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第4章

護衛依頼【3】

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 とりあえず馬車まで戻ってくる。日は既に落ち、馬車のところでは、焚き火がされていた。

「あ、帰ってきた」

「戻りました。大丈夫でしたか?」

「問題ないよー」

「ん、なにもなかった」

 それは良かった。もしかしたら魔物だけでなく、盗賊とかが襲ってくる可能性があったからね。

「それよりマリーナちゃん。ビックボアの解体は?」

 あ、そうか。私は無限収納庫インベントリで解体できるけど、それは本来有り得ないんだ。

「えっと……」

 どう説明しようか…もう正直に無限収納庫インベントリのことを言ったほうがいいかな?

『それはやめたほうがいいです。アイテムボックスというスキルの上位互換ですが、未だ認知されていないので』

 それって…無限収納庫インベントリというスキルがないって思われてるってこと?

『はい。なので言うのならばアイテムボックスと言ったほうがいいです』

 じゃあアイテムボックスには解体機能ある?

『ないです』

 ……どう説明すんのよ。

『普通に解体を頼むか、解体済みのビックボアが元から入っていたと言うか、ですかね』

 …私は解体できないし、今からギルさん達に解体を頼むのは酷だと思うし、元から解体してたのをだすことにしよう。

「…実は解体済みのビックボアがあるので、そっちを使おうかと」

「そうなの?まぁそれなら楽ね」

 納得してくれたようだ。
 さて、何を作ろうかな。

「……ステーキぐらいしか出来ないか」

 システムキッチンが出せないので、あまり凝った料理は作れそうにない。だから、ソースにこだわってみることに。

「フライパン…多いから鉄板でやるか」

 この前作っていた鉄板を取り出す。焚き火の上にそれを乗っけて、ステーキを焼いていく。

「ステーキ?」

 リナさんが話しかけてくる。

「はい。でも、ただのステーキじゃないですよ」

 焼いている間にソースを作る。醤油ベースの和風ソースだ。
 ボウルに材料を入れて混ぜる。ちょっと多めに…

「それは?」

「ソースです」

「そーす?それをどうするの?」

「これを掛けて焼いてもいいですし、あとがけでもいいですよ。どっちがいいですか?」

「うーん…私は分からないから、マリーナちゃんのオススメは?」

「私はかけて焼くほうが好きですね」

 その方が香ばしくなるし。

「じゃあそっちで」

「分かりました。じゃあ全員それでいいですよね?」

 1枚の鉄板でやってるからね。

「それでいいと思うわ」

 リナさんかいいと言うので、ソースをかける。すると、ジュワァ~っと湯気が立ち、美味しそうな匂いがし始めた。

「な、なんですか、この美味しそうな匂いは!?」

 サーニャさんが叫びながら近寄ってきた。

「あと少しでできますよー」

「うぅー、早く食べたいです!」

 その気持ちはサーニャさんだけではないらしく、全員の視線がステーキに集まっていた。
 ちょっと目付きが怖いよ……

「よし、できた!」

 できたステーキを皿に盛り付け、サーニャさんに渡す。

「え?」

「最初はサーニャさんがどうぞ」

「あ、ありがとうございます…」

 馬車の中で食べ始めるサーニャさん。

「私も!!」

「分かってますから落ち着いて」

 御者さんを含めた全員のステーキを盛り付ける。ギルさん達も馬車で食べるようだ。
 そしてやっと全員にいき渡ったところで、私も食べ始め「なんですかこれは!?」……られなかった。デジャブだ…
 声がした方を見ると、サーニャさんが馬車から飛び出してきて私の方へと駆け寄ってきた。

「ステーキです」

「いやそれは分かりますけど!でも違いますよね!?」

「うーん…和風ステーキです」

 今考えた。

「わふう?ステーキ?これもレシピ売ってるんですか?」

「売ってないですね」

「えぇ…こんなに美味しいのに」

 そんなホイホイレシピ登録するのはめんどくさいので。
 でもステーキは塩味しかないみたいだし、登録したほうがいいかもね。帰ったら考えとこ。

「考えときますよ。でも、そんなに気に入ったのなら、レシピくらい教えますよ?」

「ほんとですか!?」

 お、おう…いきなり寄ってきたから驚いたよ。背丈があまり変わらないから、目がバッチリと合ってちょっと怖い。でも、そこまで喜んでくれるのは嬉しいかな。

「後でお渡ししますね」

「約束ですよ!」

 そう言って馬車に戻っていった。多分まだ食べきれてないんだろうね。
 やれやれ。やっと私も食べれるよ…

「……魔物か」

 …食べようと思ったら、魔物が索敵に引っかかった。どうやら匂いに釣られたようだね。

「はぁ……」

 戦ったほうがいいんだろうけど、今は精神的にもちょっと疲れてるからやりたくない。
 なのでこちらに来れないように結界を展開する。ついでに匂いもクリーンで消しておく。

「反応は…フォレストウルフか」

 索敵で見つけたのはフォレストウルフの群れ。
 フォレストウルフっていうのは、狼型の魔物の1種で、3匹から5匹ほどの群れで行動する。肉食で、死体も漁ることから別名森の掃除屋とも呼ばれている。とりあえず結界で十分だろう。




「あのぅ…マリーナさん?」

 フォレストウルフのことを考えていると、いつの間にかサーニャさんが近くに来ていた。

「はい、なんでしょう?」

「えっと、ご飯ありがとうございました。とっても美味しかったです」

「それは良かったです」

 そのご飯を私は食べれてないんだけどね!
 ちなみに、私は今外にいる。馬車は少し狭いし、後片付けもしないとだからね。

「あ、まだ食べてなかったんですね。すいません…」

「大丈夫ですよ。それより、他に話でも?」

 ステーキを食べながら尋ねる。
 うん、美味しい。でもちょっと塩っ辛いかな。

「……この結界、マリーナさんですか?」

「…そうですよ?」

 私としてはちょっと驚いた。だってこの結界は、多少適当だけど、張ったことがバレないようにしていたから。
 え、なんでバレないようにしたかって?

 …………私が今隠蔽しているステータスでは、この規模の結界を維持できないからだよ。だからバレたら説明が面倒なのよね。

「……ちょっと質問してもいいですか?」

 いきなりサーニャさんが真剣な顔になる。

「改まってどうしたんです?別に構いませんけど」

「では、単刀直入に聞きます。…マリーナさん、あなたは……」







 ──────本当に人間ですか?




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