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第四章

37 ここにいる *R-18

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 ようやく絶頂から意識が戻ってきた頃には、自身の精液で下腹に小さな水溜まりができていた。


「ぇ、あ……?」


 頭の中がぽやぽやして、まともに思考が働かない。手を伸ばして下腹に溜まった精液に触れようとした瞬間、嬉しそうなフィルバートの声が聞こえてきた。


「挿れただけで達したのか」


 その言葉で、自分が陰茎を挿入されただけで絶頂に達したことを認識させられて、身体が熱くなる。


「う……ぅ、うぅ……」


 羞恥のせいで、言葉が出てこない。顔を真っ赤にしたまま唇を震わせるニアを見下ろして、フィルバートが満足そうな笑みを浮かべる。


「ニア、よく見ていろ」


 そう囁いた直後、フィルバートがニアの腰を高く持ち上げた。同時に、自身の腰をゆっくりと引いていく。ずるずると自身の体内から抜き出されていく赤黒い陰茎を見て、ニアは大きく目を見開いた。


「ぁ……ぁ……」


 怯えたように掠れた声をあげるニアを見て、フィルバートは更に笑みを深めた。

 自分の後孔が限界まで広がって、太いものをずっぷりと咥え込んでいる光景が信じられなかった。カリに引っかかって、真紅に染まった後孔の縁が引っ張られているのまで視界に映る。そのままフィルバートが腰を沈めると、長い陰茎がずるずると自分の中に呑み込まれていく。

 フィルバートと自分が繋がっている。体内の圧迫感だけでなく視覚からもそれを理解した瞬間、羞恥と同時に堪らない高揚も覚えた。途端、腹の中が勝手にきゅうっと窄まって、フィルバートの陰茎にしゃぶり付き始めた。まるで精液を欲しがるような自身の浅ましい体内の蠕動(ぜんどう)を感じて、ニアは泣き出しそうな声をあげた。


「ぁ……ち、ちが……ちが、ぅ……」


 まるで子供の言い訳みたいな情けない声が漏れる。両手で下腹を押さえたまま、違う違うと繰り返すニアを見て、フィルバートは愛おしそうに目を細めた。

 ニアの両足を抱え直すと、フィルバートが優しく命じてくる。


「ニア、決して目を逸らすな」


 そう言い放つと、フィルバートは見せつけるようにゆっくりと律動を開始した。自身の体内を緩やかに出たり入ったりする陰茎を見て、あまりの羞恥にニアは顔をくしゃくしゃに歪めた。だが、フィルバートの命令に逆らうだけの思考も働かず、涙目で繋がった部分を見つめ続ける。


「ちゃんと俺の形を覚えろ」


 フィルバートが柔らかな声で囁く。直後、次第に律動が激しさを増してきた。フィルバートの腰が尻に叩きつけられる度に、肉が打ち合う打擲(ちょうちゃく)音が部屋に響く。

 体内の奥深くを容赦なく掘削してくる抽挿に、ニアは高い嬌声を漏らした。


「アッ、ぁ、ああぁ、あぁあッ!」


 直後、結合部を忙しなく出入りしていた陰茎がゴチュッと音を立てて、根本まで埋まってきた。一番奥をグリグリとほじるように先端を動かされて、全身が一気に硬直する。


「ッ……ぁッ~~~~~!!」


 あまりの衝撃に、言葉にならない悲鳴が咽喉の奥で跳ね回る。眼球の奥でバチバチッと火花が散って、目の前が一瞬真っ白になった。同時に、唇に噛み付くように口付けられた。舌を強引に絡め取られて、悲鳴を呑み込まれる。

 何度か奥をガツガツとキツく突き上げてから、フィルバートが鈍くうめき声を漏らす。直後、腹の一番奥にどくどくと熱いものが注がれるのを感じた。これ以上ないぐらい奥の奥まで犯されて、左右に広げた両足の爪先がピクピクと痙攣する。

