119 / 130
第6章
自立に向けて
しおりを挟む
治療院の前でマリーナ様と別れ、私たちは商店が軒を連ねる大通りへとやって来ました。
自分の意思でマリーナ様と別れて行動するのは、何気に初めてかもしれません。
若干マリーナ様に依存していた自覚はありますし、ちょっとは自立を頑張らないといけませんね。
「まずは服からですかね」
レジーナさんに必要なものは多いですが、マリーナ様からお金は貰っているので困ることは無いでしょう。
「…ほんとに、いいんでしょうか」
「良いも悪いも、マリーナ様が良いと言えば良いのです」
この世界において、マリーナ様の意見を否定できる存在は神様くらいなんですから。
レジーナさんはだいぶ卑屈な考え方をしていますが、それはやはり罪悪感からなのでしょう。なのでマリーナ様のように、無理やりにでも光の元に連れ出してくれる人がもっと必要かもしれません。
「…あ。レジーナさんは魔法はある程度使えるのですよね?」
「えっと……人並み程度には」
「でしたら、後で教えてはいただけませんか?」
「え…?」
「その……わたしはエルフではあるのですが、魔力の制御が苦手で、上手く魔法を使う事ができないのです。なので、コツなどを教えていただけると有難いのですが……」
マリーナ様は格も力も桁違いですから、残念ながらわたしの参考にはなりませんし。
「えっと、どこまでできるか分かりませんけど……わたしなんかで良ければ」
「ありがとうございます!」
レジーナさんの手を握る。…これで、少しは付き合わせているという罪悪感が軽減されると良いのですが。
しかしながら、魔法の使い方を教えて欲しいというのはわたしの本心です。マリーナ様ばかりに負担を強いる訳にはいきませんからね。
そう話している間に服屋さんに着きました。わたしは服についてはよく分からないので、店員の方にいくつかレジーナさんに似合うものを見繕って貰いました。
「マリーナ様、どれだけ渡したんですか…」
その際にレジーナさんにマリーナ様が渡したお金はわたしの予想よりもかなりあったことが分かり、思わず呆れてしまいます。ほんとあの方は、加減というものを知らない気がします。
服の他にも、生活に必要なものを買い足していきます。
かなりの量になりましたが、マリーナ様が創ったマジックポーチがあるので苦にはなりません。
「大方、必要なものは買えましたね」
「そうですね、マリーナさんのおかげです」
買い物を通して、レジーナさんともだいぶ打ち解けてきたように思います。
「そろそろお昼ですし、何か食べましょうか」
「…でしたら、行き道にあった食堂に行ってみたいのですけれど…」
「大丈夫ですよ、行きましょうか」
わたしもいい匂いが気になっていましたし、ちょうどよさそうです。
今まで来た道を引き返して食堂に向かっていると、見覚えのあるグラデーションのかかった髪が見えました。
……ずっとお傍に居たのであまり気にしていませんでしたが、こうして見ると、マリーナ様って結構目立ちますね。
「マリーナ様」
「ん? あ、サーニャさん。お買い物は終わりですか?」
「はい。これから気になっていた食堂に向かおうかと思っていまして、よろしければご一緒しませんか?」
「あー……」
マリーナ様が微妙な返事をする。快く返事をしてくださると思っていたので、ちょっと残念です…。
「お嫌なら…」
「あっ、別に行きたくない訳じゃないですよ? その、レジーナさんは大丈夫かなと思いまして」
なるほど…お優しいマリーナ様らしいです。レジーナさんのマリーナ様に対する畏敬の念は未だ過剰ですからね。
「…大丈夫、です。頑張ります」
そう言う時点で、レジーナさんがかなり無理をしていることは明白でした。
「そんな無理をしなくても……わたしは別に食事はいりませんから、お2人で楽しんできてください」
「……すいません」
「謝る必要はありませんよ。わたしが、レジーナさんとサーニャさんの親睦を深める機会を邪魔したくないだけですから」
……さらりとそのような事を言えるマリーナ様は本当に凄いと思います。
「では後ほど」
「はい。あ、お金は足りますか? 足りなければ…」
「い、いえ! 大丈夫です!」
「そ、そうですか? でしたら、また後ほど会いましょう」
手を振るマリーナ様に振り返し、レジーナさんと共に食堂へ向かいます。その途中レジーナさんがふぅ…と胸を撫で下ろしました。その様子を見て、思わず笑みが零れます。
「マリーナ様はああいう方ですからね」
「…これ以上負債を増やしたくないです…」
「返すつもりなのですか?」
「もちろんです。…もしかして、ご迷惑でしょうか」
うーん…どうでしょうか。お金には困っていないはずですし、マリーナ様にとってはお金はあげたつもりで、貸したつもりはないでしょうから、困ってしまう可能性はありますね。
「返すのではなく、感謝として差し上げるのであれば…受け取ってくださる可能性はありますね」
「なるほど…」
「まぁそれはまた今度じっくり考えましょう。今はお腹が空きました」
「ふふっ、そうですね。ひとまずは食べましょうか」
思わず笑みを浮かべるあたり、だいぶ打ち解けられた気がします。
……わたしも、何かマリーナ様に感謝を伝えるようなものを後で見繕ってみましょうか。
自分の意思でマリーナ様と別れて行動するのは、何気に初めてかもしれません。
