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沈黙
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「私たち、なんでこんなところまできたんだろう?」
「なんとなく、じゃないか?知らんけど」
「なんとなくって…まぁいいか、けどさ」
「なに?」
「楽しかった、とても」
「……そうだな」
「どうしたの?」
「……君はさ、また僕の家に帰るのか?」
「……どうしてそんなこと聞くの?」
「僕だって、君と一緒にいることは好きだよ、もちろん。でも、分からないんだよ、知らないことが多すぎる」
「……今から知ればいい」
「そういう問題じゃないんだよ」
「……どういう問題よ」
「……」
「どういう問題なの!だから何が悪いの!互いが互いのことを好きで、同じ場所にいるのが心地よくて、それの何が悪いの!」
「なぁ」
「なに?」
「僕ら、まだお互いの名前すら知らないんだぜ」
「……バカ」
彼女は顔を手で多い、そして涙を流した。
「バカ、バカ、バカバカバカ」
僕は何も出来ないまま、ただそこに立ちつくしていた。
「バカ……」
X
結局、僕らは家に帰った。それが正しいか正しくないかなんて僕にも分からないし、そんなことはどうでもいいと思ってる。とにかく、僕らは家に帰ったのだ。
玄関をくぐる頃には彼女も泣き止んでいたが、その目元にはまだ少し跡が残っている。靴を脱ぎ、廊下を通り、リビングへついた。そしてソファーの上に身を沈め、僕も彼女もしばらくの間頭を空っぽにしていた。
やがて彼女は僕の方へ振り向いた。そして僕の目をじっと見つめ続けた。少しずつ、自分の中でなにかが溶けていくのを感じた。そして、それは蜂蜜のように甘い恍惚感だった。
彼女を抱きたい、と僕は思った。頭もフラフラしてきた。そのうち彼女の顔がこちらへ近付いてきて、ついに唇が重なった。柔らかくて、甘い匂いがした。僕は彼女の頭を押さえて、そのまま五分ぐらいじっとしていた。二人とも、ずっと目を閉じていた。
「ちょっと長くなったね」彼女は頬を赤らめながら、僕へそっと微笑んだ。彼女はそのまま風呂場へ行き、一人残された僕は何も考えぬまま、ただ天井を見つめるだけだった。
「なんとなく、じゃないか?知らんけど」
「なんとなくって…まぁいいか、けどさ」
「なに?」
「楽しかった、とても」
「……そうだな」
「どうしたの?」
「……君はさ、また僕の家に帰るのか?」
「……どうしてそんなこと聞くの?」
「僕だって、君と一緒にいることは好きだよ、もちろん。でも、分からないんだよ、知らないことが多すぎる」
「……今から知ればいい」
「そういう問題じゃないんだよ」
「……どういう問題よ」
「……」
「どういう問題なの!だから何が悪いの!互いが互いのことを好きで、同じ場所にいるのが心地よくて、それの何が悪いの!」
「なぁ」
「なに?」
「僕ら、まだお互いの名前すら知らないんだぜ」
「……バカ」
彼女は顔を手で多い、そして涙を流した。
「バカ、バカ、バカバカバカ」
僕は何も出来ないまま、ただそこに立ちつくしていた。
「バカ……」
X
結局、僕らは家に帰った。それが正しいか正しくないかなんて僕にも分からないし、そんなことはどうでもいいと思ってる。とにかく、僕らは家に帰ったのだ。
玄関をくぐる頃には彼女も泣き止んでいたが、その目元にはまだ少し跡が残っている。靴を脱ぎ、廊下を通り、リビングへついた。そしてソファーの上に身を沈め、僕も彼女もしばらくの間頭を空っぽにしていた。
やがて彼女は僕の方へ振り向いた。そして僕の目をじっと見つめ続けた。少しずつ、自分の中でなにかが溶けていくのを感じた。そして、それは蜂蜜のように甘い恍惚感だった。
彼女を抱きたい、と僕は思った。頭もフラフラしてきた。そのうち彼女の顔がこちらへ近付いてきて、ついに唇が重なった。柔らかくて、甘い匂いがした。僕は彼女の頭を押さえて、そのまま五分ぐらいじっとしていた。二人とも、ずっと目を閉じていた。
「ちょっと長くなったね」彼女は頬を赤らめながら、僕へそっと微笑んだ。彼女はそのまま風呂場へ行き、一人残された僕は何も考えぬまま、ただ天井を見つめるだけだった。
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