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オスの三毛猫しらぬいの診療カルテ ②猫又の依頼

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 (時は少しもどる)
コウモリのポポーは夕暮れ時にあのマンションの5階へ依頼を届けた後、依頼主と共にフルーツ公園に来ていた。時刻はすでに深夜2時を回っている。

今日の依頼主は特別でしかも時間がない。いつものことだが助かるものなら助けてあげたいとポポーは焦っていた。目の前には精悍な顔立ちのオス猫が横たわり、彼を守るように大きな三毛猫が寄り添う。身体に沿うようにぴたりと巻き付けた彼女の尾の先は二つに割れていた。

 「もうすぐだ不知火(しらぬい)、貴方はどんな手段を用いても助けてみせる。」

 「青島(あおしま)、私は生まれたときからそなたのものだ。そなたがそういうならどのような生き恥を晒してでも生き抜いてみせよう」

彼の呼吸は荒く吸気のたびに鼻孔が膨らみ、瞳孔は散大し非常に苦しそうだが目の力は弱っていない。今夜ザクロたちが来てくれさえすれば間に合う。来てくれ、我らの希望の光よ。

 「来た!!」

ポポーが叫ぶと先ほどまで横たわっていたというのに彼は上体を起こし顔を上げその誇り高い眼差しを声のする方へ向けた。ルビー色の二つの光と金色の2つの光がチラチラと近づいてきた。やがて目つきの鋭いスラリとした三毛猫に先導され、2匹の姉弟猫が到着した。

「道中で彼女から大筋は聞いたが、依頼内容が見えない」いちごがポポーに耳打ちした。

「今回は複雑でな。依頼主の青島様だ。」

 いちごはポポーが青島と呼んだ大きな三毛猫の前に進み出た。

 「初めてお目にかかります、青島様。いちごと申します。こちらは姉のざくろです。彼女は生まれつき右の耳が聞こえません。その代わりこの自然界の声、天の声を聴きます。」
 青島はざくろを見下ろし彼女の淡いブルーの瞳を静かに見つめて言った。

 「ざくろどの、いちごどの。これは不知火と言いわたくしの大切な者です。悪意に触れてしまったことでひどく傷ついている。わたくしはこの世のものではない声を聴き、この世のものではないものを視、この世のものではない力を遣う。しかしこの者はこの世のモノ。彼は私の力では助けてやれない。そなたたちの力を借りたいのです。」
 

「私からもお願いだ、ざくろ。彼を生きて救出できたのは奇跡なんだ。このまま死なせたくはない」事情を知っているポポーは不知火が触れたという悪意に怒っているようだった。
 ざくろは淡いブルーの目をポポーの方にやると言った。
 「青島さまと不知火さまとだけで話をさせて。」
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