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第5章

サーニャさんは何処へ?

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 とりあえず自分の宿の部屋へと転移で戻ってきた。2人同時だった為にかなりの魔力を消耗したけれど、問題ない範囲だ。
 眠らせていたレジーナさんをベットへと寝かせ、私はもう一度王都の外へと転移する。門番にギルドカード見せないとね。

「次!…お。やっと帰ってきたか。心配したぞ」

 門番として立っていたのは、またしてもザーズさんだった。ここまで偶然が重なると狙ってるんじゃないかと思ってしまう。
 まぁ、私がどこから帰ってくるかかなんて分からないんだし、それは有り得ないだろうけどね。

「ちょっと遅くなっちゃいました」

 王都を出た時は丁度真上ほどだった太陽も、オレンジ色に染まり沈みかけている。一応夜までには帰ってくるつもりではいたけれど、正直今日中に片付くとは思わなかった。まぁ、早いに越したことはないんだけどね。

 ギルドカードを渡し、水晶に触れる。問題ない青色に光った。

「うし。先にエルフの方が帰ってきたから心配したが、大丈夫そうだな」

「あぁ…ちょっと色々ありまして。先に帰ってもらったんですよ」

「そうだったのか。まぁ今日はゆっくり休んどけよ」

「はい」

 ザーズさんと別れ、宿へと向かう。まぁ、さっき来たばかりなんだけどね…。

 宿の扉を開けて中に入る。中にはかなりの人が居て、皆食事に来ているようだった。

「あっ!マリーナちゃん!」

 私の姿を見つけたスーさんが駆け寄ってきた。

「ただいまです。給仕は大丈夫ですか?」

「おかえり。…あまり良くはないのよねぇ。まぁ、大丈夫よ。お母さんも明日には復帰出来そうだし」

「あ、目が覚めたんですか?」

「ええ。もうばっちりよ」

 そう言うスーさんの顔は、とても嬉しそうだった。

「おーい!こっち注文頼む!」

「あっ!はーい!ごめんね」

「いえ。こちらこそ忙しい時にすいません」

 スーさんはもう一度ごめんねと言いながら、給仕へと戻った。
 ………そう言えばサーニャさんはどこだ?

「部屋…かな」

 とりあえず自分の部屋へと戻る。でも中にサーニャさんの姿はなく、ベットでレジーナさんが寝ているだけだった。多分起きるのは明日だろう。

「……どこいったんだろう」

 ひとまず待ってみようかな……

















「…遅い」

 何時まで待っても、サーニャさんが帰ってくるような気配はしない。

「…索敵」

 索敵対象をサーニャさんに設定し、王都全体を探す。
 ………いた。

「王都にはいるか…」

 でもそれならば何故帰ってこない?もう日は落ちているし、帰ってきてもいいはず。というより、帰ってこないほうがおかしい。

「…何かあった?」

 盟約の効果により、サーニャさんが傷付くことは絶対にない。けれど、サーニャさんの反応は一箇所から動く気配がない。
 ………私は馬鹿だ。何が傷付かないだ。拉致監禁。それくらいなら、例え盟約があったとしても出来てしまうというのに。

『……我今ここに盟約の宣誓を果たさん。絶対の守護を』

 その瞬間、私の視界が切り替わる。私が交わした盟約は守護。だから、護るべき対象の傍にいつどんな時でも向かうことが出来るのだ。転移という形でね。
 転移して真っ先に私の目に入ってきたのは……

「…治療院?」

 昨日神力による治療を行った場所だった。索敵は点が出るだけだから、正確にどこにいるのかは分からないんだよね。まさかここだとは……

「……お邪魔しますよー」

 とりあえずこっそりと中へと入る。まだベットが並んでいるけれど、そこに横たわっている人の数は少し少なくなっていた。帰ってきてから、ちょっとずつ施しておいた呪いは解呪していたからね。

「…呼ばれた、とか?」

 サーニャさんが配ったポーション。呪いが消えた原因として、あれを疑われたのだろうか?一応何の変哲もない極一般的なポーションだから、調べれられても問題は無いはずなんだけど……

「…地下」

 治療院に来たことから少し楽観的に考えていたけれど…反応は地下からだ。明らかに怪しい。そもそも治療院に地下なんてあったのか。

「階段は……ない?」

 見渡してみても、下に伸びる階段は見当たらなかった。隠されているのだろうか…………いっそのことぶち抜くか?

『そんなことしたら治療院が倒壊します』

 だよねぇ…

「階段…階段…」

 とりあえず怪しいところを見ていくけれど、一向に見つからない。あぁもう!

「……階段じゃないとしたら?」

 縦穴とか…スロープとか?

「…ないなぁ」

 そもそもそんなものあったら、階段より目立つだろう。地下へと階段が見つからないという時点で、地下室の存在を隠したいのは明白だ。目立つようなものは設置しまい。

「……待てよ?」

 下に伸びる階段は見当たらないけれど、上に伸びる階段ならあるんだよね。

「行ってみるか」

 上へと伸びる階段を登る。

 ギシ、ギシ、、ギシ……

「…ん?」

 今一部音が変わったよね?

「……気のせいかな?」

 確認のために降りてみる。

 ギシ、、ギシ、ギシ……

 ……間違いない。一部音が違う。

「となると……」

 音が変わった段をくまなく調べてみる。すると、ガコッと段の一部が外れた。
 その外れたところから覗いたのは、下へと伸びるスロープ。

「ビンゴ」

 見つけた。見つけたんだけどさぁ…

「…怖すぎない?」

 スロープの先は真っ暗。何があるか分からないのに、この中に飛び込むのは……

「……でも、行くしかないよね」

 サーニャさんの為だ。ここで怖がってどうする。それに私は神龍だ。何かあることはまず有り得ない。

「…よし」

 私は覚悟を決め、そのスロープへと身を滑り込ませた。

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