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第5章
あれ…勘違い?
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スロープを滑り降りると、少し暗い通路のような場所へとたどり着いた。
壁には魔道具の明かりが少し灯っていることから、ここを使う人はいるのだろう。
光の玉を作った方が正直明るくて見やすいのだけれど、そんなことしたら自分の居場所を教えているようなものなので、使わない。まぁ神眼というか、龍の眼が優秀なので、大して問題は無い。
「サーニャさんは…」
索敵には反応しているけれど、動きはない。寝かされているのだろうか…。
睡眠薬は必ずしも害になるとは限らないから、守護の効果が働かないんだよね。
……私って全然サーニャさんを護れてないね。
「情けないなぁ…」
まぁそれは後だ。今はサーニャさんを助けることだけを考えよう。
索敵対象を切り替え、他に人が居ないかを確認する。
……いた。サーニャさんの近く。でも1人だけで、他に反応はない。
「見張り…?」
とりあえず1人だけならなんとかなるだろう。奇襲さえ出来れば。
薄暗い通路を進んでいく。道の左右に扉はあったけれど、反応はそこからでは無い。たどり着いた最奥の扉の先から反応があった。
「…ふぅ」
息を整え、静かに魔力を巡らせる。そして一気に扉を蹴破り、部屋にいた人物へと飛びかかった!
「えぇ!?」
「うわっ!?」
……うん?今サーニャさんの声が聞こえたような……
「マ、マリーナ様…?」
……あれぇ?サーニャさんは普通にソファーに座っていて、意識もあるようだった。
「ど、どうしてここに…」
「それはこっちのセリフです。もう何時だと思ってるんですか!」
「え!?そ、そんなに経ってました!?」
どうやら地下にいた関係で時間が狂ってしまっていたらしい。全く……
「あ、あのぉ…それで、そろそろどいて差し上げてください」
「え?……あ」
そうだった。飛びかかって馬乗りになってたわ。いそいそとその人物から降りる。
「で、どうしてここに?」
「えぇっと…その方に呼ばれまして…」
その方…あぁ、私が馬乗りになった人ね。
「何故?」
「その…実は以前の治療の時にマリーナ様の姿を見られていたようで…」
………消す。
「わぁぁ!?ま、待ってください!その方は悪いヒトじゃないです!」
「…この時間までサーニャさんを連れ出しておいて?」
「そ、それは…私がついつい長居を…なので、その方は悪くないんです!」
……嘘はない。でも長居って…
「…とりあえず、起こしませんか?」
「え?」
どうやら馬乗りになった時に頭を打ったようで、気絶していた。なんか…ごめんなさい。
とりあえず倒れた彼女をソファーに寝かせて、治癒魔法でたんこぶ治して…よし。
「これでよしっと…で、この人誰です?」
「えっとですね……」
サーニャさんが話そうとしたタイミングで、彼女が起き上がった。
「いてて……えっと、それは私から話します。神龍様」
……ん?今、神龍様って言った?
思わずサーニャさんを見るが、サーニャさんは首を横に振る。じゃあまさか…
「…龍?」
「はい。私は風龍、"ヴェントゥス"と申します」
…やっぱり龍だった。誰からも言われないで私の正体を看破できるのは、同族しかいないからね。
「…それで、ヴェントゥスさんがなんの用で?」
「今回の治療についての感謝を。ありがとうございました」
そう言って深々と頭を下げる。バレてるのね。
「私は私のできることをしただけですよ。でもそれで何故サーニャさんがここに?」
「貴方様を呼ぶつもりだったのですが不在でしたので……そして話を聞いている内に思ったより時間が経ってしまったようです」
そういえばそうだね。いなかったわ。
「えぇっと…ごめんなさい!」
勢いよく頭を下げる。だって私の勘違いだった訳で…それでいきなり襲いかかったんだもの。謝らないといけないよね。
「そ、そんなことはないです!頭をお上げください!元はと言えば私がこんな時間になるまで気づかなかったことが原因ですから!?」
「マリーナ様。本当にすいませんでした!」
……なんかカオスになってしまったので、とりあえず頭を上げて、互いを許すことにする。そうしないと一向に進まないんだから。
「…連絡くらいしてください」
「はい…」
サーニャさんにそう忠告し、ヴェントゥスさんの話を聞く。
彼女は元々人と関わるのが好きだったらしく、自身の治癒の能力を活かして人助けをしたかったらしい。それでこの王都の治療院で働き始めて……数年経ったある日、あの呪いが広がった。
ヴェントゥスさんも尽力したそうだけれど、それでも根本的な治療は不可能で……途方に暮れていたそんな時、私を抱えたサーニャさんを見たのだという。
元々何かの人間とは違う気配を感じてはいたが、何せ忙しすぎて姿を見るまで気付かなかったらしい。
「最初は自分の目を疑いましたよ……まさか、こんな近くに神龍様がいるなんて思いませんでしたから」
…むず痒い。本当に尊敬の眼差しで私のことを見てくるから。
「…助けたのは、助けられたからです。だからその目をやめてください」
「それでもです。本当にありがとうございました…」
今度はソファーに座りながら頭を軽く下げる。
「…ところで、この部屋は一体?」
とりあえずこれ以上耐えらそうにないので、話題を変える。でも本当に聞きたかったことだ。わざわざ隠されていたのだから。
「ここは…まぁ私の秘密の部屋です」
「秘密の部屋…?」
「はい。もともとここは隔離部屋だったそうですが、放棄されていたのです」
隔離部屋か……確かに部屋は多かった。感染症などをできる限り広めないようにする為に使われていたのだろう。
「それを利用して?」
「はい。中々に便利でして…出入口も王都内に数箇所あるんですよ」
……最早それは隠し通路なのでは?一体これを造った人は何を考えていたんだろうか……
壁には魔道具の明かりが少し灯っていることから、ここを使う人はいるのだろう。
光の玉を作った方が正直明るくて見やすいのだけれど、そんなことしたら自分の居場所を教えているようなものなので、使わない。まぁ神眼というか、龍の眼が優秀なので、大して問題は無い。
「サーニャさんは…」
索敵には反応しているけれど、動きはない。寝かされているのだろうか…。
睡眠薬は必ずしも害になるとは限らないから、守護の効果が働かないんだよね。
……私って全然サーニャさんを護れてないね。
「情けないなぁ…」
まぁそれは後だ。今はサーニャさんを助けることだけを考えよう。
索敵対象を切り替え、他に人が居ないかを確認する。
……いた。サーニャさんの近く。でも1人だけで、他に反応はない。
「見張り…?」
とりあえず1人だけならなんとかなるだろう。奇襲さえ出来れば。
薄暗い通路を進んでいく。道の左右に扉はあったけれど、反応はそこからでは無い。たどり着いた最奥の扉の先から反応があった。
「…ふぅ」
息を整え、静かに魔力を巡らせる。そして一気に扉を蹴破り、部屋にいた人物へと飛びかかった!
