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第6章

尋ね人はどこ?

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 商会から出てポーチを依頼した裁縫屋さんへ向かう。
 ……途中道に迷ったのは内緒。行きは地図見ながらだったからね…。

「すいませーん」

 裁縫屋さんに到着し、声をかける。すると奥から依頼を受けてくれたあの女性が現れた。

「あら、思ったより早かったわね。出来てはいるけれど、最終確認をしてもらってもいいかしら」

「分かりました」

 そう言って女性が手渡してくれたポーチは、表面は何かの革で内側が布張りになっていた。シンプルだけどシックな感じでとてもいい。傷も付きにくそう。さっそくプレナに入ってもらう。

「どう?」

 《うーん…狭くはないけど、ずっといるのは辛いかも》

 どうやら中で過ごすにはクッション性が足りなかったようだ。

「じゃあ…もう少し中に綿をいれてもらってもいいですか?」

「ええ、もちろん。でも綿にも色々種類があるの。あなたが良さそうなものを選んでくれる?」

 女性が机の上に色々な種類の綿を出してくれたので、一つ一つ手に取って確認してみる。一見すると同じように見えるが、触ってみると全然違うのが分かる。

「暑いのは嫌だよね?」

 一緒に綿を触っていたプレナに尋ねる。

 《苦手ではないけど、出来れば涼しめがいいな。自分の毛あるし》

 確かに。
 うーん……。となると、これかな。ふわふわしてて、クッション性も通気性も良さそう。

「それは結構高いものになるけど……大丈夫?」

「問題ないです。これをいれてもらえますか?」

「分かったわ。ちょっとポーチ貸してね」

 手早く縫い目を解き、わたしが選んだ綿を入れていく。そして綿を布に縫い付け、ズレないように固定していく。それでもやっぱり綿は使ってたら潰れたりするだろうから、定期的にやり直さないとかなぁ。

「一応予備の綿も貰えますか?」

「ええ」

 でもわたしがやると多分……

『マリーナ様が"創る"こと自体に問題があるだけなので、新たに機能を付け加えるなどではなく、綿を詰め直す程度ならば問題ありません』

 あ、そうなんだ。ならいいや。

「…はい、できたわ。どうかしら」

 受け取ったポーチに早速プレナが入る。

 《うん! いい感じ!》

「大丈夫みたいです」

「なら良かった。えっと、予備の綿もだったわよね。全部で……15000リシアになってしまうけれど、大丈夫かしら」

 15000リシア……金貨15枚か。けっこうするね。……いやちょっと待った。月収の3倍だからけっこうどころじゃないね!? 思ったより高い買い物になっちゃった……まぁ他に使い道もないからいいんだけどね。 

「カードは使えますか?」

「ごめんなさい、現金だけなの」

「じゃあ……はい、金貨15枚です」

 ポケットに手を突っ込み、そこから金貨を取り出す。できる限り無限収納庫インベントリは見せない方がいいからね。
 1回では持ちきれなかったので、2回に分けて出す。

「はい、確かに。……にしても、何処かのご令嬢だったりするの? こんな大金…」

「いえ、ただの冒険者ですよ。ちょっと薬草とかが高く売れたので」

「ちょっとどころじゃないけれど……まぁ、深く聞くものではないわね。要件はこれだけかしら?」

「はい、いいものをありがとうございました」

「こちらこそ、久々に可愛らしいお客さんが来てくれて嬉しかったわ。では、またのお越しを」

 そう言って一礼する女性にわたしも軽く頭を下げて、店を後にした。

「プレナ、揺れとか大丈夫?」

 《うん、平気。でもなんか新鮮な感じー》

 それはいつもと視点が違うからだろう。
 平気とはいえ揺れが無い訳じゃないからちょっと心配だけど…まぁプレナがそれすら楽しそうなのでよしとする。

「さて。じゃあおじいさんに教えてもらった人に会いに行こっか」

 《うん!》

 貰った地図を広げて、行く場所を確認する。

「……うーんと」

 分からん。いやそもそも地図上で今いる場所が分からない。

「あの、すいません。ここに行きたいんですけど、分かりますか?」

 仕方なく近くの通りかかった人に聞いてみる。

「どれどれ……あぁ、ヘンスさんのお店ね」

 どうやらわたしが紹介してもらった人はヘンスさんと言うらしい。

「今はここだから、この道を真っ直ぐ。その後ちょっと複雑だけどこの脇道に入って…」

 わたしが持つ地図に指を当てて順番に説明してくれる。おかげで良く分かった。

「ありがとうございました」

「どういたしまして。気を付けてね」

 道を教えてくれた親切な人に手を振って別れ、教えてくれた通りの道を進んでいく。




「……ここ進むの?」

 《みたいだね》

 思わずそう言いたくなるほど、目の前の道は暗くて怪しいものだった。でも地図ではこの先だし……いくか。
 意を決して足を踏み入れ進んでいくと、ふわっと独特な魔力の気配がした。おそらく普通の人間では感じ取れないほどの、微かな魔力。

「これは……」

 《聖域の結界に似てるね。でもそこまで強いものじゃないみたい》

 プレナの言う通り、聖域の結界に似ている。多分だけど、これはヘンスさんがかけたものだろう。

(……なるほど。この地図か)

 手に持っている地図に神眼を向ければ、同じような魔力を纏っていることが分かる。これが通行パスのようなものになっているみたいだ。

「理由は悪い人…この場合はヘンスさんに害する存在を排除する為かな」

 だから多分だけど、わたしならこの地図を持ってなくても入れると思う。
 まぁ地図が無いとそもそもお店の場所すら分からないから、結局要るんだけどね。

「ヘンスさん、けっこう期待できそうかな」

 こんな魔法を常時展開できるのなら、それなりの腕を持っているはずだ。
 わたしは少し期待に胸を膨らませ……ちょっと待った。

「さっき道聞いた人って……」

 《この結界を抜けれた人だろうね》

 ……よし、深く考えないでおこう。別に悪い人じゃなかったら入れるんだしね。……多分。



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