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第2章
2ー6 情報収集その3
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西地区へと降り立ったエレナは、ひとまず大通りへと向かっていった。
「野菜安いよ!こっちはどうだい!」
「串焼き美味いよ!安いよ!さぁらっしゃい!」
「パン焼きたてだよ!ひとつどうだい!」
大通りへと出たエレナはその光景をみて唖然とした。
空から見て分かってはいたが、いざ実際に近くで見てみると、かなりの活気があったからだ。
「これが、1番いかないほうがいい場所?」
エレナはそうは思えなかった。むしろこちらのほうが南地区よりも品が安く、活気があるように思えたほどだ。
「…っ!いけない。とりあえず聞かないと…」
屋台を冷やかす訳にもいかないので、ちょっとした物を買いながらその合間にここの人と会話をすることにした。
「お、嬢ちゃん。串焼きどうだい?」
「うーん、貰おうかな」
「まいど!」
代金を払い、エレナは肉の串焼きを受け取った。タレがついていて、とても美味しそうだ。
「そうだ。ここらへんの治安ってどうなの?」
エレナが串焼きを食べながら、ごく自然に見えるように尋ねる。
「治安か?そうだな……この大通りは人通りが多いからそこまでだが、脇道に逸れると治安はいいとは言えないな」
それは空からみても分かっていた。
「スラム?」
「あぁ。最近多いんだ。嬢ちゃんも気をつけなよ?」
「分かった。ありがとね」
「いいってことよ!お、いらっしゃい!」
次の客が来たところで、エレナはその場を後にする。
「嬢ちゃん。野菜いるかい?」
「うーん…じゃあリンの実をひとつ貰おうかな」
「まいど!」
エレナはリンの実を受け取ると、その場でかぶりついた。
「美味しいね」
「そりゃそうだ。自慢のもんだからな!」
自慢げにはなす店主。よほど自信があるのだろう。
「ねぇ。この王都で行ったらダメなとこってある?」
エレナは前回南地区で言ったことと、同じことを質問した。
「行ったらだめな場所?そりゃもちろん……」
「ありがとね」
「いいってことよ。またきてくれよ」
リンの実を食べ終わったタイミングで、エレナはその店を後にした。
「どういうことなの……?」
エレナは混乱していた。混乱した理由は、先程の質問の答えだった。
店主は確かにこう答えたのだ。
────北地区だと。
南地区で聞けば西地区だと言い、その西地区で聞けば北地区だと言う。
「まさか……」
エレナの頭にある予想がよぎった。その予想を確かめる為に、エレナは歩き出した。
歩きながらエレナは考える。
誰が正しいことを言っているのはどちらなのかは、ハッキリしていると考えていいかもしれない。空から見ていて、西地区には比較的スラムが多かったのだから、いかないほうがいいところなのは西地区なのだろう。
しかし、スラムが多いからと言って一概に悪いとは言えないのもまた事実だった。
「南地区の人がスラムを嫌っていたなら……」
それならば辻褄は合うかもしれない。しかし、嫌う理由が分からなかった。
活気は変わらないし、スラムもそう多くない。つまり、そこまで迷惑を被るようなことはないはずなのだ。つまり、そこまで嫌う必要性はない。
しかし、これら全てはエレナの憶測でしかなく、結局のところ、情報不足で結論をだすことはできなかった。
「ついた…」
エレナは目的地へと到着し、その歩みと思考を止めた。
エレナが向かった場所。それは……
「ここが……北地区」
そう。西地区で聞いたいかないほうがいい場所。そこにエレナは向かっていたのだ。
たどり着いた北地区は、やはり活気に溢れていた。西地区とも勝るとも劣らないだろう。
「よし。聞いていこう」
そして西地区と同じように、ちょっとした買い物をしながら世間話を装い情報を引き出していった。その結果……
「どういう、こと、なの…」
北地区の人々は、エレナの「いかないほうがいい場所って、どこですか?」の質問に対して、全員が同じ答えを出した。その答えが……
「今度は…東地区…」
エレナは、出来れば当たって欲しくなかった予想が当たり、さらに困惑する。
「ひとまず、行ってみなくちゃ」
まだ整理が追いついていなかったが、それでも時間は有限だ。無駄にしてはならない。
エレナは急ぎ足に東地区へと向かった。
「ついた…」
歩きでエレナは東地区へと到着した。そこもまた活気に溢れていた。
そして他の地区と同じように聞き込みをし……絶句した。
「もう…なんで…」
エレナは今にも泣きそうだった。
聞き込みの結果。いかないほうがいい場所と答えたのは……予想通り、南地区であった。
「はぁ……もう、帰ろう」
空を見ればもう夕暮れであった。なのでエレナは今日の調査はここまでで切り上げ、宿へと戻ることにした。
だが、今日のこれで住民に対する聞き込みに信ぴょう性が無くなってしまったと言えるので、調査の意味はあまりなかったように思えた。まぁ、その異常に気づけただけでも十分ではあったが。
