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第3章

豚汁もどきを作ります

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 目が覚めると、以前見た天井が目に入った。
 よかった。ちゃんと送ってくれたみたい。
 体を起こして、辺りを見回す。

「……あれ?」

 額から濡れタオルが落ちたのも気にならないくらい、部屋を見て驚いた。
 ここって…同じ小屋だよね?なんか豪華になってるんだけど…
 ベットはそのまま。だけど、小さなテーブルと椅子が新しくあって、窓も増えていた。というか、部屋が大きくなっているような?

 《あ!主様!》

 聞き覚えのある声が聞こえる。見ると、ドアが少し開いていて、その隙間からプレナの姿が見えた。

「おはよう?」

 《うん!》

 元気よくベットに飛び乗ってくる。
 そしてそのまま肩まで登り、私の額に小さな手を当てた。

 《よかった。熱は下がってる》

「ありがとね」

 《いいの。でも、ほんとに心配したんだよ?主様はすぐ無茶するんだから…》

「……弁解の余地もございません」

 いやほんとごめんなさい。でも、私が少し無茶するぐらいで誰かを助けられるなら、これからも私は進んで無茶をすると思う。助けられるなら助けたい。例え、それがその場しのぎでしかなかったとしても。

「瑠璃は?」

 《長はちょっとね…》

 言葉を濁すプレナ。なにかあったの?

「なにがあったの?」

 《えっと…とりあえず外に出たほうが早いかも。出れる?》

「大丈夫」

 聞くと1日寝てただけだからね。少しダルいけど、大丈夫。
 ベットからでて、プレナを肩に乗せたまま小屋の扉を開けた。
 そして、閉めた。

 《あ、主様?》

「…うん。私のせいだよね」

 もう一度扉を開ける。すると目の前に高い高い、木の実の山が出来上がっていた。もちろんそれは……ミーソの実。私が頼んでたやつ。

 〈おお、起きましたか〉

 その山の隣で、瑠璃がなんとも言えない表情で佇んでいた。

「うん…これって」

 〈皆が集めたものです〉

 やっぱりそうだよね!
 どうしようかと山を見つめていると、ひょこっと見たことがあるクリスタルなうさぎさんが出てきた。

 《主様、この子がこれでいい?って》

「うん…ありがとね」

 もう諦めた。クリスタルなうさぎさんを撫でる。すると透き通った青色の体が少し輝いて、濃い青色の瞳を細めた。気持ちいいらしい。

 〈して、これはどうしますかな?〉

 確かにどうしようか。まぁ無限収納庫インベントリに入れちゃってから考えようかな。
 私の身長よりも高い山を収納する。

「ありがとね。だけど、無理してない?」

 クリスタルなうさぎさんを撫でながら尋ねる。

 《それ、主様が言う?》

 プレナの呆れ顔が目に入る。いや、私は不可抗力で…

 《はぁ…この子だけで集めた訳じゃないから、大丈夫だよ》

 あ、そうなんだ。

「みんなにもお礼言っといてね」

 キュイ!と高い鳴き声を上げて、クリスタルなうさぎさんは去っていった。

 〈マリーナ様。一体何に使うのです?〉

「うん?ちょっと料理に…この実って一般的に流通してるの?」

 聖域にしかないんだったら、あんまり迂闊には使えないんだけど?

 〈問題ありませぬ。ただ、使う用途がないので、あまり知られておりませぬ〉

 なるほどね。マイナーな食材?ってことかな。

「よし。じゃあ今作っちゃおう!」

 瑠璃にシステムキッチンを出せる場所を聞いて、そこで調理を始める。
 コンロに鍋を置いて、その中に魔法で水を入れる。水道を使っても良かったんだけど、何となくめんどくさかったから。

「うーん…出汁、出汁…」

 無限収納庫インベントリの中で、味噌汁の出汁に使える食材を探す。

「あ、干し肉でいいか」

 小麦粉を買った時におまけでくれていた干し肉を投入する。火にかけて出汁をとる。
 コンロはまだあるので、土鍋でご飯を炊く。

「魚が欲しい…」

 古き良き日本の伝統食ですよ。まぁないものねだりしても仕方ないね。
 ご飯のお供か…また野菜炒め作るか。今回は醤油味で。

 《主様、それって前のやつ?》

「前のとは少し違うよ」

 ちなみにコンロは4口ある。便利だね!

 〈おや。どうやら集まってきてしまったようですな〉

 瑠璃の言葉通り、周りには魔物が集まってきていた。なんかデジャブ。

「よし!できた」

 野菜炒めを無限収納庫インベントリに一旦収納して、ミーソの実の加工に入る。

 クルミみたいな硬い殻を外す。

 べキッ!!

「あ、あれ?」

 砕けちゃった☆ってちっがぁぁう!なんで砕けちゃうのよ!

 《主様、大変そうだね》

「うん…ちょっと力が強すぎるからね…」

 はぁ…今度は慎重に…

 メキッ!

 うっ!まだマシ。うん。

 《…やろうか?》

「…いや、加減を練習したい」

 頼ってもいいけど、今後色んなことで加減が出来なくなるかもしれない。その練習にこれは持ってこいなんだもの。

 とりあえず作業を進めて、中から出てきた黒っぽい玉をボウルに入れる。
 うん。なんとか加減はできるようになった。
 だいぶ数が溜まったらそこに水を加えて混ぜる。すると、あっという間に見慣れた味噌が……!

 《主様~。ボコボコいってるけど》

 は!鍋が物凄い沸騰してた!
 急いで火を止め、干し肉を引き上げる。ちょっとアクがでたから、それもとっておく。
 そして、できた味噌を混ぜていく。分量は……適当で。ま、まぁ大丈夫!

「あ、具がない」

 具なし味噌汁なんて…急いでオーク肉を切って投入。ついでに人参とか大根とか、野菜炒めの余りを突っ込んでいく。豚汁もどきの出来上がり!

「できた!」

 辺りを見回すと、期待に満ちたキラキラした瞳が…

「うっ!…作ります」

 ご飯をおにぎりにしていく。半分醤油を塗って焼きおにぎりに。魔法で焼きました。だってそっちの方が早いんだもん。

 お皿に乗せて、みんなの元へ。

 〈食べてよろしいので?〉

「もちろん!みんなで食べよ?」

 そう言うと、周りで見ていた魔物達が集まってきた。ゴザを敷いて、私も食べ始める。

 豚汁もどきはちょっと塩分濃いめ。だけど、十分美味しい。

 《主様!この汁美味しい!》

 プレナも満足したみたい。いつの間にか瑠璃も食べていた。目を細めているから、多分美味しいんだと思う。

 魔物たちは恐る恐るといった感じで食べ始めたけど、美味しかったらしく直ぐに無くなってしまった。

 私も焼きおにぎりを食べたけど、ほんとに美味しかった。日本バンザイ!

 追加でおにぎりを握りつつ、みんなで美味しく食事を終えた。
 さぁ。次は制御の特訓だ!


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