 ニアの体内に吐き出している間も、緩やかな口付けと律動は繰り返された。潤んだ舌同士を絡めながら、火照った粘膜に吐き出したばかりの精液をずりずりと塗り付けていく。

 繋がった部分から精液が漏れ出した頃、ようやくフィルバートの射精が終わったようだった。唇を離して、フィルバートが深く息を吐き出すのが聞こえる。

 浅い呼吸を繰り返しながら、ニアを朦朧としたまま天井を見上げた。気だるさが全身を満たしていて、指一本動かす気になれない。

 そのまま目蓋を閉じようとしたとき、胸にぺちゃりと舌が這う感触が走った。ニアの中にまだ硬度を保った陰茎を突っ込んだまま、フィルバートがニアの左胸の尖りを唇に含んでいる。その両手はニアの両胸を下から掴んで、ゆっくりと揉み込んでいた。女性でもないのに、胸を緩やかに揉まれる感覚に身体が反応しそうになる。


「ぁ、フィル、さま……も……ムリ、ですってば……」


 そう訴えると、フィルバートはニアの胸の上で不思議そうに首を傾げた。フィルバートらしくない小動物じみた仕草に、心臓がかすかに跳ねる。


「無理か?」
「む、むり、です」
「なぁ、ニア。もう一度だけ」


 自分が年下であることを完全に利用している声音だ。年上の恋人に甘えるような口調に、ニアは自分の意志がいともたやすく崩れていくのを感じた。


「も……一度だけなら……」


 全身を真っ赤に染めて、蚊が鳴くような声で答える。途端、フィルバートはしてやったりと言わんばかりにニヤリと笑みを浮かべた。その顔は、普段の大人びた表情からは想像もできないくらい十七歳の少年らしく見えた。

 その顔をぽかんと眺めていると、フィルバートは一度ニアの体内から陰茎を引き抜いた。すぐさまニアの二の腕を掴んで、ぐるりと身体を反転させてくる。ベッドにうつ伏せになる格好にさせられると、腰だけ高く持ち上げられた。

 獣のような格好に羞恥を覚えるよりも早く、後ろからずぶずぶと陰茎が体内へと押し込まれてくる。


「ん、ぁ、アぁ、あ……」


 内側から押し出されるみたいに嬌声が漏れる。フィルバートの陰茎が奥へと潜り込むのと同時に、体内から押し出された精液が縁から溢れ出すのを感じた。内腿をとろとろと伝い落ちていく粘液の感触に、どうしようもなく羞恥を覚える。

 ぎゅうっとシーツを握り締めた瞬間、再び律動が始まった。奥を突かれる度にぶちゅぶちゅと淫猥な音が響くのは恥ずかしいが、先ほど吐き出された精液のおかげで抽挿はスムーズで、火照った粘膜を擦られると下腹の奥から甘い快感が込み上げた。


「あっ、あっ、ぁ、ん……ッ」


 本日二度目の挿入なおかげか、先ほどのような全身をめちゃくちゃに掻き乱すような快楽ではなく、湯に浸るような心地よい快楽が全身に広がっていく。

 シーツに額を押し付けたまま、ニアは譫言(うわごと)のように声を漏らした。


「んっ、ぁ……き、もち、ぃ……」


 浅い呼吸に混じってそう呟いた瞬間、腹の中に収まっていた陰茎がドクリと膨らんだ気がした。粘膜が内側から押し広げられる感覚に、ピクリと背筋が跳ねる。


「お前は……」


 少し苦味を帯びたフィルバートの声に、何かまずいことを言っただろうかと、首をねじるようにして振り返る。すると、眉根を寄せたフィルバートが顔を近付けてきた。


「気持ちいいか?」


 改めて聞かれると恥ずかしさが込み上げてきた。視線を伏せて緩くうなずくと、フィルバートの唇が重なってきた。首をねじっているから少し苦しいが、絡まってくる舌使いが優しくて鼻から息が漏れる。


「ん、んん……」


 唇を重ねたまま、奥ばかりを重点的に突かれる。その度に根本まで埋まった陰茎が、腹の一番奥を押し上げてくるのを感じた。


「ぐぅ、んんっ、んぅぅッ」


 一番奥の硬く窄まったところを亀頭でごちゅごちゅと叩かれる感覚に、絶頂の余韻がぶり返してきておかしくなりそうだった。強烈な快感がぶり返す予感に、内腿がガクガクと震える。

