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第25話

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 あれから二時間が経過した。

 昼の十二時になったのでショッピングモール内にあるファミレスに入っていく。

「おひ~る~! おひるごは~ん! あたしは、すてきな、すてーきにするですよ~!」

 萌瑠はノリノリだ。

 どんなときでも楽しくできるのは、うらやましい。

 ある意味、才能か?

「私はドリアにしようかな……武尊くんは?」

「そうだな……」

 正直、女の子ふたりにプレゼントしてしまったから軽く金欠状態なんだよな……。

「……僕もドリアにしようかな」

「あーっ、ダメです! ダメですよ~! せっかくのデートなのに、そんなメニューにするなんて! もっとガツンといきましょう!」

「ガツンってドリアも十分ガツンだと思うんだけどなあ……」

「さっき服を買ってくれたお礼です! ここは、あたしが持ちましょう!」

「えっ、悪いよ」

「せめてドリアにはサラダをつけましょう! そうすれば、おなかにたまるはず……真海奈さんもサラダを追加しますね!」

「……萌瑠ちゃん、ありがとね」

 萌瑠が店員さんを呼んでくれている。……注文は完了した。

「メニューを選んだので、少しお話でもしましょうか」

「ああ、うん、いいけど」

 萌瑠は、なにか含みを持たせた言い方をするが。

「話ってのは?」

「ズバリ、神憑先輩が、なぜ伝播高校で噂の標的にされているのか、です」

「そんな噂の標的になっていたっけ?」

「なっていましたよ、確実に……あたしの情報は正しいのです」

 一年前、ある病院に入院していたのは事実なのだが、僕にも理解できないくらいに脳髄には、その情報がない。

「だから、神憑先輩は何者かに脳の情報操作をされているってことなのです」

「それをするメリットは?」

「メリットがあるから、していると考えることができませんか?」

「僕には、そのメリットが感じられない」

「おそらく伝播町に存在する《機関》が原因かと」

「《機関》?」

《機関》って、なんだよ……?

「その《機関》が伝播町に存在していて、武尊くんは、その《機関》によって情報操作されたってこと?」

「その線が正しいと、あたしは思っています」

「そんな現実離れしたことが、この伝播町にあるって、そんなことがあり得るのか?」

 第一、僕は、ただの病人だろ……?

「意味が、わからない」

「問題は、なぜ、神憑先輩が入院していた病院の情報を忘れているのか、ということです」

 僕は今、ある小さなクリニックで一ヶ月に一回、通院しているのだが?

「もし、本当に《妄想具現症》であるなら、ですよ……まだ、その入院していた病院に通院していたとしても、おかしくはないですか?」

「別に、おかしくはないと思うけど……萌瑠ちゃんは、なにが言いたいんだ?」

 火花萌瑠は言い含める結論を出す。

「実は……あたし、《機関》の人間なのです」
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