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序・童貞喪失精子ゲット編
4.訪問の約束
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「ゴズメル……」
リリィの心配そうな声に、ゴズメルはハッと我に返った。
「あはは、なんか妙な話を聞かせちまったね。それにすっかり長居した」
カップに残ったお茶をごくごくと飲み干し、口を手で拭う。
「ごちそうさん。まぁ、シラヌイのじいさんだって土下座でもすりゃ見逃してくれるかもしれない。それがダメでも、審査で恥をかくまではまだクビにはされないよ。そう心配そうな顔をしないでくれ」
「……会長に事情を明かすつもりはないのね?」
リリィの言葉に、ゴズメルは顔をしかめた。
「よしとくれよ、リリィ。あたしはあんただから話したんだ。こんな下ネタ、色ボケジジイに知られたかないね」
「そう。そうよね、だいじょうぶよ。私は絶対にあなたの秘密を守るわ」
「……なら、いいけど」
「でも……」
リリィは長い睫毛をゆっくりとしばたかせて、ゴズメルを見つめた。
大きなエメラルドの瞳が放つ光に、ゴズメルは一瞬、気圧された。
受付で微笑している様子とも、臨時ヒーラーとして勇ましく戦場に立っている姿とも違う感じがする。
リリィは静かに言った。
「そういうことなら、私はあなたの力になれるかもしれない」
「……は?」
「いいえ。その……」
先ほどまでの雰囲気は気のせいだったのだろうか、ゴズメルが問い返すとリリィはもじもじと言いづらそうに身じろいだ。
「つ、月イチで……、と言っていたわよね。それは次はいつ頃なのか、すでにわかっているのかしら」
「えっと……」
ゴズメルは口ごもった。リリィの言わんとしていることが、よくわからない。
だが、ここまで話してしまったのだ。打ち明けたところで何も問題はないと思いなおした。
「毎月、満月の頃なんだ」
受付として会員の予定を管理しているリリィは、ピンと来たようだった。
「それであなた、いつも満月の頃は休みをとるのね」
「そう。生えてる感覚が気持ち悪いってのもあるんだけど、頭痛と眩暈がひどくてさ。そんな体調でセックスしろってんだから、アジリニ神はまったく鬼だよ」
「……その日、あなたの家にお邪魔したら、迷惑かしら」
「へっ?」
思ってもみない申し出に、ゴズメルの肩は跳ねた。
「い、いや、それは――」
まさか、素材採取のために性的な相手をしてくれるとでも言うのだろうか。
ゴズメルはびっくりして、リリィの顔をまじまじと見た。
まあ、確かに可愛いとはゴズメルは思う。決して嫌いなわけではない。
だが、それは頼れる受付嬢への好意であって、恋愛感情や性欲ではない。ないはずだ。それにしても可愛いな・・・・・・。
ぽーっとしはじめたゴズメルは、慌てて自分で自分の肘をつねった。
(いやいや、そもそも職場同じやつと寝るとか、ありえねーから)
試したところで上手くいかないことはわかりきっているのだ。痛い思いをさせるのも気が引ける。
ゴズメルはなんとか穏便に断れないかと必死に言葉を探した。
「ゴズメル、誤解しないで」
リリィはそっと言った。
「私はただ、あなたの問題を解決する手立てに心当たりがあるの。うまくいくかはわからないけれど、試してみる価値はあると思うわ」
「な、なんだ、それ。どういう意味」
「今ここでは言えない」
それが冗談ではないことは、リリィの声の低さから察せられた。
いつも笑顔を絶やさない彼女の、どことなく憂いを帯びた表情に、どきりとする。
艶のある唇が、小さく動いた。
「……行っても、いい?」
女同士でも伝わってくる色気に、ゴズメルは角に電気を流されたような気がした。
(でも、確かに、このまま何もしないよりは……)
ゴズメルはごくっと唾を飲み、リリィの申し出にうなずいた。
リリィの心配そうな声に、ゴズメルはハッと我に返った。
「あはは、なんか妙な話を聞かせちまったね。それにすっかり長居した」
カップに残ったお茶をごくごくと飲み干し、口を手で拭う。
「ごちそうさん。まぁ、シラヌイのじいさんだって土下座でもすりゃ見逃してくれるかもしれない。それがダメでも、審査で恥をかくまではまだクビにはされないよ。そう心配そうな顔をしないでくれ」
「……会長に事情を明かすつもりはないのね?」
リリィの言葉に、ゴズメルは顔をしかめた。
「よしとくれよ、リリィ。あたしはあんただから話したんだ。こんな下ネタ、色ボケジジイに知られたかないね」
「そう。そうよね、だいじょうぶよ。私は絶対にあなたの秘密を守るわ」
「……なら、いいけど」
「でも……」
リリィは長い睫毛をゆっくりとしばたかせて、ゴズメルを見つめた。
大きなエメラルドの瞳が放つ光に、ゴズメルは一瞬、気圧された。
受付で微笑している様子とも、臨時ヒーラーとして勇ましく戦場に立っている姿とも違う感じがする。
リリィは静かに言った。
「そういうことなら、私はあなたの力になれるかもしれない」
「……は?」
「いいえ。その……」
先ほどまでの雰囲気は気のせいだったのだろうか、ゴズメルが問い返すとリリィはもじもじと言いづらそうに身じろいだ。
「つ、月イチで……、と言っていたわよね。それは次はいつ頃なのか、すでにわかっているのかしら」
「えっと……」
ゴズメルは口ごもった。リリィの言わんとしていることが、よくわからない。
だが、ここまで話してしまったのだ。打ち明けたところで何も問題はないと思いなおした。
「毎月、満月の頃なんだ」
受付として会員の予定を管理しているリリィは、ピンと来たようだった。
「それであなた、いつも満月の頃は休みをとるのね」
「そう。生えてる感覚が気持ち悪いってのもあるんだけど、頭痛と眩暈がひどくてさ。そんな体調でセックスしろってんだから、アジリニ神はまったく鬼だよ」
「……その日、あなたの家にお邪魔したら、迷惑かしら」
「へっ?」
思ってもみない申し出に、ゴズメルの肩は跳ねた。
「い、いや、それは――」
まさか、素材採取のために性的な相手をしてくれるとでも言うのだろうか。
ゴズメルはびっくりして、リリィの顔をまじまじと見た。
まあ、確かに可愛いとはゴズメルは思う。決して嫌いなわけではない。
だが、それは頼れる受付嬢への好意であって、恋愛感情や性欲ではない。ないはずだ。それにしても可愛いな・・・・・・。
ぽーっとしはじめたゴズメルは、慌てて自分で自分の肘をつねった。
(いやいや、そもそも職場同じやつと寝るとか、ありえねーから)
試したところで上手くいかないことはわかりきっているのだ。痛い思いをさせるのも気が引ける。
ゴズメルはなんとか穏便に断れないかと必死に言葉を探した。
「ゴズメル、誤解しないで」
リリィはそっと言った。
「私はただ、あなたの問題を解決する手立てに心当たりがあるの。うまくいくかはわからないけれど、試してみる価値はあると思うわ」
「な、なんだ、それ。どういう意味」
「今ここでは言えない」
それが冗談ではないことは、リリィの声の低さから察せられた。
いつも笑顔を絶やさない彼女の、どことなく憂いを帯びた表情に、どきりとする。
艶のある唇が、小さく動いた。
「……行っても、いい?」
女同士でも伝わってくる色気に、ゴズメルは角に電気を流されたような気がした。
(でも、確かに、このまま何もしないよりは……)
ゴズメルはごくっと唾を飲み、リリィの申し出にうなずいた。
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