上 下
62 / 130
第4章

護衛依頼【5】

しおりを挟む
 次の日。天井は創ってなかったので、陽の光で目が覚めた。
 ていうかもともと神龍である影響なのか、あまり睡眠を必要としないんだよね。だからちょっと眠りが浅い。

 起きて壁を消して、ベットを無限収納庫インベントリに収納する。
 馬車の中を見ると、まだ皆寝ていた。おそらくサーニャさんはハーフだから、私と同じように眠りは浅いだろう。だけど私の魔法の効果でぐっすりと眠っている。

「ふふっ。よかった」

 実はサーニャさんの顔が疲労しているように見えたのだ。今はゆっくりと休めたのか、顔色はいい。
 ……顔色が悪そうだったのは、疲労のほかにもあるだろうけど。

 とりあえず馬車から離れ、結界の様子を確認する。

「フォレストウルフがまだいる…」

 結界が解除されるのを待っているのか、ウロウロしている。
 索敵に引っかかって鬱陶しいので、遠隔魔法で仕留めておく。地面から棘が出てきて、フォレストウルフの体を貫く。

「うわぁー…えげつない」

 自分でやっておいてやらなきゃ良かったと思った…。あ、ちなみにここからでは見えてない。私のスキル、神眼の効果だ。
 一応龍として視力は桁違いにいいが、神眼はそれ以上の力がある。
 ……まぁ目を凝らせば、素の目でも壁くらい見通せるらしいんだけどね。まじでハイスペックだと思うわ。

「…回収しとこ」

 ちょっと素材としては微妙なくらいやられちゃってるけど、残しておく訳にもいかないので回収しておく。ついでに血の臭いも消してっと…よし。

「ふわぁ……おふぁようごじゃいます」

 可愛らしい声を出して、サーニャさんが起き出してきた。まだ辺りは薄暗い。

「ふふっ。おはようございます。よく眠れましたか?」

「はい……眠らせてくれたんですね」

 私は曖昧に微笑んでおく。

「…ありがとうございました。近頃眠れてなくて…」

 やっぱりそうだったか。

「何か手伝うこと、ありますか?」

「そうですね…」

 正直やることはない。朝ごはんは作り置きのスープと簡単なサラダ。それと……白パン。
 そう、やっとパンが作れたんだよ!長かった……まぁまだ目標より遠いけどね。それでも硬いパンよりましだ。

「……では、テーブルのセッティングを任せても?」

 私の無限収納庫インベントリにはテーブルが入ってるんだけど、組み立て式なんだよ。だから組み立ててもらいたい。
 いつまでも馬車で食べるより、外で食べた方がいいよね、ってことで。

無限収納庫インベントリで組み立てできますよ?』

 いいの。こういうのもね大事なんだから。

「分かりました」

「じゃあ出しますね」

 無限収納庫インベントリからテーブルを取り出して、組み立てて貰っているうちに、食事の準備をする。
 スープは軽く温めたいから、魔石で動く簡易コンロの上において、温める。
 これはこの前商業ギルドで買っといた。一口タイプと二口タイプの2つね。出したのは一口タイプ。なかなかに使い勝手がいい。
 サラダは……適当に刻んで、醤油ベースの和風ドレッシングをあえておく。

「できました!」

 一仕事やり遂げて達成感溢れるサーニャさん。なかなか小柄な体で苦戦してたみたいだけど、できたらしい。

「では、起こしてきてもらえますか?」

「分かりました」

 サーニャさんが呼びに行っている間に、スープをとりわけ、テーブルに並べる。サラダも同じ。パンは真ん中にバケットで出しておく。色々と遊んだ結果、クロワッサンとか、コッペパンもどきみたいなのが入っている。まぁ味は保証するから大丈夫…だと思う。

「おはよう……早いのね」

 1番に起きてきたのはリナさんだ。ギルさんかと思ったんだけど、意外だね。

「それよりごめんね。いつの間にか寝ちゃってて…」

「いいですよ、別に。でも、ギルさん達と一緒でもよかったんですか?」

 今更である。そう言えばサーニャさん、男の人と一緒に寝たんだよね…

「あー、まぁ大丈夫よ。サーニャさんは?」

「私も特に気にしませんよ」

 どうやら杞憂だったらしい?
 ……いやサーニャさん、気にしないのはさすがにどうかと思う。100歳くらいだとしても、可愛いのだから。
 いっその事一緒に外で寝たら良かったかな?

「(もしマリーナ様と隣合って寝たら私死にます!)」

 小声で言っても丸聞こえなんだけど。何を言っているんだか……

「おはようさん…お、美味そうじゃねえか」

 ギルさん達も起きてきた。案の定、フィーナさんが最後だ。

「じゃあ食べましょうか」

 全員が席につき、食事が始まった。


「美味い!おかわりあるか?」

「ありますよー」

「私もー」

「俺もー」

 結局私を除く全員がおかわりした。ただのコンソメスープなんだけどなぁ?

「はぁ食った食った。いやー、スープもサラダも、オマケにパンも美味かったなぁ。」

「ええ、ほんとに美味しかったわ。ありがとうね」

 どうやら気に入ってくれたようだ。良かった…

「じゃあ今日はバケットとフィーナが護衛。もとい監視?だったか」

 監視って聞こえ悪いんだけど。まぁそれ以外に言い方ないかもだけどさぁ…。

「じゃあお願いしますね」

「まっかせてー」

「ん。やる」

 あれ、そう言えばバケットさん。サーニャさんがいるのにいつもの調子だ。機嫌がいいからかな?

「今日は少し奥まで行ってみましょう」

 確かに昨日はあまり時間がなかったからね。今からなら、奥まで行けるだろう。
 私は食事の後片付けをして、サーニャさんを先頭にして、森へと入っていった。


 ………だけど、何故かさっきから妙に胸騒ぎがする。なにか起きなきゃいいけど……

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結済み】異世界でもモテるって、僕すごいかも。

BL / 完結 24h.ポイント:220pt お気に入り:1,436

次女を売ろうとする夫

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,228pt お気に入り:245

【連載版】婚約破棄ならお早めに

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:64,901pt お気に入り:3,583

平凡アルファの穏やかな幸せ

BL / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:198

【R18】私の下僕

恋愛 / 完結 24h.ポイント:213pt お気に入り:34

美人爆命!?異世界に行ってもやっぱりモテてます!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:441pt お気に入り:5

双子の兄王子たちは末っ子王子の淫紋を愛でる

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:85pt お気に入り:10

処理中です...