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第6章

話し合い

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 食事を取りいくと、もう既にスーさんは忙しそうに働いていた。

「あっ!おはよう、マリーナちゃん」

 それでも、私を見つけると朝の挨拶を交わしてくれた。

「おはようございます。朝食もらってもいいですか?3人分」

「いいけど…3人?」

 配膳をしながらスーさんが首を傾げる。

「はい。とりあえずその話は後ででもいいですか?」

 今は忙しそうだからね。人が増えたこととかは後で話した方がいいだろう。

「分かったわ。じゃあ厨房で貰ってきて。そっちのほうが、部屋に持っていくなら早いから」

「はい」

 言われた通り厨房へ。するとスーさんのお父さんの他にもう1人の姿があった。…間違いない。スーさんのお母さんだ。どうやらもう立って仕事出来るほどに回復したらしい。よかったよかった。

「おはようございます!」

 厨房の音で掻き消されてしまう為、大きめの声で話しかける。

「あ?…おう、おはようさん。朝食か?」

「はい。今日は3人分お願いします」

「3人?まぁいいが…」

「あなた、この子は?」

 あ、そっか。そう言えば目を覚ましてから会うのは初めてだね。

「どうも。マリーナと言います。この宿に泊まらせてもらっています」

「あらそうだったの。マリーナちゃんね。部屋で食べるの?」

「はい。なので貰いにきました」

「ありがとね。そうやって来てもらった方がこちらとしては楽だから有難いわ。でも…3人分も持って行ける?」

 まぁ、心配するのも無理はないよねぇ…子供だし。

「大丈夫です。こう見えて力ありますし」

「…まぁそう言うなら」

 ちょっと心配そうな眼差しを向けてくるけれど、気持ちだけ受け取っておく。

「おーい!出来たぞ、持ってけ」

「はい、ありがとうございます」

 朝食が載ったお盆を2枚受け取る。今日の朝食はパンとスープ。サラダといったシンプルなもの。でも朝食なんだから、これくらいで十分だろう。
 もしレジーナさんが足りないのなら、私の分をあげればいいし。

「ほ、本当に大丈夫?」

「大丈夫です」

 はらはらとスーさんのお母さんが心配してくる。
 ……なんだか、孫を見る目に見えたのはきっと気のせいだ。うん。

 厨房を後にして部屋へと戻ってくる。両手が塞がってしまっている為、部屋にいるサーニャさんを呼んで開けてもらった。

「すいません…」

 部屋に入ってから、サーニャさんが謝り出した。恐らく、私の手伝いをしなかったことに対してだろう。

「私がレジーナさんと話していて下さいとお願いしたんです。謝る必要はありませんよ。それより冷える前に食べちゃいましょう」

「…分かりました」

「レジーナさんは食べられそうですか?」

「あ、えぇっと…はい」

「じゃあ、頂きましょう」

 椅子は2つしか無かったので、テーブルをベッド脇まで寄せてベッドをイス代わりに使う。


「……美味しい」

 1口スープを口にしてレジーナさんが思わずといったように呟いた。

「それは良かったです。足りなければ私の分をあげましょうか?」

「い、いえ…大丈夫です」

「遠慮はしないでいいですよ?基本私は食事が要らない体ですし」

 便利なような、不便なような体だけどね。
 なんでわざわざ私がそんなことを伝えたのかというと…【真偽の問】の効果で、レジーナさんの返答が偽だと分かったからだ。常時発動型だから、これも便利なような不便なような能力だったりする。

「え……そう、なんですか?」

「はい。食事は一種の娯楽の様なものです。なので足りなければあげますよ」

「…じゃあ、貰っても?」

「はい、どうぞ」

 朝食を差し出し、私はプレナを呼び出した。あの出来事から労ってなかったし。

 《……主様、忘れてた訳じゃないよね?》

「……もちろんだよ」

 否である。いや本当にごめんなさい…
 とりあえず労いと誤魔化す為に頭を撫でる。

 《……まぁ、いいやぁ》

 瞳がとろんとして、ほうけた表情になる。ふぅ…何とか誤魔化せたっぽい。




「…ありがとう、ございました。食事まで」

 綺麗に食事を完食して、レジーナさんが感謝の言葉を口にする。

「別に構いませんよ。…食事を終えて直ぐですいませんが、レジーナさんと話さないといけないことがありますね」

「私の、こと?」

「はい。これからの事についてです」

 これからレジーナさんが何処へ向かい、何をするのか。それを話し合っておかないと。
 とりあえず、何をするのかは行ってから考えても遅くないので、今話すべきは何処へ向かうかだ。

「……村には、戻れません」

 俯き、レジーナさんがそう言う。まぁその返答は予想していた。

「では、レジーナさんは何が出来ますか?何をしたいかでもいいです」

「……したいことは特にないです。けど…職業が治癒師なので、治癒魔法は得意です」

 治癒師……治癒魔法……

「……マリーナ様、いい所があるのでは無いですか?」

「……そうですね。繋がりもありますし、信頼もできますね。なら」

「え……どこですか…?」

「まぁ、行けば分かります。でもその前に…」

 私は無限収納庫インベントリから自分の鱗を取り出し、ある効果を付与する。
 そしてそれに小さな穴を開けて紐を通し、レジーナさんへと手渡した。

「これは……?」

「隠蔽の効果を付与したものです。それで、隠したいものを隠してください」

「っ!?……やっぱり、隠した方がいいですか」

「そうそう勝手に見られることは無いかと思いますが、念の為です」

 隠すべきもの。それは…ステータス上の称号。追放者と元魔族。

『神龍に救われた者はいいのですか?』

 …確かにそれも隠した方がいいか。というか、称号全部隠した方がいいかな。

「…ところで、その…」

「はい?なんでしょうか」

「……神龍に救われた者って、どういうことですか?」

 ……あっ。



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