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第5章

呪いの権化との戦い

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 ひとまずサーニャさんにはここから離れてもらう。結界があっても心配だからね。

「お気を付けて…!」

「もちろんです」

 サーニャさんのことを転移することはできない。転移した先に何がいるか分かったもんじゃないからだ。なので走って離れてもらった。

 さて。やろうか。
 まず無限収納庫インベントリから刀を取り出す。化け物とはいえ人型だから、切るのはちょっと抵抗があるなぁ……

 刀を抜いて構えると、化け物の手にモヤが集まり始めた。

「何をする気…?」

 油断なく構えていると、そのモヤがある形を成していく。
 八本ある手にそれぞれ、斧。槍。盾。弓。剣。メイス。ハンマー。ハルバード。
 ………ちょっと多くないかな?それ全部使うの?

「だよねっ!」

 ハルバードを縦に振るってきたので、横っ飛びで躱す。するとハルバードが地面に衝突し、小さなクレーターが出来た。

「ひぇ…」

 あれが当たったらどうなるんだろう……イレギュラーな存在だから、防御しきれるかどうか分からない。まぁ、当たらないに越したことはないか。

「今度はこっちからっ!」

 魔力で空中に足場を創り、その上を駆け上がって上から斬りかかる。

 ガギンッ!

「ちっ!」

 重々しい音が響く。盾で防御された。
 その状態から槍で突こうとしてきたので、盾を刀で押した反動で離脱。地面に降り立つとすぐさま次の攻撃がきた。
 ……槍の投擲。

「投げるのあり!?」

 まさか投げてくるとは思わなかったので驚いたけれども、何とか躱す。
 槍はそのまま地面へと突き刺さり、そこから地面が変色し始めた。

「…あまり状況は芳しくないなぁ」

 正直、浄化に回す余力はない。神力による結界を、私とサーニャさんに展開しているからだ。けれど、このまま放置する訳にもいかない。

 〘マリーナ様!〙

 突然、サーニャさんの声が聞こえた。どこから…?

 〘今風の声ウィスパーウインドで声を届けています!〙

 あぁ…そういえぱそんな魔法あったなぁ。

 〘十分に離れましたから、結界を解除してもらって構いません!〙

 ………この申し出は有難い。けれど、サーニャさんが私のために嘘をついてるって可能性がある。

 〘それは本当ですか?〙

 だから同じ魔法を行使し、真偽を確かめる。

 〘……本当です〙

 ……はぁ。

 〘分かりました。じゃあください〙

 実はハクから教えてもらった神龍の力の中に、【真偽ノ問】というものがある。私の問いかけに対しての返答の真偽を判別する力。一応神の代行者だからね。嘘を見破る能力を持っている。
 そして先程のサーニャさんの返答は……偽。つまり、サーニャさんはここからそう離れていないということだ。

 〘で、でもっ!〙

 〘でもじゃない、です!〙

 またしても槍を創り出して投擲してきたので、後ろ飛びで躱す。また、地面が黒く染まる。

 〘サーニャさんの身の安全が第一です!〙

 〘…あなた様はいつもそうです。自分のことを、全く考えない〙

 〘…お叱りは、後で受けますよ〙

 〘…絶対ですからねっ!〙

 そこで魔法が終わったのが分かった。
 ……絶対無事に帰らないといけない理由が出来ちゃったなぁ。

「さて。ちょっと試そうか」

 刀に魔力を注ぐ。すると、刀の金色の波紋が煌めきだした。綺麗…だけど、これじゃあだめだ。今度は神力を注ぐ。すると波紋がまるで波のように揺らめきだした。
 ……別にこんなとこ凝らなくてよかったんだよ、

 今更だけど、イシュワーム様の呼び方はイシュにぃになった。グランパパによると、密かに喜んでいたらしい。
 閑話休題。

 魔力を足に集中し、一気に踏み込む。先程との違いに本能で気付いたのか、必死に攻撃してくる。

「はぁぁ!」

 化け物が振るってきた剣と刀が衝突し、激しい火花が散る。
 ……しかし、その直後、剣が

「まだまだぁ!」

 そのままの勢いで、剣を持っていた手を肘の部分から切り飛ばす。

 ギャァァァァァァ!!

 痛覚があるのか、叫び声を上げる。しかし、切り口から血は出ず、代わりに黒いモヤが立ち上っていた。そしてそのモヤが切り飛ばされた手と同じものを形作る。

 メイスで殴りかかってきたので、さすがに躱す。地面に衝突したタイミングで手首を切り飛ばせはしたけど、やっぱりすぐに元通り。

 ……さっきも今も、切った感触はあまりなかった。つまりモヤで出来た見せかけの体?となると本体がいるはず。それを倒さないと無理か……。

「ジリ貧だなぁ…」

 神力を流すことで武器を切ることは出来る。でも、それもすぐに元通り。
 私が言えたもんじゃないけど、ほんとチートだなぁ……

「…どうしようかなぁ」

 弓から黒い矢が飛んできたので、刀で切る。すると、真っ二つになった矢が刀に吸い込まれるようにして消えていった。

「……突破口はそれしかない、か」

 刀が黒いモヤを吸収できるのなら、弱体化に繋がるかもしれない。今は、それに賭けるしかない。

「やるか」

 一旦距離を取ってから、一気に近付く。
 弓が連射されたので、飛んできた矢全てを切って弾いていく。おそらく地面に刺さればまた変色してしまうからだ。

 ………だから、気付くのに遅れた。遅れてしまった。
 
 ───真上から迫る、ハンマーとメイスの攻撃に。


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