「えぇ!?」
「うわっ!?」
……うん?今サーニャさんの声が聞こえたような……
「マ、マリーナ様…?」
……あれぇ?サーニャさんは普通にソファーに座っていて、意識もあるようだった。
「ど、どうしてここに…」
「それはこっちのセリフです。もう何時だと思ってるんですか!」
「え!?そ、そんなに経ってました!?」
どうやら地下にいた関係で時間が狂ってしまっていたらしい。全く……
「あ、あのぉ…それで、そろそろどいて差し上げてください」
「え?……あ」
そうだった。飛びかかって馬乗りになってたわ。いそいそとその人物から降りる。
「で、どうしてここに?」
「えぇっと…その方に呼ばれまして…」
その方…あぁ、私が馬乗りになった人ね。
「何故?」
「その…実は以前の治療の時にマリーナ様の姿を見られていたようで…」
………消す。
「わぁぁ!?ま、待ってください!その方は悪いヒトじゃないです!」
「…この時間までサーニャさんを連れ出しておいて?」
「そ、それは…私がついつい長居を…なので、その方は悪くないんです!」
……嘘はない。でも長居って…
「…とりあえず、起こしませんか?」
「え?」
どうやら馬乗りになった時に頭を打ったようで、気絶していた。なんか…ごめんなさい。
とりあえず倒れた彼女をソファーに寝かせて、治癒魔法でたんこぶ治して…よし。
「これでよしっと…で、この人誰です?」
「えっとですね……」
サーニャさんが話そうとしたタイミングで、彼女が起き上がった。
「いてて……えっと、それは私から話します。神龍様」
……ん?今、神龍様って言った?
思わずサーニャさんを見るが、サーニャさんは首を横に振る。じゃあまさか…
「…龍?」
「はい。私は風龍、"ヴェントゥス"と申します」
…やっぱり龍だった。誰からも言われないで私の正体を看破できるのは、同族しかいないからね。
「…それで、ヴェントゥスさんがなんの用で?」
「今回の治療についての感謝を。ありがとうございました」
そう言って深々と頭を下げる。バレてるのね。
「私は私のできることをしただけですよ。でもそれで何故サーニャさんがここに?」
「貴方様を呼ぶつもりだったのですが不在でしたので……そして話を聞いている内に思ったより時間が経ってしまったようです」
そういえばそうだね。いなかったわ。
「えぇっと…ごめんなさい!」
勢いよく頭を下げる。だって私の勘違いだった訳で…それでいきなり襲いかかったんだもの。謝らないといけないよね。
「そ、そんなことはないです!頭をお上げください!元はと言えば私がこんな時間になるまで気づかなかったことが原因ですから!?」
「マリーナ様。本当にすいませんでした!」
……なんかカオスになってしまったので、とりあえず頭を上げて、互いを許すことにする。そうしないと一向に進まないんだから。
「…連絡くらいしてください」
「はい…」
サーニャさんにそう忠告し、ヴェントゥスさんの話を聞く。
彼女は元々人と関わるのが好きだったらしく、自身の治癒の能力を活かして人助けをしたかったらしい。それでこの王都の治療院で働き始めて……数年経ったある日、あの呪いが広がった。
ヴェントゥスさんも尽力したそうだけれど、それでも根本的な治療は不可能で……途方に暮れていたそんな時、私を抱えたサーニャさんを見たのだという。
元々何かの人間とは違う気配を感じてはいたが、何せ忙しすぎて姿を見るまで気付かなかったらしい。
「最初は自分の目を疑いましたよ……まさか、こんな近くに神龍様がいるなんて思いませんでしたから」
…むず痒い。本当に尊敬の眼差しで私のことを見てくるから。
「…助けたのは、助けられたからです。だからその目をやめてください」
「それでもです。本当にありがとうございました…」
今度はソファーに座りながら頭を軽く下げる。
「…ところで、この部屋は一体?」
とりあえずこれ以上耐えらそうにないので、話題を変える。でも本当に聞きたかったことだ。わざわざ隠されていたのだから。
「ここは…まぁ私の秘密の部屋です」
「秘密の部屋…?」
「はい。もともとここは隔離部屋だったそうですが、放棄されていたのです」
隔離部屋か……確かに部屋は多かった。感染症などをできる限り広めないようにする為に使われていたのだろう。
「それを利用して?」
「はい。中々に便利でして…出入口も王都内に数箇所あるんですよ」
……最早それは隠し通路なのでは?一体これを造った人は何を考えていたんだろうか……
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