上 下
135 / 203
404 not found

3:ぬるぬるウォッシュ!(R18性表現)

しおりを挟む
 リーは「はいはい」と、デスクを立ってセルフォンをとる。

 ゴズメルは余計な音を立てないように、大きなからだを縮めて黙った。

 そこはこぢんまりした診察室だ。冒険者協会本部の要する研究所には、こういった部屋がいくつもある。傷ついた冒険者の手当てをするほか、魔物バグの生態調査などもしているそうだ。

 電子端末を操作しながらセルフォン応対するリーは忙しそうだった。

「また不穏が出ちゃったのね? もう隔離は済んでる? そうねえ、A剤の効きがよくないのかなあ……いったんC剤を投与してみて。うん、やっぱり種族語の剥奪は脳への負担がキツかったんだと思うよ……徐々に適応できるといいんだけど。はい、はい。プレイヤーは世界のために」

 セルフォンを切ると、リーは「ごめんね、話の途中で」と謝った。顔に対して眼鏡が大きすぎるようで、頭を下げると鼻までずりさがってくる。

「いいや、忙しいとこにあたしが喋りすぎちまったみたいだ。お疲れさん」

 そう言いつつ(リーって、年はいくつなんだろうな)とゴズメルは思った。

 それらしい形質がないから雑種なのだろうが、とても若く見える。子供体形だから白衣もブカブカだし、後ろでまとめた髪は短すぎて、なんだか鳥の尾羽のようだ。これでナイスバディのマリアより年上なのだろうか。

 リーはくすんと鼻を鳴らして「いたわってくれるの? ありがとう」と言った。

「そうなんだよ。ただでさえ人手不足なのに、大型の案件がきてさ、そのうえチームリーダーが雲隠れして」

「えぇ? 行方不明ってことかい?」

「うん……疲れちゃったんだと思うね。だいぶおじいちゃんだったし。でもめっっっちゃ凄腕だったから現場はもう大変! ふわ~お!」

 リーはヤケのように両手を天井に広げてみせた。ゴズメルは申し訳なくなった。

「ごめんよ、リー。あたし、自分の愚痴ばっかり聞かせちまって……」

「なに言ってるの。愚痴はお互い様なんだから、いいんだよぉ! 暮らしぶりを聞くのだって問診のうちだし」

「でもさ……」

「じゃっ、冒険者に復帰したら研究所の仕事も手伝うことにしてよ」

「えぇ……? よしとくれよ。あたしはアタマが悪いし、研究なんて何もできないよ」

「そこは僕の助手ってことにしてさ。それに、力仕事も多いんだよ。錯乱して暴れるひとを取り押さえたりさ……」

「ふぅん……」

 それは確かに、リーの細腕では大変そうだ。リーは「さて」と、ニコッと笑って立ち上がった。

「じゃ、そろそろ施術に移ろうか。お着替えしてくださーい」

 ゴズメルはカーテン付きのベッドに腰かけていたのだった。リーが施術着を渡して、カーテンを閉じてくれる。

 着替えて荷物を持ったら、処置室へ移動だ。

 研究所の廊下はツルツルしたリノリウムの床に、白い蛍光灯、ランプの点いた鉄扉がいくつもある。

「いちおう規定だからいつもの説明をするけど」と、リーは歩きながら言った。

「自覚はないだろうけど、いまのゴズメルは悪い毒に心身を侵されているの。毒の残滓は体内の奥のほうにも溜まっているから、ちょっと面倒な方法で洗浄しないといけない。毒……鱗粉が細かすぎてね、物理的に取り除くのが難しいんだ。だからこれは必要な処置なんだよ。問題ないかな?」

 ゴズメルは何度も聞かされた説明をふんふんと聞いて「任せといて」とうなずいた。

 到着した処置室には、機械製のコンテナが置いてある。リーはゴズメルを横目で見た。

「この施術にはもう慣れた? 怖がるプレイヤーも多いんだけど」

「別に。だって痛いこと別にないし、寝てればいいだけじゃん」

「さっすが冒険者! 肝が据わってるんだ」

「ふふん! まぁね」

 ゴズメルは冒険者であった頃の記憶などひとつもないのだが、持ち上げられた手前、えへんと胸を張ってみせた。

「それにさ。毒が抜ければ記憶が戻るかもしれないじゃないか。あたし、早く昔のことを思い出したいんだ。マリアのやつに、いつまでもデカい顔されたくないし!」

「……ゴズメルはいい子だね。マリアちゃんが気に入るのもわかる気がするな」

「えぇっ! あいつ、あたしのこと気に入ってんの!?」

「うん。そう思うよ……さ、可愛いマリアちゃんのためにもしっかり洗浄しようね」

 リーはそう言って、コンテナの入り口を開けた。中には縦長の浴槽があり、横になることができる。

 ゴズメルがそこに寝そべるのを確認して、リーはコンテナを閉めた。すぐ、浴槽のわきから温かくてトロトロしたローション状の液体が放出されはじめる。

(まあ、嫌なやつは嫌だろうな。うっかりしたら溺死しそうだし)

