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金融課?倉庫では?
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やはり倉庫なのだろうか?
金融課は別の部屋にあって、ここはただの金融課の資料室なのではないか?
そう思ってしまうほど、小屋の中は各種資料で埋もれていた。 装丁された分厚い本をあれば、バインダーで束ねられた書類の束もあった。
それらは、部屋中に置かれた書架に入りきらず、ただでさえ狭い通路にも積み上げられていた。
今からでも引き返して本当の金融課の場所をシャスに訪ねようかとも想ったが、どうせなら一番奥まで見てみようと思い直して唯一書類が積まれていないスペースを跳ねるように渡って移動した。
移動しながらも、書架においてある資料のタイトルを流し見る。
ダンジョン由来商品市場価格推移便覧
ダンジョン探索における生還率と各要素との相関研究
金融商取引に関する教会の公式見解並びその考察と実例
詐欺師入門 ~いかにして鴨の信頼を得るか~
確かに金融課にふさわしいタイトルが並んでいるように思う。
いくつか気になるタイトルがあったので呼んでみようかと手を伸ばすと。唐突に背後に攻撃的な気配を感じた。
慌てて飛び退く。
背後に現れたのは、異様に体の大きい女性であった。横にも縦にも大きいので、プロポーションそのものに違和感は無いが周囲の棚との比較で遠近感が狂いそうになる。
フレイを慌てさせたのは、唐突に現れたのではなく大女は書類に埋もれた事務机に座って作業をしていた点である。なのに、フレイは敵意を向けられるまで一切気づくことが無かった。
「勝手に触るんじゃないよ」
大女が書類から視線をあげずに告げた。
「その、すみません……」
フレイは迫力に押されて反射的に謝った。
「客じゃなさそうだね。迷い込んだのかい?ならさっさと帰りな」
「はい、では。失礼します……」
来た道を引き返すように書類が積まれていない場所に飛び移る。
なぜ、書類が積まれていない足場が飛び跳ねなければ使えないような位置関係にあるのかが今なら分かる。
この小屋の主であろう、あの大女の歩幅に合わせているだけだ。
小屋から出ようと扉に手をかけたとき。何かがおかしいと思った。
(なんで私は帰ろうとしているんだ?どこに帰るんだ?)
振り返ると、書架の奥からこちらの気配を伺っている気配がした。
再び来た道を引き返して、事務机で作業をする大女に話しかける。
「あの~、実は今日から金融課に配属になったのですが」
「なんだ。帰らなかったのかい?なかなかの根性じゃないか」 いきなりなぜか根性を褒められてあっけにとられるフレイをよそに大女はフレイの全身をじろじろと見てきた。
「ひとまず合格、かな……。ようこそギルド本部金融課へ。あたしはアリーザ、ここの課長だ。親しみを込めて課長と呼びたまえ。見ての通り巨人族の血が入っている」
肩書き呼びは相当隔意のある呼び方なのでは無いか、という突っ込みはアリーザの話し方が冗談のそれでは無かったのでできなかった。
なるほど、ジャイアントをルーツに持つなら巨体も納得である。
「よろしくお願いします。課長。ところで他の課員の方はいらっしゃらないのですか?」
小屋、もとい書庫、もとい金融課のオフィスにいたのはフレイとアリーザのみであった。他の課員もどこか書類に埋もれているのかと気配を探ってみたがそれらしい気配は無かった。
どこかに出かけているのだろうか?
フレイの質問に、アリーザは首をかしげながら答えた。
「他の課員?先週までは一人いたが今はあたし一人だな」
金融課は別の部屋にあって、ここはただの金融課の資料室なのではないか?
そう思ってしまうほど、小屋の中は各種資料で埋もれていた。 装丁された分厚い本をあれば、バインダーで束ねられた書類の束もあった。
それらは、部屋中に置かれた書架に入りきらず、ただでさえ狭い通路にも積み上げられていた。
今からでも引き返して本当の金融課の場所をシャスに訪ねようかとも想ったが、どうせなら一番奥まで見てみようと思い直して唯一書類が積まれていないスペースを跳ねるように渡って移動した。
移動しながらも、書架においてある資料のタイトルを流し見る。
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慌てて飛び退く。
背後に現れたのは、異様に体の大きい女性であった。横にも縦にも大きいので、プロポーションそのものに違和感は無いが周囲の棚との比較で遠近感が狂いそうになる。
フレイを慌てさせたのは、唐突に現れたのではなく大女は書類に埋もれた事務机に座って作業をしていた点である。なのに、フレイは敵意を向けられるまで一切気づくことが無かった。
「勝手に触るんじゃないよ」
大女が書類から視線をあげずに告げた。
「その、すみません……」
フレイは迫力に押されて反射的に謝った。
「客じゃなさそうだね。迷い込んだのかい?ならさっさと帰りな」
「はい、では。失礼します……」
来た道を引き返すように書類が積まれていない場所に飛び移る。
なぜ、書類が積まれていない足場が飛び跳ねなければ使えないような位置関係にあるのかが今なら分かる。
この小屋の主であろう、あの大女の歩幅に合わせているだけだ。
小屋から出ようと扉に手をかけたとき。何かがおかしいと思った。
(なんで私は帰ろうとしているんだ?どこに帰るんだ?)
振り返ると、書架の奥からこちらの気配を伺っている気配がした。
再び来た道を引き返して、事務机で作業をする大女に話しかける。
「あの~、実は今日から金融課に配属になったのですが」
「なんだ。帰らなかったのかい?なかなかの根性じゃないか」 いきなりなぜか根性を褒められてあっけにとられるフレイをよそに大女はフレイの全身をじろじろと見てきた。
「ひとまず合格、かな……。ようこそギルド本部金融課へ。あたしはアリーザ、ここの課長だ。親しみを込めて課長と呼びたまえ。見ての通り巨人族の血が入っている」
肩書き呼びは相当隔意のある呼び方なのでは無いか、という突っ込みはアリーザの話し方が冗談のそれでは無かったのでできなかった。
なるほど、ジャイアントをルーツに持つなら巨体も納得である。
「よろしくお願いします。課長。ところで他の課員の方はいらっしゃらないのですか?」
小屋、もとい書庫、もとい金融課のオフィスにいたのはフレイとアリーザのみであった。他の課員もどこか書類に埋もれているのかと気配を探ってみたがそれらしい気配は無かった。
どこかに出かけているのだろうか?
フレイの質問に、アリーザは首をかしげながら答えた。
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