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11:ぎりぎりラブビーム!(R15性表現)

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 ゴズメルは戦慄した。だが、考えてみると思い当たるふしはいくつもある。

 目覚めた時にマリアは「あなたの恋人よ」だなんて言ったのだ!

(まさかコイツ、あたしのことが好きだから、あわよくば恋人の座に収まろうとしたんじゃ……)

 ゴズメルを召使い扱いしていたのも、力関係を明確にして、いざという時に断らせないようにしていたのではないだろうか。

(そ、そんな……力づくで自分のものにしようだなんて、なんつうスケベな女なんだ、マリア……ッ!)

 妄想をふくらませるゴズメルは、カッカッと角が熱くなるのを感じた。

 貞節を喰う獣バイコーンの本能が何かを嗅ぎ取ったのだろうか。マリアは高い鼻をひくつかせてゴズメルを見上げた。

 だがゴズメルはその視線に気づくことなく、うつむいていた。

(……どうしよう。今もひょっとして、なんかスケベなこと期待されてんのかな。キス……は、しないんだっけ、えっと……)

 汗をかくゴズメルの意識は自分の股間に集中していた。もしかして勃起するんじゃないかと思ったのだ。

 自分のことを好きっぽい美人に、寄りかかられている。ゴズメルのムキムキの二の腕にはマリアの胸が触れていて、耳元には吐息を感じる。

 だが、ダメだった。ゴズメルの役立たずの男性器はぴくりとも反応しない。

 横目でちらっと様子を見ると、なんとマリアの視線もそこを向いている。ゴズメルはショックを受けて、それから猛烈に情けない気持ちになった。

「マリア……」

「なに?」

「あの……あたしのチンポ、勃たないから……」

「そのようね」

「ギャッ」

 マリアに局部を服ごとガシッと掴まれて、ゴズメルは文字通り縮みあがった。マリアは八百屋で珍しい野菜でも見かけたかのように、それを持ち上げたり下ろしたりしている。

「ミノタウロス族のメスにのみ見られる特殊な形質……自ら弱点を生やすなんて無益もいいところね」

「や、やめとくれマリア、頼むから手を離してくれ……!」

 握りつぶされそうで、怖くてしょうがない。マリアがパッと手を放すと、ゴズメルのそれはナマコのようにビトンとベッドに落ちた。

「ねえゴズメル、脱いでその役立たずをよく見せてごらんなさいよ」

「や、やだぁ……」

「ふふ。どうして断れると思うのかしらね。あなたは私の召使いなのに」

 それはマリアが勝手に決めたことだ。マリアは確かに偉いのかもしれない。けれど、ゴズメルは彼女を自分の大事な友達だと思っていた。

 どんな下心や目論見があったとしても、マリアは記憶を失くしたゴズメルを家においてくれて、カトーの剣から守ってくれた。ゴズメルは両腕で胸と股を守りながら、言った。

「……わかってくれ。あんたをガッカリさせたくないんだよ。マリア」

「ふ……。なぁに、それ? どれだけお粗末なものをぶら下げているの?」

「そんな話をしてるんじゃない!」

 思わず大きな声が出る。とても恥ずかしくて、消えてしまいたいくらいだった。

「あ、あんたどうせこう思ってるんだろ、『こんなバカな牛女くらい、カンタンに手玉にとれるワ! だってワタシはとっても魅力的なんだも~ん!』って……」

「なんなの、その下手な声真似は……」

「あんたがどんだけ美人の金持ちだろうが関係ないね! 悪いけどあたしのチンポはマジで勃たないんだっ! あんたのことは友達としか思ってないし、お互いのためにも変な興味を持たないでくれ!」

 立ち上がって一息で怒鳴ったゴズメルは、肩でぜいぜいと息をしていた。どうして記憶がないのに、情けない気持ちだけこんなに鮮明に蘇ってくるのだろう。きっとほうぼうで恥をかいたことがあるに違いない。

 勃起して射精できるのなんて、夢の中でだけだ。

 だからこそ夢なのだろうが。

 マリアは長い脚を組んでゴズメルを見ていたが、「つくづく厄介な女ね」と言って立ち上がった。そのままナイトガウンを脱ぎ始めるので、ゴズメルはのけぞった。

「話聞いてなかったのかよ! だからなに見せたって、あたしは勃たないから!」

 手で顔を覆って叫ぶゴズメルの顔に、脱ぎたてのシャツが飛んできた。ほかほかしている!

