【ふたなり百合】月イチ生える牛型巨女が魅了バフ持ち受付ヒーラーと協力してレベルアップ素材(童貞喪失精子)ゲットする【ゲーム系異世界】

春Q

文字の大きさ
上 下
71 / 203
急・異種獣人同士で子づくり!?ノァズァークのヒミツ編

40.キース

しおりを挟む
 ゴズメルが次に目を覚ました時、すでにマリアは部屋にいなかった。

 ダイニングテーブルの上に透明な水差しが置いてあり、水に文字が浮かんでいる。

 水に文字が浮かんでいる?

 ゴズメルは水差しの下からメモを取った。

 流麗な文字で『いいこでお留守番してね♡ マリア』と書いてある。一緒に鍵も置いてあった。ゴズメルはグシャッとメモを握りつぶした。

 変態スタンプ女の言うことを聞く義理はない。ゴズメルは起き抜けのまま、ぎゅんと部屋を飛び出した。

 使い慣れない昇降機で一気にエントランスへ降り、橋へと向かう。

 禁止されていようが、ポップルの外へ出てしまえばこっちのものだ。

 ところが、橋の手前に冒険者協会の会員が立っていた。

 ゴズメルが黙って抜けていこうとすると、「すみません、通行証を見せてください」と言う。

 昇格審査が済んだら発行してもらえるらしい。ゴズメルは低い声で言った。

「どいて。恋人が死にかけてんだよ。あたしはアルティカに帰るんだ」

「えっ……そ、そんなこと言われても……困ったな。とにかくいったん受付に相談してもらわないと」

「いいから、そこをどけ!」

 ゴズメルの恫喝に、会員はびっくりして飛び上がった。胸にかけたホイッスルをひと吹きすると、冒険者がわらわらと集まってくる。その中に、キースがいた。

「はぁ!? ゴズメル、おまえ何やってんだ」

「……あんたこそ、何。あたしのジャマをしようってのかい」

「へっ? なんだ、悪いモンでも食ったのか? ……おい、ちょっと待て! その斧をひっこめろ!」

 周りを取り囲む冒険者たちがジリジリと輪を詰めてくる。

 板挟みになったキースは「ちょ、ちょっと待ってください!」と、一人で慌てていた。

「イヤこの牛女は本当に頭が悪くてね、すみません、俺がちゃーんと言い聞かせておきますから」

 ハエのように手を擦り合わせたキースは、最後まで言えなかった。冒険者が手にした槍でスコンとキースのつむじを打ったからだ。

「キャン!」と犬そっくりに鳴いたキースを、ゴズメルは昨夜と同じように後ろにぶん投げた。

 ゴズメルははらわたが煮えくり返りそうだった。なにもかも腹立たしい。マリア相手に遅れを取った自分も、冒険者協会の真実も知らずにゴズメルの前に立ちはだかる奴らも、すべて消し炭にしてしまいたい。

「全員ぶっとばさなけりゃアルティカに帰れないなら、そうするまでだ」

 構えなおした斧がビュンと風を切る。ゴズメルが全身に帯びた闘志は、ほかの冒険者たちを縮み上がらせた。空気が火の粉を含んだかのように熱くなり、橋から見下ろせば、川からはなぜか湯気が上がっている。

 後ろ足にグッと力を入れて斬りかかろうとしたゴズメルは、眉間に皺を寄せた。キースが足をつかんでいる。

 ゴズメルは怒鳴った。

「なんだ、キース! あんた、あたしに勝てると思ってんのかい!」

「バカバカバカ! いったん退け!」

 キースは全身を汗で濡らして訴えた。

「ここをどこだと思ってんだ。冒険者協会本部のあるポップルだぞ。そのうえ今は昇格審査で各支部から猛者が集まってる。一人や二人蹴散らしたからって、とっ捕まるのがオチだ!」

