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第三章

25 尻は元から割れている *R-18

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「ん、ぅヴぅヴ、んんんーーッ!!」


 腹の中に熱い塊が潜り込んできて、重なった唇に悲鳴が呑み込まれる。ずぶずぶと奥へと向かって沈んでくる圧迫感に息ができず、身体が一気に硬直する。

 ニアがかふかふと掠れた呼吸音を漏らしていると、半ばまで体内に潜り込んでいた塊が止まって、フィルバートの声が聞こえた。


「息をしろ」


 そう言われても、頭の中がめちゃくちゃで、上手く呼吸の仕方が思い出せなかった。

 ニアが、ひぅ、うぅ、と途切れ途切れな声を漏らしていると、右頬にフィルバートの手のひらが添えられた。そのまま柔らかく唇が押し付けられて、そっと息が吹き込まれる。まるで人工呼吸のように規則的に吹き込まれる温かい息に、乱れていた呼吸が少しずつ落ち着いていく。


「は、ぁ……」


 淡い吐息が漏れると、まるで褒めるみたいに頭をくしゃりと撫でられた。薄く目を開くと、ぼやけた視界にこちらを覗き込むフィルバートの顔が映った。


「ニア、大丈夫か」


 訊ねてくる声は、フィルバートらしくないくらい柔らかい。

 フィルバートの頬はかすかに火照って、額には薄く汗が滲み、その目には熱情が色濃く滲んでいた。普段の冷静な顔からは想像もできないくらい扇情的で、情欲に乱れた表情だ。その表情を見て、全身が燃えるように熱くなる。

 同時に、腹の中に刺さったままのフィルバートの陰茎を深く意識してしまう。ぬめった粘膜に包まれた陰茎は硬く、少しだけ凸凹としていて、ドクドクと脈打っている。時折ビクンッと大きく跳ねるソレに、ニアは唇を震わせた。


「ぅあ、ぁ……な、なに……」


 パニックのまま、取り留めのない言葉が零れる。目を白黒させるニアを見下ろして、フィルバートは口元に笑みを浮かべた。


「ゆっくり、全部挿れるからな」


 優しい口調だが、今のニアにとってそれは死刑宣告のようにも聞こえた。

 ヒッと小さく息を呑んだ瞬間、なだめるみたいに目元に唇を落とされた。顔中にキスを降らせながら、フィルバートがニアの内腿を掴んでくる。そのまま両足を左右に押し開くと、ググッと腰を沈めてきた。同時に、腹の中に突き刺さっていた塊が、奥へと向かってズブズブとゆっくりと進んでくる。


「ぁ、あ、ぁ、あ、あ……っ」


 内側から押し出されるみたいに、か細い声が咽喉から溢れた。自分でも触れたことのない場所を暴かれ、侵されている感覚に、ぞわぞわと怖気が込み上げてくる。


「痛いか?」


 訊ねてくる声に、ほとんど意味も分からないまま首を左右に打ち振る。

 痛いというよりも、腹を内側から限界まで押し広げられるのが苦しかった。まるで熱した太い杭に、身体を串刺しにされているような感覚だ。

 ニアの身体が強張る度に、顔に優しいキスが落ちてくる。舌先をくすぐるみたい舐められると、鼻がかった息が漏れて、硬直していた身体が緩んでいくのを感じた。そうすると、また身体の奥に陰茎が少しだけ押し込まれる。気が遠くなるぐらい長い時間をかけて、フィルバートの陰茎が入ってくる。

 根本まですべて埋まり切った頃には、全身の力がまったく入らなくなっていた。くったりとベッドに仰向けになったまま、フィルバートに抱えられた自身の両足の爪先がピクピクと小さく痙攣しているのをぼんやりと眺める。

 フィルバートの方も全身に汗を浮かべており、吐き出す息も荒く乱れていた。ぽつぽつと滴り落ちてくる汗すら刺激になって、ビクッと身体が跳ねる。同時に後孔がキツく窄まったのか、フィルバートが耐えるように片目を眇めた。


「あまり、締めるな」


 小さな声でそう囁きかけられるが、そんなことを言われてもどうしようもなかった。自分の身体が制御できず、勝手に動く。まるで押せば跳ねる子供の玩具にでもなってしまったかのようだ。

 ニアが泣き出しそうに顔を歪めていると、またフィルバートの唇が重なってきた。なだめるように舌を柔らかく絡められたまま、ゆっくりとフィルバートの腰が動き出す。粘膜を擦りながら熱い塊が体内を行き来する感覚に、キスの合間に短い声が漏れる。


「んっ、ぅんッ、ぅ、ンン、ぁ……」


 異物感しかなかったはずなのに、先ほど指で押された場所をズリズリと陰茎で圧迫されると、下腹部から痺れるような快感がまた這い上がってきた。

 苦しさで萎えていたはずの自身の陰茎が、かすかに硬くなっていくのを感じる。緩やかな律動の度に、半勃ちになった陰茎がフィルバートの硬い腹に擦られるのがまた堪らなかった。左右に開いた両足がガクガクと痙攣して、唇から聞くに耐えない嬌声が溢れてくる。


「ぁ、ぁ、あ、ぁぅ、ぁッ」


 上擦った声をあげるニアを、鼻先が触れ合いそうな距離でフィルバートが見下ろしている。その眼差しが恥ずかしくて堪らなくて、無意識に両腕で顔を覆い隠そうとする。だが、顔を覆う前に、両手首をフィルバートに掴まれた。

