60 / 130
第4章
護衛依頼【3】
しおりを挟むとりあえず馬車まで戻ってくる。日は既に落ち、馬車のところでは、焚き火がされていた。
「あ、帰ってきた」
「戻りました。大丈夫でしたか?」
「問題ないよー」
「ん、なにもなかった」
それは良かった。もしかしたら魔物だけでなく、盗賊とかが襲ってくる可能性があったからね。
「それよりマリーナちゃん。ビックボアの解体は?」
あ、そうか。私は無限収納庫で解体できるけど、それは本来有り得ないんだ。
「えっと……」
どう説明しようか…もう正直に無限収納庫のことを言ったほうがいいかな?
『それはやめたほうがいいです。アイテムボックスというスキルの上位互換ですが、未だ認知されていないので』
それって…無限収納庫というスキルがないって思われてるってこと?
『はい。なので言うのならばアイテムボックスと言ったほうがいいです』
じゃあアイテムボックスには解体機能ある?
『ないです』
……どう説明すんのよ。
『普通に解体を頼むか、解体済みのビックボアが元から入っていたと言うか、ですかね』
…私は解体できないし、今からギルさん達に解体を頼むのは酷だと思うし、元から解体してたのをだすことにしよう。
「…実は解体済みのビックボアがあるので、そっちを使おうかと」
「そうなの?まぁそれなら楽ね」
納得してくれたようだ。
さて、何を作ろうかな。
「……ステーキぐらいしか出来ないか」
システムキッチンが出せないので、あまり凝った料理は作れそうにない。だから、ソースにこだわってみることに。
「フライパン…多いから鉄板でやるか」
この前作っていた鉄板を取り出す。焚き火の上にそれを乗っけて、ステーキを焼いていく。
「ステーキ?」
リナさんが話しかけてくる。
「はい。でも、ただのステーキじゃないですよ」
焼いている間にソースを作る。醤油ベースの和風ソースだ。
ボウルに材料を入れて混ぜる。ちょっと多めに…
「それは?」
「ソースです」
「そーす?それをどうするの?」
「これを掛けて焼いてもいいですし、あとがけでもいいですよ。どっちがいいですか?」
「うーん…私は分からないから、マリーナちゃんのオススメは?」
「私はかけて焼くほうが好きですね」
その方が香ばしくなるし。
「じゃあそっちで」
「分かりました。じゃあ全員それでいいですよね?」
1枚の鉄板でやってるからね。
「それでいいと思うわ」
リナさんかいいと言うので、ソースをかける。すると、ジュワァ~っと湯気が立ち、美味しそうな匂いがし始めた。
「な、なんですか、この美味しそうな匂いは!?」
サーニャさんが叫びながら近寄ってきた。
「あと少しでできますよー」
「うぅー、早く食べたいです!」
その気持ちはサーニャさんだけではないらしく、全員の視線がステーキに集まっていた。
ちょっと目付きが怖いよ……
「よし、できた!」
できたステーキを皿に盛り付け、サーニャさんに渡す。
「え?」
「最初はサーニャさんがどうぞ」
「あ、ありがとうございます…」
馬車の中で食べ始めるサーニャさん。
「私も!!」
「分かってますから落ち着いて」
御者さんを含めた全員のステーキを盛り付ける。ギルさん達も馬車で食べるようだ。
そしてやっと全員にいき渡ったところで、私も食べ始め「なんですかこれは!?」……られなかった。デジャブだ…
声がした方を見ると、サーニャさんが馬車から飛び出してきて私の方へと駆け寄ってきた。
「ステーキです」
「いやそれは分かりますけど!でも違いますよね!?」
「うーん…和風ステーキです」
今考えた。
「わふう?ステーキ?これもレシピ売ってるんですか?」
「売ってないですね」
「えぇ…こんなに美味しいのに」
そんなホイホイレシピ登録するのはめんどくさいので。
でもステーキは塩味しかないみたいだし、登録したほうがいいかもね。帰ったら考えとこ。
「考えときますよ。でも、そんなに気に入ったのなら、レシピくらい教えますよ?」
「ほんとですか!?」
お、おう…いきなり寄ってきたから驚いたよ。背丈があまり変わらないから、目がバッチリと合ってちょっと怖い。でも、そこまで喜んでくれるのは嬉しいかな。
「後でお渡ししますね」
「約束ですよ!」
そう言って馬車に戻っていった。多分まだ食べきれてないんだろうね。
やれやれ。やっと私も食べれるよ…
「……魔物か」
…食べようと思ったら、魔物が索敵に引っかかった。どうやら匂いに釣られたようだね。
「はぁ……」
戦ったほうがいいんだろうけど、今は精神的にもちょっと疲れてるからやりたくない。
なのでこちらに来れないように結界を展開する。ついでに匂いもクリーンで消しておく。
「反応は…フォレストウルフか」
索敵で見つけたのはフォレストウルフの群れ。
フォレストウルフっていうのは、狼型の魔物の1種で、3匹から5匹ほどの群れで行動する。肉食で、死体も漁ることから別名森の掃除屋とも呼ばれている。とりあえず結界で十分だろう。
「あのぅ…マリーナさん?」
フォレストウルフのことを考えていると、いつの間にかサーニャさんが近くに来ていた。
「はい、なんでしょう?」
「えっと、ご飯ありがとうございました。とっても美味しかったです」
「それは良かったです」
そのご飯を私は食べれてないんだけどね!
ちなみに、私は今外にいる。馬車は少し狭いし、後片付けもしないとだからね。
「あ、まだ食べてなかったんですね。すいません…」
「大丈夫ですよ。それより、他に話でも?」
ステーキを食べながら尋ねる。
うん、美味しい。でもちょっと塩っ辛いかな。
「……この結界、マリーナさんですか?」
「…そうですよ?」
私としてはちょっと驚いた。だってこの結界は、多少適当だけど、張ったことがバレないようにしていたから。
え、なんでバレないようにしたかって?
…………私が今隠蔽しているステータスでは、この規模の結界を維持できないからだよ。だからバレたら説明が面倒なのよね。
「……ちょっと質問してもいいですか?」
いきなりサーニャさんが真剣な顔になる。
「改まってどうしたんです?別に構いませんけど」
「では、単刀直入に聞きます。…マリーナさん、あなたは……」
──────本当に人間ですか?
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
408
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる