11 / 15
オスの三毛猫しらぬいの診療カルテ ⑦ 美樹の決断
しおりを挟む
不知火の診察を終えた美樹はざくろといちごを呼んだ。
足元にスッと寄ってきた2匹の猫を抱き上げて処置台に乗せた。
美樹はゆっくりと椅子に腰を下ろし、姉弟猫と目線を合わせて言った。
「尿毒症と言って、本来はおしっことして外へ出すはずの体の毒素が身体に回っていて不知火君を弱らせ蝕んでいる状態になっている。尿道に管を入れておしっこの通り道を確保してやれば普通は毒素が出ていって回復していくのだけれど、この子の尿道は管がとおらないくらい傷ついてる。救命するには人工的に尿道を作るしかないと思う。それと、もう一つ不知火君には大きな決断が必要なの」
ざくろといちごはその決断を聞くために不知火の入院室へ行った。
「なう~にゃ~」
小さな三毛猫は静かに鳴いた。
「なんて?」
「ミキにすべて任せるって」
いちごからその答えを聞くと美樹は酷く辛そうな目をした。
※※※
「無事に終わったね、おねえちゃん」
「そうね。ずっと外で待っている瀬戸さまにお伝えして、私たちはマンションへ戻りましょう」
「分かったー」
美樹の自宅となっている2階の床には手術室が見えるように隠し窓が切られている。
そこから中をうかがっていた2匹は、美樹がこちらを見て親指を一本立てたのを見て帰ることにした。
日中、ざくろは天の意思を聴くことはない。
だからざくろには不知火の悪い霧が晴れたのかそうでないのかはわからない。
でも、美樹のあの顔つきからしたら不知火は大丈夫だろう。
あとは青島と不知火の問題だ。この世の理の中で生を全うするのかそれとも違うのか、二人が決めることだ。
足元にスッと寄ってきた2匹の猫を抱き上げて処置台に乗せた。
美樹はゆっくりと椅子に腰を下ろし、姉弟猫と目線を合わせて言った。
「尿毒症と言って、本来はおしっことして外へ出すはずの体の毒素が身体に回っていて不知火君を弱らせ蝕んでいる状態になっている。尿道に管を入れておしっこの通り道を確保してやれば普通は毒素が出ていって回復していくのだけれど、この子の尿道は管がとおらないくらい傷ついてる。救命するには人工的に尿道を作るしかないと思う。それと、もう一つ不知火君には大きな決断が必要なの」
ざくろといちごはその決断を聞くために不知火の入院室へ行った。
「なう~にゃ~」
小さな三毛猫は静かに鳴いた。
「なんて?」
「ミキにすべて任せるって」
いちごからその答えを聞くと美樹は酷く辛そうな目をした。
※※※
「無事に終わったね、おねえちゃん」
「そうね。ずっと外で待っている瀬戸さまにお伝えして、私たちはマンションへ戻りましょう」
「分かったー」
美樹の自宅となっている2階の床には手術室が見えるように隠し窓が切られている。
そこから中をうかがっていた2匹は、美樹がこちらを見て親指を一本立てたのを見て帰ることにした。
日中、ざくろは天の意思を聴くことはない。
だからざくろには不知火の悪い霧が晴れたのかそうでないのかはわからない。
でも、美樹のあの顔つきからしたら不知火は大丈夫だろう。
あとは青島と不知火の問題だ。この世の理の中で生を全うするのかそれとも違うのか、二人が決めることだ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
異世界は黒猫と共に
小笠原慎二
ファンタジー
我が家のニャイドル黒猫のクロと、異世界に迷い込んだ八重子。
「チート能力もらってないんだけど」と呟く彼女の腕には、その存在が既にチートになっている黒猫のクロが。クロに助けられながらなんとか異世界を生き抜いていく。
ペガサス、グリフォン、妖精が従魔になり、紆余曲折を経て、ドラゴンまでも従魔に。途中で獣人少女奴隷も仲間になったりして、本人はのほほんとしながら異世界生活を満喫する。
自称猫の奴隷作者が贈る、猫ラブ異世界物語。
猫好きは必見、猫はちょっとという人も、読み終わったら猫好きになれる(と思う)お話。
私はいけにえ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」
ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。
私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。
****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
異世界最強の賢者~二度目の転移で辺境の開拓始めました~
夢・風魔
ファンタジー
江藤賢志は高校生の時に、四人の友人らと共に異世界へと召喚された。
「魔王を倒して欲しい」というお決まりの展開で、彼のポジションは賢者。8年後には友人らと共に無事に魔王を討伐。
だが魔王が作り出した時空の扉を閉じるため、単身時空の裂け目へと入っていく。
時空の裂け目から脱出した彼は、異世界によく似た別の異世界に転移することに。
そうして二度目の異世界転移の先で、彼は第三の人生を開拓民として過ごす道を選ぶ。
全ての魔法を網羅した彼は、規格外の早さで村を発展させ──やがて……。
*小説家になろう、カクヨムでも投稿しております。
【完結】王太子妃の初恋
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
カテリーナは王太子妃。しかし、政略のための結婚でアレクサンドル王太子からは嫌われている。
王太子が側妃を娶ったため、カテリーナはお役御免とばかりに王宮の外れにある森の中の宮殿に追いやられてしまう。
しかし、カテリーナはちょうど良かったと思っていた。婚約者時代からの激務で目が悪くなっていて、これ以上は公務も社交も難しいと考えていたからだ。
そんなカテリーナが湖畔で一人の男に出会い、恋をするまでとその後。
★ざまぁはありません。
全話予約投稿済。
携帯投稿のため誤字脱字多くて申し訳ありません。
報告ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる