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第2話 異世界情緒・冬=死

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気が付くとそこはゴミ溜めだった。
背中に当たる壁もおしりに当たる石畳も均等のきの字も見当たらない質の悪さ。
ジメジメとした湿り気と共に吐瀉物のような臭いが漂ってくる。
この目に映る情報からすぐにここは僕が慣れ親しんだ日本の埼玉県ではないということが分かった。

「寒っ……」

不潔感などよりも先に寒さが僕の小さな身体をぶん殴る。
空を見上げると小雪がチラついていた。


僕の名は郡士皇こおりしお

……………おい、キラキラとか言うなよ?

この異世界に放り出された日本人。
身長160センチ、小柄で女顔のクソガキである。
この寒空の中、お気に入りのパーカーを着ていたことだけが唯一の救いだ。
質の悪い石畳が素足に刺さる。なんで服はあるのにサンダルすらも無いんだよ。

じっとしてたって始まらない、そう思い僕は歩き出す。
通りに向かって歩いていくと煉瓦造りの小さな建物があった。
僕には信仰心の欠片も無いがこの特徴的な形と仰々しく何かが祀られているここはきっと教会というやつなのだろう。

こんな周りと違う格好をして変に思われないか、とこの命がかかった場面で日本人的な思考を巡らせていた僕の目の前に1人の人間が教会から叩き出された。
猫耳の生えた人間、いやこれを人間と言っていいのだろうか。
襤褸を纏い左手の先の包帯からはドス黒い血が滲んでいる。いや、そもそも手首の先に左手は無かった。もぞもぞと這いつくばってはいるが恐らく上手く下半身が動かないのだろう。とにかくこの猫耳は死にかけている、ということは分かった。

人の往来はあったが誰も彼女を気にする事はなく、まるでいつもの日常のように通り過ぎていく。

「……」

僕は何を思ったか限られている体力を使い猫人間を路地裏に運び寄り添った。酷くやつれた顔、光が感じられない目。いつかの僕もこんな風だったのだろうか。これは同情?そうかもしれない。

猫人間の頭に手を乗せる。なぜ僕がこんな行動をしたのか正直今でも理解できないが、もしこのチャンスを逃していたらきっと僕は野垂れ死んでいたと考えるとゾッとする。

この猫人間に触れた途端にある感覚が芽生える。

「僕はコイツを治せる」と。

僕は頭の中でルートを探す。
僕が生きられるようなルートを。

まずは手始めにほんの少しだけ喉と体力を回復させる。本人にも分からず、かつ最低限の会話ができるレベルまで。
そして問う

「僕はあなたを治すことができます。あなたは何を出せますか?」

「……ム"リ……ギョウガイニ……デオ"グレ………イワレタ……」

脳にも障害ありかな?

「もう一度言います、僕はあなたを治せます。あなたは何を差し出せますか?」

「イ"ギデ………デギル…ナラ………ナンデモ…………アタシノ…全部!!!何でも!!」

「よし、交渉成立」

良く分からない感覚に身を任せ猫人間を癒していく。
手の中から何かが皮膚を食い破り猫人間に入っていき侵食していく。誰が見てもこんなもの癒しの手には見えない。

彼女の名前はサルサ。

僕がこの世界ではじめて治した人間だ。
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