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破・隷属の首輪+5でダンジョンクリア編
11.エッチすぎる呪い
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「よし、あらかた倒せたかな」
ゴズメルはふぅっとため息をついて、斧を下ろした。
第四層まで来た。鐵刑の塔は階層が増すごとに周囲が明るくなり、敵も強くなる。
素材は順調に集まってきたが、やはりフロアを巡回する程度の雑魚敵相手では実入りが少ない。
(ここらでボス戦といきたいとこだけど、あんまり寄り道するのもなぁ……)
アイテム回収中のリリィをちらっと見ると、彼女はあらぬ方向を見上げて立ち止まっていた。
ゴズメルは話しかけた。
「どしたの」
「あれ、なんでしょう……?」
リリィが指さしたのは、天井を支える太い柱だ。
奇妙な文様が彫刻された柱は上部で隣の柱とアーチ形につながっている。かなり高いが、アーチの頂点に奇妙なでっぱりが確認できる。
ゴズメルはしぱしぱと瞬き、次の瞬間、手を打った。
「リリィ、お手柄だ! あれ宝箱だよ!」
「えぇ……っ、あんなところに!?」
影になっているが、間違いない。取るのが難しい場所にある宝箱ほど中身は豪華だと相場が決まっている。
「よし、さっそく行ってくるワ」
柱に飛びついたゴズメルに、リリィは悲鳴を上げた。
「ご、ご主人様、落ちたら大変です! 考え直してください!」
「だいじょぶだいじょぶ、あたしは当たり判定が広いんだ」
宝箱を開けるには、体の一部がタッチしている必要がある。ガタイのいい種族は有利だ。
「もし落ちても落下攻撃に切り替えればダメージ減らせるから、あんたは離れて待っててね」
「でも、なにか仕掛けがあるかも。ちゃんと作戦を練ってからにしたほうが……」
ゴズメルはもう聞いていなかった。
隷属の首輪を買うのにいくらかかったかゴズメルはリリィに話していない。知ればきっと気に病むだろう。
今でさえ心身に負担をかけているのに、これ以上の迷惑はかけられないと思った。
幸い、木登りは得意だ。柱をよじ登ったゴズメルは、下でおろおろと見上げているリリィに片手を振ってみせた。伊達に十年冒険者をやっていない。これくらいのことは朝飯前だ。
……が、あの宝箱は確かに手こずりそうだ。
翼のある種族なら、ここから飛び移ればでっぱりに手が届くのだろうが。
ゴズメルは少し考えて、斧を使うことにした。
柱からアーチの間の壁に斧を突き立てればとっかかりが一つ増えるので、でっぱりにも手が届くだろう。
斧の回収は武器の特性を利用すればいい。装備を解除し、アイテムボックスから再び装備しなおせば戻ってくる。
肚を括ったゴズメルは、勢いをつけて横壁に斧を振り下ろした。
異次元の壁にぐっと刃先が食い込んだことを確認し、深呼吸して飛び移る。間髪入れずにでっぱりを掴んだ。
宝箱に触った。
(よし、ゲット!)
勝利を確信した次の瞬間、ゴズメルの手からでっぱりが消えた。一度開けた宝箱は消えてしまう。でっぱりだと思っていたものは、宝箱の一部だったのだ!
「あっ」
まっさかさまに落ちる自分をひどく客観的に俯瞰して――ゴズメルは、死んだと思った。
落下攻撃に切り替えようにも、斧を回収できていない。装備が間に合わない。
リリィが駆け出して叫んだ。
「ゴズメル!!」
死ななかったのは、リリィが補助魔法を使ったからだ。
床に叩きつけられる寸前で、ゴズメルの体は風に包まれて浮き上がった。
「だから、ちゃんと作戦を練ってからって言ったじゃないの……」
リリィが床に突き立てたロッドが、音を立てて倒れる。と同時に、ゴズメルはどすんと尻もちをついた。
「ごめん、リリィ! 大丈夫!?」
へたりこんだリリィはいやに苦し気だった。首輪の鍵穴が光っている。
ゴズメルはハッと気がついた。
『あんたは離れて待っててね』
ゴズメルが不用意に下した命令に、リリィは逆らってしまったのだ。契約違反の呪いが跳ね返ってくる。
まずリリィの着ていたローブと服がはじけ飛んだ。
「きゃあああああ!」
「うえああああああ!?」
身ぐるみを剝がされたところに、隷属の首輪+5の特殊効果が発動する。
①隷属の首輪、②隷属の手枷、③隷属の足枷、④隷属の口輪、⑤隷属の鎖。
以上、隷属シリーズ五種、フル装備の状態である。
(+5ってそういう意味かよ! くそっ、ミックのバカ!! そりゃ、アダルトグッズならこういう需要もあるだろうけど……!)
