【完結&コミカライズ進行中】俺の妹は悪女だったらしい

野原 耳子

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第七章

60 婚礼 *R-18

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 後始末の目処がついた頃には、日は完全に沈み切っていた。湯浴みをしてフィルバートの私室に戻ると、もう体中の力が入らず、ニアは顔面からぼすんとベッドに倒れ込んだ。

 先に湯浴みを終えて戻っていたフィルバートは、机の前に座って書類を眺めている。夜用の眼鏡をかけたフィルバートの横顔が、ランプに淡く照らされていた。その姿を見て、ニアは疲れ切った声で訊ねた。


「まだ、急ぎのお仕事が残ってるんですか?」


 流石に主君を置いて眠りにつくわけにもいかず、のろのろとベッドから起き上がろうとする。だが、その前にフィルバートの声が聞こえた。


「急ぎといえば急ぎだが、これは仕事ではない」


 妙な返答に、ニアはベッドに座ったまま首を緩く傾げた。ニアを仕草を見て、フィルバートが眼鏡を外しながら小さく笑う。


「お前と俺の婚礼の手配を進めているんだ」
「こっ……!?」


 耳に届いた衝撃的な言葉に、ニアは思わず咽喉を詰まらせた。フィルバートが書類片手に近付いてくる。そのままベッドに腰掛けると、フィルバートはニアの腰を抱いて寄り添ってきた。


「お前の礼服を新たに作らせようと思っているが、どのデザインが良い? すでに他国から最高の絹を取り寄せているんだ」


 心待ちにしている声で、フィルバートが言う。差し出された書類には、礼服のデザインがいくつか描かれていた。それを見ていると、湯あたりでもしたみたいに全身がカーッと熱くなっていく。


「う、ぁ、婚礼、開くんですか?」


 どもりながら訊ねると、フィルバートはちらりとニアを見てきた。


「嫌か?」
「嫌ではないのですが……できれば身内だけの控えめなものにして頂けると嬉しいです」


 もしかしたら大衆の前で公開婚礼をした方がいいのかもしれないが、これ以上目立ちたくなかった。それにフィルバートのような神がかった美形の横に、地味な自分が立っているのを見られるのも恥ずかしい。

 赤らんだニアの顔を見て、フィルバートが、ふぅん、と子供っぽい相づちを漏らす。


「せっかくだから、象を十頭ほど手配しようかと思っていたのだがな」
「ぞっ、象!?」
「あとはクジャクと虎とラクダと」
「サーカスでも開くつもりですかっ!?」


 ニアが素っ頓狂な声で叫ぶと、フィルバートは途端我慢できなくなったように大きく噴き出した。ニアの身体に腕を回すと、そのままベッドに勢いよく倒れる。ニアが仰向けになったまま目を丸くしていると、フィルバートは咽喉の奥で楽しげな笑い声を漏らした。


「冗談に決まってるだろう」
「フィル様が言うと冗談に聞こえないです」


 この人は今まで実現不可能なことをすべて現実にしてきた恐ろしい人だ。冗談だと思って気を抜いていたら、本当に猛獣を集めかねない。

 ニアがうんざりとした声で返すと、フィルバートはなぜか得意げに、ふふん、と鼻を鳴らした。頬を緩めたまま、ニアの瞳をじっと見つめてくる。


「解った。お前が望むのなら、婚礼は控えめにしよう」
「ありがとうございます」
「城の中庭で開いてもいいな。それかお前の家でもいい。参列者は、お前の家族とロキと――」


 参列者を選定するように、フィルバートが名前をあげる。その口から出てきたロキの名前に、ニアはふと思い出して唇を開いた。


「あの、ロキ様のことなんですが」


 少し思い詰めたようなニアの口調に、フィルバートが唇を閉じる。


「このままブラウン家に引き取らせて頂けないかと」
「それは養子という意味か?」


 さすが話が早い。フィルバートの問い掛けに、ニアは深くうなずいた。


「もう亡くなったとはいえ、実の母が国を滅ぼそうとした反逆者と確定したのです。このまま王家に残り続ければ、反逆者の係累(けいるい)として裁くべきだと周りが騒ぎ出す可能性もあります。ですから、その前にブラウン家の養子として引き取らせて頂きたいのです」
「お前の家族は納得しているのか?」
「もちろんです。両親は息子が増えると喜んでおります」
「お前の妹は?」
「今以上に鍛え上げてやると腕まくりしております」


 ニアの返答を聞くと、フィルバートは小さく声をあげて笑った。だが、ふと笑いを止めると、考え込むように視線を伏せた。


「ロキの意思次第だ。あいつが王家に残りたいと望むのなら、反対する者は俺が押さえ込む。あいつがブラウン家の一員になることを望むのなら、お前の家族に任せる。どちらにしてもロキには辛い選択だ」
「はい。どちらを選ばれても、全力でお支えします」


