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第23話 事の顛末
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後日、僕達は今ギルドから程近い有名な料理屋に来てエマとエイルにあの後何があったのかを聞いている。
ここはちょっとお高いけど美味いと有名な店だ。
立地のせいかほとんどが冒険者だ。
いつものように店内は客の話し声や怒鳴り声、店員を呼ぶ声が谺している。
「シオはなんにする?」
誘った手前申し訳ないが僕はついこの前、文字通りお腹の中身をぐちゃぐちゃにされたのだ。
それ以来あまり固形物が喉を通らない。
結局僕はジュースを1杯頼んだ。
ルミという柑橘系の果実、レモンとミントを足して割ったような味と風味のとても大きな果実。火にかけるとドロドロに溶け、ジャムにしたりお菓子に使ったり酒に垂らしたり用途は様々だ。
このジュースは溶かしたルミを水で割り砂糖を加えた1品。
もちろん甘さは控えめだしこの世界にはもっと天然でゲロ甘い果実が沢山自生している。
それを使ったジュースや酒ももちろんある。
なのに何故これを頼むのかと言うと………
とても化学的な味がするからだ。
酸っぱいけど清涼感溢れるの甘さ控えめの飲み物。
全て天然物なのにまるで前世の清涼飲料水のような、果糖ぶどう糖液糖を感じるとても人工感溢れる1品なのである。
砂糖のせいかとも思い、市場でいくらか砂糖を見繕ってみたが前世と比べると質はかなり落ちる、普通の砂糖であった。
目の前の女冒険者2人は僕の奢りというと凄く嬉しそうについてきた。チョロい。
それにしても2人ともよく食べる。
体格は僕と同じくらい、エイルにいたっては恐らく僕より小さいかもしれない。
しかも頼んだ料理がテールスープや煮込み、スペアリブなど肉肉しくて味の濃いものばかり。
こんな女の子でもやっぱり冒険者なんだなとひしひしと感じる。
まぁそんなことはさておき。
「はぁ?鏖虐が死んだぁ?!」
話を聞いていたサルサが唐突に叫ぶ。
エマが話すには元々ここスリムリンの領主は以前からスラムマフィア達を邪険に感じていた。
というのもダンジョンがあるにもかかわらず学院の誘致に失敗し、それをスラムマフィアのせいだと謳っていたらしい。
実際は冒険者ギルドや商業ギルド、教会や土地関連や収益など様々な面であまりにも交渉が下手だったためだが。
僕でも分かる、ヤベー側の貴族である。
排除しようにもスラムマフィア達の戦闘力は高く、それぞれが牽制しあい、それで街の平和が保たれているのだから手が出しにくい。だがスラムマフィアの中で1番の勢力を誇る鏖虐《ラスラト》がついに事件を起こした。
今まで人が変わったかのように暴れることはしばしば起きていたがついに異形の形のまま市街地に出たらしい。
つまり何があったかは知らないがラスラトは僕に満足出来ず飽きて、また新しいおもちゃを探しに行ったのだ。
その結果市街地は大荒れ。
領主はそれを好機と感じ直轄の衛兵を動員、冒険者ギルドにも多額の報奨金を掛けラスラトの討伐に臨んだという。
結果として多少の人的損害はあったもののラスラトを討伐。
領主として株を上げると同時にスラムマフィアの株を下げることに成功した。
そのためこの都市のスラム街の勢力図が大幅に崩れた。
他の勢力がなだれ込み現在は抗争状態だという。
西のスラム街からは既に多くの人間が脱出している。
聞いた話では幹部も多数既にスリムリンを出ているだとか。
これじゃ闇医者はもう閉業かな。
そもそも診療所は埋葬のためにシャノの遺体を引き取ってからは行っていない。
日が経って腐りかけた血の臭いはもう僕の語彙力では表せなかった。普通に吐いた。
とりあえずありったけの聖水をばら蒔いて周りの迷惑にならない程度までは良くなったが恐らく焼却処分が妥当であろう。
それに僕とラスラトファミリーとの魔術契約も彼の死によって破棄となった今、あの診療所に用は無い。
責任?知らないね、そんな言葉。
今は彼女との生活の方が大事だ。
そもそもあのスプラッター診療所を見たならば死んだと考えるのが妥当であろう。
ラスラトにはこの都市1番の闇医者を潰したという汚名を被って貰う。
僕の噂の調査、流布と偽装工作。
恐らくもうあの家にいるのも危険かもしれない。
都市を違法ルートで出ることも検討しなくては。
そうなると旅の準備も必要かな。
豪快に食べる女性陣を見つめながら僕は考えに耽ける。
今の僕に何も無い時間ほど恐ろしいものは無い。
止まっていると追いかけてくるアイツに追いつかれてしまう。
動いて、動き続ける。
疲れて眠ってしまうまで動き続ける。