 グッと両腕を下側に引っ張られるのと同時に、フィルバートが上半身を起こす。途端、それまで緩やかだった律動が激しさを増した。両手首を掴まれたまま、フィルバートの腰がリズミカルに打ち付けられる。体内の一番奥を小刻みに突かれる感覚に、ニアは背筋を仰け反らせて声をあげた。


「あッ、あっ、アぁッ!」


 両手首を掴まれているせいで逃げることもできず、くすぶっていた快感の火種が一気に体内で燃え広がっていく。


「だ、だめっ……だめ……ッあぁッ!」


 駄目だ駄目だ、と駄々っ子のように繰り返しながら首を左右に振るのに、フィルバートはちっとも止まってくれない。むしろより激しく中を突かれて、ニアはか細い声をあげて咽び泣いた。

 内側の弱いところを亀頭で抉るように擦られて、一番奥までみっしりと陰茎を埋め込まれると、もう何も考えられなくなった。頭のてっぺんまで熱が回って、視界がくらくらと揺れる。

 次第に中がフィルバートの先走りで濡れてきたのか、律動もスムーズになってきた。陰茎が抜き差しされる度に、繋がった部分からぷちゅぷちゅと間の抜けた水音が聞こえてくる。その音でまた羞恥心が煽られて、自分の全身が真っ赤に染まるのが判った。

 規則的だった律動が、徐々に射精を目指すような直情的で乱暴なものに変わっていく。両手首を掴んでいた手が離れて、フィルバートがニアの膝裏を掴んで強引に押し開く。そのままガツッと腰を一番奥まで強く打ち付けられて、あまりの衝撃にニアは鋭い嬌声をあげた。


「ァッあァァッ!」


 そのまま腰を持ち上げられて、上からほとんど叩き付けるように陰茎が抜き差しされる。脳髄をぐちゃぐちゃに掻き回すような快感に、内腿の痙攣が止まらない。


「ッ、ぁ、ぁ、も、ッ、む、り、ぃ……ぃ、あァぁあぁッ!」


 長い悲鳴があがった直後、下腹部で熱が弾けるのを感じた。自身の陰茎がビクビクと震えながら、二度目の精液を吐き出す。強烈な射精感に、眼球の奥でパチパチと光が飛び散った。

 同時に後孔がキツく窄まったのか、フィルバートが小さくうめく声が聞こえた。グッと息を詰めた後、ニアの尻の形が歪むぐらいフィルバートが腰をキツく押し付けてくる。そのまま、体内の一番奥深くに熱いものが注がれた。


「ぁ……ぁ、ぁ……」


 遠慮なく体内に吐き出される感覚に、宙に浮いた爪先がピクッピクッと小刻みに跳ねる。ニアが無意識に身体を捩ると、逃さないと言わんばかりにフィルバートがのし掛かってきた。ずっしりと体重をかけたまま、フィルバートがニアの身体を強く抱き締めてくる。


「ぁぅ、ぅ、ぅ……」


 どぷどぷと注がれて、身体の奥の奥まで白く汚されていく。フィルバートの射精は長く、量も大量だった。身動き一つ取れないまま、ニアは最後の一滴まで強制的に呑み込まされた。

 ようやく射精が終わった後も、フィルバートはニアの身体を抱き締めたまま離さなかった。薄暗い部屋に、は、は、と荒い呼吸音だけが響いている。それが自分のものなのか、フィルバートのものなのかもう区別がつかなかった。

 呼吸が落ち着いてくると、フィルバートがそっと顔を上げた。まだぼんやりとしたニアの顔を見下ろして、フィルバートが淡く微笑む。何だかひどく愛しいものを見たような、泣き出しそうな微笑みだった。


「ニア」


 小さな声で名前を呼んで、フィルバートが唇を寄せてくる。柔らかな口付けの後、舌がゆっくりと入ってきた。舌先を優しくついばまれて、唾液で潤んだ舌の腹同士をぬるぬると擦り合わされる。

 半ば夢うつつなまま甘い口付けに浸っていると、不意に腹の中に収まったままのフィルバートの陰茎がピクリと跳ねるのを感じた。そのまま萎えていた陰茎が徐々に硬さを取り戻していく。

 粘膜を内側から押し広げていく陰茎に気付いて、ニアは舌を絡められたまま両足をじたばたと暴れさせた。


「ぅ、ヴぅ、ぅヴぅ~~!」


 抗議するようなニアの声を聞いて、フィルバートが口角をニヤッと吊り上げる。その人の悪い笑みを見て、ニアは背筋に冷汗が滲むのを感じた。


「一回で終わると思っていたのか?」


 唇を離して、フィルバートが笑い混じりに訊ねてくる。その言葉に、ニアは思わず頬を引き攣らせた。


「こ……これ以上したら、尻が割れます……」


 混乱のあまり、頭の悪すぎる台詞が零れる。フィルバートは一瞬不思議そうに瞬いた後、楽しげな笑い声を漏らした。


「安心しろ。尻は元から割れている」


 そう告げると、フィルバートはニアの両足を抱え直した。フィルバートの陰茎はすでに十分な大きさと硬さを取り戻して、ニアの体内をみっちりと満たしている。

 フィルバートが腰を前後にゆっくりと動かすと、先ほど吐き出された精液がぐぢゅっと体内で音を立てた。その卑猥な音に、思わず咽喉が震える。


「フィ、フィル、さま……」


 懇願するように名前を呼ぶと、フィルバートは両目を細めた。薄く開かれた唇から、小さな声が聞こえてくる。


「女など抱けない身体にしてやる」


 その言葉に悪寒が走った直後、再びフィルバートの唇が噛みつくように重なってきた。
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