 力強くうなずくと、フィルバートは愛おしむようにニアの頬をそっと撫でてきた。


「お前は変わらないな」
「変わらない?」
「お前だってすでに王族の一人なのに、いつまで従者の心持ちでいるつもりだ?」


 少し不貞腐れたような口調で言うと、フィルバートは軽くニアの唇に口付けてきた。その柔らかな感触にほだされそうになりつつも、キッと唇を引き締めて答える。


「俺は、死ぬときまでフィル様の騎士ですから」
「それはそうだが、俺が唯一愛する伴侶でもあるんだぞ」


 そう言って、再び唇に軽く口付けてくる。甘えるようなキスに、ニアは引き結んでいた唇がふにゃりと緩んでいくのを感じた。フィルバートに愛されているのを感じると、ポッと灯りがともされたように胸の内側が温かくなる。

 フィルバートの頬を両手で包み込みながら、ニアはそっと顔を寄せた。


「今は、伴侶の方です」


 自分でもらしくないぐらい強請(ねだ)るような声で囁いて、ゆっくりと唇を重ねる。そのまま薄く唇を開くと、薄い舌が口内に潜り込んできた。舌同士がぬるぬると絡まって、違う温度の唾液が流れ込んでくる。

 緩やかな口付けに浸りながら、両腕をフィルバートの背中に回す。すると、すぐさまフィルバートの身体が覆い被さってきた。唇を重ねたまま、性急な動作で服を剥ぎ取られる。自分とは厚みの違う舌を味わいながら、ニアもフィルバートの服を脱がしていった。

 興奮のせいで、互いに裸になったときには軽く息が上がっていた。重なった唇の隙間から、は、は、と短い息を吐き出しながら、下半身を擦り合わせる。すでに硬く勃ち上がった陰茎同士が擦れて、痺れるような快感が下腹から込み上げてきた。


「ぁ、あっ」


 もっと強い刺激が欲しくて、足を左右に開いたまま腰を浮かせる。すると、余計に陰茎がゴリゴリと強く擦れて、内腿が震えた。物欲しげなニアの仕草に、口付けの合間にフィルバートが小さく笑い声を漏らす。


「ニア、両手で掴め」


 促す声の意味が解らずぼんやりしていると、フィルバートがニアの両手を掴んできた。そのまま誘導されて、二人分の陰茎をまとめて両手で握らされる。直後、フィルバートがニアの腰骨を掴んで、グンッと大きく腰を動かしてきた。


「あッ、ぁあ!」


 腰を前後に動かされる度に、張り出した裏筋同士がゴリゴリと擦れ合う。その直接的な刺激に、内腿がガクガクと跳ねる。まるで疑似挿入のような動作に、一気に頭に熱が溜まっていくのを感じた。まだ入ってないのにフィルバートの陰茎を体内に咥え込んでるような気分になって、下腹の奥がずくずくと疼く。


「っ、ぅ、あぁ、んぅッ」


 互いの鈴口からだらだらと涎のように先走りが溢れて、陰茎を掴む両手が濡れていく。陰茎が擦れ合うと、かすかに粘着いた水音が立つようになっていた。それが恥ずかしくて、ううう、と鈍い声を漏らして、顔を逸らしてベッドに押し付ける。すると、直後鈴口に鋭い刺激が走った。

「あぁアッ!」


 ガクンッと腰が跳ねて、咽喉から嬌声が溢れる。視線を向けると、フィルバートが律動しながら、ニアの陰茎の鈴口を人差し指でいじくっているのが見えた。小さな穴を指先でカリカリとほじられるようにして刺激されて、その快感に腰が震える。


「ゃ、っ、や……そこっ……!」


 そこは嫌だと口に出したいのに、言おうとする度にフィルバートが鈴口をグリッと指先で抉ってくるから、咽喉が引き攣って何も言えなかった。


「お前はここが好きだろう?」


 意地悪く訊ねてくる声に、ニアは大きく頭(かぶり)を振った。だが、フィルバートの指先に刺激された鈴口からは、白く濁った先走りが止め処もなく溢れている。裏筋をゴリゴリと擦られる感触と、鈴口をほじられる刺激が相まって、頭の中がぼんやりと霞んでいくのを感じた。


「フィ、ル……さま……もっ、出……ッ」


 ぞわぞわと這い上がってくる射精感に、譫言のように声をあげる。すると、フィルバートの唇が左胸の尖りに押し付けられた。そのまま硬く膨らんだ尖りを舌先でなぶられて、甘く歯を立てられる。じわじわと尖りに食い込んでくる歯の感触を感じた瞬間、ニアは耐え切れず大きな嬌声を上げた。


「ぁアァぁあッ!」


 同時に鈴口に爪を立てられて、腰が浮いた。そのまま開き切った鈴口から、勢いよく精液が吐き出される。熱い液体が尿道を通って迸る感覚に、目の前が一瞬真っ白になった。

 久々の射精にしばらく朦朧とした後、緩く目を瞬かせる。視線を落とすと、下腹の上に精液の水たまりができていた。まだ未練がましく鈴口をパクパクとヒク付かせたまま、ねっとりとした白濁を垂らしている。