 特殊な薬液なので、息はできるのだ。だが、閉所に閉じ込められたうえ水責めにされたいと思うひとはいないだろう。体内に流れ込んだ薬液が、毒を排出するのを助けてくれるらしい。

(ローション風呂で溺死は、あたしも勘弁だな……)

 ゴズメルはぼんやりと考えながら、自分の半身を濡らす薬液を感じていた。薄い施術着に透明なローションが染み込み、下着をつけない胸や腰のかたちがくっきりとあらわれてくる。

「…………」

 落ち着かない気もするが、ゴズメルはこの吸い付いてくる肌触りが嫌いではなかった。なんだか誰かに全身を抱かれているように感じる。

『ゴズメル……』

 あぁ、まただ、とゴズメルは思った。この処置中は、耳の奥に切ない、すがりついてくるような声が聞こえてくるのだった。ゴズメルは目を閉じて、その声をもっと聞き取ろうとする。

 唇に温かく濡れたものがふれる。無味の薬液を、ゴズメルはひとの舌のように感じた。

 意識したとたんに、口の中が甘くなる。

(うぁ、キス、すごい、もっと……もっとぉ……)

『もっとキスしていい? ゴズメル、あなたと舌を吸いあいたいの、ねえ、お願い……』

 そのひとはゴズメルの思いを読んだかのように、唇を差し出してくれる。ゴズメルはむさぼった。柔らかい舌も、つやつやした歯列も、すべて甘い。向こうもゴズメルの舌を、ぴちゃぴちゃと音を立てながら吸う。

『あぁあん……あぁん……ごずめる、ごじゅめぅう』

 もう彼女が誰かなど、ゴズメルはどうでもよかった。そのひとはゴズメルがキスすると悦んでくれて、ゴズメルのことをとても気持ちよくしてくれるのだ。

『あぁ、ヌルヌル気持ちいいっ。こんなのだめぇ、気が狂ってしまう……っ』

 ぷるんと花芽のように勃起した乳首が、ゴズメルの豊満なバストをなぞりあげた。ゴズメルはそのひとのからだを押さえつけて、乳首で乳首をくりゅくりゅと押しつぶす。

 おっぱい相撲で負ける気などしない。だが、相手は『あぁっ、あぁっ』と、かすれた声を漏らしながら、何度も乳首を勃起させてきた。潰されては乳首を硬く、大きくして、ゴズメルの胸を押し返そうとする。

『あん、おっぱい、おっぱいひもぢぃいいっ』

 ゴズメルは絶対に負けるわけにいかないとわかっていた。彼女は弱弱しく見えて、芯がとても強いのだ。イニシアチブをとられたら、攻守は簡単に逆転してしまうだろう。

『ふゃあぁあっ』

 脚の間に手を入れると、彼女は全身を震わせて感じた。

『だめ、お股はだめ、いじっちゃだめなのぉ……そこは敏感だからっ、そこ、撫でちゃイヤッ、あぁ……っ!』

 嫌がるそぶりをみせながら、その実どんどん自分から弱点をさらけだす彼女が、ゴズメルは愛しくてたまらなかった。実のところ彼女は負けたいのだ。あられもない姿を見せつけて、さらなる加虐を求めている。彼女はゴズメルの手に身も心も預けきっているように感じた。なんという歪んだ信頼だろう。あるいは純粋な背徳とでもいうべきか。

 これはいつかあった出来事の記憶なのだろうか? それとも、ストレスの溜まったゴズメルが、自分にとって都合のいい女の子を妄想して淫夢にふけっているだけ?

 いずれにせよ、変態じみた行為に違いなかった。ゴズメルは記憶を取り戻すのがやや恐ろしくなる。これが事実、過去にあった行為だとしたら、自分はとんでもない色情狂ということになってしまう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

コンプレックス

悠生ゆう
恋愛
創作百合。 新入社員・野崎満月23歳の指導担当となった先輩は、無口で不愛想な矢沢陽20歳だった。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

処理中です...