 唇を離すと、フィルバートはシーツを掴むニアの手を真上から握り締めてきた。そのまま、ニアの耳元で囁く。


「いつか、ここも犯してやるからな」


 その愉しげな声に、背筋がぶるりと震えそうになる。

 こことは一体どこのことなのか。もう全部余すことなく犯し尽くされているのか、まだこれ以上があるというのか。

 だが、その言葉の意味を理解する間もなく、グリッと硬い亀頭で最奥を抉られて、思考が散り散りに途切れていく。


「あッ! ああッ!」


 奥を突かれる度に、ぶぢゅぶぢゅと熟れた果実を握り潰すような卑猥な音が聞こえた。その音がまた恥ずかしくて泣きそうになる。


「ぁ、んんっ、ぅ、んッ」


 段々と切迫してきたのか、突き上げが激しさを増してきた。ニアの身体ごと前後に揺さぶるような、直線的な律動が繰り返される。視線を下腹部の方へ向けると、自身の勃ち上がった陰茎が四方八方に揺れているのが見えた。その滑稽にも思える卑猥な光景を見た瞬間、身体の奥で熱が弾けた。


「アァアぁ、ぁあぁッ!」


 一度も触られていないのに、鈴口から精液が吐き出される。シーツへぼたぼたと精液が垂れ落ちていくのを朦朧とした視界で眺めていると、耳元でフィルバートがうめく声が聞こえた。直後、腹の中へ再び熱いものが注がれる。


「あ、あ、うぅ……」


 もう奥まで入っているのに、更に奥へと押し込むように腰がグッグッと尻に押し付けられる。その淡い快感に、ベッドについた膝が崩れそうになる。

 それに気付いたのか、フィルバートはニアの手を離すと、腰を掴み直した。そのまま最後の一滴まで出し切るように、ゆるゆると腰を前後させる。しばらくすると、ようやく腹の中から陰茎がずるりと引き抜かれた。

 ゆっくりと腰をベッドの上に下ろされて、うつ伏せになったままニアはしばらく荒い呼吸を繰り返した。その隣に、フィルバートが寝そべってくる。

 赤く火照ったニアの頬を緩く撫でて、フィルバートは小さな声を漏らした。


「ニア」


 呼ぶ声に、潤んだ視線を向ける。すると、フィルバートはひどく幸せそうに微笑んだ。


「心から愛している」


 そう告げる言葉に、どうしてだか泣きたい気持ちが込み上げてきた。嬉しいという幸福感と失いたくないという切望が混ざり合って、感情がめちゃくちゃに引き裂かれる。

 ニアはフィルバートの胸に額を押し当てると、涙声で呟いた。


「俺も、愛しています」


 そう返すと、フィルバートの両腕がぎゅっと身体を抱き締めてきた。温かい身体に包まれながら、ぼんやりと呟く。


「このまま、時が止まってくれたらいいのに……」


 聖女なんか一生来なければいい。フィルバートの心変わりなんて死んでも見たくない。このままずっと二人きりで、静かで優しい暗闇に閉じ篭もっていれたらいいのに。

 わき上がってくる仄暗い願望に浸っていると、フィルバートの小さな笑い声が聞こえてきた。


「それは勿体ないな」
「勿体ない?」


 視線を上げると、悪戯っぽく細められたフィルバートの瞳が見えた。


「これから先、歳を取っていくお前を見られないのは勿体ない」


 その言葉に、ニアは目をパチリと大きく瞬かせた。不思議そうに目を丸くするニアを見つめて、フィルバートが続ける。


「お前がこれから三十代・四十代・もっと年寄りになって、どこに皺ができて、いつから髪が白くなって、どんな風に変わっていくのかを俺は一番近くで見ていたい」


 ニアの頭や頬をゆるゆると撫でながら、フィルバートが呟く。その言葉に、ニアは思わず息を止めた。


「それに歳を取る俺が見られないのも勿体ないとは思わないか? お前好みの顔がどう変化していくのか知りたいだろう?」


 ニアの顔を間近で覗き込んで、フィルバートが訊ねてくる。そのおどけた口調に、ニアは思わず笑ってしまった。


「そう、ですね。確かに、それは勿体ないです」
「そうだろう。それから、お前の大好きな妹が大きくなるのを見届けたくはないか?」
「それは何があろうと見届けます」


 ニアが真顔で即答すると、フィルバートはおかしそうに肩を揺らした。小さな子をなだめるみたいにニアの背中を軽く叩いて、フィルバートが呟く。


「だから、何も心配せずにここにいろ」


 そう言って、腕の中にぎゅうっとニアを抱き締めてくる。温かい腕に包まれて、ふと胸の奥からほどけるように安堵が込み上げてきた。その背に腕を回しながら、安らかな声を漏らす。


「はい、ここにいます」
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