 力を失ったニアの性器の上には、まだ硬度を保った陰茎がずっしりと重なっていた。触れ合った場所からフィルバートの陰茎が大きく脈打っているのを感じて、掠れた声を漏らす。


「ぁ……すいません……俺、だけ……」


 ぼんやりした声で言いながら、両手をフィルバートの陰茎へ伸ばす。だが、その前にフィルバートの手に遮られた。かすかに餓えた獣のような眼差しで、フィルバートがニアを見下ろしている。


「お前の中で出したい」


 うなるような声でそう囁かれて、ぞくりと皮膚が興奮で粟立つのを感じた。熱の篭もった眼差しで、フィルバートの反り返った陰茎を見つめる。先端からはどろりと粘液の強い先走りが溢れて、幹には太い血管が浮かび上がっていた。最初はそれが恐ろしくて堪らなかったのに、今はそれが今から自分の中に入るかと思うと腹の奥がキュウッと窄まるのを感じた。

 フィルバートが瓶に入った香油を掌に出そうとするのを見て、ニアはとっさにその手を掴んだ。


「あの……もう……挿れていただいても、大丈夫です……」


 ごにょごにょとした声で呟くと、フィルバートは怪訝そうに片眉を跳ねさせた。


「まだほぐしてないから、このまま挿れると痛むぞ」


 まるで小さい子を諭すように言われると、顔面が見る見るうちに熱くなっていくのを感じた。真っ赤になった顔をうつむかせたまま、ぼそぼそとした声で返す。


「か……身体を清めたときに……もう後ろも、ほぐして、ます……」


 口にすればするほど、頭に熱が溜まってぐらぐらした。風呂に入っていないのに逆上(のぼ)せたみたいになって、全身が赤く色付いていく。

 手足の先まで紅潮させたニアを見て、フィルバートは一瞬目を丸くした。だが、すぐさまその口元に笑みを浮かべて、うつむいたニアの顔を覗き込んでくる。


「自分でしたのか?」
「は……い」
「俺に抱かれるために、自分で指を挿れて準備してくれたのか?」


 もう解ってるくせに、わざわざ意地の悪いことを訊ねてくる。フィルバートの指が、確かめるようにニアの後孔に触れてくる。普段よりも柔らかくなった縁をふにふにと触られて、羞恥心のあまりニアは泣きそうになった。

 眉尻を下げながら、掠れた声でフィルバートをなじる。


「フィル様のせいじゃないですか」
「俺のせい?」
「まっ、魔女から来てから、ずっと俺を遠ざけて……全然、触ってくれなかったから……」


 責めてるはずなのに、何だか墓穴を掘っているような気持ちになってきた。自分がとんでもなくはしたないことを言っていることに気付いて、唇が戦慄く。ニアがバッと顔を上げると、フィルバートはひどくにやけた表情を浮かべていた。


「そうだな。それは俺のせいだ」
「いえ……あの、ちが……」


 言い訳をしようと唇を開くが、その前に後孔にフィルバートの中指がズズッと潜り込んできた。根元まで埋め込まれていく中指の感触に、ヒュッと息を呑む。


「あぁ、しかも香油で濡らしてくれてるのか」


 ぬるつく肉壁を感じて、フィルバートが嬉しそうな声を漏らす。そのままぬるつきを広げるように中指を抜き差しされて、その刺激に足が跳ねそうになった。すぐさま二本目の指が追加されて、開き具合を確かめるように左右にグパッと押し開かれる。フィルバートがそこをじっと見ているのを感じて、ニアは泣き出しそうな声をあげた。


「み、ないでください……」


 ニアがそうお願いしても、フィルバートはそこから目を逸らさなかった。その食い入るような視線に、ますます身体の熱が上がって、後孔がヒクヒクと収縮するのを感じる。まるで早く咥え込みたいと強請(ねだ)るような後孔のヒク付きに、全身が茹だったように真っ赤に染まっていく。

 耐え切れず、ニアは羞恥に堪えながら自身の両足を両手で抱えた。自身で足を開きながら、懇願するように囁く。


「お願い、です……もう、フィル様が欲しい……」


 その言葉の卑猥さに、全身が焼けてしまいそうだった。まるで差し出すように両足を左右に開いたニアを見て、フィルバートが一瞬大きく瞬く。だが、すぐさま腹の中に押し込まれていた二本の指が引き抜かれた。勢いよく体内から指が抜かれる感触に、咽喉から短い悲鳴が漏れる。

 そして、その直後、もっと太くて熱いものが後孔に押し付けられた。グボッと張り出した先端が潜り込んできて、そのまま幹がずるずると体内へと押し込まれていく。その充足感にも似た圧迫感に、ニアは掴んだ自身の膝裏に指を食い込ませながら悶えた。


「ぁ、あ、あ、あ……っ」


 押し出されるみたいに声が漏れる。根元までみっちりと埋め込まれた陰茎に、歓喜したように粘膜が絡み付いているのを感じた。まるでプレゼントを抱き締める子供みたいに、もう離さないと言いたげにぎゅうぎゅうと陰茎を締め付けている。
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