今の僕にできることはそれだけなのだ。
僕の名はシオ。
明日をも知れぬただの……。
ここはちょっとお高いけど美味いと有名な店だ。
立地のせいかほとんどが冒険者だ。
いつものように店内は客の話し声や怒鳴り声、店員を呼ぶ声が谺している。
「シオはなんにする?」
誘った手前申し訳ないが僕はついこの前、文字通りお腹の中身をぐちゃぐちゃにされたのだ。
それ以来あまり固形物が喉を通らない。
結局僕はジュースを1杯頼んだ。
ルミという柑橘系の果実、レモンとミントを足して割ったような味と風味のとても大きな果実。火にかけるとドロドロに溶け、ジャムにしたりお菓子に使ったり酒に垂らしたり用途は様々だ。
このジュースは溶かしたルミを水で割り砂糖を加えた1品。
もちろん甘さは控えめだしこの世界にはもっと天然でゲロ甘い果実が沢山自生している。
それを使ったジュースや酒ももちろんある。
なのに何故これを頼むのかと言うと………
とても化学的な味がするからだ。
酸っぱいけど清涼感溢れるの甘さ控えめの飲み物。
全て天然物なのにまるで前世の清涼飲料水のような、果糖ぶどう糖液糖を感じるとても人工感溢れる1品なのである。
砂糖のせいかとも思い、市場でいくらか砂糖を見繕ってみたが前世と比べると質はかなり落ちる、普通の砂糖であった。
目の前の女冒険者2人は僕の奢りというと凄く嬉しそうについてきた。チョロい。
それにしても2人ともよく食べる。
体格は僕と同じくらい、エイルにいたっては恐らく僕より小さいかもしれない。
しかも頼んだ料理がテールスープや煮込み、スペアリブなど肉肉しくて味の濃いものばかり。
こんな女の子でもやっぱり冒険者なんだなとひしひしと感じる。
まぁそんなことはさておき。
「はぁ?鏖虐が死んだぁ?!」
話を聞いていたサルサが唐突に叫ぶ。
エマが話すには元々ここスリムリンの領主は以前からスラムマフィア達を邪険に感じていた。
というのもダンジョンがあるにもかかわらず学院の誘致に失敗し、それをスラムマフィアのせいだと謳っていたらしい。
実際は冒険者ギルドや商業ギルド、教会や土地関連や収益など様々な面であまりにも交渉が下手だったためだが。
僕でも分かる、ヤベー側の貴族である。
排除しようにもスラムマフィア達の戦闘力は高く、それぞれが牽制しあい、それで街の平和が保たれているのだから手が出しにくい。だがスラムマフィアの中で1番の勢力を誇る鏖虐《ラスラト》がついに事件を起こした。
今まで人が変わったかのように暴れることはしばしば起きていたがついに異形の形のまま市街地に出たらしい。
つまり何があったかは知らないがラスラトは僕に満足出来ず飽きて、また新しいおもちゃを探しに行ったのだ。
その結果市街地は大荒れ。
領主はそれを好機と感じ直轄の衛兵を動員、冒険者ギルドにも多額の報奨金を掛けラスラトの討伐に臨んだという。
結果として多少の人的損害はあったもののラスラトを討伐。
領主として株を上げると同時にスラムマフィアの株を下げることに成功した。
そのためこの都市のスラム街の勢力図が大幅に崩れた。
他の勢力がなだれ込み現在は抗争状態だという。
西のスラム街からは既に多くの人間が脱出している。
聞いた話では幹部も多数既にスリムリンを出ているだとか。
これじゃ闇医者はもう閉業かな。
そもそも診療所は埋葬のためにシャノの遺体を引き取ってからは行っていない。
日が経って腐りかけた血の臭いはもう僕の語彙力では表せなかった。普通に吐いた。
とりあえずありったけの聖水をばら蒔いて周りの迷惑にならない程度までは良くなったが恐らく焼却処分が妥当であろう。
それに僕とラスラトファミリーとの魔術契約も彼の死によって破棄となった今、あの診療所に用は無い。
責任?知らないね、そんな言葉。
今は彼女との生活の方が大事だ。
そもそもあのスプラッター診療所を見たならば死んだと考えるのが妥当であろう。
ラスラトにはこの都市1番の闇医者を潰したという汚名を被って貰う。
僕の噂の調査、流布と偽装工作。
恐らくもうあの家にいるのも危険かもしれない。
都市を違法ルートで出ることも検討しなくては。
そうなると旅の準備も必要かな。
豪快に食べる女性陣を見つめながら僕は考えに耽ける。
今の僕に何も無い時間ほど恐ろしいものは無い。
止まっていると追いかけてくるアイツに追いつかれてしまう。
動いて、動き続ける。
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今の僕にできることはそれだけなのだ。
僕の名はシオ。
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