「こっちを向きなさい、ゴズメル」

「やだっ! 早く服着てっこの露出狂!」

 払った手を逆に掴まれる。ゴズメルは引っ張られて、それに触った。

 最初、ラムネビンかなにかに触れているのかと思った。とても冷たくてポコポコと凹凸がついている。だが、柔らかい。指を動かすと、マリアが息を詰める。ゴズメルは驚いて手を引っ込めようとしたが、マリアは離させなかった。

「蛇族の鱗よ」

 そう言われて目を開けると、そこはマリアの腹部だった。へその周りに浮き上がる鱗に、ゴズメルは触れているのだった。

「…………」

 なめらかな肌が途切れて変質化している状態は、かなり異様だった。

 よほどの爬虫類好きでない限り気味悪く感じるに違いない。ゴズメルも別に蛇は嫌いではないが、ぶつぶつと浮き上がった肌には、驚かざるを得なかった。

 マリアは得意げに語った。

「私はバイコーン族と蛇族の掛け合わせなのだけれど……それぞれの形質がからだの内と外に出ているの」

「え……っ」

「バイコーン族の容姿に、蛇族の牙と鱗。性器はもっと特別な形をしているわ。こうして鱗が皮膚の薄いところにまで出てくる。……ふふ、乾燥に弱くて保湿のケアが大変ったらないのだけど」

 マリアはゴズメルの隣に座り直し「どう?」と首をかしげた。

「私がどんなに特別で完璧な存在か、これであなたにもわかったはずよ。私にこの肌を与えたのは有象無象のプレイヤーじゃない。選ばれたシャインの方々であり、いと尊きアジリニ神なの」

「マ、マリア……」

「見せなさいよ、早く」

 マリアの声は有無を言わせなかった。

「今さら恥ずかしがって何になるの? あなたの目の前にいるのは、あなたよりもあらゆる面で優れた上位種なのだから」

 ゴズメルがそこで従ったのは、マリアの自尊心の高さに感服したからだ。別に同情したわけではない。彼女の自意識のありようには驚いたけれど、それでもマリアがマリアであることには変わりなかった。気難しくて美人な、ゴズメルの女友達だ。

 マリアはゴズメルのそこを見て「死んだドブネズミのようね」と言った。さんざん見たがったくせに、ひどい言いようである。手に持ってしごいてみているが、当然のごとくそこは沈黙していた。

「だから、勃たないって言ってるのにぃ……」

 半泣きになるゴズメルに、マリアは「そうね」とそっけなく言った。

「……よかったわ。あなたと汚らわしい真似をせずに済んで」

 それがまるで自分に言い聞かせるかのようなセリフで、ゴズメルはマリアがつくづく気の毒になった。本当はシたかったんじゃないかと思うのだ。だって、好きなひととからだを確かめ合いたいと思うのは、自然なことじゃないだろうか。

「あ……あたしは勃たないけど、あんたを気持ちよくすることはできるかも」

「は?」

「えと……わかんないけど、指とかで……?」

「……凄いわね。あなたって」

 マリアは鋭い角をゴズメルに突き付けた。

「私のことをただの友達としか思っていないくせに、性処理の道具になってくれるというわけ? 大した召使いだこと」

「……だって世話になってるし」

 ゴズメルは両手でもじもじと陰部を隠しながら言った。

「夢じゃなくて現実にいる大事な友達だから、ちゃんと、気持ちを返したいよ」

「……そ」

 マリアは鼻を鳴らすと、ゴズメルを蹴って座らせた。ゴズメルは下に何も穿いていないのに、ベッドに、じかで! そのうえ、ゴズメルを椅子替わりにする!

 絶句しているゴズメルに、マリアは「許すわ。撫でていいわよ」と片手を上げてみせた。

「え。……えっ?」

「特別に私のおへそを撫でさせてあげます。ただし鱗の部分以外に触ったら、死んでもらうわ」
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