若干マリーナ様に依存していた自覚はありますし、ちょっとは自立を頑張らないといけませんね。
「まずは服からですかね」
レジーナさんに必要なものは多いですが、マリーナ様からお金は貰っているので困ることは無いでしょう。
「…ほんとに、いいんでしょうか」
「良いも悪いも、マリーナ様が良いと言えば良いのです」
この世界において、マリーナ様の意見を否定できる存在は神様くらいなんですから。
レジーナさんはだいぶ卑屈な考え方をしていますが、それはやはり罪悪感からなのでしょう。なのでマリーナ様のように、無理やりにでも光の元に連れ出してくれる人がもっと必要かもしれません。
「…あ。レジーナさんは魔法はある程度使えるのですよね?」
「えっと……人並み程度には」
「でしたら、後で教えてはいただけませんか?」
「え…?」
「その……わたしはエルフではあるのですが、魔力の制御が苦手で、上手く魔法を使う事ができないのです。なので、コツなどを教えていただけると有難いのですが……」
マリーナ様は格も力も桁違いですから、残念ながらわたしの参考にはなりませんし。
「えっと、どこまでできるか分かりませんけど……わたしなんかで良ければ」
「ありがとうございます!」
レジーナさんの手を握る。…これで、少しは付き合わせているという罪悪感が軽減されると良いのですが。
しかしながら、魔法の使い方を教えて欲しいというのはわたしの本心です。マリーナ様ばかりに負担を強いる訳にはいきませんからね。
そう話している間に服屋さんに着きました。わたしは服についてはよく分からないので、店員の方にいくつかレジーナさんに似合うものを見繕って貰いました。
「マリーナ様、どれだけ渡したんですか…」
その際にレジーナさんにマリーナ様が渡したお金はわたしの予想よりもかなりあったことが分かり、思わず呆れてしまいます。ほんとあの方は、加減というものを知らない気がします。
服の他にも、生活に必要なものを買い足していきます。
かなりの量になりましたが、マリーナ様が創ったマジックポーチがあるので苦にはなりません。
「大方、必要なものは買えましたね」
「そうですね、マリーナさんのおかげです」
買い物を通して、レジーナさんともだいぶ打ち解けてきたように思います。
「そろそろお昼ですし、何か食べましょうか」
「…でしたら、行き道にあった食堂に行ってみたいのですけれど…」
「大丈夫ですよ、行きましょうか」
わたしもいい匂いが気になっていましたし、ちょうどよさそうです。
今まで来た道を引き返して食堂に向かっていると、見覚えのあるグラデーションのかかった髪が見えました。
……ずっとお傍に居たのであまり気にしていませんでしたが、こうして見ると、マリーナ様って結構目立ちますね。
「マリーナ様」
「ん? あ、サーニャさん。お買い物は終わりですか?」
「はい。これから気になっていた食堂に向かおうかと思っていまして、よろしければご一緒しませんか?」
「あー……」
マリーナ様が微妙な返事をする。快く返事をしてくださると思っていたので、ちょっと残念です…。
「お嫌なら…」
「あっ、別に行きたくない訳じゃないですよ? その、レジーナさんは大丈夫かなと思いまして」
なるほど…お優しいマリーナ様らしいです。レジーナさんのマリーナ様に対する畏敬の念は未だ過剰ですからね。
「…大丈夫、です。頑張ります」
そう言う時点で、レジーナさんがかなり無理をしていることは明白でした。
「そんな無理をしなくても……わたしは別に食事はいりませんから、お2人で楽しんできてください」
「……すいません」
「謝る必要はありませんよ。わたしが、レジーナさんとサーニャさんの親睦を深める機会を邪魔したくないだけですから」
……さらりとそのような事を言えるマリーナ様は本当に凄いと思います。
「では後ほど」
「はい。あ、お金は足りますか? 足りなければ…」
「い、いえ! 大丈夫です!」
「そ、そうですか? でしたら、また後ほど会いましょう」
手を振るマリーナ様に振り返し、レジーナさんと共に食堂へ向かいます。その途中レジーナさんがふぅ…と胸を撫で下ろしました。その様子を見て、思わず笑みが零れます。
「マリーナ様はああいう方ですからね」
「…これ以上負債を増やしたくないです…」
「返すつもりなのですか?」
「もちろんです。…もしかして、ご迷惑でしょうか」
うーん…どうでしょうか。お金には困っていないはずですし、マリーナ様にとってはお金はあげたつもりで、貸したつもりはないでしょうから、困ってしまう可能性はありますね。
「返すのではなく、感謝として差し上げるのであれば…受け取ってくださる可能性はありますね」
「なるほど…」
「まぁそれはまた今度じっくり考えましょう。今はお腹が空きました」
「ふふっ、そうですね。ひとまずは食べましょうか」
思わず笑みを浮かべるあたり、だいぶ打ち解けられた気がします。
……わたしも、何かマリーナ様に感謝を伝えるようなものを後で見繕ってみましょうか。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
408
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる