないわ、お互いキモチワルイものも生えていることだし、私だってあなたのことなんて別に」
「マリア。違うわよね」
マリアは再び口をつぐんだ。葛藤があるのだろう。今度の間は、もう少し長く空いた。
腕で隠した目元に、光るものが見えた。ゴズメルはぎくりとする。マリアは泣いていた。
「早く抱きなさいよ……」
心臓を鷲掴まれた気がした。
「……ん。うん」
思ってもみない言動に、ゴズメルの動きはぎくしゃくとする。抱いてほしかったのか。抱いていいのか。抱くって何をすればいいんだ??? 考えてみれば、リリィ以外と行為に及んだことなどないのだ。
ただ(顔を見たい)、と、漠然と思った。
腕に指をかける。マリアは小刻みに震えていた。抵抗はなかった。封を開けるように腕を引くと、マリアはそこで涙ぐんでいた。ゴズメルと目が合うと、臆病なネズミみたいに逃げ出そうとする。ゴズメルはとっさに頬を押さえた。もっと顔を見ていたい。
「あ……あっ……」
「……キス、返せよ」
「な、なに……」
「とぼけんな。さっき、リリィにしたぶんと……前に、あたしに無理やりしただろう」
「んぁっ……!」
マリアの唇は、本人の頑なさとは真逆に素直で、柔らかかった。びくびくと震えて、舌の気配を感じるとすぐ逃げ出そうとする。
「あぁっ、んはぁっ、ふっ……」
不似合いな言動がいちいち胸にひっかっかり、やりづらくて仕方なかった。リリィから見下ろされている。
(あぁ、あたし、ホントに気が狂っちまったのかも……)
リリィの監督下でマリアとキスしているのかと思うと、妙に昂ぶるのだ。舌がびりびりと痺れるのは、毒が完全に無力化できていないからかもしれない。息継ぎのために少し口を離すと、マリアが「あ、」と声を漏らした。
「やめないでぇ……」
これも鱗粉の効果なのだろうか? それとも、これが本来のマリアの姿なのだろうか。今までされてきたあれこれがすべて愛情の裏返しだったのかと思うと、ゴズメルは角がぐにゃぐにゃになってしまいそうだった。
「……言っとくけど、別にあんたのこと許したわけじゃないから」
「っ……」
「あたしもあんたも、変な状況で鱗粉を浴びて、そういう気分になってるだけだ。今は別に、どうこうなりたいとか思ってない」
昔は違った。
あの頃のゴズメルは実際のところリリィの面影を求めていたようでいて、マリア自身に惹かれていたのだ。それも、マリアがいきなりキスしてきた時に終わった。ゴズメルがマリアから離れたのは、リリィが現れたからではない。マリアが自分でその可能性を潰したのだ。
泣くマリアを見て胸がしめつけられるのは、今は遠い思い出を懐かしんでいるだけに過ぎない。ゴズメルには愛する妻子がいる。マリアとの関係は、もうずっと前に終わったことなのだ。
「……だから、今だけは、特別だから」
ゴズメルはマリアを誘った。
「あの夜の続きをしよう、マリア」
マリアの頬を伝う涙は、流星のように眩かった。
「……泣くな。酷くしたくなる」
ゴズメルはマリアの目元を手のひらで覆った。力の抜けた唇が艶やかに震えている。長い銀髪は、晴れた日に降る雨のように綺麗だった。深い森の中に迷い込んだ気がする。マリアの背中を抱き、頬に口づけるリリィの髪が緑色だからだろうか。
マリアがぽつりと言った。
「酷くしなさいよ……」
「…………」
「リリィがかわいそうだわ。あなたたちは、私がいないほうがうまくいくんだもの」
ゴズメルはそれ以上の言葉を吐かせなかった。マリアの唇を唇でふさぎ、胸を愛撫する。
「やめて。優しくしないで」
マリアはか細い声で訴えたが、ゴズメルもリリィも聞く耳を持たなかった。
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