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宗教の人に目をつけられたかもしれない。

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最近よくうちに来る二人組がいます。

一人は固定で五十歳くらいの中年女性、もう一人はいつも違う人です。

初めての訪問は今年に入ってすぐの頃で、夕食の準備をしている時にチャイムが鳴ったんですよ。

ドアスコープをのぞくと、中年の女性と、その息子くらいの年齢の男性が並んで立っています。

彼らの訪問に心当たりはなかったのですが、この人たちは何者だろうと思いドアを開けてしまいました。

女性の方が「聖書のお話をナントカカントカ」と言うのを聞いた瞬間、開けたことを後悔しました。

もろ宗教じゃないですか。

気になってドアを開けてしまったのがいけませんね。

好奇心は猫をも殺すってヤツですか。使い方合ってるか知らんけど。

ですが女性は、「今お忙しいですか?」と私に問い、「はい……ちょっと夕食の準備で」と答えると、また来ますと冊子だけ渡して素直に帰って行きました。

しつこい勧誘を予想していたのでちょっと拍子抜け。



二度めはその翌週くらい、今度は前と同じ女性と、もう一人はもっと年配の女性でした。

またドアを開けてしまいました……というのも、ドアスコープをのぞくと右端にぼんやりと人影が映っているだけだったので。

上の階の人が野菜か何か持ってきてくれたのだと思ったんです。上の階の人はちょいちょい野菜をくれるんです。

ドアスコープから見えるか見えないかの際どい位置に立つのは作戦か何かでしょうかね?

今度は昼間で、昼寝の途中だったのが髪型やらでわかったのか、挨拶の後に会話を仕掛けてきました。

「この前は忙しいところに失礼しました」

と言ってドアの脇のベビーカーをチラリと見て、

「お子さん小さいんですか?」と。

「四歳と六歳です」

と答えると、中年女性は「そうなんですね」と言い、年配の方は「あら大変」と言っていました。

「この前の冊子を読んでいただけたらわかると思いますけど、聖書には子育てのヒントがたくさん書いてあるんです」

と中年女性。

「そうそう」と頷く年配の女性。

メインボーカルとサブボーカルみたいですね。

長い長い話が始まりそうな予感がぷんぷんします。

お互いの時間を無駄にしないためには早々に帰ってもらうのが一番です。礼儀正しい人々ですし、活動の邪魔はあまりしたくないですし。

「すみません聖書とかあんまり興味ないんです。ホント申し訳ないんですけど」

と一息に答えると、残念そうに帰って行きました。



その翌週。

また夕食時です。チャイムが鳴りました。

ドアスコープの外にはまたあの女性の姿が!

え? この前はっきり断ったよね?!

居るのは丸わかりだろうけど居留守を使わせていただきました。



またまた次の週。冷たい雨が降る日でした。

真昼間にチャイム。ドアスコープをのぞいても誰もいない。

何だ? と思わずドアを開けると……

またお前かーーーい!!!

ちょっと離れたところに立ってた。

また相手の作戦勝ち(?)

今回は中年女性一人でした。

思わず苦笑いしてしまいましたよ私は。向こうは「来ちゃったo(^_^)o」みたいな感じで微笑んでましたけど。

こんにちはの挨拶をして、さっそく「聖書の中に子育ての参考になることがありまして……」と始めました。

前から思っていたんですが、何と言うか、彼らは目的をはっきり言わずに話を始めるので、何を私に求めているのかさっぱりわからないんですよ。

何者なのかもわからない上、ただ話を聞けばいいのか、入信してほしいのか、よくわからず話を聞くハメになるので、なんかムズムズする。

「すみませんが、そういうの興味ないんです」とまた言うと、女性は

「……すると……育児に関して何かポリシーを持っておられる……」

とおっしゃる。イヤイヤポリシーとかそういうのじゃなくて!

何で「聖書の子育て部分に興味ない」=「何らかの確固としたポリシーを持って育児に臨んでいる」となるのか?!

「いや、そんな大袈裟なポリシーとかはないですけど、ただ聖書とかよくわからなくて」

「子育てに……興味はあまりないですか?」

イヤ興味がないのは子育てではなくて聖書の方ですし!!

四回目の訪問だからか、今回の女性は簡単には引かない雰囲気でした。単身で乗り込んで来ていますし。

それとも、よっぽど私が子育てに悩んでいるように見えたのか……もしかして家の前を通った時に子どもを叱る声が聞こえたとか?

でもこの女性、物腰も上品だし礼儀正しい感じですが、あまり人との会話は得意じゃないのかなとも感じました。ちょっと会話がすれ違っているような気がしたので。

なんか気まずい雰囲気になってしまったのと、雨の中わざわざ訪ねてきてくれているのも申し訳ない気持ちになったので、こちらからも質問をしてみました。

「雨の日に大変ですね。この辺りの教会とかから来られたんですか?」

「私たち、エホバの証人と申しまして、聞いたことありますか?」

ここで初めて彼らの正体がわかりました。薄々わかっていましたが、やっぱりエホバの証人だったんですね!

「何度か聞いたことはあります。このあたりをずっと回ってるんですか?」

「はい」

なんていう会話を少しすると、女性は帰っていきました。

雨の中遠ざかっていく背中を見ていると、なんか悪いことをしてしまった気持ちになりました。

でも興味ないのだから仕方ないです。


それ以来一ヶ月が経ちますが、彼らが訪れることは今のところないです。

ただ、この間息子たちと公園で遊んでいる時、例の女性ともう一人の二人組が、遠くから手を振っているように見えたのは気のせいかどうか……。
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