「……フン! 試してみようじゃないか」

「もっと穏便な方法試せよ! いいから落ち着け、バカのくせになんでも一人で背負いこむのマジでやめろ」

 ゴズメルがその言葉に揺らいだのは、いつかリリィにも同じことを言われたからだ。

「…………」

 冒険者が打ち掛かってくる。ゴズメルはそれを斧でさばき、キースの襟首をひっつかんだ。

「うわああーっ、やめろ! 俺に当たるっ攻撃しないでくれえ!」

 走りだすと、盾のように後ろ向きに背負われたキースの涙がちょちょぎれた。冒険者たちは人質をとられたと思うのだろう。狙いをつけていた飛び道具を下ろして舌打ちしていた。

 皮肉なほど青い空が、川面に映っている。

 川底は深いが、アルティカの市街地と違ってしっかりと鋪装されている。入り組んだ街路を流れていることも含めて、川というより水路のようだ。

「くそっ……」

 しゃがみこんだキースは、流れに向かって小石を投げた。

「違反者をとっ捕まえればメダルをもらえるチャンスだったのに、何やってんだ俺は……」

 ゴズメルは腕組みしてむっつりと押し黙っている。キースはさらに石を投げてぼやいた。

「それもこれもおまえのせいだぞ。このバカミノタウロス」

「黙れ。うるさい」

「……っ、そうだ、だんだん思い出してきたぞ。昨夜おまえがブン投げてくれたおかげで、俺の頭にはタンコブがあるんだ。おまえときたら俺を差し置いてマリア副会長と二人で」

「あの女の話をするなっ」

「んだとこらっ」

 キースはまだ二言三言、文句を言うつもりだったらしい。

 だが、ゴズメルを振り返ると、「おぇ……」と言って固まった。

「なんだよー……メソメソすんなよ、ゴズメル……」

 そんなこと言われてもゴズメルだって困る。泣きたくて泣いているわけではないのだ。にっちもさっちもいかなくて、絶望のあまりもう泣くしかない。

 実は二人は、ここに来る前、こそこそと冒険者協会の受付に行って来た。

 ゴズメルは放心してしまって、キースと受付嬢の会話をまるで外国語のように感じた。

 キースが「コイツ・トモダチ・ビョウキ・アルティカ・カエリタイ」と伝えると、受付嬢が「オキノドク・デモ・システムジョウ・ムリ」と答えるのだ。

 もしも結婚していたら、家族だったら、女同士じゃなかったら、何か対応が違ったのだろうか。ゴズメルにはわからない。ただ、悲しくて悲しくて、どうしたらいいのか、もうわからない。

 キースは「おーおー、泣くとますますブスだなあ」と煽ったり「バカだなっ、医者でもないおまえが病気のリリィに何をしてやれんだよ」と叱ったり、左右をやたらと反復横跳びしてくる。

 ゴズメルはもうダマレとかシネとか言う気力もなかった。

(リリィは、卵がおなかに詰まっちゃったんだろうか……こんなことになるならゴチャゴチャ考えてないで結婚すれば良かった……あたしのせいだ。あたしのせいでマリアにひどいことをされてたらどうしよう)

 もう会えなくなったらと思うと、ゴズメルは悔やんでも悔やみきれない。

 キースはとうとう反復横跳びをやめて、深いため息をついた。

「……あぁ、もう……しょうがねえなぁ……」

 絶望の中にいるゴズメルは巨体を縮めて、グスグスと哀れっぽく洟をすすっている。

 キースは地団太を踏んで叫んだ。

「わかったよ! なんとかしてやるから泣くのをヤメロ!」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

さくらと遥香(ショートストーリー)

youmery
恋愛
「さくらと遥香」46時間TV編で両想いになり、周りには内緒で付き合い始めたさくちゃんとかっきー。 その後のメインストーリーとはあまり関係してこない、単発で読めるショートストーリー集です。 ※さくちゃん目線です。 ※さくちゃんとかっきーは周りに内緒で付き合っています。メンバーにも事務所にも秘密にしています。 ※メインストーリーの長編「さくらと遥香」を未読でも楽しめますが、46時間TV編だけでも読んでからお読みいただくことをおすすめします。 ※ショートストーリーはpixivでもほぼ同内容で公開中です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃった件

楠富 つかさ
恋愛
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃうし、なんなら恋人にもなるし、果てには彼女のために職場まで変える。まぁ、愛の力って偉大だよね。 ※この物語はフィクションであり実在の地名は登場しますが、人物・団体とは関係ありません。

処理中です...