これは思ったより、解決どころか、調査すること自体が難しいかもしれないと、エレナは少し意気消沈してしまうのだった。
「野菜安いよ!こっちはどうだい!」
「串焼き美味いよ!安いよ!さぁらっしゃい!」
「パン焼きたてだよ!ひとつどうだい!」
大通りへと出たエレナはその光景をみて唖然とした。
空から見て分かってはいたが、いざ実際に近くで見てみると、かなりの活気があったからだ。
「これが、1番いかないほうがいい場所?」
エレナはそうは思えなかった。むしろこちらのほうが南地区よりも品が安く、活気があるように思えたほどだ。
「…っ!いけない。とりあえず聞かないと…」
屋台を冷やかす訳にもいかないので、ちょっとした物を買いながらその合間にここの人と会話をすることにした。
「お、嬢ちゃん。串焼きどうだい?」
「うーん、貰おうかな」
「まいど!」
代金を払い、エレナは肉の串焼きを受け取った。タレがついていて、とても美味しそうだ。
「そうだ。ここらへんの治安ってどうなの?」
エレナが串焼きを食べながら、ごく自然に見えるように尋ねる。
「治安か?そうだな……この大通りは人通りが多いからそこまでだが、脇道に逸れると治安はいいとは言えないな」
それは空からみても分かっていた。
「スラム?」
「あぁ。最近多いんだ。嬢ちゃんも気をつけなよ?」
「分かった。ありがとね」
「いいってことよ!お、いらっしゃい!」
次の客が来たところで、エレナはその場を後にする。
「嬢ちゃん。野菜いるかい?」
「うーん…じゃあリンの実をひとつ貰おうかな」
「まいど!」
エレナはリンの実を受け取ると、その場でかぶりついた。
「美味しいね」
「そりゃそうだ。自慢のもんだからな!」
自慢げにはなす店主。よほど自信があるのだろう。
「ねぇ。この王都で行ったらダメなとこってある?」
エレナは前回南地区で言ったことと、同じことを質問した。
「行ったらだめな場所?そりゃもちろん……」
「ありがとね」
「いいってことよ。またきてくれよ」
リンの実を食べ終わったタイミングで、エレナはその店を後にした。
「どういうことなの……?」
エレナは混乱していた。混乱した理由は、先程の質問の答えだった。
店主は確かにこう答えたのだ。
────北地区だと。
南地区で聞けば西地区だと言い、その西地区で聞けば北地区だと言う。
「まさか……」
エレナの頭にある予想がよぎった。その予想を確かめる為に、エレナは歩き出した。
歩きながらエレナは考える。
誰が正しいことを言っているのはどちらなのかは、ハッキリしていると考えていいかもしれない。空から見ていて、西地区には比較的スラムが多かったのだから、いかないほうがいいところなのは西地区なのだろう。
しかし、スラムが多いからと言って一概に悪いとは言えないのもまた事実だった。
「南地区の人がスラムを嫌っていたなら……」
それならば辻褄は合うかもしれない。しかし、嫌う理由が分からなかった。
活気は変わらないし、スラムもそう多くない。つまり、そこまで迷惑を被るようなことはないはずなのだ。つまり、そこまで嫌う必要性はない。
しかし、これら全てはエレナの憶測でしかなく、結局のところ、情報不足で結論をだすことはできなかった。
「ついた…」
エレナは目的地へと到着し、その歩みと思考を止めた。
エレナが向かった場所。それは……
「ここが……北地区」
そう。西地区で聞いたいかないほうがいい場所。そこにエレナは向かっていたのだ。
たどり着いた北地区は、やはり活気に溢れていた。西地区とも勝るとも劣らないだろう。
「よし。聞いていこう」
そして西地区と同じように、ちょっとした買い物をしながら世間話を装い情報を引き出していった。その結果……
「どういう、こと、なの…」
北地区の人々は、エレナの「いかないほうがいい場所って、どこですか?」の質問に対して、全員が同じ答えを出した。その答えが……
「今度は…東地区…」
エレナは、出来れば当たって欲しくなかった予想が当たり、さらに困惑する。
「ひとまず、行ってみなくちゃ」
まだ整理が追いついていなかったが、それでも時間は有限だ。無駄にしてはならない。
エレナは急ぎ足に東地区へと向かった。
「ついた…」
歩きでエレナは東地区へと到着した。そこもまた活気に溢れていた。
そして他の地区と同じように聞き込みをし……絶句した。
「もう…なんで…」
エレナは今にも泣きそうだった。
聞き込みの結果。いかないほうがいい場所と答えたのは……予想通り、南地区であった。
「はぁ……もう、帰ろう」
空を見ればもう夕暮れであった。なのでエレナは今日の調査はここまでで切り上げ、宿へと戻ることにした。
だが、今日のこれで住民に対する聞き込みに信ぴょう性が無くなってしまったと言えるので、調査の意味はあまりなかったように思えた。まぁ、その異常に気づけただけでも十分ではあったが。
これは思ったより、解決どころか、調査すること自体が難しいかもしれないと、エレナは少し意気消沈してしまうのだった。
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