白い肢体に絡みつく鎖と、獣に襲われたかのように引き裂かれたローブが、リリィの姿をいっそう煽情的なものにしている。
「ンーッ、ンーッ!」
「……っ、リリィ、大丈夫だから。喋れないだけで、聞こえてはいるんだろ?」
鎖に締め付けられた胸と尻が、目の毒ったらない。
口輪はいわゆるギャグボールで、唾液が垂れてしまう仕様のようだ。
涙と唾液をこぼしながら震えているリリィに、ゴズメルは唸った。
謝って解決するならいくらでもそうするが、今はとにかく呪い解除に集中すべきだ。
観察してみると、首輪と手枷そして足枷は鎖で一つに繋がっている。鎖が絡まりあっているのもそうだが、このままでは歩くことも難しいだろう。
(とりあえず、マントかなにか装備させてやって魔道具屋に直行……って、クソ、装備スロットがぜんぶ埋まってるから、上から着せることもできないのか。えーっ……)
ゴズメルはふぅっとため息をついて、斧を下ろした。
第四層まで来た。鐵刑の塔は階層が増すごとに周囲が明るくなり、敵も強くなる。
素材は順調に集まってきたが、やはりフロアを巡回する程度の雑魚敵相手では実入りが少ない。
(ここらでボス戦といきたいとこだけど、あんまり寄り道するのもなぁ……)
アイテム回収中のリリィをちらっと見ると、彼女はあらぬ方向を見上げて立ち止まっていた。
ゴズメルは話しかけた。
「どしたの」
「あれ、なんでしょう……?」
リリィが指さしたのは、天井を支える太い柱だ。
奇妙な文様が彫刻された柱は上部で隣の柱とアーチ形につながっている。かなり高いが、アーチの頂点に奇妙なでっぱりが確認できる。
ゴズメルはしぱしぱと瞬き、次の瞬間、手を打った。
「リリィ、お手柄だ! あれ宝箱だよ!」
「えぇ……っ、あんなところに!?」
影になっているが、間違いない。取るのが難しい場所にある宝箱ほど中身は豪華だと相場が決まっている。
「よし、さっそく行ってくるワ」
柱に飛びついたゴズメルに、リリィは悲鳴を上げた。
「ご、ご主人様、落ちたら大変です! 考え直してください!」
「だいじょぶだいじょぶ、あたしは当たり判定が広いんだ」
宝箱を開けるには、体の一部がタッチしている必要がある。ガタイのいい種族は有利だ。
「もし落ちても落下攻撃に切り替えればダメージ減らせるから、あんたは離れて待っててね」
「でも、なにか仕掛けがあるかも。ちゃんと作戦を練ってからにしたほうが……」
ゴズメルはもう聞いていなかった。
隷属の首輪を買うのにいくらかかったかゴズメルはリリィに話していない。知ればきっと気に病むだろう。
今でさえ心身に負担をかけているのに、これ以上の迷惑はかけられないと思った。
幸い、木登りは得意だ。柱をよじ登ったゴズメルは、下でおろおろと見上げているリリィに片手を振ってみせた。伊達に十年冒険者をやっていない。これくらいのことは朝飯前だ。
……が、あの宝箱は確かに手こずりそうだ。
翼のある種族なら、ここから飛び移ればでっぱりに手が届くのだろうが。
ゴズメルは少し考えて、斧を使うことにした。
柱からアーチの間の壁に斧を突き立てればとっかかりが一つ増えるので、でっぱりにも手が届くだろう。
斧の回収は武器の特性を利用すればいい。装備を解除し、アイテムボックスから再び装備しなおせば戻ってくる。
肚を括ったゴズメルは、勢いをつけて横壁に斧を振り下ろした。
異次元の壁にぐっと刃先が食い込んだことを確認し、深呼吸して飛び移る。間髪入れずにでっぱりを掴んだ。
宝箱に触った。
(よし、ゲット!)
勝利を確信した次の瞬間、ゴズメルの手からでっぱりが消えた。一度開けた宝箱は消えてしまう。でっぱりだと思っていたものは、宝箱の一部だったのだ!
「あっ」
まっさかさまに落ちる自分をひどく客観的に俯瞰して――ゴズメルは、死んだと思った。
落下攻撃に切り替えようにも、斧を回収できていない。装備が間に合わない。
リリィが駆け出して叫んだ。
「ゴズメル!!」
死ななかったのは、リリィが補助魔法を使ったからだ。
床に叩きつけられる寸前で、ゴズメルの体は風に包まれて浮き上がった。
「だから、ちゃんと作戦を練ってからって言ったじゃないの……」
リリィが床に突き立てたロッドが、音を立てて倒れる。と同時に、ゴズメルはどすんと尻もちをついた。
「ごめん、リリィ! 大丈夫!?」
へたりこんだリリィはいやに苦し気だった。首輪の鍵穴が光っている。
ゴズメルはハッと気がついた。
『あんたは離れて待っててね』
ゴズメルが不用意に下した命令に、リリィは逆らってしまったのだ。契約違反の呪いが跳ね返ってくる。
まずリリィの着ていたローブと服がはじけ飛んだ。
「きゃあああああ!」
「うえああああああ!?」
身ぐるみを剝がされたところに、隷属の首輪+5の特殊効果が発動する。
①隷属の首輪、②隷属の手枷、③隷属の足枷、④隷属の口輪、⑤隷属の鎖。
以上、隷属シリーズ五種、フル装備の状態である。
(+5ってそういう意味かよ! くそっ、ミックのバカ!! そりゃ、アダルトグッズならこういう需要もあるだろうけど……!)
白い肢体に絡みつく鎖と、獣に襲われたかのように引き裂かれたローブが、リリィの姿をいっそう煽情的なものにしている。
「ンーッ、ンーッ!」
「……っ、リリィ、大丈夫だから。喋れないだけで、聞こえてはいるんだろ?」
鎖に締め付けられた胸と尻が、目の毒ったらない。
口輪はいわゆるギャグボールで、唾液が垂れてしまう仕様のようだ。
涙と唾液をこぼしながら震えているリリィに、ゴズメルは唸った。
謝って解決するならいくらでもそうするが、今はとにかく呪い解除に集中すべきだ。
観察してみると、首輪と手枷そして足枷は鎖で一つに繋がっている。鎖が絡まりあっているのもそうだが、このままでは歩くことも難しいだろう。
(とりあえず、マントかなにか装備させてやって魔道具屋に直行……って、クソ、装備スロットがぜんぶ埋まってるから、上から着せることもできないのか。えーっ……)
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